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◆家出がバレました

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まずは里の長に挨拶とベティさんを先頭にゾロゾロと着いて行く。
しばらく歩き、他の家に比べ一回り大きい家に案内される。
「こちらへどうぞ。」と家の中の長の待つ部屋へと案内される。

「長、お連れしました。」
「ああ、ありがとうな。リーサよ、久しぶりじゃな。覚えておるかの。」
「お久しぶりです、長。」
「ああ、さあお連れさん達も座ってくれ。」
案内されたソファへと座りリーサさんが皆んなを紹介する。

「そうか、お連れさんはリーサの職場仲間なんだな。安心したよ、領都に行ったリーサからは何の連絡もないってご両親から聞いていたからな。それにご両親はリーサが出て行ったのは自分達のせいだと悔やんでいたしな。」
「ちょっ長!その話は後で。今はほら、別の話もあるし。」
「何じゃリーサは話しとらんのか?ご両親が勧めるお見合いが嫌で飛び出したってことを。」
「「「え~お見合い?」」」
「ち、違うんだケイン、これは親が勝手に…」
「そんなことが理由で家を飛び出すなんて若かったんだね、リーサさん。」
「くくくっケイン若いと言うが家出した時にはもう「ガンツ!」…まあ後で本人に聞くんだな。」
「そうだ、リーサ。お前がいい年こいて「長!」すまん。まあ、いつまでも一人でいるからご両親は心配してお見合いをだな。」
「それは、もういいです。旦那様はここにいますので。」
「「「あっバカ!」」」
「はあ旦那だと!まさか、この髭面か!ワシよりジジイじゃないか。」
「待て!何だ髭面とかジジイとか、随分と好き勝手に言ってくれるじゃねえか。」
「貴方、落ち着いて!座って下さい。」
「ああ、アンジェすまん。だがワシはリーサの旦那じゃないぞ。」
「そうだ、いくら焦っていると言ってもこんな髭達磨は相手にせん。」
「アンジェ、ワシのことを髭達磨って言ったぞ!」
「まあまあ、貴方は素敵よ。私がそう思っているんだからいいじゃない。何て言われようと。そうよ、例え何と言われても私がいるし、そういうことを言う人には私からちゃんといい聞かせるから、ね!リーサさん。」
「…わ、悪かった言いすぎた。ガンツ。」

一旦、落ち着いたところで長が切り出す。
「で、一体誰なんじゃ?ここに連れてきているのか?」
何とか逃げようとしていたケインをリーサが腕を捕まえると「どこに行くんだ?旦那様。」と素晴らしい笑顔で周りに聞こえる様に少し大きめな声で言った…言ってしまった。

長の口が開きっぱなしになり、ベティが「嘘!」と言って立ち上がり、「まだ完治していなかったんだ。」との声も聞こえた。
再起動した長が周りに声をかける。
「皆んな、まずは落ち着いてくれ。さあ、座り直して聞こうじゃないか。リーサ、今度は本当のことを言うんじゃぞ。まずは旦那のことじゃ。」
「旦那様はいる。」
「そうか、じゃ次だ。ここにいるのか?」
「ああ、いる。」
「それはそこのジ…失礼、ご老人じゃないんだな。」
「ああ、ガンツはアンジェの夫だ。私のじゃない。」
「そうか、ではここに連れて来てもらえるか。まだ外に待たせているんだろ?」
「長よ、この里に来たのはこの面子だけだ。他にはいない。」
「そうか、そうなんだな…そうかぁ完治していなかったかぁ。」
「リーサさん、さっきから『完治』って言葉が聞こえるんだけど、もう発症していたの?」
「…ああ、私は気にしていなかったんだが、周りは分かっていたみたいだな。」
「そうなんだ。」

気を取り直した長に声を掛けられる。
「で、君はケインと言うたかな。歳は幾つじゃ。」
「もうすぐ八歳になります。」
「そうか、それで君は『旦那』と呼ばれることに抵抗はないようじゃが、本当にいいのか?」
「まあ、最初は抵抗ありましたけど、今は『仮』と言うことで落ち着いています。」
「『仮』か、そうじゃな。その歳では、そうじゃな。それがいいじゃろ。」
『自分に噛み砕く様に言い聞かせている気がするが、大丈夫かな。』

「長よ、もういいだろ。ここにはケインが欲しいと言う研究者を探しに来たんだ。誰か好奇心旺盛で地道に研究してくれそうな者がいたら紹介してくれ。」
「ほう研究者か。確かに好奇心旺盛な者は何人かいるな。」
「なら、そいつらを紹介してはくれないか。頼む。」
「まあ、落ち着け。今、ご両親もここに呼んでおる。来るまでしばし待て。それに紹介と言うても、そんなにすぐには集められん。まあ少しばかり時間をくれ。」
「分かった、お任せする。それで両親を呼んだと聞こえたが?」
「ああ、もうすぐ来るじゃろ。」
『コンコン』とドアをノックする音がする。

「来たようじゃ。入ってもらいなさい。」
ドアを開け入って来たのはリーサさんにそっくりなお姉さん、お兄さんが数人でご両親らしき人は見当たらない。
「リーサさん、ご兄弟ばかりみたいだけど、ご両親はまだなの?」
「何を言っている?そこにいるだろうが。」
「初めまして、リーサのご友人方。私がリーサの父のカーティスだ。」
「母のリディアです。」
「兄のクレイグだ。」
「妹?のメアリーです。」
「弟?のデイヴ。」
「私は兄までしか知らないが、いつ増えたんだ?」
「リーサ、お前の妹に弟だぞ。そんなこと言うなよ。それにお前が出ていって三十年以上経つんだ。私達も寂しくてな。なあお前。」
「貴方ってばもう、こんなところで。それにしてもリーサは相変わらずね。」
「ああ、全くな。ほら、こいつがお前らの姉にあたる人だ。初めて見るだろうがちゃんと血のつながりはあるからな。」
「「へえ~」」

確かにリーサさんのご家族だ。
胸元もそうだが、言動がほぼ一緒で家族なんだと思える。
「ケイン、頷いているが誰も納得はしないからな。」
「…分かっちゃった?」
「分かるとも!旦那様のことだからな。」
「「「「「へ?」」」」」
「リーサ、お前…そこの少年を旦那様と言ったか?」
「貴方にもそう聞こえました?私の気のせいかと思ったんだけど…」
「リーサ、治ってなかったんだな。」
「ええと、私と同じくらいかな?ねえ何歳なの?」
「もうすぐ八歳になります。」
「ああ、僕もうすぐ六歳!近いね。」
「私が十歳だから、年下のお兄さんてことになるの?」
「そうだ、ケインが私の旦那様だ。」

「そうなのね、それでリーサはこの里に逃げて来たのね。ごめんね、ケイン君。怖い思いさせて。待っててね、もうすぐお家に帰してあげるから。」
「ああ、それまではもう少し待っててくれ。家の場所は言えるかな?」
「ええ、家は領都にあるので大丈夫ですよ?」
「そうか、リーサが行っていた領都までは大分時間が掛かるな。こっちから手紙を出してやりとりするにしても半年はかかりそうだな。次にこの里による隊商に頼むのも心細いな。どうしよう。」
「父さん、身内から犯罪者を出すのはまずいよ。俺もまだ結婚してないんだからな。」
「じゃあ埋めてなかったことにする?」
「「「メアリー!」」」
「それは最後の手段だ。ですよね、長。」
「じゃな。ってお前らはさっきから、何を言うておる?」

「え?何ってリーサの病気のせいでこの子は誘拐されてここまで来たんでしょ?」
「なら、そこのドワーフはどう説明する?」
「ああ、いましたね。」
「(視界にも入っていなかったのか。)」
「(それだけリーサさんが心配だったのよ。)」
「(それもそうか。)」

「それにそこの少年はリーサの病気も受け入れておるようじゃぞ。」
「「「え~本当に!」」」
「父よ、このケインなる少年は私の好みにピッタリなんだ。見かけは少年なのに中身はその辺の年寄り以上の枯れ具合でな。」
「「「そっちもあったか…」」」
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