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第2章 新天地を求めて
第32話 あれだけ準備したのに……
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「オジー、これはないよ……」
「だな。私達は今まで一体何を悩んでいたんだろうか……」
「あの……ヒロ様、それに旦那様も何をそんなに呆れているのでしょうか?」
「オジー様、さすがに私も引きますって。こんなのを見せられては」
「え? ユリアまで……どういうことですか?」
「「「こういうことだよ(です)!」」」
「はい?」
オジーが戻ってから、俺達はオジーとその家族をどうするか、どうすべきなのかを話し合った。
そうやって三日を費やし、今日伯爵様が用意した馬車に乗せられてオジー達の奥さん達と子供達が今、俺達の目の前にいるのだが……それを見て俺達の話し合いはなんだったんだろうかと思わせるには十分だった。
「だって、見るからにオジーの子じゃないし。ってか、人種が違い過ぎるんですけど。これで自分の子供だと疑わなかったオジーをある意味尊敬しちゃうよ」
「いや、ヒロ様。そう褒められても……」
「オジー褒めてないからね」
「え?」
「オジーよ。お前の面影どころか、この者共のお相手は人ではなくエルフや、獣人にドワーフと所謂亜人と呼ばれる者達だ。そうだな?」
「「「……はい」」」
「え?」
伯爵様がオジーにも分かる様に説明した後にオジーの奥さん達に有無を言わせぬ迫力で答を求めれば、奥さん達は俯いたままの状態でか細い声で答える。
「では、お前達とオジーとの婚姻、並びに子供達との親子関係は今、この場で私の権限で解消したものとする。異論はあるか?」
「「「……いえ」」」
「そして、次にお前達が払うべき慰謝料についてだが「「「はい?」」」……なんだ、何か言いたいことでもあるのか?」
「はい、よろしいでしょうか?」
「なんだ、言ってみるがよい」
「では……」
伯爵様がオジーとその家族だった人達にオジーとの縁切りを宣言した時には特に何も文句らしきものも言わずに黙って受け入れた奥さん達に伯爵様がオジーに対する慰謝料の支払いについて話し始めたところで伯爵様に発言の機会を与えられたキキが「慰謝料は妻である私達が頂けるものでは?」と言い出した。
「「「は?」」」
「ですから、慰謝料というものは夫である男性が、妻である女性……この場合は私達に支払われるものではないかと……」
「そうですよね?」
「そう聞いている!」
「「「違うから!!!」」」
「「「え?」」」
キキの発言に俺だけでなく伯爵様に先輩も開いた口が塞がらない。
そして、そんな俺達を横目に言い聞かせるようにキキはその薄い胸を張って得意気に言い放ち、ルルとモモもそれに追随する。
だから、俺達三人は声を揃えて「違う!」と言えば、奥さん達三人も声を揃えて「え?」と不思議そうにしている。
伯爵様は右手で両方のこめかみを軽く揉みながら「それは違う」とだけ短く言う。
「でも、普通は女性に対して男性が払うものですよね?」
「あのぉ~私もそう聞いています……」
「男がか弱い女性に対し払うものだ……ですよね?」
「「「ハァ~」」」
奥さん達……正確には元奥さん達の話を聞いて三人で大きく嘆息すると、伯爵様がまるで三歳児にでも話すかの様に優しく語気を荒げないように、諭す様にゆっくりと話し始める。
そして、話を聞き終わった元奧さん達は「「「聞いてない!」」」と一斉に声を荒げるが、伯爵様はそれを「黙れ!」と語気を強めて言い放つ。
「『聞いてない!』と言いたいのはこっちのセリフだ! あの、オジーが冒険者を止めて定職に就きたい、家族を養いたいと相談されウチで働いてもらうことになったのは今でもよく覚えている。あの時のオジーの『これから守る!』といった感じの顔付きなどは今でもこうして瞼を閉じれば目に浮かぶ。それなのにお前達は……」
「「「ヒッ!!!」」」
「本来であれば、私の家族とも言えるべきオジーを騙し搾取して来た罪を考えると普通に死罪にしてもしたりないところだ! だが、そんなお前達にさえオジーは『どうか寛大な処置を』と私に嘆願して来たのだ……なのに、それなのにお前達は……」
「「「……」」」
このままでは伯爵様が暴走し部屋の中が血塗れになりそうだと思ったところで横から奥様が振り上げそうになった拳をソッと握り、ユリアに目配せするとユリアが元奥さん達と子供達の側に行き「後ほど、正式に処罰が下されます。それまではこれから案内する別室にて控えて下さい」と伝え、ゾロゾロと部屋から出て行く。
そんな元奥さん達と子供達の様子を見ていたが、誰もオジーの方を振り返ることはなかった。
元奥さん達はこれから自分達にどんな罰が下されるのか不安なのだろうが、子供達は特に何も考えていないようで、それぞれの兄弟姉妹と楽しそうにキャッキャ言いながら部屋を出て行くのだった。
「オジー、終わったよ」
「ヒロ様……私の何が悪かったのでしょうか?」
「オジーは何も悪くないよ。悪いのは元奥さん達の方なんだから」
「……ですが、彼女達にそうさせたのは私に原因があるのではないでしょうか?」
「それは考えすぎだよ。どうやったって悪いのは元奥さん達なんだからさ」
「ですが「いいから! もう終わったの! はい、これでお終い!」……ホントにいいのでしょうか?」
「いいも何もこれからはオジーが好きな様に生きていいんだから」
「好きに……ですか?」
「そう! お酒だって、もちろん女の子でもなんでも好きに出来るんだよ」
「好きに……今まで我慢してきたことも……」
「そう! 好きに生きなよ!」
「分かりました! ヒロ様、ありがとうございます! 旦那様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありマンでした!」
「ふふふ、やっと昔のオジーらしくなったね。それに私達は少しも迷惑だなんて思ってないから気にしないように」
「ですが……」
「さっきも言っただろ。もう、オジーは家族も同然だと。だから、どうか気にしないで欲しい」
「……旦那様……うっ……うっうわぁぁぁ~~~ん!」
「「「えぇ……」」」
伯爵様の言葉を聞いたオジーが直立不動のまま滝の様に涙を流すのを見て引いてしまう俺達だった。
※※※
そろそろ王都に行きますよ!
「だな。私達は今まで一体何を悩んでいたんだろうか……」
「あの……ヒロ様、それに旦那様も何をそんなに呆れているのでしょうか?」
「オジー様、さすがに私も引きますって。こんなのを見せられては」
「え? ユリアまで……どういうことですか?」
「「「こういうことだよ(です)!」」」
「はい?」
オジーが戻ってから、俺達はオジーとその家族をどうするか、どうすべきなのかを話し合った。
そうやって三日を費やし、今日伯爵様が用意した馬車に乗せられてオジー達の奥さん達と子供達が今、俺達の目の前にいるのだが……それを見て俺達の話し合いはなんだったんだろうかと思わせるには十分だった。
「だって、見るからにオジーの子じゃないし。ってか、人種が違い過ぎるんですけど。これで自分の子供だと疑わなかったオジーをある意味尊敬しちゃうよ」
「いや、ヒロ様。そう褒められても……」
「オジー褒めてないからね」
「え?」
「オジーよ。お前の面影どころか、この者共のお相手は人ではなくエルフや、獣人にドワーフと所謂亜人と呼ばれる者達だ。そうだな?」
「「「……はい」」」
「え?」
伯爵様がオジーにも分かる様に説明した後にオジーの奥さん達に有無を言わせぬ迫力で答を求めれば、奥さん達は俯いたままの状態でか細い声で答える。
「では、お前達とオジーとの婚姻、並びに子供達との親子関係は今、この場で私の権限で解消したものとする。異論はあるか?」
「「「……いえ」」」
「そして、次にお前達が払うべき慰謝料についてだが「「「はい?」」」……なんだ、何か言いたいことでもあるのか?」
「はい、よろしいでしょうか?」
「なんだ、言ってみるがよい」
「では……」
伯爵様がオジーとその家族だった人達にオジーとの縁切りを宣言した時には特に何も文句らしきものも言わずに黙って受け入れた奥さん達に伯爵様がオジーに対する慰謝料の支払いについて話し始めたところで伯爵様に発言の機会を与えられたキキが「慰謝料は妻である私達が頂けるものでは?」と言い出した。
「「「は?」」」
「ですから、慰謝料というものは夫である男性が、妻である女性……この場合は私達に支払われるものではないかと……」
「そうですよね?」
「そう聞いている!」
「「「違うから!!!」」」
「「「え?」」」
キキの発言に俺だけでなく伯爵様に先輩も開いた口が塞がらない。
そして、そんな俺達を横目に言い聞かせるようにキキはその薄い胸を張って得意気に言い放ち、ルルとモモもそれに追随する。
だから、俺達三人は声を揃えて「違う!」と言えば、奥さん達三人も声を揃えて「え?」と不思議そうにしている。
伯爵様は右手で両方のこめかみを軽く揉みながら「それは違う」とだけ短く言う。
「でも、普通は女性に対して男性が払うものですよね?」
「あのぉ~私もそう聞いています……」
「男がか弱い女性に対し払うものだ……ですよね?」
「「「ハァ~」」」
奥さん達……正確には元奥さん達の話を聞いて三人で大きく嘆息すると、伯爵様がまるで三歳児にでも話すかの様に優しく語気を荒げないように、諭す様にゆっくりと話し始める。
そして、話を聞き終わった元奧さん達は「「「聞いてない!」」」と一斉に声を荒げるが、伯爵様はそれを「黙れ!」と語気を強めて言い放つ。
「『聞いてない!』と言いたいのはこっちのセリフだ! あの、オジーが冒険者を止めて定職に就きたい、家族を養いたいと相談されウチで働いてもらうことになったのは今でもよく覚えている。あの時のオジーの『これから守る!』といった感じの顔付きなどは今でもこうして瞼を閉じれば目に浮かぶ。それなのにお前達は……」
「「「ヒッ!!!」」」
「本来であれば、私の家族とも言えるべきオジーを騙し搾取して来た罪を考えると普通に死罪にしてもしたりないところだ! だが、そんなお前達にさえオジーは『どうか寛大な処置を』と私に嘆願して来たのだ……なのに、それなのにお前達は……」
「「「……」」」
このままでは伯爵様が暴走し部屋の中が血塗れになりそうだと思ったところで横から奥様が振り上げそうになった拳をソッと握り、ユリアに目配せするとユリアが元奥さん達と子供達の側に行き「後ほど、正式に処罰が下されます。それまではこれから案内する別室にて控えて下さい」と伝え、ゾロゾロと部屋から出て行く。
そんな元奥さん達と子供達の様子を見ていたが、誰もオジーの方を振り返ることはなかった。
元奥さん達はこれから自分達にどんな罰が下されるのか不安なのだろうが、子供達は特に何も考えていないようで、それぞれの兄弟姉妹と楽しそうにキャッキャ言いながら部屋を出て行くのだった。
「オジー、終わったよ」
「ヒロ様……私の何が悪かったのでしょうか?」
「オジーは何も悪くないよ。悪いのは元奥さん達の方なんだから」
「……ですが、彼女達にそうさせたのは私に原因があるのではないでしょうか?」
「それは考えすぎだよ。どうやったって悪いのは元奥さん達なんだからさ」
「ですが「いいから! もう終わったの! はい、これでお終い!」……ホントにいいのでしょうか?」
「いいも何もこれからはオジーが好きな様に生きていいんだから」
「好きに……ですか?」
「そう! お酒だって、もちろん女の子でもなんでも好きに出来るんだよ」
「好きに……今まで我慢してきたことも……」
「そう! 好きに生きなよ!」
「分かりました! ヒロ様、ありがとうございます! 旦那様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありマンでした!」
「ふふふ、やっと昔のオジーらしくなったね。それに私達は少しも迷惑だなんて思ってないから気にしないように」
「ですが……」
「さっきも言っただろ。もう、オジーは家族も同然だと。だから、どうか気にしないで欲しい」
「……旦那様……うっ……うっうわぁぁぁ~~~ん!」
「「「えぇ……」」」
伯爵様の言葉を聞いたオジーが直立不動のまま滝の様に涙を流すのを見て引いてしまう俺達だった。
※※※
そろそろ王都に行きますよ!
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