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第二章 夏休み
かわいいだけ?
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「ともちん……姉ちゃんが……あの姉ちゃんが……ぷふっ」
『ガッ』
「痛ッ! 何すんだよともちん」
『ガッ』
「痛ッ「ともちん言うな!」……でも『ガッ』……痛いよ」
「なら、もう言わないの!」
「……分かったよ」
太がツボにはまったのも分かる。今まで反抗する材料がなかったのに向こうから走ってやって来たのだから、それは無理だと言うモノだろう。しかも相手が同年代の男となれば、弟の太からすれば逃す手はないと思わず笑ってしまえば、すかさず朋から臑を蹴られる。
そして、その痛みに顔を顰めながらも太が文句を言おうとすれば更に蹴られてしまう。
「もう、姉ちゃんを好きだって言うんだから、素直になれよ!」
『ガッガッ!』
「痛ッ! 二回も蹴りやがった!」
「誰が私を好きだって?」
「誰って、あの人じゃないの?」
「ハァ~ねえ、アイツが一度でも私のことを好きだと言ったのを聞いたの?」
「え? あれ? そう言えば……」
俺も太も「そう言えば聞いてないかも」とお互いに顔を見合わせる。そして、亜美も「お兄ちゃん、どういうこと?」と一夫を問い詰めれば、朋姉ちゃんが「私が教えて上げるわよ」と腕を組み一夫さんを睨むと「そいつはストーカーよ!」と一夫さんに向かって指を差す。
「「「え~」」」
「ちょ、ちょっとともちん、それは誤解を生むから止めてって言ってるじゃないか」
「何が誤解よ! やっていることはストーカーそのものじゃないの!」
「だから「お兄ちゃん、最低!」……亜美まで」
「お父さんに言って逮捕してもらうから!」
「や、だから。違うって……ともちんからもなんとか言ってよ!」
「なんで私が!」
「え~」
どうにもこうにも収拾が付かなくなったので、俺は互いの言い分をとにかく聞いてみようと一夫さんの両隣に俺と太が座り、女子達には朋姉ちゃんの側に座ってもらい対面する形になる。
「え~と、先ずは互いの言い分を聞いてみようと思う。そうしないとマジで亜美のお父さんにお世話になる案件かもしれないからね」
「ソイツなんかさっさと突き出せばいいのよ!」
「姉ちゃん、落ち着けよ」
「太は黙ってなさい!」
「……ハイ」
太の方が朋姉ちゃんより、大きいのに小さい頃から染みついた上下関係というのはそう簡単には覆せないらしい。
だけど、今はそんなことよりも一夫さんと朋姉ちゃんの関係の方が気になる。それに確かに一夫さんは朋姉ちゃんを『かわいい』とは言ったが、『好き』とは言ってないし、そんな素振りも見せない。
そして亜美があんなことにあったと言うのに兄である一夫さんがするだろうか。しかも父親は現職の刑事だと言うのにだ。
だから、先ずは一夫さんの言い分を聞こうと思い、朋姉ちゃんがストーカーだという様なことをしているのかを確認すれば「そんなことはしていない」と言う。
じゃあ、何をしたら朋姉ちゃんにあそこまで嫌われるのだろうかと、普段はどういう風に朋姉ちゃんに接しているのかと確認すれば、別に変なことはしていないと言い、会った時や見付けた時に朋姉ちゃんの両脇に手を入れ持ち上げて回すだけだと言う。
ソレを聞いた俺だけでなく太や女子達も声を揃えて「サイテー」と口にする。
「え? どうして?」
「ハァ~一夫さん。敗訴です」
「なんで? だってあんなに可愛いんだよ。そうしたいと思うよね」
「「「え?」」」
「分かったでしょ。こういうヤツなのよ!」
「……」
皆から「サイテー」と言われ一夫さんは焦っているようだけど、いくら俺でも擁護は出来ない。
「え~と、じゃあ簡単に纏めれば、一夫さんは朋姉ちゃんが単に可愛いから、見かける度に抱き上げて回している……と、そういうことですか?」
「まあ、多少の差異はあるけど、概ねそういうことかな」
「一夫さん、有罪です」
「え? なんで?」
俺がそれは有罪だと口にすれば、一夫さんは納得がいかない様子だ。
「あのですね。成人女性が衆人の目の前でいきなり抱きかかえられ、それもその場で回されるんですよ。下手すれば下着だって丸見えだ」
「そんな、大袈裟な!」
「コロス、アイツゼッタイコロス!」
「どうどう、朋姉ちゃん落ち着いて」
「そうよ、あんなのを相手にするだけ損よ」
「……」
奈美や由美が朋姉ちゃんを落ち着けようと色々声を掛けるが、横で聞いている亜美は耳を塞ぎたくなる思いだ。
「一夫さん、それは幼女に対して行ってもギリ許せるかどうか判断に困る内容ですよ」
「でも、かわいいじゃない」
「まあ、それは……」
「「「まー君!」」」
一夫さんが朋姉ちゃんを可愛いと言う言葉に同意すれば、朋姉ちゃんはニヤリとするが、奈美達は俺を咎める様に見る。俺が何をしたというのだろうか。
「お兄ちゃん、とにかくそんな『可愛い』という理由だけで、女性に対してやっていいことじゃないってのが分からないの?」
「でも、かわいいから……」
「ん?」
亜美は一夫の態度にどこか引っかかるモノがあり、一夫の顔をジッと見る。
「な、なんだよ」
「お兄ちゃん、ホントに理由はそれだけなの?」
「そ、そうだぞ。それだけだ」
「ふ~ん、お兄ちゃんって嘘つく時ってやたらと鼻を触るクセがあるのよね。知ってた?」
「え? あ!」
亜美に言われた一夫さんは鼻を触っていた左手を慌てて引っ込める。そして、それを見ていた俺と太は何が起きているのか分からなかったが、女子達はその何かに気付いた様で朋姉ちゃん以外は「キャーキャー」言っている。
「なによ……」
『ガッ』
「痛ッ! 何すんだよともちん」
『ガッ』
「痛ッ「ともちん言うな!」……でも『ガッ』……痛いよ」
「なら、もう言わないの!」
「……分かったよ」
太がツボにはまったのも分かる。今まで反抗する材料がなかったのに向こうから走ってやって来たのだから、それは無理だと言うモノだろう。しかも相手が同年代の男となれば、弟の太からすれば逃す手はないと思わず笑ってしまえば、すかさず朋から臑を蹴られる。
そして、その痛みに顔を顰めながらも太が文句を言おうとすれば更に蹴られてしまう。
「もう、姉ちゃんを好きだって言うんだから、素直になれよ!」
『ガッガッ!』
「痛ッ! 二回も蹴りやがった!」
「誰が私を好きだって?」
「誰って、あの人じゃないの?」
「ハァ~ねえ、アイツが一度でも私のことを好きだと言ったのを聞いたの?」
「え? あれ? そう言えば……」
俺も太も「そう言えば聞いてないかも」とお互いに顔を見合わせる。そして、亜美も「お兄ちゃん、どういうこと?」と一夫を問い詰めれば、朋姉ちゃんが「私が教えて上げるわよ」と腕を組み一夫さんを睨むと「そいつはストーカーよ!」と一夫さんに向かって指を差す。
「「「え~」」」
「ちょ、ちょっとともちん、それは誤解を生むから止めてって言ってるじゃないか」
「何が誤解よ! やっていることはストーカーそのものじゃないの!」
「だから「お兄ちゃん、最低!」……亜美まで」
「お父さんに言って逮捕してもらうから!」
「や、だから。違うって……ともちんからもなんとか言ってよ!」
「なんで私が!」
「え~」
どうにもこうにも収拾が付かなくなったので、俺は互いの言い分をとにかく聞いてみようと一夫さんの両隣に俺と太が座り、女子達には朋姉ちゃんの側に座ってもらい対面する形になる。
「え~と、先ずは互いの言い分を聞いてみようと思う。そうしないとマジで亜美のお父さんにお世話になる案件かもしれないからね」
「ソイツなんかさっさと突き出せばいいのよ!」
「姉ちゃん、落ち着けよ」
「太は黙ってなさい!」
「……ハイ」
太の方が朋姉ちゃんより、大きいのに小さい頃から染みついた上下関係というのはそう簡単には覆せないらしい。
だけど、今はそんなことよりも一夫さんと朋姉ちゃんの関係の方が気になる。それに確かに一夫さんは朋姉ちゃんを『かわいい』とは言ったが、『好き』とは言ってないし、そんな素振りも見せない。
そして亜美があんなことにあったと言うのに兄である一夫さんがするだろうか。しかも父親は現職の刑事だと言うのにだ。
だから、先ずは一夫さんの言い分を聞こうと思い、朋姉ちゃんがストーカーだという様なことをしているのかを確認すれば「そんなことはしていない」と言う。
じゃあ、何をしたら朋姉ちゃんにあそこまで嫌われるのだろうかと、普段はどういう風に朋姉ちゃんに接しているのかと確認すれば、別に変なことはしていないと言い、会った時や見付けた時に朋姉ちゃんの両脇に手を入れ持ち上げて回すだけだと言う。
ソレを聞いた俺だけでなく太や女子達も声を揃えて「サイテー」と口にする。
「え? どうして?」
「ハァ~一夫さん。敗訴です」
「なんで? だってあんなに可愛いんだよ。そうしたいと思うよね」
「「「え?」」」
「分かったでしょ。こういうヤツなのよ!」
「……」
皆から「サイテー」と言われ一夫さんは焦っているようだけど、いくら俺でも擁護は出来ない。
「え~と、じゃあ簡単に纏めれば、一夫さんは朋姉ちゃんが単に可愛いから、見かける度に抱き上げて回している……と、そういうことですか?」
「まあ、多少の差異はあるけど、概ねそういうことかな」
「一夫さん、有罪です」
「え? なんで?」
俺がそれは有罪だと口にすれば、一夫さんは納得がいかない様子だ。
「あのですね。成人女性が衆人の目の前でいきなり抱きかかえられ、それもその場で回されるんですよ。下手すれば下着だって丸見えだ」
「そんな、大袈裟な!」
「コロス、アイツゼッタイコロス!」
「どうどう、朋姉ちゃん落ち着いて」
「そうよ、あんなのを相手にするだけ損よ」
「……」
奈美や由美が朋姉ちゃんを落ち着けようと色々声を掛けるが、横で聞いている亜美は耳を塞ぎたくなる思いだ。
「一夫さん、それは幼女に対して行ってもギリ許せるかどうか判断に困る内容ですよ」
「でも、かわいいじゃない」
「まあ、それは……」
「「「まー君!」」」
一夫さんが朋姉ちゃんを可愛いと言う言葉に同意すれば、朋姉ちゃんはニヤリとするが、奈美達は俺を咎める様に見る。俺が何をしたというのだろうか。
「お兄ちゃん、とにかくそんな『可愛い』という理由だけで、女性に対してやっていいことじゃないってのが分からないの?」
「でも、かわいいから……」
「ん?」
亜美は一夫の態度にどこか引っかかるモノがあり、一夫の顔をジッと見る。
「な、なんだよ」
「お兄ちゃん、ホントに理由はそれだけなの?」
「そ、そうだぞ。それだけだ」
「ふ~ん、お兄ちゃんって嘘つく時ってやたらと鼻を触るクセがあるのよね。知ってた?」
「え? あ!」
亜美に言われた一夫さんは鼻を触っていた左手を慌てて引っ込める。そして、それを見ていた俺と太は何が起きているのか分からなかったが、女子達はその何かに気付いた様で朋姉ちゃん以外は「キャーキャー」言っている。
「なによ……」
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