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◆盛大な勘違いでした
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家に帰ると、家の中が妙に明るい。
「ただいま~何か家の中が明るいね。何かしたの?」
「おかえり、ケイン。私は特には何もしてないが。」
「でも、妙に明るいよね。」
「そりゃ、赤ん坊がいるんだから、そう感じても不思議ではないでしょ。」
「母さん!もう起きて大丈夫なの?」
「大丈夫。ず~っと寝てなくても少し動くくらいなら大丈夫だって。産婆さんも言ってたからね。」
「でも、父さんがず~っと心配そうに着いて来てるんだけど。あれはいいの?」
「あら、父さんは四回目だと言うのに慣れないのね。」
「それだけ、マギーに惚れているんだろう。いいことじゃないか。あれがケインなら心配が違う方向に向いてしまって、とんでもない格好とかさせられてるぞ。」
「それも想像出来るわね。ならリーサさんは凄く苦労するのね。」
「それはもう決定なのか?」
「さあ?何なら今の内からケインを指導していけばいいんじゃない?」
「ん、それもそうか。」
「何、物騒な話をしているの。ほら、夕食なんでしょ。」
「あ~私の台詞なのに~」
母さんは寝室へと戻り、俺はリーサさんと一緒にテーブルへと向かう。
「リーサさんは本当に料理が上手だよね。」
「そうだな、ケインが羨ましくなる。」
「サム兄さんは料理覚えないの?」
「俺か?俺には必要ないだろ。」
「でも、今回みたいに母さんが休まないとダメな時はどうするのさ。」
「その時は…」とチラッとリーサさんを見るサム兄さん。
「ダメ!リーサさんは今回だけだから、それにサム兄さんには絶対に貸し出さないから!」
「ケイン、お前な~」
「じゃ、サム兄さんのことはモニカさんに頼むから。それでいいよね?」
「ホントに!…いや、ちょっと待て!ケインがこんなに勧めるのは何かウラがあるはず。」
「チッ」
「あ!舌打ちした。やっぱり何かウラがあるんだな。さあ言え!何を考えているんだ。」
「別にウラなんてないんだけどね、だって、あのモニカさんだよ?何が出来ると思うの。下手したらサム兄さんが教える立場になるからね。ただ、そういう時に備えて家事を覚えるのはいいことかもよ。」
「う~ん、そうか。それもそうだな。なら、憶えるのも悪くないな。」
「(ケイン、うまくのせたね。)」
「(でしょ、これで憶えてくれたらいいんだけどね。)」
「(ケイン、サムはこの調子でやっていけるのか?私にはすぐに誰かに騙される未来しか見えないぞ。)」
「(それは、これから次第だね。)」
皆んながサム兄さんの将来を心配しながら、夕食を済ませる。
リーサさんと一緒に使った食器を片付け洗い物を済ませる。
「ケイン、この食器洗浄機はすごいな。片付けがすごく楽だぞ。」
「なら、リーサさんのところにも付ける?なら、今日送った時にでも付けるけど。」
「ふふふ、それはありがたいな。後は保育所にも付けてもらえないだろうか。あそこは本当に洗い物が多くてな。食器や服とかな。」
「そうなんだ。うん、分かったよ。明日、付けに行くね。」
「ありがとう、ケイン。我儘言ってしまったかな。」
「いいよ、これくらいなら我儘とか思ってないから。」
「優しいな、私の旦那様は。」
「まだだからね、まだ…だから。」
「ケイン…」
「コホン、あ~いいかな。洗い物が終わったら、こっちでお茶でもどうかな?」
「また、父さんが邪魔する。ケイン、気にしないでいいぞ。さあ、続けて。」
「サム兄さんまで、ごめんね。ケイン。二人はここで止めとくから、遠慮しないでいいよ。」
「「出来るか~」」
リーサさんとテーブルに戻り、皆んなとお茶にする。
「明日はクリス兄さんの誕生日でしょ?何か食べたい物とかある?」
「え!作ってくれるの。なら、今まで食べたことがない物がいいかな。ほら、ケインってたまにとんでもない物を出して来るでしょ。あんな感じで頼むよ。」
「また、簡単そうな難しいリクエストを…まあ、聞いたのは俺だし。ただし…」
「「「「「ただし?」」」」」
「出した物はちゃんと食べて感想を言うこと。それだけはお願いね。」
「完食か~それは、ケイン次第だからね。約束は出来ないな~」
「じゃあお代わりはナシ!一食のみ。これでどう?」
「それは俺がイヤだ。別の条件にしてくれよ。」
「なら、サム兄さんは洗濯当番で。」
「うっ分かった。それでいい。」
「クリス兄さんは掃除当番ね。」
「何で僕まで。誕生日の主役なのに…」
「(いつも通りだから問題ないよね。サム兄さんは違うけど。)」
「「「「(サム、可哀想な子。)」」」」
「な、何だよ?何でそんな目で俺を見るんだ?ケイン、説明してくれよ。」
「で、何で産婆さんが、まだいるんですか?」
「何じゃつれないの~名前で呼んでくれてもいいんじゃぞ。」
「いや、名前なんて知らないし、興味ないですから。」
「そんなこと言うて、そこのお嬢さんの子を取り出すのかもしれんのだぞ。こんな婆さんでも優しくしといてそんはないじゃろ?ん?どうじゃ、ほれ、呼んでみ。」
「いや、だから名前知りませんから。」
「あ~そうじゃったな、ワシとしたことが。ワシの名は『ヘレン』じゃ。ほれ、教えたぞ。言うてみ。」
「分かりました、ヘレン婆さん。これでいいですか?」
「『ヘレン』じゃ、『婆さん』は余計じゃ。そこのお嬢さんより若いんじゃぞ。ヒッ。」
「ヘレン、私の旦那様を誘惑しないでもらえないか。」
「分かった、分かったから、そう睨むな。軽い冗談じゃないか。」
「それで、ヘレンさんはこんな時間まで母さんの様子を見ているということは、どこか悪いんですか?」
「ケイン、それが違うんだよ。」
「父さん、違うって?何が違うの。」
「ワシ一人暮らしじゃろ?久々にこういう家族の団欒ってのに触れたもんでな。少し懐かしくなってな。」
「あ、そうだったんですね。じゃ、母さんの体は問題ないんですね。よかった~じゃ帰りましょか。送りますよ。」
「いや、待て!そこは『淋しそうですね。』とか言って絆される場面じゃろ。何シレッと帰そうとするんじゃ。」
「いえ、もう遅くなるし、早く帰らないと寝ちゃうでしょ?」
「だから、年寄り扱いするなって言うとんじゃ!もうちょっと優しくせい!トミーお前からも何か言わんか。」
「ケイン、さっきの話なんだけどな。」
「さっきの話?」
「ヘレンさんが『家族の団欒が…』とか言う話だ。」
「ああ、それがどうしたの?」
「あれな、嘘だから。」
「へ?」
「あ、バカ!トミー何を言うんじゃ。」
「ここに来て母さんや双子の様子を見てくれているのは本当だけど、そんなのはもっと前に終わっているんだ。昼過ぎにやってきて、母さん達の様子を見た後に昼食をねだり、夕食まで食べてから帰るようになっただけなんだ。それに確かに家には一人だけど、隣には息子夫婦と孫が七人もいるんだから、淋しいってことはないんだよ。」
「ヘレンさん、それは本当なの?」
「ったくトミーも全部言わなくてもええのに。」
「ヘレンさん?」
「ああ、本当さ。家にいりゃ確かに孫が遊びに来るが、孫が帰ってしまえば一人で夕食を食べて寝るだけさ。」
「なんだ、それなら早く言ってくれればいいのに。なら、お風呂に入っていってはどうです?その後に送りますから、後は寝るだけでいいでしょ。」
「ケイン、やっぱりワシの婿にならんか?ヒッ」
「リーサさん、いいから。ありがとうね。」
「ああ、ケイン。いい雰囲気のところすまんが、ヘレンさんはもう風呂上がりだぞ。しかも一番風呂だ。」
「ト、トミー何を言ってるんだ…ワシはまだ入ってないぞ。何なら今からケインと一緒に入って、生まれてから今までどこも問題がないかちゃんと体の隅々まで見せてもらおうかと考えていたのに…ヒッ」
「ケイン、止めるな。今止めなきゃ私のケインが汚されてしまう。」
「今、ヤラれると母さんと双子が困るから、それが終わってからにして。」
「…そうか、それもそうだな。しばらくの間、寿命が伸びたな。ケインに感謝するんだな。」
「もう、リーサさん。さ、ヘレンさん、送りますから。立って下さい。」
「ああ、すまんなケイン。少しばかりリーサを揶揄い過ぎたようじゃ。」
「いいですよ、また明日もお願いしますね。何ならクリス兄さんの誕生日会も出て下さいね。」
「いいのかい?」
「ええ、いいですよ。はい、繋いだので潜って下さい。」
「ありがとうね。」
「はい、おやすみなさい。」
ゲートを閉じると「モテモテだな。」と父さん。
「ほら、そういうこと言わない。またリーサさんが暴走するから。」
「あ、そうか、そうだったな。リーサさんもすまんな。」
「ふふふ、もう少し言われてたら、明日の店主の食事は一品減らすところだったぞ。」
「へっ…危ね~」
「父さんも懲りないね。いつもそうやって母さんを怒らせたりしてるのにさ。」
「『いつも』って、クリスはそんなに父さん達が言い合っているのを見てるのか?」
「そりゃあんな大きな声で言い合っていたら聞こえるよ。」
「しかし、言い合っているつもりはないんだが。」
「俺もそう思うよ。だって、言い合うってよりはいつも母さんに言い負かされているし。本当に言い合っていたの?」
「え?だって、母さんが言い淀んでいるような声と、父さんが『ほら!』とか『どうだ!』って言ってたのが聞こえたし。」
「ク、クリスそれはい、いつ頃のことかな~」
「夜中に水を飲みに起きた時だったから、結構遅かったと思うけど。そういや最近は聞こえて来ないね。」
「(父さん、ちゃんと教えてあげてね。頑張って。)」
「(ケ、ケインは分っちゃたのか?)」
「(何となくね。じゃリーサさんが気づく前に送って行くから、サム兄さんとまとめて教えてあげてね。じゃ、よろしく。)」
「あ、待て。」
「じゃ、リーサさん。送っていくね。」
「ああ、頼む。しかし、放っておいていいのか?」
「いい!ってかリーサさんには聞かせられる内容じゃないから。早く行こう。」
「そうなのか、なら後学の為にも聞いておきたいんだが。」
「やめて!いくら何でも両親のそう言うのは聞きたくないし、聞かせたくないから。」
「ふむ、そうか。なら行こうか。」
ゲートを部屋の前じゃなく玄関の内側へと繋ぐ。
「ん?今日は部屋の前じゃないのか。」
「食器洗浄機を付ける約束したでしょ?」
「そう言えば、そうだったな。では、頼む。場所は、洗い場の近くがいいから、流しの…うん、この位置だな。ここへ頼む。」
「了解。じゃここに…はい、これで完了っと。これでいいかな?リーサさん。」
「ああ、問題ない。ありがとうケイン。今、お茶を淹れるから少し、その辺に座って待っててくれ。」
「うん、分かったよ。」
数分してリーサさんがお茶を持ってやって来た。
「ほら、まだ熱いからな。」
「ありがとう。」
「今日も色々とあったな。しかしあの双子は可愛いぞ。マギーが私に慣れとけと言いながら、色々お世話を任せてくれるから、自分の子と勘違いしそうで離れ辛くなりそうで怖いな。」
「そこまでハマっちゃったの?」
「ああ、元々里では小さい子の面倒を見てはいたが、ここまではなかったな。自分の義妹になるからかな。ふふふ。」
「もう、そういうことばかり言わないでもいいから。俺がもうすぐ八歳だから…」
「いい、ケイン言わないでいいから。忘れているかもしれないが私はエルフだ。ほんの数年なら待てるから問題ない。だが、はっきりと数字を言われるのは堪える。」
「ああ、ごめんね。」
「いいさ、ケインが謝ることじゃない。さあ遅くなる前に戻った方がいい。このままでは私も抑えが効かなくなりそうだ。」
「分かったよ。あ、明日はクリス兄さんの夕食にリクエストされた物を用意するから、一緒に帰ろうか。保育所に迎えに行くからさ。」
「久々の待ち合わせだな。ふふふ、分かった。楽しみにしてるよ。」
「うん楽しみだね、じゃ明日ね。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみなさい。」
ゲートを潜り家に戻ると、まだ父さんが説明するのに四苦八苦していて、こっちを見て助けて欲しいと訴えているが、無視してお風呂場へと行く。
お風呂から出る頃には終わっていればいいな~
「ただいま~何か家の中が明るいね。何かしたの?」
「おかえり、ケイン。私は特には何もしてないが。」
「でも、妙に明るいよね。」
「そりゃ、赤ん坊がいるんだから、そう感じても不思議ではないでしょ。」
「母さん!もう起きて大丈夫なの?」
「大丈夫。ず~っと寝てなくても少し動くくらいなら大丈夫だって。産婆さんも言ってたからね。」
「でも、父さんがず~っと心配そうに着いて来てるんだけど。あれはいいの?」
「あら、父さんは四回目だと言うのに慣れないのね。」
「それだけ、マギーに惚れているんだろう。いいことじゃないか。あれがケインなら心配が違う方向に向いてしまって、とんでもない格好とかさせられてるぞ。」
「それも想像出来るわね。ならリーサさんは凄く苦労するのね。」
「それはもう決定なのか?」
「さあ?何なら今の内からケインを指導していけばいいんじゃない?」
「ん、それもそうか。」
「何、物騒な話をしているの。ほら、夕食なんでしょ。」
「あ~私の台詞なのに~」
母さんは寝室へと戻り、俺はリーサさんと一緒にテーブルへと向かう。
「リーサさんは本当に料理が上手だよね。」
「そうだな、ケインが羨ましくなる。」
「サム兄さんは料理覚えないの?」
「俺か?俺には必要ないだろ。」
「でも、今回みたいに母さんが休まないとダメな時はどうするのさ。」
「その時は…」とチラッとリーサさんを見るサム兄さん。
「ダメ!リーサさんは今回だけだから、それにサム兄さんには絶対に貸し出さないから!」
「ケイン、お前な~」
「じゃ、サム兄さんのことはモニカさんに頼むから。それでいいよね?」
「ホントに!…いや、ちょっと待て!ケインがこんなに勧めるのは何かウラがあるはず。」
「チッ」
「あ!舌打ちした。やっぱり何かウラがあるんだな。さあ言え!何を考えているんだ。」
「別にウラなんてないんだけどね、だって、あのモニカさんだよ?何が出来ると思うの。下手したらサム兄さんが教える立場になるからね。ただ、そういう時に備えて家事を覚えるのはいいことかもよ。」
「う~ん、そうか。それもそうだな。なら、憶えるのも悪くないな。」
「(ケイン、うまくのせたね。)」
「(でしょ、これで憶えてくれたらいいんだけどね。)」
「(ケイン、サムはこの調子でやっていけるのか?私にはすぐに誰かに騙される未来しか見えないぞ。)」
「(それは、これから次第だね。)」
皆んながサム兄さんの将来を心配しながら、夕食を済ませる。
リーサさんと一緒に使った食器を片付け洗い物を済ませる。
「ケイン、この食器洗浄機はすごいな。片付けがすごく楽だぞ。」
「なら、リーサさんのところにも付ける?なら、今日送った時にでも付けるけど。」
「ふふふ、それはありがたいな。後は保育所にも付けてもらえないだろうか。あそこは本当に洗い物が多くてな。食器や服とかな。」
「そうなんだ。うん、分かったよ。明日、付けに行くね。」
「ありがとう、ケイン。我儘言ってしまったかな。」
「いいよ、これくらいなら我儘とか思ってないから。」
「優しいな、私の旦那様は。」
「まだだからね、まだ…だから。」
「ケイン…」
「コホン、あ~いいかな。洗い物が終わったら、こっちでお茶でもどうかな?」
「また、父さんが邪魔する。ケイン、気にしないでいいぞ。さあ、続けて。」
「サム兄さんまで、ごめんね。ケイン。二人はここで止めとくから、遠慮しないでいいよ。」
「「出来るか~」」
リーサさんとテーブルに戻り、皆んなとお茶にする。
「明日はクリス兄さんの誕生日でしょ?何か食べたい物とかある?」
「え!作ってくれるの。なら、今まで食べたことがない物がいいかな。ほら、ケインってたまにとんでもない物を出して来るでしょ。あんな感じで頼むよ。」
「また、簡単そうな難しいリクエストを…まあ、聞いたのは俺だし。ただし…」
「「「「「ただし?」」」」」
「出した物はちゃんと食べて感想を言うこと。それだけはお願いね。」
「完食か~それは、ケイン次第だからね。約束は出来ないな~」
「じゃあお代わりはナシ!一食のみ。これでどう?」
「それは俺がイヤだ。別の条件にしてくれよ。」
「なら、サム兄さんは洗濯当番で。」
「うっ分かった。それでいい。」
「クリス兄さんは掃除当番ね。」
「何で僕まで。誕生日の主役なのに…」
「(いつも通りだから問題ないよね。サム兄さんは違うけど。)」
「「「「(サム、可哀想な子。)」」」」
「な、何だよ?何でそんな目で俺を見るんだ?ケイン、説明してくれよ。」
「で、何で産婆さんが、まだいるんですか?」
「何じゃつれないの~名前で呼んでくれてもいいんじゃぞ。」
「いや、名前なんて知らないし、興味ないですから。」
「そんなこと言うて、そこのお嬢さんの子を取り出すのかもしれんのだぞ。こんな婆さんでも優しくしといてそんはないじゃろ?ん?どうじゃ、ほれ、呼んでみ。」
「いや、だから名前知りませんから。」
「あ~そうじゃったな、ワシとしたことが。ワシの名は『ヘレン』じゃ。ほれ、教えたぞ。言うてみ。」
「分かりました、ヘレン婆さん。これでいいですか?」
「『ヘレン』じゃ、『婆さん』は余計じゃ。そこのお嬢さんより若いんじゃぞ。ヒッ。」
「ヘレン、私の旦那様を誘惑しないでもらえないか。」
「分かった、分かったから、そう睨むな。軽い冗談じゃないか。」
「それで、ヘレンさんはこんな時間まで母さんの様子を見ているということは、どこか悪いんですか?」
「ケイン、それが違うんだよ。」
「父さん、違うって?何が違うの。」
「ワシ一人暮らしじゃろ?久々にこういう家族の団欒ってのに触れたもんでな。少し懐かしくなってな。」
「あ、そうだったんですね。じゃ、母さんの体は問題ないんですね。よかった~じゃ帰りましょか。送りますよ。」
「いや、待て!そこは『淋しそうですね。』とか言って絆される場面じゃろ。何シレッと帰そうとするんじゃ。」
「いえ、もう遅くなるし、早く帰らないと寝ちゃうでしょ?」
「だから、年寄り扱いするなって言うとんじゃ!もうちょっと優しくせい!トミーお前からも何か言わんか。」
「ケイン、さっきの話なんだけどな。」
「さっきの話?」
「ヘレンさんが『家族の団欒が…』とか言う話だ。」
「ああ、それがどうしたの?」
「あれな、嘘だから。」
「へ?」
「あ、バカ!トミー何を言うんじゃ。」
「ここに来て母さんや双子の様子を見てくれているのは本当だけど、そんなのはもっと前に終わっているんだ。昼過ぎにやってきて、母さん達の様子を見た後に昼食をねだり、夕食まで食べてから帰るようになっただけなんだ。それに確かに家には一人だけど、隣には息子夫婦と孫が七人もいるんだから、淋しいってことはないんだよ。」
「ヘレンさん、それは本当なの?」
「ったくトミーも全部言わなくてもええのに。」
「ヘレンさん?」
「ああ、本当さ。家にいりゃ確かに孫が遊びに来るが、孫が帰ってしまえば一人で夕食を食べて寝るだけさ。」
「なんだ、それなら早く言ってくれればいいのに。なら、お風呂に入っていってはどうです?その後に送りますから、後は寝るだけでいいでしょ。」
「ケイン、やっぱりワシの婿にならんか?ヒッ」
「リーサさん、いいから。ありがとうね。」
「ああ、ケイン。いい雰囲気のところすまんが、ヘレンさんはもう風呂上がりだぞ。しかも一番風呂だ。」
「ト、トミー何を言ってるんだ…ワシはまだ入ってないぞ。何なら今からケインと一緒に入って、生まれてから今までどこも問題がないかちゃんと体の隅々まで見せてもらおうかと考えていたのに…ヒッ」
「ケイン、止めるな。今止めなきゃ私のケインが汚されてしまう。」
「今、ヤラれると母さんと双子が困るから、それが終わってからにして。」
「…そうか、それもそうだな。しばらくの間、寿命が伸びたな。ケインに感謝するんだな。」
「もう、リーサさん。さ、ヘレンさん、送りますから。立って下さい。」
「ああ、すまんなケイン。少しばかりリーサを揶揄い過ぎたようじゃ。」
「いいですよ、また明日もお願いしますね。何ならクリス兄さんの誕生日会も出て下さいね。」
「いいのかい?」
「ええ、いいですよ。はい、繋いだので潜って下さい。」
「ありがとうね。」
「はい、おやすみなさい。」
ゲートを閉じると「モテモテだな。」と父さん。
「ほら、そういうこと言わない。またリーサさんが暴走するから。」
「あ、そうか、そうだったな。リーサさんもすまんな。」
「ふふふ、もう少し言われてたら、明日の店主の食事は一品減らすところだったぞ。」
「へっ…危ね~」
「父さんも懲りないね。いつもそうやって母さんを怒らせたりしてるのにさ。」
「『いつも』って、クリスはそんなに父さん達が言い合っているのを見てるのか?」
「そりゃあんな大きな声で言い合っていたら聞こえるよ。」
「しかし、言い合っているつもりはないんだが。」
「俺もそう思うよ。だって、言い合うってよりはいつも母さんに言い負かされているし。本当に言い合っていたの?」
「え?だって、母さんが言い淀んでいるような声と、父さんが『ほら!』とか『どうだ!』って言ってたのが聞こえたし。」
「ク、クリスそれはい、いつ頃のことかな~」
「夜中に水を飲みに起きた時だったから、結構遅かったと思うけど。そういや最近は聞こえて来ないね。」
「(父さん、ちゃんと教えてあげてね。頑張って。)」
「(ケ、ケインは分っちゃたのか?)」
「(何となくね。じゃリーサさんが気づく前に送って行くから、サム兄さんとまとめて教えてあげてね。じゃ、よろしく。)」
「あ、待て。」
「じゃ、リーサさん。送っていくね。」
「ああ、頼む。しかし、放っておいていいのか?」
「いい!ってかリーサさんには聞かせられる内容じゃないから。早く行こう。」
「そうなのか、なら後学の為にも聞いておきたいんだが。」
「やめて!いくら何でも両親のそう言うのは聞きたくないし、聞かせたくないから。」
「ふむ、そうか。なら行こうか。」
ゲートを部屋の前じゃなく玄関の内側へと繋ぐ。
「ん?今日は部屋の前じゃないのか。」
「食器洗浄機を付ける約束したでしょ?」
「そう言えば、そうだったな。では、頼む。場所は、洗い場の近くがいいから、流しの…うん、この位置だな。ここへ頼む。」
「了解。じゃここに…はい、これで完了っと。これでいいかな?リーサさん。」
「ああ、問題ない。ありがとうケイン。今、お茶を淹れるから少し、その辺に座って待っててくれ。」
「うん、分かったよ。」
数分してリーサさんがお茶を持ってやって来た。
「ほら、まだ熱いからな。」
「ありがとう。」
「今日も色々とあったな。しかしあの双子は可愛いぞ。マギーが私に慣れとけと言いながら、色々お世話を任せてくれるから、自分の子と勘違いしそうで離れ辛くなりそうで怖いな。」
「そこまでハマっちゃったの?」
「ああ、元々里では小さい子の面倒を見てはいたが、ここまではなかったな。自分の義妹になるからかな。ふふふ。」
「もう、そういうことばかり言わないでもいいから。俺がもうすぐ八歳だから…」
「いい、ケイン言わないでいいから。忘れているかもしれないが私はエルフだ。ほんの数年なら待てるから問題ない。だが、はっきりと数字を言われるのは堪える。」
「ああ、ごめんね。」
「いいさ、ケインが謝ることじゃない。さあ遅くなる前に戻った方がいい。このままでは私も抑えが効かなくなりそうだ。」
「分かったよ。あ、明日はクリス兄さんの夕食にリクエストされた物を用意するから、一緒に帰ろうか。保育所に迎えに行くからさ。」
「久々の待ち合わせだな。ふふふ、分かった。楽しみにしてるよ。」
「うん楽しみだね、じゃ明日ね。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみなさい。」
ゲートを潜り家に戻ると、まだ父さんが説明するのに四苦八苦していて、こっちを見て助けて欲しいと訴えているが、無視してお風呂場へと行く。
お風呂から出る頃には終わっていればいいな~
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