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◆船酔い寸前でした

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ガンツさん達と昼食を食べ終わると、フェリーの建造に取り掛かる。
船底の成形が終わり、次はエンジンの配置場所を決める。
「なあ、スクリューは一つでいいのか?」
「試作品も兼ねているし、最初は一つにしようよ。もし、いろんな不満が出てきたら、その時にやっちゃおう。最初から色々盛り込むと失敗しそうで怖いからさ」
「まあ、ケインがそういうなら仕方ないか」

エンジンの位置を決めると、今度はエンジンの設置角度を決めていく。
「これでいいな。じゃ、スクリューとシャフトをエンジンに繋ぐぞ」
「うん」
そう言って、船尾の方に向かいインベントリからスクリューとシャフトを取り出すとそれらを接続し、船尾の穴からシャフトねじ込む。
「ガンツさん、シャフトを差し込んだよ。そっちの接続よろしくね」
「はいよ」
ガンツが船尾から差し込まれたシャフトを受け取り、エンジンへと接続する。
「繋いだぞ~」
「分かった」
船尾から、ガンツさんの元へと戻る。
「少しエンジンが小さいような気がするが、いいのか?」
「まあまあ、試作品だし。もし進まなかったりしたら、その時は載せ替えればいいよ」
「楽天的だな~まあいいか。とりあえず、これで上は塞げるな」
「そうだね、デッキ部分をさっさと作って、操舵室も早く作らないとね」
「そろそろ、あっちの話が終わりそうだからか?」
「そうだね。セバス様から連絡があるかも知れないしね」
「そうなったら、この試作品開発は終わりか?」
「え? なに言ってんの、これで乗り付けるに決まってるじゃん」
「フハハ、そうこなくちゃな。なら、ペースを上げて行こうかの」

二人がかりでデッキ部分を作成し終わり、次は操舵室を含む二階部分に取り掛かり、まずは柱と階段を作り二階部分の足がかりとする。ガンツさんと互いに向き合う柱の上に立つと間に鉄骨を渡し溶接する。その作業を数度繰り返し二階部分の基礎が出来上がると船首に近い位置に操舵室を用意する。残りの床部分には鋼板を張り、その上に木材でデッキ部分を作成する。

「なんとかここまで出来たな」
「うん、後は操舵室からの制御が出来れば試運転も出来るね」
「おう、そうだな。さっさと終わらせてしまおうか」
ガンツさんと操舵室に篭り、操舵輪、制御盤を整備し各部位と接続していく。

「ケインよ、車の乗り降りはどうするんじゃ? 船尾は開いて港の岸壁に下ろせるようにしているが、船首は特になにもしてないじゃろ?」
「それは、船尾のハッチから入って、目的地に着いたらバックで出てもらうつもりだからね」
「なんか不便な気がするのはワシだけか?」
「まだ、試作品なんだからしょうがないよ。理想は船尾から入って、船首からそのまま出られたらいいんだけどさ、それをすると船首部分が複雑になりそうだから、やめたんだ。今はとりあえずの試作品を動かすのが先だと思ってね」
「まあ、そう言われるとそうじゃの」
「もう少し船体が大きくなれば、車を乗せるスペースも二層、三層と増えるだろうし乗り降りの方法も変わって来るだろうね」
「なら、試作品を完成させんとな」
「だよね」

残りの諸々の作業を終わらせ、塗装も終わらせると魔法でじっくり乾燥まで済ませる。
「これで、浮かべられるかの?」
「うん、いけるね。やる?」
「ああ、もちろんじゃ!」
「じゃあ、港に行こうか」
「ああ、頼んだぞ」
『なに? 終わったの?』
「終わったよ。マサオも行く?」
『もちろん!』
出来上がった試作品のフェリーをインベントリに収納すると、港へとゲートを繋ぎ皆で揃って潜る。

岸壁の端まで行くと周囲に誰もいないこと、走行中の舟がいないことを確認するとガンツさんと向かい合う。
「じゃ、出すよ。浮かなかったらゴメンね」
「まあ、それはないじゃろう。ほれ、さっさと出してくれ」
「分かったよ。じゃ、出すね」
インベントリから試作品フェリーを出すと海上へ『バシャン』と水音と共に現れる。

「ケイン、出したはいいが、どうやって乗る?」
「ちょっと、離れすぎたね。なら、こうやって乗ろうか」
その場で試作品フェリーの二階デッキ部分に繋ぎ、ガンツさん達と潜る。
「よし! 動かすぞ!」
「あ、ガンツさん」
「なんじゃ、一番はワシじゃ」
「もう、いいよ。じゃ、ちょっと軽くこの辺を回ったら、船尾を岸壁につけてね」
「ふふん、お安い御用じゃ。見とれ!」
ガンツさんがエンジンを始動すると排気音が聞こえて来る。
「とりあえずはエンジンは動いたな」
「まずは……だね」
「なら、次は前進じゃな」
そう言ってガンツさんがスロットルを『前方向』へ倒すと、船尾でスクリューが回りキャビテーションが発生し、ゆっくりと動き出す。

「進んだか?」
「うん、ゆっくりだけど進んだよ」
「なら、エンジンとしては問題なしだな」
「うん、二つ目はクリアだね」
「よし、なら次はもう少しだけ速くしてみるな」
「頼んだよ」
「おう!」
ガンツさんがそういうと、右手でエンジンの出力を上げていく。
「ふふん、意外と気持ちいいな~こうなると、気分が乗ってくるが、もう一つ何かが欲しいの~」
「ならさ、足元にあるのを踏んでみなよ」
「足元? なんじゃ? この黒い丸っこいのか?」
「そう、それ!」
「まあいいが……踏むぞ」
『ボォォォォ~』
「な、なんじゃ?」
「汽笛だよ。魔導列車にもあるでしょ?」
「おお! あれか。どれ、もう一度」
『ボォォォォ~』
「いいな~」
「じゃ、ちょっと左右に旋回してみてよ。あと、座礁しないようにね。まだ、その辺の警告機能は付けてないからさ」
「ああ、分かった分かった。まずは旋回じゃな。ほれ!」
ガンツさんが操舵輪を右に思いっきり回すと、船体が右に傾きながら旋回していく。
「ガンツさん! 回しすぎ! これで車を載せていたら、全部海の中だよ」
「悪りぃつい調子に乗ってしまったみたいじゃな」
「もう、『つい』じゃないでしょ!」
「じゃ、今度はゆっくり左に旋回じゃな」
今度は思いっきり回すようなことはしなかったので、船体が傾くこともなくゆっくりと左へと回る。

なんとか海上での確認を終え、今度は船尾からの岸壁への接岸を残すのみとなった。
「いい、ガンツさん。俺が合図したら逆回転だからね。今は後進だから、合図したら前進だからね。分かった?」
「分かった、分かったって。いいから、ここは任せて、後ろを見といてくれや」
「もう、一応ここにもモニターを用意しているんだから、頼んだよ」

少し不安は残るがガンツさんを操舵室に残して、船尾に位置取り接岸の様子を確認する。
「ガンツさ~ん、もう少しゆっくりね~」
「はいよ~」
少しだけ速度が落ちるのを確認し、岸壁まで残り約十メートルとなったところで、ガンツさんに合図する。
「ガンツさ~ん、今!」
「おう!」
一瞬、船体が止まったような感じになるが速度がガクッと落ちたのは確認出来た。
もうそろそろ止まりそうというところまで船体の速度が落ちたところで試作品フェリーのスクリューが停止する。
ガンツさんがモニターをちゃんと確認してたみたいだ。
そのまま、ゆっくりと進み岸壁と接触するまで約五十センチの間を残して試作品フェリーが停止する。
「ガンツさん、お疲れ様。今、係留ロープを張るから待っててね」
「おう、あ~疲れた。緊張するな~」
『ガンツ、終わり? 終わったのなら、降りていいの?』
「まあ、待て。今、ケインがこの船体を止めるためのロープを用意しているから、それが終わったら降りてもいいぞ」
『分かった』

係留ロープを張り終えたので、ガンツさんに船尾ハッチを開けるように頼む。
「開けるぞ~」
「いいよ~」
『ガコン』と音がして、船尾ハッチがゆっくりと岸壁に向かって倒れてくる。
やがて岸壁の地面と設置すると、機械音が止み操舵室からマサオとガンツさんが降りて来るのが見えた。
「なあ、この船尾ハッチは、この辺に操作盤があってもいいんじゃねえか?」
「そうだね、じゃあ後でつけよう」

気付いた問題点を出し合っていると、携帯電話の着信音が鳴る。
「きたみたいだな」
「そうだね。じゃ出るね。 もしもし……」
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