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◆やっぱりありました

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「おう早かったなケイン。アルガン、お尻は大丈夫か?」
「親父、見てたんなら止めてくれよ。」
「何じゃ情けないの~」
「アルちゃん、お父さんは心配してたのよ。ケイン君にも怒ってたし。」
「親父ぃ…」
「ガンツさん、俺が怒られるのに心当たりがないんだけど?」
「本気で言ってるのか、ケイン?」
一瞬考えて「…ない!」と返す。
「な、ケインお前は「ケイン君、この人はねケイン君がアルちゃんのお尻を蹴った事に怒ってるのよ。」…ア、アンジェ。」
「え~自分はあんなに殴っといて!」
「そうよね、呆れちゃうわよね。でも、他の人には手を出されたくはないのよ。」
「それだと、俺が困るな。」とダインさん。

「何でじゃ?」とガンツさんが聞けば「あんたも職人なら分かるだろ?言葉よりも先に手が出る場合もある。だろ?」とダインさんが返す。
「ぐっ確かにそれはそうじゃ。じゃが「自分は良くて他人はダメか?あんたも弟子の一人や二人は殴って来たんだろ?」…そうじゃった。そうじゃな、自分の息子となると…つい。」
ガンツさんがアルガンさんを一瞥し「遠慮なく殴ってくれて構わん。どうか鍛えてやってくれ。」とダインさんに頭を下げる。
「おし、親の許しも出たな。まあ、許しが必要な歳でもないがな。ははは、まあ明日っからよろしくな。」
「はい!」とダインさんが差し出した右手を両手でガシッと握り返すアルガンさん。
「アルちゃん立派になって…うっうぅぅぅ。」
「お袋、ちゃん付は止めてくれって…後、泣くような事じゃないから。」
「でも…でも、やっと仕事に就いてくれるなんて…ぐすっ。」
「分かったから、今までごめんな。」
「アルちゃん…」

そこへ「村長ここでしたか。夕食の準備が整いました。」と伝えられる。
「おう、出来たか。じゃ、行こうか。」
「あ、その前にリーサさんに言っとかないと。」
「そうじゃな、早く連絡してやれ。」
「うん、ちょっと待ってね。」
リーサさんに電話を掛け、夕食をアズマ村の村長にご馳走になるので俺の分はいらないと伝える。

「親父、『リーサさん』って誰?たまにお袋からも聞こえるけど。」
「ああ、アイツのケインの婚約者じゃよ。」
「ええ、ケイン君って婚約者がいるの?」
「そうじゃ、ワシらと同じくらい生きとるエルフじゃ。」
「俺にもいないのに…あんな歳で。」
「まあ、お前は気長に頑張れ。まずは仕事じゃな。」
「親父、まあそうだよな。俺、頑張るから。」
「おう、頑張ってくれ。」
「だから、俺に紹介してくれな。」
「…お前、そこは自分で頑張ると事じゃろ。情けない。」

下らないやり取りをしている内にダルクさんの家に着く。
「さあ、中に入ってくれ。ん?ダイン、お前はどうした?」
「へ?俺もお呼ばれしようと思って来たんだけど…ダメ?」
「ふぅ…まあいいか。すまんが一人余分な者が着いて来たとカミさんに伝えてくれるか?」
「分かりました。」と、先ほど伝言を頼んだ若者が小走りで奥へと向かう。

家の中を進み食堂へと案内されるとそこにはダルクさんの家族らしき人が並んでいた。
「いらっしゃい。私はダルクの妻でキャロルです。こちらが長女のセシリアで、隣が長男のアレックスです。ほら二人ともご挨拶しなさい。」
「セシリアです。」
「アレックスです。」
「こんばんは、ケインです。」
「ワシはガンツ、隣が妻のアンジェで、その横が息子のアルガンじゃ。」
「「初めまして。」」
「俺も一応するのかな?俺は「ダインさん、本気?」…セシリア、そんな睨むなよ。急に来たことは謝るからさ。ほら、俺も一人暮らしだから人が作ってくれる飯が食いたくてな。」
「(言ってくれればいつでも作りに行くのに…)」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもないわよ。」
「ほら、座って。あなた達も座って下さい。」
「「「「はい。」」」」

皆が席に着きテーブルの上に料理が並べられていく。
「うわぁご飯に味噌汁、それにこれは煮物だ。こっちは漬物で、これは?」
「それは山菜よ。あまり街の人は食べたことはないでしょ?」
「言われてみれば、そうだ。懐かしい~」
「懐かしい?どこかで食べたことがあるのかしら?」
「あ、いえ。どこか懐かしく感じる料理だなと思って。」
「ああ、そういうことなのね。ほら、遠慮しないで食べて、食べて。」
「ええ、では遠慮なく。ん?」
「あら、今度は何かしら?」
「いえ、その手に持っているのは?」
「ああ、これのこと?」とキャロルさんが手に持つ『箸』を指す。
コクリと頷くと「これは『箸』よ。この村ではいつの頃からか使っているわ。」と説明してくれた。
「興味があるなら使ってみる?」
「是非!」と俺が言うと控えていた人が箸を俺の前に置いてくれた。
「持ち方は分かるかしら。」
「多分、大丈夫です。」と箸を手に持ってみせる。
「あらまあ、なかなか上手ね。」
「ありがとうございます。」と返事をすると箸を使って料理を口に運ぶ。
「ケイン、お前に苦手なことはないのか?」とガンツさんが聞いてくる。
「本当、不思議よね。ケイン君は。」とアンジェさん。
「そう?でも慣れれば便利だよ。フォークやスプーンと違って一つで済むからね。」
「ほう、それほどか。」
「だって、ほら。切る刺す掴むがこれだけで出来るんだよ。」
「じゃが、練習が相当必要だと思うがな。」
「まあ、指先の訓練と思えば職人にとってはいい訓練でしょ。」
「なるほどの。じゃあワシも帰ったらやってみるか。」
「でしたら、皆様の分のお箸をプレゼントしましょう。ねえ、あなたいいでしょ?」
「ああ、構わんぞ。俺も今日は散々もらったからな。」
「あら、何を頂いたのかしら。そういうのはちゃんと言って頂かないと後で返礼とかで私が困るんですから。」
「あ、ああすまん。後で言おうと思っていたんだ。本当だぞ。忘れていた訳じゃないからな。」
「もしよろしければ、ここにお出ししましょうか?どこか隅っこに置かせてもらえればいいんですが。」
「ケイン、それって倉庫に置いたヤツか。」
「ええ、ダリルさん。冷蔵庫です。」
「だが、それだとこちらがもらい過ぎだ。バランスが取れないぞ。」
「いいですよ。後でゆっくりと返してもらいますから。」
「いや、その笑顔はダメだ。よくない笑顔だ。だろガンツさん。」
「まあ、そうじゃが。ここは貸しにしといたがええぞ。後になって大きくなる可能性もあるがな。」
「それはそうだが…」
「あなた、お話が見えないんですけど?」
「ああ、それは食事が終わった後に現物を見て貰った方が早いから後で説明するから。」
「本当に?」
「ああ、本当だ。第一ケインがいるんだから嘘も何もないだろう。」
「それもそうですね。」

「あら、この煮物美味しいわね。これにもあのお酒が使われているのかしら?」
「ええ、ここではほとんどの煮物にお酒を使っているんですよ。」
「もし、よければ何ですけど、後で作り方を教えてもらってもいいですか?」
「そんなことくらい、いつでも言って下さい。」
「ありがとうね。じゃあ、ついでにもう一つ不作法を先に謝らせてね。」
「「「「え?」」」」
「貴方、ここのお料理をカメラで撮っといて。」
「アンジェ、それはちょっと不作法が過ぎないか?」
「だから、先に謝ったでしょ。ほら、早くして。」
「分かった。ったく『解除』」とガンツさんが呟きカメラを取り出すとテーブルの上の料理をカメラに収め、ついでとばかりにそこにいた人達も収める。
「ガ、ガンツさん、それは?」
「何をなさったの?」
「これはカメラと言ってな。あ~騒がしといて何じゃが、先に食事を済ませてからでも構わんか?」
「そうだな、ガンツさんにも聞くことがいっぱい出来たな。」
「残念じゃが、これもケインじゃぞ。」
「「「「「「えっ?」」」」」」と皆んなの視線がケインに集中する。
「ちゃんと説明はするので、先に食べていいですか?」
「あ、ああケイン君。そうだな、ほら、皆んな箸が止まっているぞ。」
「そ、そうよ。ほら貴方達も食べなさい。」
「「はい。」」
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