51 / 53
第51話 淋しいのは皆一緒
しおりを挟む
やっちゃったことは仕方がないと慰めにもならない言葉を皆から掛けられた恒も気を取り直して由香と久美、それにホスを馬車に乗せるとホスが御者台に座り、ドラゴに声を掛ける。
「ドラゴ、お嬢さん達に教えながらだからゆっくり行くぞ」
『おう、爺さんゆっくりだな。任せろ』
明良はミリーと一緒にドラザに乗り、恒はドラジに乗ると小夜を引き上げ前に乗せれば同時に馬車の中からは「ズルい!」と声がする。
「ふふん、早いモノ勝ちじゃ。油断する方が悪い」
「小夜、あまり挑発しないの。あんまりそういうことするのなら、馬車「悪かったのじゃ。大人しく座っているのじゃ」そう。じゃ、行こうか」
「おう」
「行くぞ」
「大切にしてもらうんだぞ」
ケニーさんと挨拶を済ませ馬車を出したところで、ケニーさんからドラゴ達に声を掛けられる。ドラゴ達も大事にしてもらったのが、分かるのか耳と尻尾がピコピコと揺れている。
ドラゴ達は嬉しそうにギルドまでも道のりを歩く。それがホスとの最後になるのが分かっているのか由香達に御者のやり方を教えるためと言ってはいるが、それでも歩みはゆっくりだ。まるでホスとの別れを惜しむかのようにも思える。
恒もそれを知ってはいるが敢えて口には出さない。何故ならば、恒も明良もまだ乗馬には慣れていないのだから。
だが、そんな風にゆっくりとしているものだから、冒険者ギルドでの用事を終えたドリーが向こうからやって来る。
「おう、遅かったな。どうした……って、おい! 本当にどうしたんだよ、これは!」
「ああ、説明するから。先ずは馬車に乗ってくれるかな」
「……分かったよ」
ホスが馬車を停めるとドリーは馬車へ乗り込む。
「また、冒険者ギルドへ逆戻りとはな」
「だって、恒がしちゃったんだから」
「しょうがないよ。うんうん」
「そっか。ワタルがな……そっか」
ドリーは外にいる恒に目を向けるが、起こってしまったことはしょうがないと開き直るしかなかった。
やがて、恒達は冒険者ギルドへと着くが、思っていた通りにちょっとした騒動になる。
「おぉ~でけぇな……」
「こりゃ、普通の竜馬じゃねえな」
「おい、兄ちゃん。これどうしたんだ?」
馬車や竜馬の回りに集まってくる野次馬はドリーに任せ、恒は冒険者ギルドへと入って行く。
冒険者ギルドに入るなり「ワタル、やっぱりお前か!」とギルマスに手招きされる。
「ギルマス、その前に……」
「いいから、ちょっと来い! それと、表のヤツに話を聞いて登録が必要なら手続きしてやれ」
「「「はい」」」
ギルマスがギルド職員に対しドラゴ達の従魔登録を指示すると恒は有無も言わさないままに部屋の中へと招き入れられる。
「で、何をどうしてこうなった? ちゃんと俺にも分かる様に説明してくれ」
「えっと、何を?」
「あぁ? 何って表の騒ぎはお前のせいだろうが!」
「騒ぎって言われても……俺達は別に何もしてないけど?」
「ハァ~あのな、あんな魔物を三体も連れて歩いて騒ぎにならない訳ないだろうが! いいから、知っていること、やったことを全部素直に話すんだ。話さない内は帰さないからな」
「えぇ~」
「え~じゃない! 泣きたいのはこっちだよ。ったく……でもまあ、こういう日常茶飯事がなくなってしまうのも少し寂しい気はするがな」
「あ~」
ギルマスのそんな態度に恒は嬉しくなり思わず「ふふふ」と笑ってしまう。
「何がおかしい?」
「だって、ギルマスは俺達がいなくなるのが淋しくてこうやってお話ししたかったんだよね」
「な、バカ! 何を言ってるんだ。いいから、表の魔物をどうしたのかをちゃんと話せよ。別れの挨拶はその後だ」
「もう、分かったよ。あのね……」
恒はホスに会った後にケニーの元で竜馬を譲り受けることになり、名付けをしたことで、竜馬が魔竜馬となったことを話す。
「あ~またお前は面倒なことを……」
「いや、俺だってしたくてした訳じゃないんだけど……」
「あ~分かってる。分かってはいるんだがな、コレばっかりはな……で、どうするつもりだ」
「んまぁ、最初に決めた通りに王都に行こうとは思っているよ」
「アレを連れてか?」
「当たり前でしょ」
「そうか。だが、あまり力で解決しようとはするなよ。いくらお前達でも数の暴力には適わないからな。まあ、それもなんとかしてしまうんだろうな。お前達なら」
「へへへ、多分ね」
その後はギルマスとたわいもない話をしていたが。いつまでも引き留める訳にもいかないとギルマスは恒を解放すると、ギルド職員から「これが従魔登録証です」と渡されるが、職員がその手を離さないので「あの?」と声を掛ければ職員は「あ、すみません」と慌てて手を離す。
そして、意を決した様に恒を見てから「お願いがあります!」と言うので恒も何かなと訝しく思いながらも「なんでしょう」と出来るだけ柔軟に対応する。
「あの……触ってもいいですか?」
「え?」
「あ、違います! 言い直します。あの子達を触ってもいいでしょうか?」
「あ、ああ、そういうこと。いいよ」
「ありがとうございます!」
職員のお姉さんはそう恒にお礼を言うと冒険者ギルドの外に飛び出していく。
「こりゃ、出発するのは伸びそうだな」
「えぇ~」
「ドラゴ、お嬢さん達に教えながらだからゆっくり行くぞ」
『おう、爺さんゆっくりだな。任せろ』
明良はミリーと一緒にドラザに乗り、恒はドラジに乗ると小夜を引き上げ前に乗せれば同時に馬車の中からは「ズルい!」と声がする。
「ふふん、早いモノ勝ちじゃ。油断する方が悪い」
「小夜、あまり挑発しないの。あんまりそういうことするのなら、馬車「悪かったのじゃ。大人しく座っているのじゃ」そう。じゃ、行こうか」
「おう」
「行くぞ」
「大切にしてもらうんだぞ」
ケニーさんと挨拶を済ませ馬車を出したところで、ケニーさんからドラゴ達に声を掛けられる。ドラゴ達も大事にしてもらったのが、分かるのか耳と尻尾がピコピコと揺れている。
ドラゴ達は嬉しそうにギルドまでも道のりを歩く。それがホスとの最後になるのが分かっているのか由香達に御者のやり方を教えるためと言ってはいるが、それでも歩みはゆっくりだ。まるでホスとの別れを惜しむかのようにも思える。
恒もそれを知ってはいるが敢えて口には出さない。何故ならば、恒も明良もまだ乗馬には慣れていないのだから。
だが、そんな風にゆっくりとしているものだから、冒険者ギルドでの用事を終えたドリーが向こうからやって来る。
「おう、遅かったな。どうした……って、おい! 本当にどうしたんだよ、これは!」
「ああ、説明するから。先ずは馬車に乗ってくれるかな」
「……分かったよ」
ホスが馬車を停めるとドリーは馬車へ乗り込む。
「また、冒険者ギルドへ逆戻りとはな」
「だって、恒がしちゃったんだから」
「しょうがないよ。うんうん」
「そっか。ワタルがな……そっか」
ドリーは外にいる恒に目を向けるが、起こってしまったことはしょうがないと開き直るしかなかった。
やがて、恒達は冒険者ギルドへと着くが、思っていた通りにちょっとした騒動になる。
「おぉ~でけぇな……」
「こりゃ、普通の竜馬じゃねえな」
「おい、兄ちゃん。これどうしたんだ?」
馬車や竜馬の回りに集まってくる野次馬はドリーに任せ、恒は冒険者ギルドへと入って行く。
冒険者ギルドに入るなり「ワタル、やっぱりお前か!」とギルマスに手招きされる。
「ギルマス、その前に……」
「いいから、ちょっと来い! それと、表のヤツに話を聞いて登録が必要なら手続きしてやれ」
「「「はい」」」
ギルマスがギルド職員に対しドラゴ達の従魔登録を指示すると恒は有無も言わさないままに部屋の中へと招き入れられる。
「で、何をどうしてこうなった? ちゃんと俺にも分かる様に説明してくれ」
「えっと、何を?」
「あぁ? 何って表の騒ぎはお前のせいだろうが!」
「騒ぎって言われても……俺達は別に何もしてないけど?」
「ハァ~あのな、あんな魔物を三体も連れて歩いて騒ぎにならない訳ないだろうが! いいから、知っていること、やったことを全部素直に話すんだ。話さない内は帰さないからな」
「えぇ~」
「え~じゃない! 泣きたいのはこっちだよ。ったく……でもまあ、こういう日常茶飯事がなくなってしまうのも少し寂しい気はするがな」
「あ~」
ギルマスのそんな態度に恒は嬉しくなり思わず「ふふふ」と笑ってしまう。
「何がおかしい?」
「だって、ギルマスは俺達がいなくなるのが淋しくてこうやってお話ししたかったんだよね」
「な、バカ! 何を言ってるんだ。いいから、表の魔物をどうしたのかをちゃんと話せよ。別れの挨拶はその後だ」
「もう、分かったよ。あのね……」
恒はホスに会った後にケニーの元で竜馬を譲り受けることになり、名付けをしたことで、竜馬が魔竜馬となったことを話す。
「あ~またお前は面倒なことを……」
「いや、俺だってしたくてした訳じゃないんだけど……」
「あ~分かってる。分かってはいるんだがな、コレばっかりはな……で、どうするつもりだ」
「んまぁ、最初に決めた通りに王都に行こうとは思っているよ」
「アレを連れてか?」
「当たり前でしょ」
「そうか。だが、あまり力で解決しようとはするなよ。いくらお前達でも数の暴力には適わないからな。まあ、それもなんとかしてしまうんだろうな。お前達なら」
「へへへ、多分ね」
その後はギルマスとたわいもない話をしていたが。いつまでも引き留める訳にもいかないとギルマスは恒を解放すると、ギルド職員から「これが従魔登録証です」と渡されるが、職員がその手を離さないので「あの?」と声を掛ければ職員は「あ、すみません」と慌てて手を離す。
そして、意を決した様に恒を見てから「お願いがあります!」と言うので恒も何かなと訝しく思いながらも「なんでしょう」と出来るだけ柔軟に対応する。
「あの……触ってもいいですか?」
「え?」
「あ、違います! 言い直します。あの子達を触ってもいいでしょうか?」
「あ、ああ、そういうこと。いいよ」
「ありがとうございます!」
職員のお姉さんはそう恒にお礼を言うと冒険者ギルドの外に飛び出していく。
「こりゃ、出発するのは伸びそうだな」
「えぇ~」
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
対人恐怖症は異世界でも下を向きがち
こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。
そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。
そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。
人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。
容赦なく迫ってくるフラグさん。
康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。
なるべく間隔を空けず更新しようと思います!
よかったら、読んでください
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!
ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生!
せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい!
魔法アリなら色んなことが出来るよね。
無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。
第一巻 2022年9月発売
第二巻 2023年4月下旬発売
第三巻 2023年9月下旬発売
※※※スピンオフ作品始めました※※※
おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる