39 / 53
第39話 生えてますから!
しおりを挟む
「毛が生えてからって……もう、俺はちゃんと生えているってのに……」
キールの店を出てから明良はず~っとブツブツと言っている。「毛が生えた」ってのはそんな直接的なことじゃないと思うんだが……。明良のつぶやきをず~っと聞かされている由香と久美はちょっとだけ興味があるようで「恒も……なのかな?」「じゃない?」「「キャ~!!!」」などと盛り上がっている。
そんな二人の妙な盛り上がりにドリーもヘンにニヤついているし……。
「あ~もう、明良。キールが言っていたのはそういう身体的なことじゃないから」
「分かっている! 分かってはいるけど……」
「じゃあ、何をすればいいのかはわかっているんじゃないの?」
「……」
恒が明良に対し、さっきから明良がぶつくさ言っているのは的外れだと直接的に言うが、さすがに明良もそれくらいは分かってはいるみたいだけど……。だから、何をすればいいのかってのは何も思い付いていないみたいだ。
「もう……あのさ、毛が生えていないってのは初心者ってことを言っているんだけど、それは分かっているの?」
「え? そうなのか?」
「へ? なんだと思っていたの?」
「いや……その……なんだ……」
「もしかして、何も分かっていなかったってこと?」
「……ごめん!」
明良が恒に対し素直に頭を下げる。
どうやら、キールが言った言葉に対し侮蔑とまではいかないが、明らかに恒より下に見られたことに対し憤慨していただけらしい。
「明良、そりゃしょうがないよ」
「うん、しょうがない。だって、恒だもん!」
「そうだよね」
「だよね」
「お前ら……それちっとも慰めになってないぞ」
「え~だって、そんなの最初っから分かりきっているハナシじゃん」
「そうだよ。あんなチート様相手に何ムキになってんのってハナシじゃん」
「……それもそうか」
「そうそう、明良にはミリーがいるんだから」
「そうそう。まあ、あのミリーが毛が生えていないってくらいで明良を見限るとは思えないけどね」
「だぁ~もう、ちゃんと生えているって! なあ、恒!」
「え?」
「『え?』ってなんだよ。恒は俺のをちゃんと見ているだろ?」
「え……見てないけど?」
「なんでだよ! ちゃんと見ろよ!」
「え~なんで同姓のを見ないとダメなんだよ。気持ち悪い」
「気持ち悪いってなんだよ! なあ、ちゃんと見てくれよ! なんなら、そこの陰ででも……」
「いやいやいや、冗談でもイヤだし」
「なんでだよ!」
「なんでもだよ! そんなに見て欲しいなら、ミリーに頼めばいいじゃないか!」
「なんで、ミリーに頼むんだよ!」
「だって、いつも一緒にお風呂に入っているじゃないか。そうだ! なあ、由香と久美からもミリーにちゃんと確認するようにお願いしてもらえばいいんじゃないか?」」
「それはいいわね」
「そうね、ミリーならお願い聞いてくれそう!」
「……」
恒の提案に由香と久美はノリ気だが、明良は逆に沈んだ表情になり、それを横で聞いていたドリーが憤慨する。
「お前ら、ミリーに何をさせる気だ!」
「え? 生えているかの確認だけど?」
「そうだよ。恒がしないのなら、ミリーしかいないじゃない」
「ぐぬぬ……いや、ダメだ! ミリーにそんな変な物を見せる訳にはいかない。だから、ワシが見る! 風呂に行くまでもない。明良、脱げ!」
「え?」
「『え?』じゃない! ミリーに変な物を見せる訳にはいかないだろ。ほら、早くするんだ! 減るもんじゃないだろ。ほら、早く!」
「ちょっと、待て! ドリー、今ここがどこか分かっているのか?」
「そんなものは関係ない。いいから、ほら!」
「おとうさん?」
「「「へ?」」」
ドリーが明良を組み伏せ、確認しようとしていたところに横から声を掛けられたドリーが見たのは、買い物籠を提げたミリーだった。
「おとうさん、アキラになにをしているの?」
「ミリー……違うんだ。これはその……」
「いいわけはおへやでききます。アキラ、いこう」
「あ、ああ……」
ミリーは明良の手を取るとそのまま、宿へと歩き出す。
そして、その後ろからドリーが慌ててミリー達を追い掛ける。
「ミリー、違うんだ! 話を聞いてくれ!」
「もう、うるさい! アキラ、はやくかえろう」
「ああ、そうだな」
ここで明良もドリーに対しちょっとした意趣返しが出来たと思ったのかドリーに対しニヤッと笑う。
そして、ドリーも明良のその表情に気付き、ミリーに対し更に言い訳をしようとするがミリーはドリーに対し耳を貸す様子もなくずんずんと先を歩いて行く。
「あ~あ、嫌われちゃったね、こりゃ」
「そうみたいね」
「……」
何気なく交わす由香と久美の会話を聞いて、ドリーが二人をキッと睨み付ける。
「え? 私達のせいなの?」
「違うよね。どう見てもドリーの暴走のせいだよね?」
「……」
二人にそう言われると思うところがあったのか、今度は恒の方を見るドリー。
「ごめん。俺にはどうしようも出来ないよ」
キールの店を出てから明良はず~っとブツブツと言っている。「毛が生えた」ってのはそんな直接的なことじゃないと思うんだが……。明良のつぶやきをず~っと聞かされている由香と久美はちょっとだけ興味があるようで「恒も……なのかな?」「じゃない?」「「キャ~!!!」」などと盛り上がっている。
そんな二人の妙な盛り上がりにドリーもヘンにニヤついているし……。
「あ~もう、明良。キールが言っていたのはそういう身体的なことじゃないから」
「分かっている! 分かってはいるけど……」
「じゃあ、何をすればいいのかはわかっているんじゃないの?」
「……」
恒が明良に対し、さっきから明良がぶつくさ言っているのは的外れだと直接的に言うが、さすがに明良もそれくらいは分かってはいるみたいだけど……。だから、何をすればいいのかってのは何も思い付いていないみたいだ。
「もう……あのさ、毛が生えていないってのは初心者ってことを言っているんだけど、それは分かっているの?」
「え? そうなのか?」
「へ? なんだと思っていたの?」
「いや……その……なんだ……」
「もしかして、何も分かっていなかったってこと?」
「……ごめん!」
明良が恒に対し素直に頭を下げる。
どうやら、キールが言った言葉に対し侮蔑とまではいかないが、明らかに恒より下に見られたことに対し憤慨していただけらしい。
「明良、そりゃしょうがないよ」
「うん、しょうがない。だって、恒だもん!」
「そうだよね」
「だよね」
「お前ら……それちっとも慰めになってないぞ」
「え~だって、そんなの最初っから分かりきっているハナシじゃん」
「そうだよ。あんなチート様相手に何ムキになってんのってハナシじゃん」
「……それもそうか」
「そうそう、明良にはミリーがいるんだから」
「そうそう。まあ、あのミリーが毛が生えていないってくらいで明良を見限るとは思えないけどね」
「だぁ~もう、ちゃんと生えているって! なあ、恒!」
「え?」
「『え?』ってなんだよ。恒は俺のをちゃんと見ているだろ?」
「え……見てないけど?」
「なんでだよ! ちゃんと見ろよ!」
「え~なんで同姓のを見ないとダメなんだよ。気持ち悪い」
「気持ち悪いってなんだよ! なあ、ちゃんと見てくれよ! なんなら、そこの陰ででも……」
「いやいやいや、冗談でもイヤだし」
「なんでだよ!」
「なんでもだよ! そんなに見て欲しいなら、ミリーに頼めばいいじゃないか!」
「なんで、ミリーに頼むんだよ!」
「だって、いつも一緒にお風呂に入っているじゃないか。そうだ! なあ、由香と久美からもミリーにちゃんと確認するようにお願いしてもらえばいいんじゃないか?」」
「それはいいわね」
「そうね、ミリーならお願い聞いてくれそう!」
「……」
恒の提案に由香と久美はノリ気だが、明良は逆に沈んだ表情になり、それを横で聞いていたドリーが憤慨する。
「お前ら、ミリーに何をさせる気だ!」
「え? 生えているかの確認だけど?」
「そうだよ。恒がしないのなら、ミリーしかいないじゃない」
「ぐぬぬ……いや、ダメだ! ミリーにそんな変な物を見せる訳にはいかない。だから、ワシが見る! 風呂に行くまでもない。明良、脱げ!」
「え?」
「『え?』じゃない! ミリーに変な物を見せる訳にはいかないだろ。ほら、早くするんだ! 減るもんじゃないだろ。ほら、早く!」
「ちょっと、待て! ドリー、今ここがどこか分かっているのか?」
「そんなものは関係ない。いいから、ほら!」
「おとうさん?」
「「「へ?」」」
ドリーが明良を組み伏せ、確認しようとしていたところに横から声を掛けられたドリーが見たのは、買い物籠を提げたミリーだった。
「おとうさん、アキラになにをしているの?」
「ミリー……違うんだ。これはその……」
「いいわけはおへやでききます。アキラ、いこう」
「あ、ああ……」
ミリーは明良の手を取るとそのまま、宿へと歩き出す。
そして、その後ろからドリーが慌ててミリー達を追い掛ける。
「ミリー、違うんだ! 話を聞いてくれ!」
「もう、うるさい! アキラ、はやくかえろう」
「ああ、そうだな」
ここで明良もドリーに対しちょっとした意趣返しが出来たと思ったのかドリーに対しニヤッと笑う。
そして、ドリーも明良のその表情に気付き、ミリーに対し更に言い訳をしようとするがミリーはドリーに対し耳を貸す様子もなくずんずんと先を歩いて行く。
「あ~あ、嫌われちゃったね、こりゃ」
「そうみたいね」
「……」
何気なく交わす由香と久美の会話を聞いて、ドリーが二人をキッと睨み付ける。
「え? 私達のせいなの?」
「違うよね。どう見てもドリーの暴走のせいだよね?」
「……」
二人にそう言われると思うところがあったのか、今度は恒の方を見るドリー。
「ごめん。俺にはどうしようも出来ないよ」
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
その悪役令嬢はなぜ死んだのか
キシバマユ
ファンタジー
前世で死を迎えた菊池奈緒は異世界で転生した。
奈緒は満身創痍の体で目覚め、助けてもらった先生の元で治療魔法の見習いとして新たな人生を歩み始める。
しかし、自分が今宿っている体の前の持ち主が「重大な悪事」を繰り返していたらしいことを知り、次第に運命の謎に巻き込まれていく。
奈緒は自身の過去と向き合い今の体の秘密を探る中で、この異世界でどのように生き延びるかを模索していく。
奈緒は「悪役令嬢」としての運命をどう回避するのか__
表紙はillustACのものを使わせていただきました
対人恐怖症は異世界でも下を向きがち
こう7
ファンタジー
円堂 康太(えんどう こうた)は、小学生時代のトラウマから対人恐怖症に陥っていた。学校にほとんど行かず、最大移動距離は200m先のコンビニ。
そんな彼は、とある事故をきっかけに神様と出会う。
そして、過保護な神様は異世界フィルロードで生きてもらうために多くの力を与える。
人と極力関わりたくない彼を、老若男女のフラグさん達がじわじわと近づいてくる。
容赦なく迫ってくるフラグさん。
康太は回避するのか、それとも受け入れて前へと進むのか。
なるべく間隔を空けず更新しようと思います!
よかったら、読んでください
アルケミスト・スタートオーバー ~誰にも愛されず孤独に死んだ天才錬金術師は幼女に転生して人生をやりなおす~
エルトリア
ファンタジー
孤児からストリートチルドレンとなり、その後も養父に殺害されかけたりと不幸な人生を歩んでいた天才錬金術師グラス=ディメリア。
若くして病魔に蝕まれ、死に抗おうと最後の研究を進める彼は、禁忌に触れたとして女神の代行者――神人から処刑を言い渡される。
抗うことさえ出来ずに断罪されたグラスだったが、女神アウローラから生前の錬金術による功績を讃えられ『転生』の機会を与えられた。
本来であれば全ての記憶を抹消し、新たな生命として生まれ変わるはずのグラスは、別の女神フォルトナの独断により、記憶を保有したまま転生させられる。
グラスが転生したのは、彼の死から三百年後。
赤ちゃん(♀)として生を受けたグラスは、両親によってリーフと名付けられ、新たな人生を歩むことになった。
これは幸福が何かを知らない孤独な錬金術師が、愛を知り、自らの手で幸福を掴むまでの物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!
ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生!
せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい!
魔法アリなら色んなことが出来るよね。
無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。
第一巻 2022年9月発売
第二巻 2023年4月下旬発売
第三巻 2023年9月下旬発売
※※※スピンオフ作品始めました※※※
おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~
てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。
そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。
転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。
そんな冴えない主人公のお話。
-お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる