上 下
8 / 10
第一章 突然の出来事

第八話 崩壊の始まり

しおりを挟む
「ムカつく!」

 口には出さないが今、自分の目の前で宰相の令嬢『グレイス』がウィリアム王子に婚約破棄を言い渡された。私はウィリアム様の後ろに回り、その様子を眺めていたのだが、ウィリアム様にワインまで浴びせられたのに泣くどころかウィリアム様を真っ直ぐに睨み付けている。

『なんでなの! 流れとしては泣いてウィリアム様に縋る場面じゃないの! どうしてこうなったのよ!』

 口には出さないがカミラはウィリアム王子とグレイスのやり取りを見ていてそう思う。

 だが、実際にはウィリアム王子が優勢だったのはここまでで、これからはウィリアム王子が言うこと全てがグレイスにより、冷静に撥ね除けられてしまう。

 そして、そのいくらなんでも無理難題でどう考えても非があるのはウィリアム王子じゃないかとグレイスに対しては同情の様な視線が集中する。

 そしてウィリアム王子は私がグレイス嬢に虐められたと反論する。だけど、それは私がでっち上げたモノなのでグレイス嬢の行動記録なんて参考にしていないものだから、案の定というか当たり前の様にグレイス嬢から「その日は登校していない」と言われる。

 焦ったウィリアム王子に「本当に三日前なのか?」と聞かれるが、相手が違うと言うのならば、変えないと辻褄が合わなくなると思いウィリアム王子には「間違えました。二日前です」と答える。

 ウィリアム王子は私からの返事を聞くと「どうも、間違えたようだ。二日前だ」と意気揚々と答えるが見ていて心苦しくなる。

 そしてグレイス嬢はウィリアム王子の返答を聞くと「二日前ですね。では、何時頃かを教えて頂きますか?」と時間を確認してきたので、ウィリアム王子が私に「十四時だ。そうだな?」と確認して来たので私はそれに頷く。

 だがグレイス嬢は可笑しそうに笑みを浮かべ「十四時……十四時ですか。おかしいですね」と言う。

 だけど、ウィリアム王子は「なんだ。また、学園を休んでいたとでも言うのか。だが、貴様は確かにいたはずだ。私と会ったのだからな」と言いグレイス嬢の思い違いではないのかと責めるが、グレイス嬢は確かに居たが、午前中だけだと言う。

 そして側仕えの女性から私の行動記録なるものを受け取り、内容を確認すると私の自作自演ではないが、私が勝手に階段から落ちたことが証明されてしまった。

 そしてその行動記録をウィリアム王子がグレイス嬢から奪い取ったのを私が更に奪い、その場でビリビリに引き裂いたのだが、それは複製コピーだと言われ愕然とする。

 これで終わりにして欲しいと思ったが、ウィリアム王子は更に続ける。

「貴様はここにいるカミラ嬢を学友の女子に頼み集団で糾弾したと聞いている! どうだ、今度こそ、ぐうの音も出ないだろ! ははは……え?」

 だが、そんなウィリアム王子をグレイス嬢はまるで可哀想な子供や小動物を見るような目で見詰める。

 そしてグレイス嬢はウィリアム王子の背に隠れる私に向かい直接話した方がいいだろうと言うが私が正直に言えるはずもないので返答に困っているとウィリアム王子が「だから、カミラ嬢は関係ないだろう!」と答える。

 だが、グレイス嬢はそんなウィリアム王子を相手にすることなく側仕えの女性からさっきと同じ様に何かの書類を受け取ると、それに目を通す。

「あ、ありましたね。え~と、確か糾弾された内容は『他人の婚約者に色目を使った』ことに対する複数の女性からの追求とありますね」
「嘘よ!」
「そうだ。そんなことがあるわけがない!」

 私は反射的にグレイス嬢にそう叫び、ウィリアム王子も私に同意してくれた。

 そんなウィリアム王子の態度を気にする様子もなくグレイス嬢は私のドレスについて言及するが私はやっと気付いてくれたとばかりに嬉しくなりその場でターンしてみせる。

「そうですか。誠に失礼ですが、そちらのお店で購入するとなれば男爵位の報償では少し苦しいのではと思いますが?」
「え?」

 だが、グレイス嬢から言われたのは羨望でもなく「たかが男爵風情が買える訳がない」と暗に言われどうしようかと思っていたところでウィリアム王子が「自分が買い与えた物だ」と言ってしまう。

 だが、それを聞いたグレイス嬢はウィリアム様に対し本来ならばに使われるべきである公金をちょろまかしたのではと問い詰められる。

 ウィリアム王子はその追求に対し自分のお小遣いだから、問題ないはずだと答えるが、グレイス嬢はそのお小遣いの額を超えて有り余るモノだと更に追求する。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼女は予想の斜め上を行く

ケポリ星人
ファンタジー
仕事人間な女性医師、結城 慶は自宅で患者のカルテを書いている途中、疲れて寝ってしまう。 彼女が次に目を覚ますと、そこは…… 現代医学の申し子がいきなり剣と魔法の世界に! ゲーム?ファンタジー?なにそれ美味しいの?な彼女は、果たして異世界で無事生き抜くことが出来るのか?! 「Oh……マホーデスカナルホドネ……」 〈筆者より、以下若干のネタバレ注意〉 魔法あり、ドラゴンあり、冒険あり、恋愛あり、妖精あり、頭脳戦あり、シリアスあり、コメディーあり、ほのぼのあり。

けだものだもの~虎になった男の異世界酔夢譚~

ちょろぎ
ファンタジー
神の悪戯か悪魔の慈悲か―― アラフォー×1社畜のサラリーマン、何故か虎男として異世界に転移?する。 何の説明も助けもないまま、手探りで人里へ向かえば、言葉は通じず石を投げられ騎兵にまで追われる有様。 試行錯誤と幾ばくかの幸運の末になんとか人里に迎えられた虎男が、無駄に高い身体能力と、現代日本の無駄知識で、他人を巻き込んだり巻き込まれたりしながら、地盤を作って異世界で生きていく、日常描写多めのそんな物語。 第13章が終了しました。 申し訳ありませんが、第14話を区切りに長期(予定数か月)の休載に入ります。 再開の暁にはまたよろしくお願いいたします。 この作品は小説家になろうさんでも掲載しています。 同名のコミック、HP、曲がありますが、それらとは一切関係はありません。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

シン雪女伝説

 (笑)
ファンタジー
十年前の真冬の山で、雪女こと美雪は、無謀にも軽装で山に登り遭難しかけた若者、シンジを助けた。美雪はシンジの無謀な行動に怒りつつも、彼を麓の宿屋前のバス停まで届ける。意識を取り戻したシンジは、目の前に立つ美しい美雪に一目惚れし、彼女に結婚を申し込む。美雪は自分が人間ではない雪女であることを告げ、彼の申し出を断るが、シンジは諦めずに美雪への想いを訴え続ける。最後に、美雪は「10年後も気持ちが変わらなければ考えてやろう」と言い残し、再び山へと帰って行った。シンジは美雪との約束を守り、彼女との再会を心に誓うのであった。 「お姫様抱っこされた冒険者(完結済み)」のアナザーストーリーです。よろしかったら、そちらも読んでください、

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...