84 / 186
第2章 新天地を求めて
第22話 『ごめんなさい』の向こう側
しおりを挟む
「え?」
「ふふふ、ここはこのユリアにお任せ下さい」
「お任せしてもいいの?」
「ふふふ、大丈夫です。決して悪いようには致しませんから」
「ん~でもなぁ……」
俺はユリアのどこか小悪魔的な微笑みと今にも泣き出しそうになっているのを必死に我慢している先輩を見比べて「ありがとう。でも、自分でなんとかしてみるから」と断れば「そうですか。残念です」とユリアが一歩引く。
そんな二人の様子を見ていた先輩は「二人で何をコソコソ話しているのよ!」と少し怒り気味に声を荒げる。
「ウララ、ごめんなさい」
「……え?」
「うふふ、ウララ様。そういうことのようですよ」
「やっぱり、私が年上だから……うわぁ~~~~~ん」
「もう、ユリアも余計なことを言わないの。ウララ、落ち着いてよく聞いて下さい。何もウララを拒否する意味での『ごめんなさい』じゃないから」
「でも、年下がいいんでしょ」
「そりゃ、そうですよ。ねえ、ヒロ様」
「ハァ~頼むから俺とウララの二人にさせてくれないかな」
「イヤです……って、言ったらどうしますか?」
「そ。じゃあ、こうするから、転移!」
「あ……」
先輩が中々泣き止まず、ユリアも先輩より優位に立とうとしているのか、先輩を揶揄っているのがモロ分かりだったので、半ば強制的に先輩の手を取り転移する。
「キャッ……え、ここって……」
「そうです。俺と先輩がこの異世界で初めて訪れた場所です。覚えてますよね」
「……」
先輩は俺の問い掛けに無言でコクリと頷く。
「ウララ、さっきの『ごめんなさい』は否定の意味じゃないから」
「でも、お断りってことなんでしょ?」
「ん~そもそも俺が先輩に好かれているって自覚がないんですよね」
「私を疑っているの?」
「いえ、そうじゃなくてですね。なんて言ったらいいのか。先輩は異世界に来て日本人であり既知でもある俺に会えたことで安心感とかホームシック感とかが高じて俺への好意だと勘違いしているんじゃないかと邪推しています」
「そんなことは……ないって確かに言い切れないかもしれない。でも、私はあの日、ヒロが行方不明になってから自分の気持ちに気付いたのも確かなの! でも、私の心はどうやってもヒロに見せることは出来ないもんね。だから、信じて欲しいとしか言えない」
「ありがとうございます。俺もウララのことは嫌いではありません。どちらかと言えば好きです「じゃあ……」でも、その気持ちも異世界で会えた日本人だからと言う気持ちも拭えません。ですから、ハッキリ言って俺も自分の気持ちに自信が持てません。だから、俺が異世界でやっていけるという自身が着いて、生活基盤が築けたら改めて先輩とのことを考えたいと思います。だから「待てない!」……えぇ~」
「そんなの、何時よ!」
「何時かって言われても……まだハッキリと言えることは出来ません」
「……分かったわ」
「ほっ……分かってくれましたか」
「うん、分かった。だから、私もヒロに対する気持ちが本物かどうか考え直すわ」
「そうですか」
「そして、その結果としてヒロへの気持ちが薄れるかもしれないけど、その時は同郷の人間として付き合ってよね」
「え……」
先輩は俺の気持ちを理解してくれたらしく今は自分の気持ちが本物なのかどうか再確認すると言ってくれた。
そして、その結果として俺以外の男性を選んでも今まで通りに同郷の人間として付き合って欲しいと言われた時に胸の奥で何かが『チクリ』とした。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
「そ。なら、この話はこれで終わり。御屋敷に戻りましょ。はい、お願い」
「……」
「もう、どうしたの? 言っておくけど振られたのは私の方なのよ?」
「え、いや。別に振ったわけでは……」
「言い方はどうであれ、お付き合いに発展しないのなら振ったも同然でしょ。あ~あ、一世一代の告白だったのになぁ~でも、なんかスッキリしたからいっか。さ、ほら早く!」
「……はい」
先輩が差し出した左手を握るとその手は少し震えていた。
そして俺に対し強がって見せてはいるが、目尻に薄らと雫が溜まっていたのに気付いた。
「ほら、早く帰るわよ。奥様も待たせているんだし」
「……分かりました」
先輩が言うように形としては俺が先輩を振ってしまった形になったけど、俺は俺はどこか喪失感を感じてしまい妙に落ち着かなくなる。
「あ、お帰りなさいませ……ウララ様、申し訳ありませんでした!」
「ふふふ、もういいわよ。ヒロのことがそれだけ好きなんでしょ」
「好きなんでしょうか?」
「いやいやいや、俺に聞かないでよ」
「でも……」
「ユリアさん。セシルもいないんだし、私も少し頭を冷やすからユリアさんも少し一歩引いてヒロとのことを考えてみたらどうかな」
「ん~そうですね。それがいいかもしれません」
「……」
先輩とユリアのやり取りを聞いていて俺は知らない内に二人の女性に思いを告げられると同時に二人の女性から三行半を突き付けられた様な妙な感じになる。
これで残りはセシル一人な訳だが、だからって直ぐにセシルとどうこうというのは有り得ないし、目の前の二人が憑きものが落ちたようにスッキリした顔をしているのもどこか腑に落ちないのも事実だ。
ひょっとしたらこれが『逃がした魚は大きい』と言うことだろうか。
信じたくはないが、俺もマジメにこれからのことを考えてみようと胸の奥底で静かに決意する。
「ふふふ、ここはこのユリアにお任せ下さい」
「お任せしてもいいの?」
「ふふふ、大丈夫です。決して悪いようには致しませんから」
「ん~でもなぁ……」
俺はユリアのどこか小悪魔的な微笑みと今にも泣き出しそうになっているのを必死に我慢している先輩を見比べて「ありがとう。でも、自分でなんとかしてみるから」と断れば「そうですか。残念です」とユリアが一歩引く。
そんな二人の様子を見ていた先輩は「二人で何をコソコソ話しているのよ!」と少し怒り気味に声を荒げる。
「ウララ、ごめんなさい」
「……え?」
「うふふ、ウララ様。そういうことのようですよ」
「やっぱり、私が年上だから……うわぁ~~~~~ん」
「もう、ユリアも余計なことを言わないの。ウララ、落ち着いてよく聞いて下さい。何もウララを拒否する意味での『ごめんなさい』じゃないから」
「でも、年下がいいんでしょ」
「そりゃ、そうですよ。ねえ、ヒロ様」
「ハァ~頼むから俺とウララの二人にさせてくれないかな」
「イヤです……って、言ったらどうしますか?」
「そ。じゃあ、こうするから、転移!」
「あ……」
先輩が中々泣き止まず、ユリアも先輩より優位に立とうとしているのか、先輩を揶揄っているのがモロ分かりだったので、半ば強制的に先輩の手を取り転移する。
「キャッ……え、ここって……」
「そうです。俺と先輩がこの異世界で初めて訪れた場所です。覚えてますよね」
「……」
先輩は俺の問い掛けに無言でコクリと頷く。
「ウララ、さっきの『ごめんなさい』は否定の意味じゃないから」
「でも、お断りってことなんでしょ?」
「ん~そもそも俺が先輩に好かれているって自覚がないんですよね」
「私を疑っているの?」
「いえ、そうじゃなくてですね。なんて言ったらいいのか。先輩は異世界に来て日本人であり既知でもある俺に会えたことで安心感とかホームシック感とかが高じて俺への好意だと勘違いしているんじゃないかと邪推しています」
「そんなことは……ないって確かに言い切れないかもしれない。でも、私はあの日、ヒロが行方不明になってから自分の気持ちに気付いたのも確かなの! でも、私の心はどうやってもヒロに見せることは出来ないもんね。だから、信じて欲しいとしか言えない」
「ありがとうございます。俺もウララのことは嫌いではありません。どちらかと言えば好きです「じゃあ……」でも、その気持ちも異世界で会えた日本人だからと言う気持ちも拭えません。ですから、ハッキリ言って俺も自分の気持ちに自信が持てません。だから、俺が異世界でやっていけるという自身が着いて、生活基盤が築けたら改めて先輩とのことを考えたいと思います。だから「待てない!」……えぇ~」
「そんなの、何時よ!」
「何時かって言われても……まだハッキリと言えることは出来ません」
「……分かったわ」
「ほっ……分かってくれましたか」
「うん、分かった。だから、私もヒロに対する気持ちが本物かどうか考え直すわ」
「そうですか」
「そして、その結果としてヒロへの気持ちが薄れるかもしれないけど、その時は同郷の人間として付き合ってよね」
「え……」
先輩は俺の気持ちを理解してくれたらしく今は自分の気持ちが本物なのかどうか再確認すると言ってくれた。
そして、その結果として俺以外の男性を選んでも今まで通りに同郷の人間として付き合って欲しいと言われた時に胸の奥で何かが『チクリ』とした。
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
「そ。なら、この話はこれで終わり。御屋敷に戻りましょ。はい、お願い」
「……」
「もう、どうしたの? 言っておくけど振られたのは私の方なのよ?」
「え、いや。別に振ったわけでは……」
「言い方はどうであれ、お付き合いに発展しないのなら振ったも同然でしょ。あ~あ、一世一代の告白だったのになぁ~でも、なんかスッキリしたからいっか。さ、ほら早く!」
「……はい」
先輩が差し出した左手を握るとその手は少し震えていた。
そして俺に対し強がって見せてはいるが、目尻に薄らと雫が溜まっていたのに気付いた。
「ほら、早く帰るわよ。奥様も待たせているんだし」
「……分かりました」
先輩が言うように形としては俺が先輩を振ってしまった形になったけど、俺は俺はどこか喪失感を感じてしまい妙に落ち着かなくなる。
「あ、お帰りなさいませ……ウララ様、申し訳ありませんでした!」
「ふふふ、もういいわよ。ヒロのことがそれだけ好きなんでしょ」
「好きなんでしょうか?」
「いやいやいや、俺に聞かないでよ」
「でも……」
「ユリアさん。セシルもいないんだし、私も少し頭を冷やすからユリアさんも少し一歩引いてヒロとのことを考えてみたらどうかな」
「ん~そうですね。それがいいかもしれません」
「……」
先輩とユリアのやり取りを聞いていて俺は知らない内に二人の女性に思いを告げられると同時に二人の女性から三行半を突き付けられた様な妙な感じになる。
これで残りはセシル一人な訳だが、だからって直ぐにセシルとどうこうというのは有り得ないし、目の前の二人が憑きものが落ちたようにスッキリした顔をしているのもどこか腑に落ちないのも事実だ。
ひょっとしたらこれが『逃がした魚は大きい』と言うことだろうか。
信じたくはないが、俺もマジメにこれからのことを考えてみようと胸の奥底で静かに決意する。
89
お気に入りに追加
687
あなたにおすすめの小説
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる