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第二章 夏休み
図書館ではお静かに!
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学校の近くの図書館でいつもの四人で集まって、『勉強会』なるものを由美と太に頼まれ開催したんだが……。
「もう、分かんな~い。覚えられないよ~」
「由美、諦めるのが早くないか?」
「そう言う太だって、もう勉強してないじゃないのさ。さっきから何を読んでいるの?」
「いや、これは……」
勉強会なるものを始めてから十分も経たない内に予想通りに由美と太が脱落する。
「おいおい、始まったばかりだろ。それに言い出しっぺのお前らがそんな調子だと、頼まれた俺達はどうすればいいんだ?」
「そうよね。あなた達が頼むから、放課後にこうやって集まっていると言うのにね」
「「ごめんなさい……」」
試験間近なのにやる気を見せない言い出しっぺの二人に呆れていると、肩をトントンと突かれたので振り向くと、そこには奈美と亜美がいた。
「どう、頑張っている? ……とは言えないわね。全く、由美ってば」
「ごめんね。私達まで便乗しちゃって」
奈美と亜美がそう言って、同じテーブルに腰掛ける。
「ブル、お前いつの間に」
「太、何を想像しているのか分からないが、そこまでだ。奈美と同級生の土田さんだよ」
「太君、お久しぶり。もう忘れちゃった?」
「あ、いや。そんなことはないぞ。覚えているとも」
「初めまして。土田亜美です。今日は押しかけてしまってごめんなさい」
同中の同級生とは言え、久しぶりに会う奈美に話しかけられ少しだけ照れてしまう太に対して亜美が挨拶すると、太がその可愛さに少し呆けてしまう。そして、そんな太の脇腹を少し小突いて、中山が挨拶を交わす。
「ううん、いいのよ。私は中山幸。よろしくね。で、土田さん、私あなたに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「中山、そこまでだ」
挨拶を交わしながら、ボイスレコーダーとスマホで亜美に対し、吉田のことを聞き出そうとしていた中山を止める。
「え~いいじゃない」
「ダメだ。そんなことを興味本位で書かれるのは俺もイヤだ。それに土田さんは他校の生徒だぞ。何かあったらお前は責任が取れるのか?」
「う~そう言われると弱いな~分かったわよ。すっごく惜しいけど、ここはガマンする」
「ああ、そうしてくれ。それに太がさっきから唸っているからなんとかしてくれ」
「そうね。そっちの方が大事ね」
太が教科書を見て唸っているのに気付いたので、中山に補佐を頼む。
「それで奈美はどうしたんだ? 勉強会に参加させてくれと言われて了解したはいいけどさ。教科書の中身とか違うだろ?」
「まあね。でも公式とか学校ごとに違ったりすることはないんだからさ。まー君ならそこは対応出来るでしょ」
「まあな。でも、奈美は勉強会するほど悪くはなかったと思ってたけど?」
「うん、そうなんだけどね」
そう言って、奈美がチラリと横に座って申し訳なさそうにしている亜美を見る。
「ゴメンね。私がギリギリなの。今のままだと追試と補習授業が待っているのよ。でも補習はどうしても受けたくないから、なんとか少しでもいい点を取りたいと思って頼んだのよ」
「そうなのか?」
「うん、結構ヤバいのよ……」
そう言って、亜美は自分で話したことで、尚更に自覚したのかシュンとなる。
そんな亜美の話を聞いて、亜美を慰めるつもりで、少し軽口で揶揄ってみる。
「夏休み中に遊び倒す為とは言え、大変だな」
すると、亜美はキッと俺を睨み付け、「違うわよ!」と声を荒げるものだから、周囲の視線を集めてしまうこととなり、その視線に気付いた亜美がまた、シュンとなる。
「ダメだよ。まー君」
「俺、何かしたか?」
「ここでは、ちょっとね。幸ちゃんもいるし」
奈美が中山を気にしていたことから、『アレ関連』かと思い当たり、亜美に「ゴメン」と謝り、なんとかこの場を納める。
中山の視線を気にしながらも、奈美と亜美の勉強を手伝っていると、由美がまた机にへばりつき、愚痴り出す。
「もうヤダ! ちっとも入ってこない!」
「「「……」」」
「あれ?」
「「「……」」」
「ねえ、どうしたの? 太まで、何?」
「由美、悪いが邪魔しないでくれ」
「え? どうしたの?」
「由美、太君の邪魔したらダメよ。飽きたのなら、少し休憩してきたら?」
「え? 何それ。ねえ、奈美、太と幸が冷たいの!」
「由美、悪いけど今大事なところだから。ね? いい子だから邪魔しないでね」
「そうよ、由美。今、まー君に教えてもらっているんだけど、学校の先生よりずっと分かり易いのよ。私には今しかないから、ゴメンだけど邪魔しないでね」
「そういうことだ。由美、ヒマなのは分かるが、お前だってヤバいのは一緒なんだろ? なら、人の邪魔しないでお前もマジメにやるんだ」
「ぶ~」
由美が皆に無視される形になり、より一層不機嫌になるが誰も彼もが勉強に集中している為に、そんな由美の様子に気付くこともなかった。
「あ~あ、もう少しイチャイチャ出来ると思ったんだけどな~」
そう由美が言った瞬間に由美の顔の近くで『カチッ』と音が鳴り、「何?」と由美が顔を上げると、そこにはニヤッ笑う中山がいて、その手にはボイスレコーダーが握られていた。
「はい、証拠ゲット~」
「あ~!」
そう言って笑う中山を見た由美が立ち上がり叫んでしまう。
「「「「「シー!!!」」」」」
「もう、分かんな~い。覚えられないよ~」
「由美、諦めるのが早くないか?」
「そう言う太だって、もう勉強してないじゃないのさ。さっきから何を読んでいるの?」
「いや、これは……」
勉強会なるものを始めてから十分も経たない内に予想通りに由美と太が脱落する。
「おいおい、始まったばかりだろ。それに言い出しっぺのお前らがそんな調子だと、頼まれた俺達はどうすればいいんだ?」
「そうよね。あなた達が頼むから、放課後にこうやって集まっていると言うのにね」
「「ごめんなさい……」」
試験間近なのにやる気を見せない言い出しっぺの二人に呆れていると、肩をトントンと突かれたので振り向くと、そこには奈美と亜美がいた。
「どう、頑張っている? ……とは言えないわね。全く、由美ってば」
「ごめんね。私達まで便乗しちゃって」
奈美と亜美がそう言って、同じテーブルに腰掛ける。
「ブル、お前いつの間に」
「太、何を想像しているのか分からないが、そこまでだ。奈美と同級生の土田さんだよ」
「太君、お久しぶり。もう忘れちゃった?」
「あ、いや。そんなことはないぞ。覚えているとも」
「初めまして。土田亜美です。今日は押しかけてしまってごめんなさい」
同中の同級生とは言え、久しぶりに会う奈美に話しかけられ少しだけ照れてしまう太に対して亜美が挨拶すると、太がその可愛さに少し呆けてしまう。そして、そんな太の脇腹を少し小突いて、中山が挨拶を交わす。
「ううん、いいのよ。私は中山幸。よろしくね。で、土田さん、私あなたに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「中山、そこまでだ」
挨拶を交わしながら、ボイスレコーダーとスマホで亜美に対し、吉田のことを聞き出そうとしていた中山を止める。
「え~いいじゃない」
「ダメだ。そんなことを興味本位で書かれるのは俺もイヤだ。それに土田さんは他校の生徒だぞ。何かあったらお前は責任が取れるのか?」
「う~そう言われると弱いな~分かったわよ。すっごく惜しいけど、ここはガマンする」
「ああ、そうしてくれ。それに太がさっきから唸っているからなんとかしてくれ」
「そうね。そっちの方が大事ね」
太が教科書を見て唸っているのに気付いたので、中山に補佐を頼む。
「それで奈美はどうしたんだ? 勉強会に参加させてくれと言われて了解したはいいけどさ。教科書の中身とか違うだろ?」
「まあね。でも公式とか学校ごとに違ったりすることはないんだからさ。まー君ならそこは対応出来るでしょ」
「まあな。でも、奈美は勉強会するほど悪くはなかったと思ってたけど?」
「うん、そうなんだけどね」
そう言って、奈美がチラリと横に座って申し訳なさそうにしている亜美を見る。
「ゴメンね。私がギリギリなの。今のままだと追試と補習授業が待っているのよ。でも補習はどうしても受けたくないから、なんとか少しでもいい点を取りたいと思って頼んだのよ」
「そうなのか?」
「うん、結構ヤバいのよ……」
そう言って、亜美は自分で話したことで、尚更に自覚したのかシュンとなる。
そんな亜美の話を聞いて、亜美を慰めるつもりで、少し軽口で揶揄ってみる。
「夏休み中に遊び倒す為とは言え、大変だな」
すると、亜美はキッと俺を睨み付け、「違うわよ!」と声を荒げるものだから、周囲の視線を集めてしまうこととなり、その視線に気付いた亜美がまた、シュンとなる。
「ダメだよ。まー君」
「俺、何かしたか?」
「ここでは、ちょっとね。幸ちゃんもいるし」
奈美が中山を気にしていたことから、『アレ関連』かと思い当たり、亜美に「ゴメン」と謝り、なんとかこの場を納める。
中山の視線を気にしながらも、奈美と亜美の勉強を手伝っていると、由美がまた机にへばりつき、愚痴り出す。
「もうヤダ! ちっとも入ってこない!」
「「「……」」」
「あれ?」
「「「……」」」
「ねえ、どうしたの? 太まで、何?」
「由美、悪いが邪魔しないでくれ」
「え? どうしたの?」
「由美、太君の邪魔したらダメよ。飽きたのなら、少し休憩してきたら?」
「え? 何それ。ねえ、奈美、太と幸が冷たいの!」
「由美、悪いけど今大事なところだから。ね? いい子だから邪魔しないでね」
「そうよ、由美。今、まー君に教えてもらっているんだけど、学校の先生よりずっと分かり易いのよ。私には今しかないから、ゴメンだけど邪魔しないでね」
「そういうことだ。由美、ヒマなのは分かるが、お前だってヤバいのは一緒なんだろ? なら、人の邪魔しないでお前もマジメにやるんだ」
「ぶ~」
由美が皆に無視される形になり、より一層不機嫌になるが誰も彼もが勉強に集中している為に、そんな由美の様子に気付くこともなかった。
「あ~あ、もう少しイチャイチャ出来ると思ったんだけどな~」
そう由美が言った瞬間に由美の顔の近くで『カチッ』と音が鳴り、「何?」と由美が顔を上げると、そこにはニヤッ笑う中山がいて、その手にはボイスレコーダーが握られていた。
「はい、証拠ゲット~」
「あ~!」
そう言って笑う中山を見た由美が立ち上がり叫んでしまう。
「「「「「シー!!!」」」」」
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