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第42話 もうちょっとだけ
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ハッキリと弱いと言われてしまった明良は腐ることなくドリーの元で訓練に励んでいる。
午前中は由香達と一緒にギルドの依頼を受けながら、由香や久美との連携も強化してきた。
そんなこんなで一週間が経過して、ドリーとの訓練中に「やぁ!」と明良がドリーに仕掛けるとドリーは「ほぅ」と短く感嘆する。
「ふむ、一週間とは言え前とは違って来たな」
「おうよ。俺だって成長してるんだってところを見せつけないとなっ!」
「ふん、だがまだまだだな」
明良が大きく振りかぶりドリーに斬りかかるが、ドリーはそれを軽く払う。
「そうやってすぐに調子に乗るからダメなんだよ。まずはそこから直さないとな」
「くそっ!」
明良はドリーに払われバランスを崩していた体勢を立て直すと再度、ドリーに向かって行く。
「ねえ、まだダメなの?」
「かなりいい線いっていると思うんだけど?」
「うん、もうちょっとかな」
「でも、あれだけ頑張っているんだよ」
「そうだよ。もう十分じゃん」
「……」
明良の頑張りを見てきた由香と久美がそろそろいいんじゃないかと提案してくるが、恒はそれを一蹴する。だが、由香達も素直には引き下がらず食い下がる。
「あのね、言っておくけど本当は二人もまだまだなんだからね。それなのに明良まで面倒を見ることは出来ないの。そこんところ分かっているの?」
「だって、私達は恒が守ってくれるって言ったじゃん」
「そうだよ。もしかして今更ナシって言うの?」
「いや、それは言わないけどさ。二人を庇いながら戦うのも大変なんだからね」
「うん、それは分かってるわよ」
「そうそう、この町を出たら危険が一杯だって言うんでしょ。そんなの依頼を受けて町を出ているんだから分かっているわよ」
「あのね……」
恒は由香達に対し「それだけじゃない」と話を続けようとしたが、これ以上は言っても受け入れて貰えないと思い口を噤む。
そこへミリーが明良の様子を見にギルドの訓練場へとやって来たのか、恒達を認めると近寄ってくる。
「おかえり、おねえちゃんたち」
「ただいま、ミリー」
「ただいま、明良の様子を見に来たの?」
「うん、そう。アキラはワタシでも分かるくらいにつよくなったよね」
「「そうよね」」
由香と久美はミリーの言葉に相槌を打つと恒の方を見てくる。恒はそれに気付くとふるふると首を横に振る。
「でもね、恒はまだだって言うのよ。ヒドくない?」
「ねえ、そう思うでしょ」
「アキラひとりなら、そうかもだけど。ワタシをまもるんなら、もうちょっとつよくなってもらわないとこまるからね」
「「あ!」」
「分かってくれた?」
恒の考えに今気付いたのか、由香と久美は頭を縦にうんうんと頷く。
「じゃあ、由香と久美も頑張ろうか。ね?」
「「え?」」
「がんばれ~」
「「え?」」
由香と久美も訓練場の中へと恒に連れて行かれると、そこで恒指導での訓練が始まる。
「話が違う~」
「守ってくれるんじゃないの?」
「守るよ。守るけど、強くなった方がいいでしょ。分かったなら文句は言わないの。はい、次!」
「「も~」」
明良達の訓練は日が暮れるまで続いた。
汗まみれの顔を拭いながら、訓練場の外に出た明良をミリーが出迎える。
「おつかれさま、アキラ」
「ミリー、見てたのか?」
「うん、つよくなったね」
「分かるか?」
「うん、わかったよ」
「よし!」
「でも……ワタシをまもるんならもうちょっとだね」
ミリーの言葉に明良の顔が綻ぶが、その次に発せられたミリーの言葉に明良は愕然とする。そして、ドリーはそんな明良の肩を慰める様に後ろからポンポンと叩く。
「娘が済まんな」
「明良、一週間でここまで強くなったんだ。だから、もう少し頑張ればミリーも認めてくれるさ」
「……そうか。そうだよな。よし、頑張るか」
「うん、そうだよ」
「単純だね」
「うん、でもその単純さが強くなれる秘訣かもね」
午前中は由香達と一緒にギルドの依頼を受けながら、由香や久美との連携も強化してきた。
そんなこんなで一週間が経過して、ドリーとの訓練中に「やぁ!」と明良がドリーに仕掛けるとドリーは「ほぅ」と短く感嘆する。
「ふむ、一週間とは言え前とは違って来たな」
「おうよ。俺だって成長してるんだってところを見せつけないとなっ!」
「ふん、だがまだまだだな」
明良が大きく振りかぶりドリーに斬りかかるが、ドリーはそれを軽く払う。
「そうやってすぐに調子に乗るからダメなんだよ。まずはそこから直さないとな」
「くそっ!」
明良はドリーに払われバランスを崩していた体勢を立て直すと再度、ドリーに向かって行く。
「ねえ、まだダメなの?」
「かなりいい線いっていると思うんだけど?」
「うん、もうちょっとかな」
「でも、あれだけ頑張っているんだよ」
「そうだよ。もう十分じゃん」
「……」
明良の頑張りを見てきた由香と久美がそろそろいいんじゃないかと提案してくるが、恒はそれを一蹴する。だが、由香達も素直には引き下がらず食い下がる。
「あのね、言っておくけど本当は二人もまだまだなんだからね。それなのに明良まで面倒を見ることは出来ないの。そこんところ分かっているの?」
「だって、私達は恒が守ってくれるって言ったじゃん」
「そうだよ。もしかして今更ナシって言うの?」
「いや、それは言わないけどさ。二人を庇いながら戦うのも大変なんだからね」
「うん、それは分かってるわよ」
「そうそう、この町を出たら危険が一杯だって言うんでしょ。そんなの依頼を受けて町を出ているんだから分かっているわよ」
「あのね……」
恒は由香達に対し「それだけじゃない」と話を続けようとしたが、これ以上は言っても受け入れて貰えないと思い口を噤む。
そこへミリーが明良の様子を見にギルドの訓練場へとやって来たのか、恒達を認めると近寄ってくる。
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「ただいま、明良の様子を見に来たの?」
「うん、そう。アキラはワタシでも分かるくらいにつよくなったよね」
「「そうよね」」
由香と久美はミリーの言葉に相槌を打つと恒の方を見てくる。恒はそれに気付くとふるふると首を横に振る。
「でもね、恒はまだだって言うのよ。ヒドくない?」
「ねえ、そう思うでしょ」
「アキラひとりなら、そうかもだけど。ワタシをまもるんなら、もうちょっとつよくなってもらわないとこまるからね」
「「あ!」」
「分かってくれた?」
恒の考えに今気付いたのか、由香と久美は頭を縦にうんうんと頷く。
「じゃあ、由香と久美も頑張ろうか。ね?」
「「え?」」
「がんばれ~」
「「え?」」
由香と久美も訓練場の中へと恒に連れて行かれると、そこで恒指導での訓練が始まる。
「話が違う~」
「守ってくれるんじゃないの?」
「守るよ。守るけど、強くなった方がいいでしょ。分かったなら文句は言わないの。はい、次!」
「「も~」」
明良達の訓練は日が暮れるまで続いた。
汗まみれの顔を拭いながら、訓練場の外に出た明良をミリーが出迎える。
「おつかれさま、アキラ」
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「うん、つよくなったね」
「分かるか?」
「うん、わかったよ」
「よし!」
「でも……ワタシをまもるんならもうちょっとだね」
ミリーの言葉に明良の顔が綻ぶが、その次に発せられたミリーの言葉に明良は愕然とする。そして、ドリーはそんな明良の肩を慰める様に後ろからポンポンと叩く。
「娘が済まんな」
「明良、一週間でここまで強くなったんだ。だから、もう少し頑張ればミリーも認めてくれるさ」
「……そうか。そうだよな。よし、頑張るか」
「うん、そうだよ」
「単純だね」
「うん、でもその単純さが強くなれる秘訣かもね」
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