上 下
14 / 186
第1章 ここが異世界

第13話 異世界人だからってモテないんだから!

しおりを挟む
「それで、どちら様なのかな?」
「ん? どうしたのじゃ?」
「いや、俺が知っている村人は……まずゴサック、村長、そして奥さんの三人でしょ?」
「まあ、そうじゃな」
「だからね、そちらにいる女性はどなたなのかな? っと思ってね。もしかしたら、俺が淋しく無いように?」
「ふざけるな!」
「え?」

 今、この家にいるのは五人と一匹だ。テーブルに着いているのは俺とセツ、そしてこの家の住人である村長に奥さん、そしてゴサック。で、そのゴサックの横に見知らぬ若い女性がいた。

 雰囲気的には磯山さやかを若くした様なぽっちゃり感満載の朗らかに微笑みを浮かべている女性は俺のことを珍しそうに見ていた。その時は……

 もしかしたら俺が淋しく無いようにと村長が世話役として連れてきてくれたのかなと言ってみれば、ゴサックが「ふざけるな!」とテーブルを平手でバン! と強く叩く。すると、その女性は「私は大丈夫だから」とゴサックの腕にギュッとしがみ付く。

 俺はその様子を見て、理解してしまった。まあ、俺を放って自分達だけでよろしくヤリ始めた人達が俺のことを慮るハズもないと落ち込めばセツが触手を伸ばし俺の頭をポンポンと撫でる。

「ありがとうな、セツ。俺の味方はお前だけだよ」とセツが変形するくらいに抱きしめれば、セツから『キュ!』と聞いたことがない鳴き声が聞こえてきたので慌てて離す。

 セツの御陰でなんとか落ち着きを取り戻すと、嫌な思いをさせてごめんなさいと名も知らぬ女性に頭を下げる。

「あ、いえ。私は大丈夫ですから……ホントに……大丈夫ですから……グスッ」
「ハンナ!」
「ゴサック、大丈夫よ。大丈夫……なんだけど、どうしてだろ? 涙が止まらないの! ゴサックゥ!」
「ハンナ! ヒロ、表に出ろ!」
「えぇ!」

 なんだろ、俺は素直にごめんなさいと頭を下げたことでハンナと呼ばれた女性は許してくれたと思えたのだが、どうも心の底から許した様子には見えない。その証拠に「大丈夫だから」と言いながらゴサックの庇護欲を掻き立てているようにしか見えない。そしてゴサックは俺を見据え「表に出ろ!」と声を荒げる。

「村長……」
「ああ、やめんかゴサック」
「村長、止めないでくれ! 俺の……俺の可愛い奥さん、ハンナが陵辱されて黙っていられるか!」
「ゴサック……」
「えぇ~ちょっと勘違いしただけじゃん……」
「いいや、ハンナの気持ちを考えたら、ハンナが許しても俺が許せん!」
「村長~」
「ハァ~分かっておる。だから、お前もそんな泣きそうな顔をするんじゃない」
「でも……」
『ピィ~~~~~』

 村長はゴサックをなんとか止めようとしているが、ゴサックは止まるつもりはないようだ。それにハンナはゴサックの陰で小さくガッツポーズしてますよね? 俺、あなたに恨まれるようなことはしていないつもりですが?

「ゴサック、俺だけに落ち度があるのか?」
「あん? なんのことだ? いいから、表に出ろ!」
「いや、出ないし。先ずは俺の話を聞け!」
「いいや、聞かない! 早く出ろ!」
「ゴサック……」

 出ろ! 出ない! と俺とゴサックが言い合いしているのを見てほくそ笑んでいるハンナの顔が怖い。そんなに俺がゴサックに殴られるところを見たいの? いや、素直に殴られるつもりもないけど。

 俺は答えの出ない押し問答に辟易しつつ、ゴサックにビシッと人差し指を向けると「そんなに大切な人なら、なぜ食事前に俺に紹介しなかったんだ!」と言えば、ゴサックは「あ……」と口籠もる。

 俺だって最初にちゃんとゴサックの奥さんだと紹介されていたならば、こんな面倒なことになるような言動は控えていた。まあ、よく考えてみれば日本向こうでもモブ中のモブで『ウォーリーを探せ』並に埋没しがちな平均的な顔立ちだからモテないのは自分でもよく分かっているつもりだ。

 でも、異世界なんだもの! ちょっとくらいは期待してもいいんじゃないかと思っていたが、美醜に関してはほぼほぼ同じ価値観の様なので、異世界ここでも諦めるしかなさそうだ。俺にはセツしかいないのかもな。

『ピィ~』
「セツ、二人で強く生きような……」
『ピィ』
「すまん!」
「チッ」

 俺の訴えにゴサックが口籠もり、俺が異世界こちらでもオヒトリサマの未来がほぼ確定したことでセツに癒やしを求めていると、ゴサックの態度が急変し俺に頭を下げる。そして、ハンナよ。そこで何故舌打ちをする?

「いいよ。俺も悪かったから」とゴサックの謝罪は素直に受け取るが、分からないのはハンナだ。だから、俺はハンナの顔をジッと見る。ハンナはハンナで俺のことを睨み付ける。

「えぇ? なんでなん?」
「どうした?」
「ねえ、村長。俺は、昨日この村に初めて来たと思うんだけど?」
「何を言いたいか分からんが、確かにそうじゃな」
「だよね? なら、なんで俺は初対面のハズのゴサックの奥さん、ハンナに睨まれているのかな?」
「「「へ?」」」
「あ!」

 俺の質問に対し、村長達がハンナに視線を向ければ、そこには俺を『親の仇』の様に睨み付けているハンナに気付けばハンナはハンナでしまったという顔になる。

「ハンナ?」
「ねえ、もしかしてどこかで知り合いだったり?」
「そうなのか? ハンナ」
「ち、違うわよ! こんな平たい人なんか見たことないし!」
「平たいって言われたョ……」
『ピ……』
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...