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第二章 夏休み
話が進まない
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亜美が朋姉ちゃんに「兄がもうすぐ来ます」と伝えたところで、朋姉ちゃんは何か思い出したのか、亜美に確認するように問い掛ける。
「あの、ちょっと確認なんだけどお兄さんって何歳くらいかしら?」
「えっと、この前二十歳になったばかりですけど、どうかしました?」
「……ん、ちょっとね。もしかして知っている人かなと思ったんだけど、よく考えてみれば土田って名前はそんなに珍しくもないしね。そうよ、きっと私の勘違いよね」
「えっと……」
「亜美、来たぞ!」
「お兄ちゃん!」
朋姉ちゃんが亜美のお兄さんの話を聞いてから、どことなく落ち着かなくなったのを感じていると、喫茶店の扉が開くと同時に若い男性が亜美の名を呼ぶ。
「もう、こんなところで名前を呼ばなくても分かるでしょ。いいから、こっちに来て。皆に紹介するから」
「お、おお、悪い。ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか知っているヤツがいたような気がして……」
「え?」
亜美のお兄さんの元へと店内で名を呼ばれたのが恥ずかしいのか、少し顔を赤らめた亜美が近寄ると、お兄さんの腕を引きながら俺達の席へと案内する。すると、その席を一瞥したお兄さんが何やら気になる人がいたようで一瞬、視線が止まる。それを感じた亜美がお兄さんにどうしたのと聞くが、軽く促され席までやって来ると「あ~やっぱり、ともちんだ!」と朋姉ちゃんのことを指差す。
「チッ、嫌な方の予感が当たったよ」
「珍しい! ともちんはどうしてここにいるの? 俺は妹に呼ばれたからだけど?」
「……なんでもないわよ。太、行きましょ」
「え? なんで? 土田のお兄さんが来てくれたのに?」
「……いいから!」
「いや、朋姉ちゃん待ってよ。せめて理由くらい話してよ」
「まーちゃんまで」
「まーちゃん? まーちゃんってまー君?」
「もう、お兄ちゃんは黙ってて!」
「いや、でもまー君だろ?」
「いいから!」
いきなり帰ると言い出した朋姉ちゃんと俺のことをまー君だと分かって何か興奮している感じの亜美のお兄さんで、場は騒然とするが奈美と由美がなんとか皆を落ち着かせてウェイトレスのお姉さんが持って来てくれた飲み物を手にする。
「ふぅ~で、朋姉ちゃんはなんで急に帰るって言い出したの?」
「そうだよ。先ずはそれを聞かせろよ」
俺と太が朋姉ちゃんに理由を聞こうとしたら、朋姉ちゃんは太を黙って睨み付けると、口パクで『帰ったらコロス』と言った後に嘆息してから話し出す。
「その男のせいよ」
「「「え?」」」
「なんだよ。ともちん、照れているのか? もう、相変わらずつれないな~もう、この照れ屋さん!」
「「「はい?」」」
朋姉ちゃんに「その男」と呼ばれた亜美のお兄さんは相変わらず朋姉ちゃんのことを「ともちん」と呼ぶが、肝心の朋姉ちゃんは相手にするどころか視界に入れるのも嫌だとばかりにそっぽを向いている。
「えっと、どういう状況なのかな? とりあえずは私のお兄ちゃんが何かをしたのは確かみたいだけど、その太君のお姉さんの様子から考えると……もしかしてストーカーだったり?」
「「「え? また?」」」
「ふん! ストーカーの方がまだマシよ」
「「「え?」」」
「ともちんってば相変わらず酷いよね。アレだけお世話したってのに」
「「「え?」」」
二人の関係性はなんとなく見えて来たけど、とりあえずストーカー案件ではなさそうなので、もう少しだけ二人の関係について詳しく話を聞いて見ることにした。特に女子達は亜美以外の子がさっきから興味津々なのだから。太はと言えば、自分の姉に言い寄ってくる男がいたことに驚いているようだが。
「で、朋姉ちゃんのストーカーじゃないとしたら、亜美のお兄さん……えっと、すみませんがお名前をお伺いしても?」
「あ、そうよ。お兄ちゃん、ちゃんと自己紹介しなさいよ」
「ん? ああ、そうだな。えっと、ともちん以外の皆さん、初めまして。亜美の兄で一夫だ。よろしく!」
「もう!」
亜美のお兄さん、一夫さんの名前を聞いたところで、早速とばかりに話を切り出す。
「じゃ、一夫さんに確認しますけど、朋姉ちゃんに何をしたらそんなに嫌がられるんですか?」
「嫌がるか。俺としてはそんなに嫌なことはしているつもりは無いんだけどな……」
「それはする方の理論よね! されてる方の気持ちも考えなさいよ!」
「そんなに嫌なら、嫌だと言ってくれればいいのに。ともちんと俺の仲じゃないか」
「言ってるわよ! それこそ、される度に!」
「「「される?」」」
一夫さんに朋姉ちゃんに何をしてこれほど嫌われているのかと聞いたところで、女子達が「される」という単語に色めき立つ。
一夫さんと朋姉ちゃんの言っていることに温度差があるのは分かるが、何をしたらそこまで嫌われるのかはまだ分かっていない。ただ、一つ分かったのは一夫さんの性格はかなりしつこいらしいということだけだ。
「ともちんって可愛いよね」
「ふん!」
「姉ちゃん……」
「朋姉ちゃん……」
「あの、ちょっと確認なんだけどお兄さんって何歳くらいかしら?」
「えっと、この前二十歳になったばかりですけど、どうかしました?」
「……ん、ちょっとね。もしかして知っている人かなと思ったんだけど、よく考えてみれば土田って名前はそんなに珍しくもないしね。そうよ、きっと私の勘違いよね」
「えっと……」
「亜美、来たぞ!」
「お兄ちゃん!」
朋姉ちゃんが亜美のお兄さんの話を聞いてから、どことなく落ち着かなくなったのを感じていると、喫茶店の扉が開くと同時に若い男性が亜美の名を呼ぶ。
「もう、こんなところで名前を呼ばなくても分かるでしょ。いいから、こっちに来て。皆に紹介するから」
「お、おお、悪い。ん?」
「どうしたの?」
「いや、なんか知っているヤツがいたような気がして……」
「え?」
亜美のお兄さんの元へと店内で名を呼ばれたのが恥ずかしいのか、少し顔を赤らめた亜美が近寄ると、お兄さんの腕を引きながら俺達の席へと案内する。すると、その席を一瞥したお兄さんが何やら気になる人がいたようで一瞬、視線が止まる。それを感じた亜美がお兄さんにどうしたのと聞くが、軽く促され席までやって来ると「あ~やっぱり、ともちんだ!」と朋姉ちゃんのことを指差す。
「チッ、嫌な方の予感が当たったよ」
「珍しい! ともちんはどうしてここにいるの? 俺は妹に呼ばれたからだけど?」
「……なんでもないわよ。太、行きましょ」
「え? なんで? 土田のお兄さんが来てくれたのに?」
「……いいから!」
「いや、朋姉ちゃん待ってよ。せめて理由くらい話してよ」
「まーちゃんまで」
「まーちゃん? まーちゃんってまー君?」
「もう、お兄ちゃんは黙ってて!」
「いや、でもまー君だろ?」
「いいから!」
いきなり帰ると言い出した朋姉ちゃんと俺のことをまー君だと分かって何か興奮している感じの亜美のお兄さんで、場は騒然とするが奈美と由美がなんとか皆を落ち着かせてウェイトレスのお姉さんが持って来てくれた飲み物を手にする。
「ふぅ~で、朋姉ちゃんはなんで急に帰るって言い出したの?」
「そうだよ。先ずはそれを聞かせろよ」
俺と太が朋姉ちゃんに理由を聞こうとしたら、朋姉ちゃんは太を黙って睨み付けると、口パクで『帰ったらコロス』と言った後に嘆息してから話し出す。
「その男のせいよ」
「「「え?」」」
「なんだよ。ともちん、照れているのか? もう、相変わらずつれないな~もう、この照れ屋さん!」
「「「はい?」」」
朋姉ちゃんに「その男」と呼ばれた亜美のお兄さんは相変わらず朋姉ちゃんのことを「ともちん」と呼ぶが、肝心の朋姉ちゃんは相手にするどころか視界に入れるのも嫌だとばかりにそっぽを向いている。
「えっと、どういう状況なのかな? とりあえずは私のお兄ちゃんが何かをしたのは確かみたいだけど、その太君のお姉さんの様子から考えると……もしかしてストーカーだったり?」
「「「え? また?」」」
「ふん! ストーカーの方がまだマシよ」
「「「え?」」」
「ともちんってば相変わらず酷いよね。アレだけお世話したってのに」
「「「え?」」」
二人の関係性はなんとなく見えて来たけど、とりあえずストーカー案件ではなさそうなので、もう少しだけ二人の関係について詳しく話を聞いて見ることにした。特に女子達は亜美以外の子がさっきから興味津々なのだから。太はと言えば、自分の姉に言い寄ってくる男がいたことに驚いているようだが。
「で、朋姉ちゃんのストーカーじゃないとしたら、亜美のお兄さん……えっと、すみませんがお名前をお伺いしても?」
「あ、そうよ。お兄ちゃん、ちゃんと自己紹介しなさいよ」
「ん? ああ、そうだな。えっと、ともちん以外の皆さん、初めまして。亜美の兄で一夫だ。よろしく!」
「もう!」
亜美のお兄さん、一夫さんの名前を聞いたところで、早速とばかりに話を切り出す。
「じゃ、一夫さんに確認しますけど、朋姉ちゃんに何をしたらそんなに嫌がられるんですか?」
「嫌がるか。俺としてはそんなに嫌なことはしているつもりは無いんだけどな……」
「それはする方の理論よね! されてる方の気持ちも考えなさいよ!」
「そんなに嫌なら、嫌だと言ってくれればいいのに。ともちんと俺の仲じゃないか」
「言ってるわよ! それこそ、される度に!」
「「「される?」」」
一夫さんに朋姉ちゃんに何をしてこれほど嫌われているのかと聞いたところで、女子達が「される」という単語に色めき立つ。
一夫さんと朋姉ちゃんの言っていることに温度差があるのは分かるが、何をしたらそこまで嫌われるのかはまだ分かっていない。ただ、一つ分かったのは一夫さんの性格はかなりしつこいらしいということだけだ。
「ともちんって可愛いよね」
「ふん!」
「姉ちゃん……」
「朋姉ちゃん……」
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