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第44話 決まった!

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 街を出ると決めてから一週間が経った。

「ミリー、皆と別れは済ませてきたのか?」
「……」
「ミリー?」
「もう、言わないでよ! 折角、ちゃんとお別れして来たのになんでまたそういうことを言うのよ! お父さんのバカ!」
「お、おぉスマン……」

 宿を出る前に食堂に集まっていた恒達の前でドリーがミリーに友達に別れの挨拶を済ませたのかと確認していたのだが、ミリーが突然泣きだしてしまい、それに対しドリーがオロオロしていると「バカ!」と言われ落ち込むドリーを見て恒達は揃って「ハァ~」と嘆息するしかなかった。

「明良、出番だ」
「そうよ、行きなさいよ」
「ちゃんと優しくね」
「って、どうすればいいんだよ!」
「とりあえず、手を握ればいいと思うよ」
「手を……ね。ミリー」
「アキラ!」
「うぉっ!」

 ミリーの側に近寄った明良はミリーに声を掛け、その手をそっと握るとミリーは明良の方を振り向きざまに明良の腰にしがみつくと思いっ切り大声で「うわぁ~ん」泣き出す。

「私だって……ホントなら行きたくないに決まってるじゃん! でも……アキラやお父さん達とこのまま別れる方がもっとツライんだもん! だから、昨日ちゃんと皆にお別れをなんとか頑張って言えたのに……それなのに、それなのに……お父さんのバカァ!」
「す、すまん」
「ふははは、やっぱりドリーだね」
「女将……」
「まあ、安心したよ。あんたのそういう不器用なところを見られたからね。私ももう少しあんたを待ってみるよ。いいだろ?」
「ん? 女将、何を言って「もう、そういう所だよ」……フガフガ」
「ふふふ、ドリーのことをよろしく頼んだよ」
「「「はい!」」」

 ドリーがまた女将に対し失礼な物言いをするところを間一髪でなんとか食い止めた恒はドリーの口を塞いだままドリーに注意すると、女将は気付いていただろうにそんな恒とドリーの様子を可笑しそうに笑って別れの挨拶を済ませる。

 泣いたままのミリーの手を引く明良とドリーが変なことを口走らないようにとドリーの口を塞いだままの状態で女将の元から去って行くのだが、それを傍目で見ていた由香と久美は「しまらないわね」と思わず口にしてしまう。

 宿を出てから冒険者ギルドに寄り、道中で出来そうな依頼はないかと探している恒に対し由香が質問する。

「ねえ、町を出るのはいいんだけどさ、どこに向かうの?」
「さあ、とにかくあの国から離れたところとしか決めてないからな」
「えぇまさかの無計画? ドリー、どうなの? どこか知らないの?」
「お前、ワシに対して「いいから、教えなさいよ!」……くっこいつは」
「由香、そこまで!」
「……はい」

 ただでさえ目立つパーティなのにこれ以上目立つのはよくないとドリーに絡んでいた由香を恒が注意して止めさせる。

「でも、どこに向かうかは決めないとでしょ」
「まあ、そうだよね。ちょっと待ってて」

 恒は『地図マップ』を使い、今いる自分達の場所と『ネマン教皇国』の場所を確認する。

「えっと、ここがドリーのいた山で、今がここだから、そうなると……」
 恒は不可視の状態でいるミモネにそっと声を掛ける。
『ねえ、ミモネはどこがいいと思う?』
『そうねぇ、ここは思い切って南下するのはどう? もう少ししたら暖かいを通り越して暑くなるから水辺が気持ちいいと思うの』
『そうか。ありがとう』
『ふふふ、いいえ』

 恒はミモネの助言アドバイスを元に改めて地図を見直すとある一点で止まる。

「うん、ここにしよう!」
「決まったの?」
「どこ?」
「あまりキツイところは勘弁だぞ」

 恒が決めたと口にすると、由香達がこぞって恒に質問する。

「行き先は『フィジ島』だよ」
「「「え? 島?」」」
「そう、島。海を渡っちゃえば、ドリーも少しは安全じゃないかなと思ってさ」
「恒、そこすっげぇ遠いんだけど?」
 恒が行き先を告げると明良が少し不安そうに言ってくる。

「あ、明良も『地図マップ』で見たんだね」
「ああ、見たよ。で、スッゴい遠いってことだけが分かった」
「そんなに遠いの?」
「ふふふ、なんならお前由香だけここに残ってもいいのだぞ。ん?」

 明良のスッゴく遠いという発言に由香が食い付き、それをドリーが遠いのがイヤなら残ればいいと揶揄うものだから、また二人が言い合いを始める。

「何よ!」
「なんだ!」
「もう、ドリーも由香も止めなよ。ほら、皆が見てるでしょ」
「ごめんなさい」
「スマン」

 そんな二人を久美が止め、行き先が決まったことで皆で改めて目的の場所を確認するためにギルド内の資料室へと移る。

「えっと、地図がこれで……」
「地図あった?」
「うん、今持って行くから」

 恒は地図を見つけると資料室内に置かれているテーブルの上に広げると皆に説明する。

「えっと、ここが俺達が最初に喚ばれた場所ね」
「あ~イヤな国ね」
「どうか滅びますように」
「おい、一応知り合いもいるんだぞ」
「そうね。でも、私達のことを覚えているかどうか怪しいでしょうね」
「そうよね。あの状態じゃ生きている……って言えるかどうかもね」
「そりゃ、そうだが……」
「説明を続けるよ」
「「「は~い」」」

 恒達を召喚した国『ネマン教皇国』を地図で確認しただけなのにこれだけ文句を言われるとは、さすがにアイツらも思っていないだろうなと恒は少しニヤリとしてしまう。

「で、ここがドリーのいた山で、そこから下ったのが今、俺達がいる町ね」
「うん、で目的の島はどこなの?」
「それは……ず~っと下って……ここ!」
「「え?」」
「な、遠いだろ?」
「「……」」

 明良の言葉に由香と久美は黙って頷く。そしてその様子にドリーが横から口を挟む。

「ま、ワシが飛べば直ぐだがな」
「そしたら、すぐに見つかって討伐隊が編成されて……」
「ぐぬぬ」

 そんなドリーの自慢とも取れる物言いに恒が釘を刺し、ドリーに向かって拝むとドリーもさすがに飛ぶことは出来ないと悟ったのか黙って口を噤むしかなかった。
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