139 / 186
第3章 ただいま、放浪中
第14話 おもい
しおりを挟む
「り、リーアさん、ちょっととばしすぎではないでしょうか……」
「あら、そうですか? でも、いつかは知られることですし」
「でも、そう言うのは互いの同意があって初めて成り立つモノだと思うのですが……」
「私では不服でしょうか?」
「あ、いえ、そうではなくて……」
「私に至らない点があるのでしたら、どうかこの場で仰って下さい!」
「あ……あかん」
リーアさんのトンデモ発言にそれはどうかと俺が言えば、リーアさんは瞳をウルウルとさせながら「なんでもするから捨てないで!」とでも言いたげに俺を上目遣いで見てくる。
そしてリーアさんと腕を組んでいるだけでもガルガルとした目付きで俺を射殺すかのように見ているエルフ達がリーアさんを泣かせたとでもなれば、それぞれの武器を持つ手にグッと余計な力が入るのが見ているだけでも分かる。
「えっと、皆さん落ち着いて下さいね」
「うるさい! 大体お前はなんなんだ!」
「そうだ、そうだ!」
「いきなり現れて何様のつもりだ!」
「何様って……言うなれば客様?」
「……それがどうした!」
「そうだ! 客だからなんだっていうんだ!」
「なんだって言われてもなぁ……あ!」
「「「あ?」」」
エルフの皆さんに散々罵倒されるが、俺はここで大事なことを思い出した……と、いうか自分でもこれを言ってしまうと後戻りできなくなりそうでイヤになる。でも、興奮しているエルフ達を落ち着かせるというか、意気消沈させるにはこれしかなさそうなのも確かだ。
だから、俺は意を決してある言葉を口にする。
「例え俺が何者であろうとリーアさんが俺を夫にしたいほど好きなのは何事にも代えがたい事実でしょ」
「あら、うふふ」
「「「ぐ……」」」
俺の言葉にリーアさんがやっと受け入れてくれるのですねと更に身体を密着させてくれば、それを見たエルフ達、特に男……皆が中性的だけど多分男だと思う……達が血の涙を流すんじゃないかと思えるくらいに唇を噛み締めているがまだ武器は手放さない。
「り、リーア様……どうか、考え直してはもらえないのでしょうか」
「そ、そうです! そんな平たい顔のどこがいいと言うのですか!」
「エルフはエルフ同士が一番です!」
「ハァ~……情けない」
「「「え?」」」
さっきまで嬉しそうに俺の腕に顔を寄せていたリーアさんがエルフ達の言葉に急に真顔になり情けないと嘆息しながら口にする。
「り、リーア様……情けないとは?」
「ハッキリと口にしないと分からないのですか?」
「……申し訳ありませんが、リーア様のお考えを我々に推し量ることは少々難しいかと」
「ハァ~そんなだからあなた達は……」
「「「……」」」
リーアさんの真意が分からないとリーアさんに反論する様に噛みついてみせるがそんなエルフ達にリーアさんは頭を振りながら更に嘆息する。
「いいですか。エルフで十分だと言うのなら私もこの歳まで一人でいることはなかったでしょう。それくらい分からないのですか?」
「で、ですが……だからと言ってヒトである必要もないのではないでしょうか?」
「ハァ~いいですか。先程も言いましたが私がこの歳まで一人でいたのには、何もエルフだけを対象に絞っていたからとか、そういう理由ではありません」
「だったら……」
「ええ、そうです。この歳ですからそれなりに出会いはありましたよ。それなりにね」
「「「……」」」
「ですが、私はこれほど精霊に愛されている方を見たことがありません。それに……」
「「「それに?」」」
「いえ、今は言いません。ですが、直に分かるでしょうから、今は言いません」
「「「……」」」
「あ、これだけは今、言っておきましょう」
「なんでしょうか?」
「ヒロさんは私を普通の女性として扱ってくれます」
「「「え?」」」
リーアさんは俺のことを色々と持ち上げてくれているが、一番のポイントは今は言わないと口を閉ざすが最後に「私を普通に扱ってくれる」と嬉しそうに話すのを聞いて俺の方が分からなくなる。
「リーア様、それはどういう意味でしょうか?」
「ですから、そういうところです」
「はい?」
「私はリーアという一人の女性です。それは分かっていますか?」
「……分かっているつもりですが?」
「いいえ。あなた方は何も分かってくれません!」
「「「え?」」」
リーアさんが意外と大きな声でエルフ達に言うと、言われた方のエルフは驚いてしまう。
「リーア様、何を仰っているのでしょうか?」
「ハァ~あなた方は私を神として崇めているのは分かります。そしてそれがしょうがないことだとも」
「ですから、リーア様と「ですから、それがイヤだったのです」……え?」
これだけ多くのエルフ達から神様と崇め奉られているのに何が不満なのかと俺も思ったけど、リーアさんはまた頭を振り「違うのです」と言う。
「リーア様?」
「私は皆様と気軽にお喋りを楽しみたかったのです」
「え?」
「ですが、あなた方は私を腫れ物の様に扱い、決して目を見て話そうとはしてくれませんでした」
「いえ、それは……」
「最初の頃は私もあなた方と一緒に暮らそうと話しかけたりとかしていましたが、あなた方の態度が変わることはありませんでした」
「「「……」」」
「なので私は……この世界樹の上へと逃げるしかありませんでした」
「「「……」」」
「それでもあなた方は私の身を案じるどころか、手を合わせて祈るばかりで……」
「それは……」
「そんな時、ヒロさんは突然現れました。そして私に対しなんら臆することなく普通に接してくれました。それに私が何者かを伝えても『それが何か?』と言った感じで態度を変えることもありませんでした! そして極めつけが……彼の周りを嬉しそうに漂う精霊達です!」
「「「……」」」
リーアさんの力説にエルフ達はただ呆然と立ち尽くし、手に持っていた武器を落としたのに気付かない程放心していた。
「ふふふ、これが私の隠すことのない本心です」
「……」
「ヒロさん、どうしましたか?」
「ちょっと重すぎるかな……」
「では、私と二人で持てば軽くなりますね。うふふ」
「……いや、却って重くなるから」
「あら、そうですか? でも、いつかは知られることですし」
「でも、そう言うのは互いの同意があって初めて成り立つモノだと思うのですが……」
「私では不服でしょうか?」
「あ、いえ、そうではなくて……」
「私に至らない点があるのでしたら、どうかこの場で仰って下さい!」
「あ……あかん」
リーアさんのトンデモ発言にそれはどうかと俺が言えば、リーアさんは瞳をウルウルとさせながら「なんでもするから捨てないで!」とでも言いたげに俺を上目遣いで見てくる。
そしてリーアさんと腕を組んでいるだけでもガルガルとした目付きで俺を射殺すかのように見ているエルフ達がリーアさんを泣かせたとでもなれば、それぞれの武器を持つ手にグッと余計な力が入るのが見ているだけでも分かる。
「えっと、皆さん落ち着いて下さいね」
「うるさい! 大体お前はなんなんだ!」
「そうだ、そうだ!」
「いきなり現れて何様のつもりだ!」
「何様って……言うなれば客様?」
「……それがどうした!」
「そうだ! 客だからなんだっていうんだ!」
「なんだって言われてもなぁ……あ!」
「「「あ?」」」
エルフの皆さんに散々罵倒されるが、俺はここで大事なことを思い出した……と、いうか自分でもこれを言ってしまうと後戻りできなくなりそうでイヤになる。でも、興奮しているエルフ達を落ち着かせるというか、意気消沈させるにはこれしかなさそうなのも確かだ。
だから、俺は意を決してある言葉を口にする。
「例え俺が何者であろうとリーアさんが俺を夫にしたいほど好きなのは何事にも代えがたい事実でしょ」
「あら、うふふ」
「「「ぐ……」」」
俺の言葉にリーアさんがやっと受け入れてくれるのですねと更に身体を密着させてくれば、それを見たエルフ達、特に男……皆が中性的だけど多分男だと思う……達が血の涙を流すんじゃないかと思えるくらいに唇を噛み締めているがまだ武器は手放さない。
「り、リーア様……どうか、考え直してはもらえないのでしょうか」
「そ、そうです! そんな平たい顔のどこがいいと言うのですか!」
「エルフはエルフ同士が一番です!」
「ハァ~……情けない」
「「「え?」」」
さっきまで嬉しそうに俺の腕に顔を寄せていたリーアさんがエルフ達の言葉に急に真顔になり情けないと嘆息しながら口にする。
「り、リーア様……情けないとは?」
「ハッキリと口にしないと分からないのですか?」
「……申し訳ありませんが、リーア様のお考えを我々に推し量ることは少々難しいかと」
「ハァ~そんなだからあなた達は……」
「「「……」」」
リーアさんの真意が分からないとリーアさんに反論する様に噛みついてみせるがそんなエルフ達にリーアさんは頭を振りながら更に嘆息する。
「いいですか。エルフで十分だと言うのなら私もこの歳まで一人でいることはなかったでしょう。それくらい分からないのですか?」
「で、ですが……だからと言ってヒトである必要もないのではないでしょうか?」
「ハァ~いいですか。先程も言いましたが私がこの歳まで一人でいたのには、何もエルフだけを対象に絞っていたからとか、そういう理由ではありません」
「だったら……」
「ええ、そうです。この歳ですからそれなりに出会いはありましたよ。それなりにね」
「「「……」」」
「ですが、私はこれほど精霊に愛されている方を見たことがありません。それに……」
「「「それに?」」」
「いえ、今は言いません。ですが、直に分かるでしょうから、今は言いません」
「「「……」」」
「あ、これだけは今、言っておきましょう」
「なんでしょうか?」
「ヒロさんは私を普通の女性として扱ってくれます」
「「「え?」」」
リーアさんは俺のことを色々と持ち上げてくれているが、一番のポイントは今は言わないと口を閉ざすが最後に「私を普通に扱ってくれる」と嬉しそうに話すのを聞いて俺の方が分からなくなる。
「リーア様、それはどういう意味でしょうか?」
「ですから、そういうところです」
「はい?」
「私はリーアという一人の女性です。それは分かっていますか?」
「……分かっているつもりですが?」
「いいえ。あなた方は何も分かってくれません!」
「「「え?」」」
リーアさんが意外と大きな声でエルフ達に言うと、言われた方のエルフは驚いてしまう。
「リーア様、何を仰っているのでしょうか?」
「ハァ~あなた方は私を神として崇めているのは分かります。そしてそれがしょうがないことだとも」
「ですから、リーア様と「ですから、それがイヤだったのです」……え?」
これだけ多くのエルフ達から神様と崇め奉られているのに何が不満なのかと俺も思ったけど、リーアさんはまた頭を振り「違うのです」と言う。
「リーア様?」
「私は皆様と気軽にお喋りを楽しみたかったのです」
「え?」
「ですが、あなた方は私を腫れ物の様に扱い、決して目を見て話そうとはしてくれませんでした」
「いえ、それは……」
「最初の頃は私もあなた方と一緒に暮らそうと話しかけたりとかしていましたが、あなた方の態度が変わることはありませんでした」
「「「……」」」
「なので私は……この世界樹の上へと逃げるしかありませんでした」
「「「……」」」
「それでもあなた方は私の身を案じるどころか、手を合わせて祈るばかりで……」
「それは……」
「そんな時、ヒロさんは突然現れました。そして私に対しなんら臆することなく普通に接してくれました。それに私が何者かを伝えても『それが何か?』と言った感じで態度を変えることもありませんでした! そして極めつけが……彼の周りを嬉しそうに漂う精霊達です!」
「「「……」」」
リーアさんの力説にエルフ達はただ呆然と立ち尽くし、手に持っていた武器を落としたのに気付かない程放心していた。
「ふふふ、これが私の隠すことのない本心です」
「……」
「ヒロさん、どうしましたか?」
「ちょっと重すぎるかな……」
「では、私と二人で持てば軽くなりますね。うふふ」
「……いや、却って重くなるから」
55
お気に入りに追加
687
あなたにおすすめの小説
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる