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第4話 それは魔法の呪文
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「ねえ、ケイン君。これで全モデルなの?」
「そう、これが蒸気機関車で、これが普通車両で、これが急行車両で、これが特急車両でしょ。そしてこれが夢の超特急ね」
「「……」」
僕はケイン君に車両が一種類だけなのはちょっとイマイチじゃないかなと言うと、またどこからか取りだした色んな形のスラレールをテーブルの上に並べる。
それは煙突が付いている車両に箱形じゃない先端が丸くなっていたり、平たくなっていたりと僕が知っている箱形車両とは違っていた。
なのでケイン君に聞いたんだけど、一つも理解することが出来なかった。
「あれ? 反応がイマイチなんだけど?」
「えっと、ちょっと待ってね。この蒸気機関車と普通車両ってのは見たことがあるから、別にいいけど……後の急行やら特急ってのは何?」
「あ、それね。今は領都とドワーフタウンの間とドワーフタウンの中くらいだから、それ程速く走っていないけど、今アリー様の方で王都と繋ぐ敷設工事をしているでしょ」
「え、そうなの?」
線路はドワーフタウンと領都を繋いでいるのは知っているけど、その先まで延伸していることまでは知らなかった。
「うん、そうなんだ。だからね、距離が長くなるなら少しでも速い方がいいでしょ。だから、その為の急行、特急、超特急ってなる訳なんだけど、如何にも速そうでしょ」
「じゃあ、この形にも意味があるの?」
「そう! 速く走らせるには空気抵抗を減らすことが大事だからね」
「空気抵抗……って?」
「あれ、ピンと来てないみたいだけど……」
「フハハハ! ケイン、サンガンはまだ車にも乗ってないからな。まあ、たまに列車に乗って王都と行き来するくらいだろうが、空気抵抗と言っても理解するのは難しいだろうよ」
「そういう父さんは分かってるの?」
「そりゃ、そうさ。なんせ「ガンツさん!」……おっと、そうじゃった。スマンが、これ以上はまた別の機会じゃな」
父さんは空気抵抗に付いて多少知っているような感じだったけど、ケイン君から注意されると、その先は教えてもらえなかった。
「父さんまで……まあ、いいよ。色んな形があるのはいいことだしね。それで、こっちのは何?」
「これ? これは貨物列車だよ。これが穀物用で、これがお酒とか液体用で、これがコンテナ車両で、これが貨物を引っ張る動力車だよ」
「あぁ~そう言えば、たまに見たことがあるね。そうか、こんなに種類があったんだね。でも、当面は売らないと」
「そう、だってこんな貨車なんていっぱい繋ぎたくなるでしょ。ね、ガンツさん」
「だから、ワシに振るなって」
「それに他の形もそうだけど、実際の急行列車が走り出してからじゃないとね」
「そうだね、じゃ……えっと……」
ケイン君と販売計画を練った後は、予定を決めていく。
「じゃあ、先ずはパッケージデザインをリディアさんには俺から話を通しておくから挨拶だけはしといてね。それとショッピングセンターの配置もお願いします」
「え? ちょっと待って!」
「サンガン、諦めろ」
ケイン君はざっくりとこれからの予定を決めたみたいだけど、要は僕に丸投げしただけで、肝心なところはぼやけている。
だから、僕はこんなんじゃいくら手があっても足りないと待ったを掛けようとしたところで父さんに止められ「諦めろ」とだけ言われる。
「父さん……だって、こんなの一人でやれる量じゃないよ」
「誰も一人でやれとは言ってないだろ」
「もしかして……」
「ああ、そういうことだ。先ずは人集めだな。幸い、その辺のドワーフの里からさら……ゲフンゲフン……リクルートして来た連中がいるから、すぐに集められるだろうさ」
「でも、玩具なんてってバカにされない?」
「そういう連中には実物で遊ばせれば大丈夫だろ。お前も実際に体験したんだし」
「父さんもね」
「まあな。そういう訳だ。それに動くモノが好きなのが男だけだと決めつけない方がいいぞ」
「分かったよ。ってなると先に実際に動いているところを見て貰わないとダメだから……」
僕はケイン君からの課題を解くために人がどれくらい必要なのか、スラレールの楽しさを伝えるためにはどうすればいいかとか色んなことを考え「よし! これなら」と顔を上げれば父さんとケイン君は向かい合って何やら楽しそうにしているのに気付く。
「父さんもケイン君も何してるの?」
「おう、纏まったか」
「うん、ざっくりとした予定だけど、先ずは売り場の配置からと思ってね」
「じゃあ、もう後はお前に任せてもいいな」
「よろしくお願いします」
「うん、任せて……じゃなくて、何してたの?」
「気にするな」
「いやいやいや、無理でしょ。気になるって。それも玩具なんでしょ」
「うん、そう。これはミニカーだね」
「ミニカー?」
「……ケイン君、僕はスラレールだけでもいっぱいいっぱいなんだけど」
「うん。頑張って」
「分かった! 頑張るってならないからね。無理だって、倒れちゃうよ」
「だから、人を頼れと言っているだろうが」
「それは分かっているけど……で、そのミニカーをどうするの?」
「それはこういうこと!」
「え! ……えぇ~!」
「サンガン、呪文だ」
「あ! 『ケイン君だから』『ケイン君だから』『ケイン君だから』……」
「そう、これが蒸気機関車で、これが普通車両で、これが急行車両で、これが特急車両でしょ。そしてこれが夢の超特急ね」
「「……」」
僕はケイン君に車両が一種類だけなのはちょっとイマイチじゃないかなと言うと、またどこからか取りだした色んな形のスラレールをテーブルの上に並べる。
それは煙突が付いている車両に箱形じゃない先端が丸くなっていたり、平たくなっていたりと僕が知っている箱形車両とは違っていた。
なのでケイン君に聞いたんだけど、一つも理解することが出来なかった。
「あれ? 反応がイマイチなんだけど?」
「えっと、ちょっと待ってね。この蒸気機関車と普通車両ってのは見たことがあるから、別にいいけど……後の急行やら特急ってのは何?」
「あ、それね。今は領都とドワーフタウンの間とドワーフタウンの中くらいだから、それ程速く走っていないけど、今アリー様の方で王都と繋ぐ敷設工事をしているでしょ」
「え、そうなの?」
線路はドワーフタウンと領都を繋いでいるのは知っているけど、その先まで延伸していることまでは知らなかった。
「うん、そうなんだ。だからね、距離が長くなるなら少しでも速い方がいいでしょ。だから、その為の急行、特急、超特急ってなる訳なんだけど、如何にも速そうでしょ」
「じゃあ、この形にも意味があるの?」
「そう! 速く走らせるには空気抵抗を減らすことが大事だからね」
「空気抵抗……って?」
「あれ、ピンと来てないみたいだけど……」
「フハハハ! ケイン、サンガンはまだ車にも乗ってないからな。まあ、たまに列車に乗って王都と行き来するくらいだろうが、空気抵抗と言っても理解するのは難しいだろうよ」
「そういう父さんは分かってるの?」
「そりゃ、そうさ。なんせ「ガンツさん!」……おっと、そうじゃった。スマンが、これ以上はまた別の機会じゃな」
父さんは空気抵抗に付いて多少知っているような感じだったけど、ケイン君から注意されると、その先は教えてもらえなかった。
「父さんまで……まあ、いいよ。色んな形があるのはいいことだしね。それで、こっちのは何?」
「これ? これは貨物列車だよ。これが穀物用で、これがお酒とか液体用で、これがコンテナ車両で、これが貨物を引っ張る動力車だよ」
「あぁ~そう言えば、たまに見たことがあるね。そうか、こんなに種類があったんだね。でも、当面は売らないと」
「そう、だってこんな貨車なんていっぱい繋ぎたくなるでしょ。ね、ガンツさん」
「だから、ワシに振るなって」
「それに他の形もそうだけど、実際の急行列車が走り出してからじゃないとね」
「そうだね、じゃ……えっと……」
ケイン君と販売計画を練った後は、予定を決めていく。
「じゃあ、先ずはパッケージデザインをリディアさんには俺から話を通しておくから挨拶だけはしといてね。それとショッピングセンターの配置もお願いします」
「え? ちょっと待って!」
「サンガン、諦めろ」
ケイン君はざっくりとこれからの予定を決めたみたいだけど、要は僕に丸投げしただけで、肝心なところはぼやけている。
だから、僕はこんなんじゃいくら手があっても足りないと待ったを掛けようとしたところで父さんに止められ「諦めろ」とだけ言われる。
「父さん……だって、こんなの一人でやれる量じゃないよ」
「誰も一人でやれとは言ってないだろ」
「もしかして……」
「ああ、そういうことだ。先ずは人集めだな。幸い、その辺のドワーフの里からさら……ゲフンゲフン……リクルートして来た連中がいるから、すぐに集められるだろうさ」
「でも、玩具なんてってバカにされない?」
「そういう連中には実物で遊ばせれば大丈夫だろ。お前も実際に体験したんだし」
「父さんもね」
「まあな。そういう訳だ。それに動くモノが好きなのが男だけだと決めつけない方がいいぞ」
「分かったよ。ってなると先に実際に動いているところを見て貰わないとダメだから……」
僕はケイン君からの課題を解くために人がどれくらい必要なのか、スラレールの楽しさを伝えるためにはどうすればいいかとか色んなことを考え「よし! これなら」と顔を上げれば父さんとケイン君は向かい合って何やら楽しそうにしているのに気付く。
「父さんもケイン君も何してるの?」
「おう、纏まったか」
「うん、ざっくりとした予定だけど、先ずは売り場の配置からと思ってね」
「じゃあ、もう後はお前に任せてもいいな」
「よろしくお願いします」
「うん、任せて……じゃなくて、何してたの?」
「気にするな」
「いやいやいや、無理でしょ。気になるって。それも玩具なんでしょ」
「うん、そう。これはミニカーだね」
「ミニカー?」
「……ケイン君、僕はスラレールだけでもいっぱいいっぱいなんだけど」
「うん。頑張って」
「分かった! 頑張るってならないからね。無理だって、倒れちゃうよ」
「だから、人を頼れと言っているだろうが」
「それは分かっているけど……で、そのミニカーをどうするの?」
「それはこういうこと!」
「え! ……えぇ~!」
「サンガン、呪文だ」
「あ! 『ケイン君だから』『ケイン君だから』『ケイン君だから』……」
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