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◆目印がありませんでした

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「で、ケインよ。今日の予定が、まだなにも決まっていないんじゃが?」
「あれ? そうだった?」
「そうじゃよ。組合の話と砂糖と胡椒の話で終わったじゃろ」
「そうでした。じゃあ、俺の方はとりあえずセバス様に始業式に出てもらえるかを確認したら後は成り行きだね」
「そうか。ワシは今のところ予定はないな。強いて言うなら、製本の方法じゃな」
「あ、そうだった! 製本の手前のレイアウト編集について考えないとダメだったんだ」
「ほう、また面白そうなことを言い出したな。で、そのレイアウト編集ってのはなにをどうするものなんじゃ?」
ガンツさんが興味津々に聞いてくるが、これはどちらかといえばハードではなくソフト的な面が強いから、どうだろう? まあ、とりあえずはいつもの様に全部を話してから判断して貰えばいいか。

「あのね、レイアウト編集ってのはさ……」
適当に印刷した写真と文章、を切り貼りした物を作って見せて、これを大きめのタブレットで実現したいんだと話す。
「ほう、面白そうじゃな。だが、これはケインの分野じゃな。ワシの得意とする機械的な部分がほとんどない。つまらん」
「つまらんって、そんな」
「じゃが、出来れば面白いとは思うぞ。だが、さっき言ったようにワシの得意とすることが活かせん」
「それもそうだね」
「なんじゃ、ワシの作るものはないのか。つまらんの~」
「ならさ、これを作ってみない?」
テーブルの上にトラクターと、それを繋いで使う耕運する為のアタッチメントの模型を出す。

「なんじゃこれは?」
「これがトラクター。これは分かるからいいよね。で、これがトラクターの後ろに接続して使うアタッチメント。これを使って、土を掘り起こして耕すんだ。どう? これなら、ガンツさんの得意分野でしょ?」
「確かにな。よし、これはワシに任せてもらおう」
「分かった。じゃ、お願いね」
「おう、そっちも、その……レイアウト編集ってのが出来たら見せるんじゃぞ」
「分かったよ」
そう言って、ガンツさんが工作室に入る。ってか、そこは俺の……
まあ、いいか。
「さてと、セバス様に確認しなきゃね」
携帯電話を取り出し、セバス様に掛ける。

何度目かのコール音の後にセバス様が電話に出る。
『はい、セバスです。久しいですね、ケイン様』
「セバス様、ケインです。お久しぶりですね」
『ふふふ、それで今日はなんのご用でしょうか。あいにくと港の件についてはまだ進捗がありません。もしかしたら、旦那様よりお願いがあるかもしれませんが』
「そういえば、その件もありましたね。まあ、そういうのも含めてデューク様にお話ししておきたいことがあるんですが、どこかで直接お会いすることは出来ませんか?」
『そうですね、ケイン様からのお話しもあると言うことでしたら、私の方で調整しておきましょう。それで、よろしいですか?』
「はい、それでお願いします。それと、ドワーフタウンの学校の件でお願いなんですけど」
『学校ですか? それで旦那様にお願いとは?』
「出来ればなんですが、入学式で挨拶をいただけないかと思ってまして」
『旦那様の挨拶ですか?』
「ええ、ドワーフタウンは自治区みたいな扱いですが、一応シャルディーア領な訳ですから、その領主様からの挨拶がいただけたらと」
『分かりました。それで、日付は?』
「一応、九月一日を予定しています」
『その日は、エリー様の入学式でもあります。これはご存じですね?』
「はい、なのでそちらの入学式が午前中なら、こちらを午後に。そちらが午後からならば、こちらを午前中にして対応したいと考えています」
『そうですか、旦那様の都合に合わせていただけるんですね』
「はい、そのつもりです」
『分かりました。この件に付きましては、こちらから折り返しご連絡差し上げます』
「はい、よろしくお願いします」
『あ、ケイン様。お待ちください。そのドワーフタウンの学校については事前に見学することは可能でしょうか?』
「はい。見学ならいつでもいいですよ」
『分かりました。では、旦那様に確認次第、折り返しご連絡いたします』
「はい、お願いします。では、失礼します」
セバス様との通話を終え、携帯電話をしまう。

「さて、これで連絡するところは、もうないよな。母さんからは出来たら連絡してくれる予定だし。じゃあ、レイアウト編集出来る様にしますか!」

でも、工作室はガンツさんが占拠しているし、どうしたものか。
「じゃあ、製紙工場でいいか。ついでにトイレットペーパーのラインも作らないとね。あ! そういえば、クロードさんに頼んでいたんだった。なら、先にドワーフの里に行くか。マサオ、起きて! 移動するよ」
床ではなくソファで寝ていたマサオを起こし、ドワーフの里にゲートを繋いで潜る。
「え~と、クロードさんはどこかな?」
しばらく、里を探すがクロードさんらしき人を見つけることが出来なかった。
「もしかしたら、山の方かな?」
里を出て、昨日案内してもらった山の方へ向かう。
『ケイン、あっちから匂いがする』
「あっち?」
『そう、あっち』
「分かった。マサオありがとう!」
マサオが言う方向に進んでみると、確かにクロードさんがいた。いるにはいたが、様子がおかしい。
「クロードさん、こんにちは。どうしました? 元気がないようですが?」
「あ、ケイン!」
「はい、ケインです。で、どうしました?」
「忘れられないんだ!」
「へ?」
「だから、忘れられないんだよ! あの魔導チェーンソーを使った感触が……」
「なら、あの暴れっぷりも覚えてるんでしょ?」
「うっ……それを言われると」
「でしょ! クロードさんにあの症状が出る内は、魔導チェーンソーを渡すことは出来ません」
「そうか、まあそうだよね。はぁ……」
「それはそれとして、伐採していい木の目印はどれですか? パッと見、この辺の木には目印は付いてないようですが?」
「ああ、それね。もう、どこでもいいから、適当にやっちゃって」
「そんな、それはないでしょ。クロードさん、仕事しましょうよ」
「でも、もうあれが使えないとなるとさ……」
「ああ、もう! じゃ、これを見て下さい!」
ドンと、昨日作った伐採用の作業車をインベントリから取り出しクロードさんの目の前に出す。
「ケイン、これは?」
「伐採用の作業車ですよ。これに乗れば伐採はすっごく楽に出来るんです」
「本当に?」
「ええ。魔導チェーンソーなんか比べ物にならないくらいに」
「じゃ、早速」
すぐに乗り込もうとするクロードさんを止める。
「なにするんだ? ケイン」
「一つ聞きますが、ライセンスは持っていますか?」
「ライセンス? なんのことだ?」
「ライセンスを持っていないのなら、これを動かすことは出来ませんよ」
そう言って、作業車をインベントリにしまう。
「なにするんだ!」
「ライセンス持ってない人を乗せる訳にはいかないんです。まずはライセンスを取って下さい」
「そんな……」
「まずは、伐採していい木に目印を付けて下さい。他のお話はそれからです。いいですね?」
「分かったよ」
「じゃあ、俺は帰りますね」
ゲートを製紙工場の四階に繋ぎ潜っていく。

「さてと、じゃまずは大きめのタブレットを作らないとな。大きさとしては新聞紙の見開きくらいでと」
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