上 下
278 / 468
連載

◆待ち伏せされてました

しおりを挟む
久々に王都の港の倉庫にガンツさんとマサオと一緒にゲートを潜って入る。
「なんか久しぶりだな」
「そんなに日は経ってないのにね」
『そんなことより、早く! 俺、まだ昼も食ってないんだぞ!』
「なんじゃ、お前達は昼抜きか?」
「ま、まあ、ちょっとね……」
「はぁ、相変わらずじゃの~ワシも人のことは言えんがな」
「じゃあ、ガンツさんも?」
「まあ、そうじゃな。昼は食べ損ねたわ」
「そう、なら先にお昼にしようか」
「ああ、そうだな。なら、あそこか?」
「うん、あそこが一番だよ」
『どこでもいいから、早く行こうぜ!』
「分かったから、いいかマサオ。お前はここからは喋るなよ。喋った時点で連れて行かれるからな。いいか?」
『やべっ! そうだった。忘れてたよ。うん、よし! 分かったから、早く行こう!』
「はいはい、今開けるから」
人前では喋らないようにマサオに改めて言い聞かせてから倉庫の扉を開けると、そこにはなにやら見覚えのある人が立っていた。
「うわ、本当に出てきたよ。おい、お前は旦那に知らせるんだ! ほら、急げよ!」
「は、はい!」
倉庫から出て来た俺達を見るなり、こっちを指差したと思ったら、一人がどこかに知らせに走る。この人達は一体なんなんだ? まあ、大体の予想はつくが、面倒だな~

「ケイン、また面倒ごとか?」
「ガンツさん。悪いね、多分身内だよ」
「そうか。で、どうするんだ?」
「ん? どうもしないよ。ほら、お昼食べに行こうよ」
「ああ、そうだったな」
妙な人達は無視して、ガンツさんと歩き出そうとしたところで、声を掛けられる。

「お待ちください、ケインさん」
「なんですか?」
「私と一緒に旦那のところまで来て欲しいのですが」
「イヤです。俺は食事をしたいので」
「そんな、それでは私が怒られてしまいます」
「大体、旦那って誰なんですか? 俺に誰かも分からない、教えない人に会えと言うのはどんな理由があってのことなんですか?」
「そ、それは……」
「じゃあ、そういうことで。ガンツさん、ごめんね待たせて」
「まあ、ワシはいいがな。なんか面白くなりそうだし」
「え~俺のトラブルを暇つぶしに使わないでよ!」
「まあ、そういうな。なぜかは知らんが、お前はトラブル体質みたいだからな」
「う~それは俺もなんとなく思ってはいるけどさ」
「なら、近付いて来るトラブルを楽しむのもいい趣味だと思うぞ」
「イヤだな、そんな趣味は……」

後ろを見ると、さっきの人は黙ってついて来ている。なんかいやな気分だな。
しばらくガンツさんと話しながら歩き、目的のホテルに辿り着く。
「うまそうな匂いだな。たまらん! これは揚げ物だな」
「ガンツさん、口元! ほら、ちゃんと拭いて。マサオも。それといいか、忘れるなよ?」
マサオが涎を垂らしながら頷く。

二人の口元を綺麗にすると、奥の食堂へと進み声をかける。
「こんにちは~三人ですけど、いいですか?」
「いらっしゃい! って、ケイン君じゃない。久しぶりね。空いてる席を使ってね」
ガンツさんと近くのテーブルに座ると、奥さんが水を持ってくる。
「さて、今日のご注文は?」
「え~と、マサオにはお肉たっぷりのがいいから、厚めのステーキをミディアムレアで。俺のはミディアムでお願いします。ガンツさんは?」
「そうだな、ワシは冷えたエールと枝豆と唐揚げにフライドポテトを頼む」
「ガンツさん、昼間っからそれはどうなの?」
「なんじゃ。別にいいだろ? この後、運転することもないんじゃし」
「そりゃそうだけどさ」
「じゃ、注文はこれでいいのね?」
「あ、マサオには二……いや、三人前でお願いします」
「あら、すごいのね。分かったわ。では、しばらくお待ちください」
奥さんが厨房へと入っていくのを見送るとマサオが喋り出す。
『ケイン、いいのか? 三人前なんて。まさか、後から返せとか言わないよな?』
「そんなこと言わないから、安心して食べていいよ。少しだけど俺からのお詫びだから」
『本当に?』
「なに? 怪しいって言うのなら、別に無理して食べなくていいから」
『な、なにを言うか! 食うから、無理じゃないから!』
「はいはい。ほら、人が来るから少し黙っててな」
『……』
「なんじゃ? 客か?」
「うん。俺達が目的みたいだね」
入り口で見張っていた、俺に声を掛けてきた男が呼んだのかドラゴさんが俺達のテーブルに近付いて来る。

「久しぶりじゃな、ケイン。ワシの孫よ」
「久しぶりですね、ドラゴさん。すみませんが、これから食事をするので」
「しかし、こうして側で見張っていないとまた、どこかに行ってしまうんじゃないか? 電話をいくら掛けても通じはしないしな」
「電話の件はしつこいので対処させてもらいました。それにこんな人前でゲートを使う訳ないでしょ。ほら、分かったのなら離れて下さい」
「だが……」
「後で、お店に寄りますから。また、お酒を集めといて下さいよ。今回は売れるだけ売って下さいね」
「そ、それはいいが。本当に来るんだな?」
「行きますよ。ガンツさんが欲しがってますからね。ね? ガンツさん」
「おう! 酒はいくらあってもいいからな」
「分かった。なら、店で待つとしよう」
「はい、よろしくお願いしますね」

ドラゴさんが、納得してくれたのか俺達のテーブルから離れるのと入れ替わりに奥さんが料理を運んで来た。
「あら、ドラゴさん。お知り合いだったの?」
「ああ、ワシの孫だ。よろしくな」
「へ~お孫さんなんだ。へ~……え~!」
「まあ、そういう訳じゃ。よろしく頼むぞ」
「は、はい」
「おい、ワシらの飯を落とすなよ」
「あ、すみません。お待たせしました」
奥さんがテーブルの上に注文した料理を並べ終え、マサオにはテーブルの下にステーキを置く。
ガンツさんは「いただきます」を言う前にジョッキを掲げると一気に飲み干すとお代わりを要求する。
「はい、今お持ちしますね。ケイン君も言ってくれたらよかったのに」
「ん? ああ、ドラゴさんのことなら、最近分かったことですからね」
「へ~そうなんだね」
「おかみ、ワシのエール……」
「あ、はいはい。すみませんね。すぐにお持ちしますね」
「ガンツさん、飲みすぎないでよ?」
「誰に言っとる?」
「そう言って、二日酔いになったのを何度か見てるけど?」
「……これで止めとくか」
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~

ももがぶ
ファンタジー
「転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!」のスピンオフ作品です。 主にケインからの無茶振りで玩具作りに販売に四苦八苦するガンツさんの息子、サンガンの辛くも楽しい日々を書いていきますので、よろしくお願いします。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし
ファンタジー
 そこは神が実在するとされる世界。人類が危機に陥るたび神からの助けがあった。  神から人類に授けられた石版には魔物と戦う術が記され、瘴気獣と言う名の大敵が現れた時、天成器《意思持つ変形武器》が共に戦う力となった。  狩人の息子クライは禁忌の森の人類未踏域に迷い込む。灰色に染まった天成器を見つけ、その手を触れた瞬間……。  この物語は狩人クライが世界を旅して未知なるなにかに出会う物語。  使い手によって異なる複数の形態を有する『天成器』  必殺の威力をもつ切り札『闘技』  魔法に特定の軌道、特殊な特性を加え改良する『魔法因子』  そして、ステータスに表示される謎のスキル『リーディング』。  果たしてクライは変わりゆく世界にどう順応するのか。

ディミオルゴ=プリェダーニエ

《シンボル》
ファンタジー
良くも悪くもない平凡な高校生のトシジは自分の日々の生活を持て余していた。そんなトシジが非現実的で奇妙な運命に巻き込まれることとなる。 ーこれは平凡な高校生が後に伝説的な人物になるまでの物語であるー 何話か主人公が違う部分があります。 ジャンルを変更する事がありますが、この世界は異世界と現実世界がごっちゃになっていますのでご了承ください。 《二重投稿》 ・カクヨム ・小説家になろう

龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で

ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。 入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。 ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが! だからターザンごっこすんなぁーーー!! こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。 寿命を迎える前に何とかせにゃならん! 果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?! そんな私の奮闘記です。 しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・ おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・ ・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

飯が出る。ただそれだけのスキルが強すぎる件

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
★第4回次世代ファンタジーカップ応募中★ 大学生の枢木ヒナタ(20歳)は、ある日、神の気まぐれにより試験的に異世界に転移されてしまう。 ――ヒナタが転移させられた異世界エデンは、楽園要素のないゴブリンが跋扈する殺伐とした世界だった!? 神より与えられたスキルは「言語理解」と「食材創造」。 ゴブ『――人間かと思ったが……。ゴブ語を話せるってことは、俺と同族なのか?』 ヒナタ「えっ……?(あれ……? もしかして、俺、ゴブリンに同族だと勘違いされてるー!?)」 神の気まぐれにより異世界に転移させられてしまった主人公、ヒナタと、大地創造の神、テールスの織り成す異世界転移系ファンタジーここに開幕! 本作は、一日一話朝7時投稿予定です。 第一章完結まで、30話ほどかかります。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。