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第1章 ここが異世界
第52話 お米の国の人だから
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『ドンドンドン! ヒロ様! ご無事ですか! ヒロ様! ご無事なら返事を! ヒロ様!』
「ふぁ~もう、何? うるさいんだけど……ねえ、セツ」
『ピ?』
俺はぼんやりした頭を無理矢理覚醒させ、セツの中から這い出ると部屋の扉を叩きまくっているオジーに文句を言うために扉へと近付き、まだ叩かれている扉を「はいはい、今出るから」とゆっくり開ければ、そこにはどこか焦った感じのオジーとこんなに薄く透ける衣服があるのかと思われる下着なのか寝間着なのか判断しづらい格好をしたセシルとユリアさんが正座させられていた。
「オジー、おはよう。で、なに?」
「おはようございます。ヒロ様……ではなくてですね、ご無事なんですか?」
「え? 見ての通りご無事ですけど?」
「……その様ですね」
「で、今は何時なの? その二人はなんでそんな格好で廊下に正座しているの?」
「ハァ~今はもうすぐ九時になろうという時間です」
「え? もう、そんな時間なの? あれ? でも、確か……八時には起こして欲しいとお願いしていたと思うんだけど?」
「まあ、その様ですね……」
「まあ、いいよ。俺も疲れていたみたいだし、よく眠れたからね。で、その二人がなんでそんな格好なのか? なんで正座しているのかは説明してもらえるかな」
「分かりました。ですが、旦那様が食堂でお待ちです。二人は反省の意も込めて、暫くはこのままにしておきますので」
「俺はいいけど……」
そう言って正座させられている二人を見ると、俺に何かを期待している様な目で見てくるが、ちょっと面倒なことになりそうなのであっさりと無視してオジーと二人で食堂へと向かう。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。随分、ゆっくりだったな」
「すみません。どうやら、寝坊したみたいで……」
「ふふふ、まあ責めている訳ではない。だが、もう少し早く起きるのをお勧めするぞ」
「あ、はい」
「先ずは食事だな。腹が減ってはどうしようもなかろう。頼む」
「は!」
領主はオジーに朝食の準備を頼むと俺と領主の二人分の食事を載せたワゴンを押してきたメイドさんが俺と領主の前に茶碗やお皿を並べていくのを黙って見ている。
今日はユリアさんが正座の最中なので、別のメイドさんが給仕してくれているが、このメイドさんもなかなかで領主の審美眼を褒めたくなる。
並べ終わったのかメイドさんが軽くお辞儀をして「ごゆっくりどうぞ」と離れていく。俺の目の前には茶碗に盛られた白米、豆腐とワカメの味噌汁に種類は分からないがみりん干しの魚を焼いた物に見慣れた黄色いたくわんとこれもまた『ザ・日本の朝食』と言ってもおかしくない内容だ。俺はそんな目の前に並べられた茶碗や皿を不思議そうに見ていると領主が「食べないのか?」と聞いて来た。
「いえ、食べますけど……こんなにも和食なのが不思議でしょうがなくて」
「ああ、そうだろうな」
「はい。こっちの人達は日本の人からすれば西洋人の見た目なので、こんな和食よりはどちらかと言えばパンとスープのイメージだったので、正直頭が追いついていません」
「ああ、そういうことか。そうだな客の其方が不思議に思うのはしょうがないことだろう。だがな、もう我々は何百年も前から主食は米なのだ」
「へ?」
「確かに稲作が広がる前は小麦が主でパンを焼き、スープで腹を満たしていたのだ。だが、米が伝えられ、その腹持ちの良さと栄養面からも段々と米を主食とする者が広がり、こうなった訳だ」
「まあ、確かにアレルギーとか聞きませんしね」
「パンが良いなら用意させるが?」
「いえ、お米でお願いします」
「ふふふ、やはり米が主食なのだな」
「はい」
「納得したのであれば、冷めない内にいただこうではないか」
「はい」
「「いただきます!」」
領主とサシでの朝食を終えオジーに連れられ部屋に戻ると、まだ廊下には正座したままの二人がいた。変わっていたのはスケスケの煽情的な衣服を隠すためなのか肩から毛布を掛けられているが、二人の首からは板きれがぶら下がっていた。
俺はその板きれが気になり、近付くとそこには『私はヒロ様の寝所を襲いに来ましたが、部屋に入ることが適わずこうしてバツを受けています』と書かれていた。
俺はその内容をセシルに「どういうことなのか?」と確認すれば「……ホンの出来心です」と言い、ユリアさんにも同じ様に尋ねれば「八時前に起こさなければOKだと思いまして」としれっと答える。
「要は二人して夜這いに来たけど、扉が開かず四苦八苦しているところをオジーに見つかり正座させられていると……そういうことなの?」
「「……」」
「答えないんだ。で、どっちが先なの?」と尋ねればセシルはビシッとユリアさんを指さし、ユリアさんも黙って右手を挙げる。
「確かに八時前には起こさないでと言ったけど、だからって起こさなければ何をしてもいいって意味じゃないからね。その辺はどうなのさ?」
「……横に寝ていればその気になってもらえるかと思いまして」
「……なんだかんだ言っても殿方ですから。初めてでも肌を合わせていれば。キャッ!」
セシルはあれだけ言ったのにまだよく分かってくれてないみたいだけど、もっと分からないのがユリアさんだ。何故、俺に興味を持つのだろうか。セシルと違ってまだ焦る必要もないだろうに。
「セシル、分かっていないようだから、もう一度言うね」
「はい!」
「俺はまだ君とはそういったことはしないから!」
「え?」
「じゃ、私ですか?」
「もっとないから!」
「ふぁ~もう、何? うるさいんだけど……ねえ、セツ」
『ピ?』
俺はぼんやりした頭を無理矢理覚醒させ、セツの中から這い出ると部屋の扉を叩きまくっているオジーに文句を言うために扉へと近付き、まだ叩かれている扉を「はいはい、今出るから」とゆっくり開ければ、そこにはどこか焦った感じのオジーとこんなに薄く透ける衣服があるのかと思われる下着なのか寝間着なのか判断しづらい格好をしたセシルとユリアさんが正座させられていた。
「オジー、おはよう。で、なに?」
「おはようございます。ヒロ様……ではなくてですね、ご無事なんですか?」
「え? 見ての通りご無事ですけど?」
「……その様ですね」
「で、今は何時なの? その二人はなんでそんな格好で廊下に正座しているの?」
「ハァ~今はもうすぐ九時になろうという時間です」
「え? もう、そんな時間なの? あれ? でも、確か……八時には起こして欲しいとお願いしていたと思うんだけど?」
「まあ、その様ですね……」
「まあ、いいよ。俺も疲れていたみたいだし、よく眠れたからね。で、その二人がなんでそんな格好なのか? なんで正座しているのかは説明してもらえるかな」
「分かりました。ですが、旦那様が食堂でお待ちです。二人は反省の意も込めて、暫くはこのままにしておきますので」
「俺はいいけど……」
そう言って正座させられている二人を見ると、俺に何かを期待している様な目で見てくるが、ちょっと面倒なことになりそうなのであっさりと無視してオジーと二人で食堂へと向かう。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。随分、ゆっくりだったな」
「すみません。どうやら、寝坊したみたいで……」
「ふふふ、まあ責めている訳ではない。だが、もう少し早く起きるのをお勧めするぞ」
「あ、はい」
「先ずは食事だな。腹が減ってはどうしようもなかろう。頼む」
「は!」
領主はオジーに朝食の準備を頼むと俺と領主の二人分の食事を載せたワゴンを押してきたメイドさんが俺と領主の前に茶碗やお皿を並べていくのを黙って見ている。
今日はユリアさんが正座の最中なので、別のメイドさんが給仕してくれているが、このメイドさんもなかなかで領主の審美眼を褒めたくなる。
並べ終わったのかメイドさんが軽くお辞儀をして「ごゆっくりどうぞ」と離れていく。俺の目の前には茶碗に盛られた白米、豆腐とワカメの味噌汁に種類は分からないがみりん干しの魚を焼いた物に見慣れた黄色いたくわんとこれもまた『ザ・日本の朝食』と言ってもおかしくない内容だ。俺はそんな目の前に並べられた茶碗や皿を不思議そうに見ていると領主が「食べないのか?」と聞いて来た。
「いえ、食べますけど……こんなにも和食なのが不思議でしょうがなくて」
「ああ、そうだろうな」
「はい。こっちの人達は日本の人からすれば西洋人の見た目なので、こんな和食よりはどちらかと言えばパンとスープのイメージだったので、正直頭が追いついていません」
「ああ、そういうことか。そうだな客の其方が不思議に思うのはしょうがないことだろう。だがな、もう我々は何百年も前から主食は米なのだ」
「へ?」
「確かに稲作が広がる前は小麦が主でパンを焼き、スープで腹を満たしていたのだ。だが、米が伝えられ、その腹持ちの良さと栄養面からも段々と米を主食とする者が広がり、こうなった訳だ」
「まあ、確かにアレルギーとか聞きませんしね」
「パンが良いなら用意させるが?」
「いえ、お米でお願いします」
「ふふふ、やはり米が主食なのだな」
「はい」
「納得したのであれば、冷めない内にいただこうではないか」
「はい」
「「いただきます!」」
領主とサシでの朝食を終えオジーに連れられ部屋に戻ると、まだ廊下には正座したままの二人がいた。変わっていたのはスケスケの煽情的な衣服を隠すためなのか肩から毛布を掛けられているが、二人の首からは板きれがぶら下がっていた。
俺はその板きれが気になり、近付くとそこには『私はヒロ様の寝所を襲いに来ましたが、部屋に入ることが適わずこうしてバツを受けています』と書かれていた。
俺はその内容をセシルに「どういうことなのか?」と確認すれば「……ホンの出来心です」と言い、ユリアさんにも同じ様に尋ねれば「八時前に起こさなければOKだと思いまして」としれっと答える。
「要は二人して夜這いに来たけど、扉が開かず四苦八苦しているところをオジーに見つかり正座させられていると……そういうことなの?」
「「……」」
「答えないんだ。で、どっちが先なの?」と尋ねればセシルはビシッとユリアさんを指さし、ユリアさんも黙って右手を挙げる。
「確かに八時前には起こさないでと言ったけど、だからって起こさなければ何をしてもいいって意味じゃないからね。その辺はどうなのさ?」
「……横に寝ていればその気になってもらえるかと思いまして」
「……なんだかんだ言っても殿方ですから。初めてでも肌を合わせていれば。キャッ!」
セシルはあれだけ言ったのにまだよく分かってくれてないみたいだけど、もっと分からないのがユリアさんだ。何故、俺に興味を持つのだろうか。セシルと違ってまだ焦る必要もないだろうに。
「セシル、分かっていないようだから、もう一度言うね」
「はい!」
「俺はまだ君とはそういったことはしないから!」
「え?」
「じゃ、私ですか?」
「もっとないから!」
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