40 / 53
第40話 そろそろかな
しおりを挟む
昨夜の明良の騒動は夜まで続いたがミリーの「おとうさんなんかキラい!」でドリーが撃沈されて、やっと静かになった。
だが、恒だけはその騒動には参加せずに何かをずっと考えていた。
「ねえ、どう思う?」
「どうって、恒のこと?」
由香が久美に対し唐突に質問するが、久美の方もその質問に対し難なく恒のことなのかと返す。
「うん。最近なんだかずっと考えているわよね」
「ん~そう言われればそうかな」
「何を考えていると思う?」
「私に分かるとでも?」
「それもそうか」
「なら、聞くしかないんじゃない」
「聞いてもいいのかな?」
「聞かないと分からないわよ」
「うん、分かった」
二人は恒に近付くと何をずっと考えているのかと直球で聞いてみる。
「あ~うん、その今後のことなんだけどね」
「今後?」
「どうかしたの?」
「ほら、この世界の崩壊にミリーが原因かもってのがあったでしょ」
「「あ~」」
恒が話した内容に二人は頷く。
「だからさ、そのミリーが悲しむことをする訳にはいかないでしょ」
「ごめん、ちょっと話が見えないんだけど」
「私も」
「……ミリーって明良のことが好きだよね」
「そうね。隠すこともないくらいにね」
「少なくてもドリーより好きなのは確かよね」
「でもさ、俺達は世界崩壊の原因を探すのが目的で旅をするよね」
「うん、そうよ。あ! もしかして、そろそろこの町から出ようとか」
「あれ? そうすると明良も一緒よね。ってことは……」
「そう! ミリーが悲しむってことで……」
「「あ!」」
ここに来て由香と久美は恒が悩んでいたことに思い当たる。
そして、恒がそんなことで悩んでいるとも知らずにミリーに世話をやかれている明良とそれを羨ましそうに見ているドリーだった。
「で、どうするの?」
「どうするって?」
「だから、悩んでいるってことは幾つかの答えは出ているんでしょ」
「どうしてそれを」
「分かるわよ。これでもずっと……って、何を言わせるのよ!」
「アイタ!」
由香が恒に悩んでいることに対する答えを聞いてくる。恒はなんで由香が既に答えを出していることを知っているのか不思議に思うが、由香からすればずっと見ていた恒のことだから、すぐに分かってしまうが、そんなことを言えるハズもなく照れ隠しに恒の右肩を強く叩いてしまう由香だった。
「それで、どんなパターンを用意したのよ」
「あ、うん。まずは明良をここに残す」
「まあ、それが無難ね」
「ミリーも悲しくないし。うん、いいかも」
「まだ、途中なんだけど……」
恒が一つの答えとして、この町に明良を残していくことでミリーが悲しまずに済むだろうと提案すると由香と久美は、まるでそうするのがいいように、その「一択しかない」とでも言いたげだ。
「とにかく、残りも聞いてね」
「「は~い」」
他に提案したのは「皆でこの町に留まること」と、「ミリーを連れて旅を続ける」ことだ。
恒としては世界崩壊の原因を探すという目的がある為、この町に留まることは出来ない。それにドリーの安全の為にも、出来るだけ早くあの国から離れたいというのもある。
なので、「この町に留まる」という選択肢はなくなるので、実質は「ミリーを連れて行く」か「ミリーを置いて行く」ことになる。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな?」
「何?」
「なんで明良を連れて行きたくないの?」
「え?」
由香は恒がどこか明良を遠ざけたいと考えている様に思えたので、どうしてそう思っているのかを聞いてみる。
聞かれた恒としては、そんなことを思っていた訳ではないが、由香に言われてハッとして気付く。
『どうして俺は明良を遠ざけたかったんだろうか』と。
「もしかしてだけどさ、恒って明良が弱いから……だから、一緒に旅をするのが不安なんでしょ」
「あれ? でも、なんでそれは私達には当てはまらないの?」
『ふふふ、わからないのね』
「「ミモネ!」」
不意にミモネが現れると「そんなことも分からないの」とでも言いたげに薄い胸を張って威張っている。そして、ミモネはそのままの姿勢で話し出す。
『あのね、恒は無意識だけど二人ならなんとか守れると思っているの』
「「あ!」」
『そうなの、だから明良までは守れないから、一緒に旅をするのを躊躇っているのなの。ヒドいのなの』
「あれ? そうだったの?」
恒はミモネに指摘されて初めて理解したという感じでミモネに問い返してしまう。
「じゃあ、答えは決まったね!」
「由香、それってどういうこと?」
「だから、弱いのなら強くなればいいだけの話でしょ。だって、さっきも『毛が生えてない』ことを気にしていたくらいだから」
「「ああ~」」
由香の提案に恒も久美も『その手があったか』と思った。だが、一つ大きな問題が残っている。
そう、誰がその真実を明良に伝えるのかという問題だ。
由香と久美は恒を見るが、恒はミモネをジッと見る。
『え? 僕なの?』
「頼む!」
「頼んだわよ!」
「お願い!」
『え~』
だが、恒だけはその騒動には参加せずに何かをずっと考えていた。
「ねえ、どう思う?」
「どうって、恒のこと?」
由香が久美に対し唐突に質問するが、久美の方もその質問に対し難なく恒のことなのかと返す。
「うん。最近なんだかずっと考えているわよね」
「ん~そう言われればそうかな」
「何を考えていると思う?」
「私に分かるとでも?」
「それもそうか」
「なら、聞くしかないんじゃない」
「聞いてもいいのかな?」
「聞かないと分からないわよ」
「うん、分かった」
二人は恒に近付くと何をずっと考えているのかと直球で聞いてみる。
「あ~うん、その今後のことなんだけどね」
「今後?」
「どうかしたの?」
「ほら、この世界の崩壊にミリーが原因かもってのがあったでしょ」
「「あ~」」
恒が話した内容に二人は頷く。
「だからさ、そのミリーが悲しむことをする訳にはいかないでしょ」
「ごめん、ちょっと話が見えないんだけど」
「私も」
「……ミリーって明良のことが好きだよね」
「そうね。隠すこともないくらいにね」
「少なくてもドリーより好きなのは確かよね」
「でもさ、俺達は世界崩壊の原因を探すのが目的で旅をするよね」
「うん、そうよ。あ! もしかして、そろそろこの町から出ようとか」
「あれ? そうすると明良も一緒よね。ってことは……」
「そう! ミリーが悲しむってことで……」
「「あ!」」
ここに来て由香と久美は恒が悩んでいたことに思い当たる。
そして、恒がそんなことで悩んでいるとも知らずにミリーに世話をやかれている明良とそれを羨ましそうに見ているドリーだった。
「で、どうするの?」
「どうするって?」
「だから、悩んでいるってことは幾つかの答えは出ているんでしょ」
「どうしてそれを」
「分かるわよ。これでもずっと……って、何を言わせるのよ!」
「アイタ!」
由香が恒に悩んでいることに対する答えを聞いてくる。恒はなんで由香が既に答えを出していることを知っているのか不思議に思うが、由香からすればずっと見ていた恒のことだから、すぐに分かってしまうが、そんなことを言えるハズもなく照れ隠しに恒の右肩を強く叩いてしまう由香だった。
「それで、どんなパターンを用意したのよ」
「あ、うん。まずは明良をここに残す」
「まあ、それが無難ね」
「ミリーも悲しくないし。うん、いいかも」
「まだ、途中なんだけど……」
恒が一つの答えとして、この町に明良を残していくことでミリーが悲しまずに済むだろうと提案すると由香と久美は、まるでそうするのがいいように、その「一択しかない」とでも言いたげだ。
「とにかく、残りも聞いてね」
「「は~い」」
他に提案したのは「皆でこの町に留まること」と、「ミリーを連れて旅を続ける」ことだ。
恒としては世界崩壊の原因を探すという目的がある為、この町に留まることは出来ない。それにドリーの安全の為にも、出来るだけ早くあの国から離れたいというのもある。
なので、「この町に留まる」という選択肢はなくなるので、実質は「ミリーを連れて行く」か「ミリーを置いて行く」ことになる。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな?」
「何?」
「なんで明良を連れて行きたくないの?」
「え?」
由香は恒がどこか明良を遠ざけたいと考えている様に思えたので、どうしてそう思っているのかを聞いてみる。
聞かれた恒としては、そんなことを思っていた訳ではないが、由香に言われてハッとして気付く。
『どうして俺は明良を遠ざけたかったんだろうか』と。
「もしかしてだけどさ、恒って明良が弱いから……だから、一緒に旅をするのが不安なんでしょ」
「あれ? でも、なんでそれは私達には当てはまらないの?」
『ふふふ、わからないのね』
「「ミモネ!」」
不意にミモネが現れると「そんなことも分からないの」とでも言いたげに薄い胸を張って威張っている。そして、ミモネはそのままの姿勢で話し出す。
『あのね、恒は無意識だけど二人ならなんとか守れると思っているの』
「「あ!」」
『そうなの、だから明良までは守れないから、一緒に旅をするのを躊躇っているのなの。ヒドいのなの』
「あれ? そうだったの?」
恒はミモネに指摘されて初めて理解したという感じでミモネに問い返してしまう。
「じゃあ、答えは決まったね!」
「由香、それってどういうこと?」
「だから、弱いのなら強くなればいいだけの話でしょ。だって、さっきも『毛が生えてない』ことを気にしていたくらいだから」
「「ああ~」」
由香の提案に恒も久美も『その手があったか』と思った。だが、一つ大きな問題が残っている。
そう、誰がその真実を明良に伝えるのかという問題だ。
由香と久美は恒を見るが、恒はミモネをジッと見る。
『え? 僕なの?』
「頼む!」
「頼んだわよ!」
「お願い!」
『え~』
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
出戻り巫女の日常
饕餮
ファンタジー
転生者であり、転生前にいた世界に巻き込まれ召喚されて逆戻りしてしまった主人公、黒木 桜。桜と呼べない皆の為にセレシェイラと名乗るも、前世である『リーチェ』の記憶があるからか、懐かしさ故か、それにひっついて歩く元騎士団長やら元騎士やら元神官長やら元侍女やら神殿関係者やらとの、「もしかして私、巻き込まれ体質……?」とぼやく日常と冒険。……になる予定。逆ハーではありません。
★本編完結済み。後日談を不定期更新。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生テイマー、異世界生活を楽しむ
さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる