上 下
203 / 468
連載

◆いつかは説明が必要でした

しおりを挟む
翌朝、目を覚まそうとして、体を動かそうとするが何故か動かない。
「もしかして、これが金縛りか?」
そんなことを考えていると、『グガ~』と、いびきっぽいのが腹の方から聞こえる。
寝呆けていた意識が覚醒して、段々と周りの状況も分かってきた。

ここは俺の部屋で、俺はベッドの上で寝ていた。
なら、この金縛りっぽいのは何か。
その答えが、俺の腹に覆いかぶさる様にイビキをかきながら気持ち良さげに寝ていた。

「金縛りじゃなかったのは助かったけど、これはこれでどうなのよ。なあ、マサオ」
『グガ~ゴォ~』
「イビキで返事かよ!」
『スピ~』
「今度は鼻息ですか。いいから、起きろよ! マサオ!」
『グガ~』
「どうしても、起きないと……なら、しょうがないよな『電撃』」
『アバババババ……痛い……ケイン、朝からなにするんだよ。』
「『なに』だと、それはこっちが言いたいわ! なんでベッドの上で寝てるんだよ。お前は床だろうが!」
『あれ? 本当だ。不思議だね~寝返りうったら、こうなったのかな?』
「また、見え透いた嘘を……どうやって、寝返りで床からベッドに上がるんだよ! しかも俺の上に寝やがって」
『本当に不思議だね~』
「いいから、そろそろどいてくれ。トイレにも行けやしない」
『お、悪いな。今どけるわ』
「もう、今日は忙しくなりそうだってのに」
マサオをどかしてやっと、ベッドから下りることが出来た。
「マサオも飯食うんだろ。ちゃんと起きろよ」
『もう、しょうがないな~』
「いや、無理にとは言わないから。ご自由に~」
『あ、ちょっと待てってば! ほら、起きたから』
「なら、さっさと来いよ」
『おうよ』
マサオと一緒に一階へと下りる。

「マサオは顔は洗わないの?」
『ハァ~なんで俺がそんなこと』
「なら、せめてうがいだけでもすませなよ」
『え~面倒なんですけど』
「いやなら、飯抜き」
『あ~もう、分かりました。やりますよ。やればいいんでしょ』
「いちいち、ぶ~たれないでくれるかな~」
マサオを宥めすかして口を濯がせ、俺も顔を洗ってうがいをすませると朝食が並べられている……ハズのテーブルに着くが何もない。
「え~と、今日は誰が当番だったかな」
父さんが周りを見渡し、今日の朝食当番が誰だったかを確認する。
「俺じゃないよ。俺は昨日したし。クリス兄さんは?」
「僕はその前日だね。サム兄さんが、その前日だったよね」
「そう、俺はその日だった。と、なると順番的には父さんだよね?」
「待てよ! 俺は、サムの前だろ。なら、今日は俺、サム、クリス、ケイン、で俺になるだろ。で、ケインは昨日だったと。じゃあ……俺か~」
「はい、父さん俺達も手伝うから早くすませよう。母さんも、そろそろ起きるんでしょ」
「いや、母さんはちょっと遅れるかな」
「え~どうして、何かあったの?」
「いや、クリスにはちょっと説明しづらいというか……その、なんだ」
「ハァ~クリス兄さん、母さんは父さんのせいで今日は疲れているっぽいから、俺達だけですませよう。母さんの相手はお願いね。父さん」
『うへぇやっぱり我慢出来なかったみたいだな。親父さん』
「マサオ、俺だけが悪いんじゃないぞ。どっちかというと「父さん、そういうのは後でいいから」……ああ、すまん」
「マサオもその辺で。あまり父さんを揶揄わないで」
『おう、この辺にしといてやるか』

父さんは母さんの世話を任せて、俺とクリス兄さんで朝食の準備を済ませる。
サム兄さんは食器の準備をしてもらい、マサオは……じっとしていてもらう。
動くと毛が散るからね。

何とか朝食の準備を終え、母さんを除いた皆んなで朝食を済ませる。
「明日はサムだな」
「父さん、何言ってんの。今日は皆んなで準備したんだから、父さんは明日もだよ」
「ケイン、それはちょっとひどくないか?」
「だって、『昨夜はお楽しみ』だったんでしょ? なら、自業自得じゃない」
「お前、どこでそんなセリフを! 俺はそんな風に育てた覚えはないぞ」
「うん、そうだよ。でも、この歳になれば親以外からも色んなことを教われるんだよ」
「そうか~そうだよな~ケインだしな~そういうこともあるよな~」
「そういう訳で、明日の朝食当番は父さんに決定! はい、拍手~」
「「「パチパチパチパチパチ」」」
「待て、この順番は無効だ!」
「もう、往生際が悪いよ。父さん」
「だが、マサオはどうなんだ? あいつだって当番に入れるべきだろう」
「父さん、本気で言ってる?」
「ああ、俺は本気だ」
「じゃあ、仮にだよ。仮にマサオが作ったとして、その辺を歩き回った前足で触った食材を口に入れることが出来る?」
「ぐっ……出来……ない。負けた! ケインにしてやられた!」
「ちょっと、何人聞きの悪いこと言ってんの! 全部父さんが悪いんでしょ。何で悪いかをクリス兄さんに説明させるよ? それでもいいの!」
「わ、悪かった。調子に乗りすぎた。だから、それだけは……」
「ねえ、ケイン。なんでそこで僕の名前が出て来るの?」
「そこは、後で父さんに聞いてみて」
「おい、ケイン。約束が違うぞ!」
「父さんに説明しろとは言ってないでしょ。ただ、クリス兄さんが聞きたいって言ってるだけじゃない」
「一緒じゃないか! 結果的には一緒のことだろ。おい、ケイン!」
「じゃ、俺は工房に行くから。あ、王都に行ったら連絡するからね」
『待て、ケイン。俺も連れて行けって』
ゲートを工房に繋いで潜っていく。
その後ではクリス兄さんが父さんに問い詰めていた。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。