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◆のちの……でした

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ナーガさんが汚し切った汚部屋を消毒した後、竜人の里にゲートを繋ぎマサオと一緒に潜ると里長が駄竜を見て困っていた。
「里長、ソイツは起きましたか?」
「ケインか。まだ寝ておる。ここまで来るとな~もう、守り神とか神聖な感じは微塵も感じられんの」
「その原因を作った一人でしょ? なに他人事みたいに。それより、さっさと片付けますよ。それでなくても、この駄竜の汚部屋には黒いのがいっぱい発生していたんだから、独身寮全体の害虫駆除をしないといけなくなったんだから」
「ケイン、その黒いのっては、妙に平べったくて、表面がテカテカして、すばしっこいやつか?」
「そう、ああ……そうだよね。あのゴミの山にいても不思議じゃないよね。被害が広がらない内に対策した方がいいよ。頑張ってね~」
そう無情な言葉を里長に掛けると駄竜を起こすべくゴミの山に近付く。

「うわ~よくこんな状態で寝られるもんだな。本当に感心するよ。おい、起きろよ。駄竜!」
「ん? なに? まだ起きる時間じゃないでしょ?」
「おい! いつまで寝呆けているんだ! さっさと起きろよ! あ、その前にブレスレットを回収しとかないとな」
そう言ってナーガの左腕からブレスレットを回収する。

「もう、なに? いい加減にしてよ! 誰なのよ! ……ケイン君?」
「ああ、ケインだ。んで、いつになったら起きるつもりなんでしょうかね? もう陽は結構高い位置にあるんだけど?」
「え? 眩しい……え? どこ? ここ?」
「どこって、見て分かるだろ。あなたは強制退去になりましたので、サービスでこちらまでお送りしました」
「え? 強制退去? なにそれ? どういうこと? あ! 里長、ねえ説明してもらえる?」
ナーガさんが里長を見つけると説明を求めるが、その前にすることがあるんじゃないかな。
「ナーガ殿、その前に、その……身嗜みを」
「え? あ! きゃっ、どうして?」
「里長、なにか上に被せるものを持ってきてあげなよ。もう着れる服もないみたいだしさ」
「あ、ああ、分かった。用意させよう。おい、毛布かシーツか持って来てくれ」
「は、はい」
側で様子を見ていたお姉さんが家へ走っていく。

「さて。目は覚めましたか?」
「覚めたわよ! なんでこんな非道いことをするのよ!」
「非道い? まだ、ご自分がなにをしたのか分かってないようですね」
「なに? 私がなにをしたっていうの?」
「そこのゴミの山に見覚えがありますよね?」
ナーガさんが足元のゴミの山に視線を向けると、一瞬考えて、ハッとする。

「分かったようですね。まあ、ご自分で用意したゴミですしね」
「べ、別に私が用意した訳じゃないわよ。皆が持ってきた物をありがたく頂いた結果じゃないの」
「でも、それを片付けることなく放置すれば、単なるゴミですよね?」
「もう、いいわよ。さっさと部屋に戻してよ!」
「人の話聞いてます? さっき、強制退去にしたと言いましたよね」
「なに? 強制退去って? 里長、分かる?」
「えっ、あっ、いや、その……」
ナーガさんの問い詰めに焦る里長の様子になにか引っ掛かる。

「ねえ、里長はナーガさんにちゃんと言ったの?」
「あっ、そ、その……」
「言ってないんだ」
「いや、しかし、起きてこないので、中々言えず……」
「まあ、いいよ。どっちもどっちだし」
「よくないわよ。私はどうなるの?」
「里長は言ってなかったかも、知れませんが。俺は言いましたよね?」
「言ったかもね。でも、強制退去って言われても分からないんだから、しょうがないじゃない」
「え? もしかして『強制退去』の意味が分からなかったってこと?」
「そうよ。なに? そんなに不思議なこと?」
里長とマサオと三人で残念な子を見るような目つきになる。

「なに? その目は?」
「あの、ナーガさん、これを羽織って下さい。多少はマシになるかと思います」
「あら、ありがとう」
お姉さんから、シーツを受け取ると軽く体に纏い、ゴミの山から降りて来る。

「じゃあ、そういうことで。ナーガさんはもうドワーフタウンへは入れないからね。もうブレスレットは取り上げたから。怒らないでね」
「え? あ、ない」
ナーガさんが自分の左腕を見て、ブレスレットがないことに気づく。

「なんでよ。返しなさいよ!」
「返しません。ドワーフタウンへ来たいならご自分の足で頑張って下さいね」
「あら? 誰が歩いて行くと言いました? お忘れですか? 私がなにであるかを?」
「そちらこそ、鏡でご自分の体を見ましたか? その体で竜になれたとしても飛べるんですかね?」
「むっ……べ、別に竜は翼で飛ぶのではないことを知らないのかしら?」
「それは分かりますが、その体で飛べるのですかね。確かに翼ではないとしても、その重い体を浮かせるのは、キツイと思いますが」
「キーッ! ああ言えばこう言う! もう。そうよ! どうせ、今の体じゃ飛べないのは分かっているわよ!」
「だから、痩せればいいでしょ? あ、それと里の人も自力で移住する方に舵を切ったみたいですから。早く痩せて、身の振り方を決めないと、この里に一人ぼっちで過ごすことになりますからね。詳しくは、そこの里長に聞いて下さい。あと、ナーガさんが連れてきた黒い虫もちゃんと退治しないと非道いことになりますよ」
「なによ、黒い虫って! なんでもかんでも私のせいにしないでちょうだい!」
ナーガさんが、その場でダンダンと地団駄を踏むと、ゴミの山から『ザザザ~』と黒い波が里の家に向かっていくと、あちこちから『きゃ~』と叫び声が聞こえたり、その場で立ち竦んだり、失神する人も現れた。
「『あ~あ』」
「じゃ、頑張ってね」
「ケイン、待て! このまま放っておくのか!」
「それを俺に言うの?」
「お前が里に持ち込んだんだろうが!」
「俺は言いましたよね? なにも対処しないなら、ゴミごと引き取ってもらうと。お忘れですか?」
「ぐぬぬ……確かに言ったかもしれん。だが、これは非道いのではないか!」
「だから、それはそこの駄竜と、それを放ったらかしにしてきた里長のせいでしょ。じゃあねマサオ行こ」
ゲートをドワーフタウンの住宅地に繋ぐとマサオと一緒に潜る。
後で悲鳴が聞こえていたが、俺のせいではないので放置だ。
「恨むぞ、ケイン」
「里長、それはダメだ。俺らの責任でもあるんだし」
「ダリル。だが、これはあまりにも……」
「とりあえずは事態の収集に努めよう。いざとなれば里を捨てることも考えないとな」
「ダズ、お前はケインに世話になる話があるからいいが、他の者はどうする?」
「ケインも、自力でする分には頑張れと言ってくれたじゃないですか。なら、それぞれに頑張るしかないでしょう」
「マーサ、お前まで」
「里長、くよくよしないで前向きに考えましょう」
「ナーガ殿……誰のせいでこうなったと思っているんじゃ!」
「え? 私?」
周囲で、様子を見ていた者の視線がナーガさんに集中する。
「あれ?」
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