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第5話 一つの真実
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母親に断り、後輩刑事がスケッチブックに描かれている人物をスマホに納めると礼を言う。
「娘さんは、この人物について何か言われてましたか?」
「そうですね、娘も最初はそこにいるのは分からなかったようなのですが、ある日……ふと、そちらを見ると視線が合った気がしたと言ってました」
「視線ですか?」
「ええ、娘も私もそれほど霊感が強いとは思いませんが、娘はいつの間にか目が合うようになり、笑いかけると向こうも笑い、手を振って見せれば、最初はぎこちなさそうにしていたのに、数日後には観念したのか、手も振り返すようになったとかで登下校の楽しみにしていました」
「では、娘さんも……」
「ええ、分かってはいたんでしょうね。だから、見ることは出来ても話すことは出来なかったようでとても残念がっていましたね」
「そうなんですね」
二人は母親に礼を述べてからマンションを後にする。
「コンビニ前の通りに地縛霊ですか……」
「妙な話だな。でも、これで一つ分かったことがある」
「なんですか?」
「あの社長だよ」
「はい?」
「だから、コンビニ前の通りは絶対に通らなかったと言っていただろ」
「あ! じゃあ……」
「まあ、そういうことだろうな。百じゃなくても0でもないだろう。きっと何か関連しているハズだ」
「でも、どうやってそれを証明するんですか。相手は地縛霊ですよ。取り調べることなんて出来ませんよ」
「なら、調べられることを調べるしかないだろ」
「何をですか?」
「お前がさっき地縛霊だと言ったじゃないか。どういう場合に人が地縛霊になるかは大体は分かるだろ」
「あ~なるほど」
「ああ、そういうことだ。ほら、帰るぞ。運転、よろしく」
「ハイ!」
署に戻った二人はまず、資料室に向かいコンビニが何時建てられたのかを確認した。
「ありました。これだと、建設は十年前とありますね」
「その前は?」
「ちょっと、待って下さい。あ! 建てられたのは十年前ですが、その前に十年ほど放置されていた様です。で、その……今から二十年前に火事で焼失してますね。当時の家の持ち主は『間崎修平』とありますね」
「マサキ?」
「ええ、間崎修平とありますよ」
「マサキだ!」
「え?」
「だから、マサキだよ! あの社長の『マサキガ』は『間崎が』だろうが!」
「え? あ!」
それから、二人は間崎修平に関する全てを調べた。そして、その資料の中から間崎修平の顔写真を見付けることが出来たが、その写真は疾走した女子高校生がスケッチした男性と同じ顔をしていた。
そして、その間崎修平は今から二十年前に無理心中の末に自宅に放火した犯人として指名手配されていることが分かった。
間崎には当時、六歳の息子と四歳の娘、それに二つ下の妻と一緒に四人で暮らしていた。近所でも悪い噂はなく、よく家族一緒に仲良く出掛けている様子も見られていた。だから、近所に住む人々も間崎修平が一家を惨殺するような男とは思えないという報告しか聞こえてこない。
だが、他の者の犯行とするにも、それを示す物証などはなかった。警察としては真犯人が誰であれ、今最も疑わしいのは間崎修平だと決めつけて捜査したものの間崎修平を見付けることは出来ずに二十年の時が経った。
「えっと、今までのを纏めると……」
「纏めるまでもないだろう。間崎修平は目の前で妻子を殺された後に自分も殺され、どこかに埋められた。そして、その一人は考えるまでもなく田中社長だろうな」
「やっぱり、そうなりますか」
「地縛霊になるほどの強い怨みだからな。むしろ、それ以外は考えられないな」
「でも、田中社長が、その一人ってのはどういうことなんですか?」
「あのな……」
後輩刑事に呆れながらも先輩刑事が噛み砕いて説明したのは、一家四人を惨殺することは一人じゃ無理だと言い、少なくとも二人は必要だろうと言う。
「じゃあ、最低でも後一人は間崎修平が呪い殺すって言うんですか」
「そうだな」
「でも、間崎はあの場所から動けないんですよ。一体、どうやって……あ!」
「そうだ。気付いたか」
「でも、そんなこ「不可能と言いたいか?」……ええ、そうです」
「だが、一人は確実に殺されたぞ」
「あ……」
後輩刑事は間崎修平が自分達一家を惨殺した犯人グループを呪い殺すだろうと言われ、その場から動けない地縛霊となった間崎にそんなことは無理だろうと反論するが、先輩刑事が言うように既に一人は殺されている。それも動画を見ただけでだ。
後輩刑事も反論したかったが、既に殺されているという事実がある。しかも動画は既に拡散されているのだ。田中社長が呪い殺された様子と一緒に。
「後は田中が殺した理由だな」
「え? 田中はもう殺されてますよ」
「はぁ……だから、最初に間崎を殺したのは田中だろ。一家四人を殺すほどだ。何の理由もなく一家全員を殺すなんてことはないだろう。それが田中自身の問題なのか。それとも田中の仲間のことが原因なのかは、ちゃんと調べないとダメだろうな」
「でも、二十年も前ですよ。分かりますかね」
「どうだろうな。でも、そんなことよりもだ。こんなことを捜査会議で発表してもいいと思うか」
「あ~ふざけるなって言われるでしょうね」
「そうだろうな。ってことで、頼むな」
「え~」
「娘さんは、この人物について何か言われてましたか?」
「そうですね、娘も最初はそこにいるのは分からなかったようなのですが、ある日……ふと、そちらを見ると視線が合った気がしたと言ってました」
「視線ですか?」
「ええ、娘も私もそれほど霊感が強いとは思いませんが、娘はいつの間にか目が合うようになり、笑いかけると向こうも笑い、手を振って見せれば、最初はぎこちなさそうにしていたのに、数日後には観念したのか、手も振り返すようになったとかで登下校の楽しみにしていました」
「では、娘さんも……」
「ええ、分かってはいたんでしょうね。だから、見ることは出来ても話すことは出来なかったようでとても残念がっていましたね」
「そうなんですね」
二人は母親に礼を述べてからマンションを後にする。
「コンビニ前の通りに地縛霊ですか……」
「妙な話だな。でも、これで一つ分かったことがある」
「なんですか?」
「あの社長だよ」
「はい?」
「だから、コンビニ前の通りは絶対に通らなかったと言っていただろ」
「あ! じゃあ……」
「まあ、そういうことだろうな。百じゃなくても0でもないだろう。きっと何か関連しているハズだ」
「でも、どうやってそれを証明するんですか。相手は地縛霊ですよ。取り調べることなんて出来ませんよ」
「なら、調べられることを調べるしかないだろ」
「何をですか?」
「お前がさっき地縛霊だと言ったじゃないか。どういう場合に人が地縛霊になるかは大体は分かるだろ」
「あ~なるほど」
「ああ、そういうことだ。ほら、帰るぞ。運転、よろしく」
「ハイ!」
署に戻った二人はまず、資料室に向かいコンビニが何時建てられたのかを確認した。
「ありました。これだと、建設は十年前とありますね」
「その前は?」
「ちょっと、待って下さい。あ! 建てられたのは十年前ですが、その前に十年ほど放置されていた様です。で、その……今から二十年前に火事で焼失してますね。当時の家の持ち主は『間崎修平』とありますね」
「マサキ?」
「ええ、間崎修平とありますよ」
「マサキだ!」
「え?」
「だから、マサキだよ! あの社長の『マサキガ』は『間崎が』だろうが!」
「え? あ!」
それから、二人は間崎修平に関する全てを調べた。そして、その資料の中から間崎修平の顔写真を見付けることが出来たが、その写真は疾走した女子高校生がスケッチした男性と同じ顔をしていた。
そして、その間崎修平は今から二十年前に無理心中の末に自宅に放火した犯人として指名手配されていることが分かった。
間崎には当時、六歳の息子と四歳の娘、それに二つ下の妻と一緒に四人で暮らしていた。近所でも悪い噂はなく、よく家族一緒に仲良く出掛けている様子も見られていた。だから、近所に住む人々も間崎修平が一家を惨殺するような男とは思えないという報告しか聞こえてこない。
だが、他の者の犯行とするにも、それを示す物証などはなかった。警察としては真犯人が誰であれ、今最も疑わしいのは間崎修平だと決めつけて捜査したものの間崎修平を見付けることは出来ずに二十年の時が経った。
「えっと、今までのを纏めると……」
「纏めるまでもないだろう。間崎修平は目の前で妻子を殺された後に自分も殺され、どこかに埋められた。そして、その一人は考えるまでもなく田中社長だろうな」
「やっぱり、そうなりますか」
「地縛霊になるほどの強い怨みだからな。むしろ、それ以外は考えられないな」
「でも、田中社長が、その一人ってのはどういうことなんですか?」
「あのな……」
後輩刑事に呆れながらも先輩刑事が噛み砕いて説明したのは、一家四人を惨殺することは一人じゃ無理だと言い、少なくとも二人は必要だろうと言う。
「じゃあ、最低でも後一人は間崎修平が呪い殺すって言うんですか」
「そうだな」
「でも、間崎はあの場所から動けないんですよ。一体、どうやって……あ!」
「そうだ。気付いたか」
「でも、そんなこ「不可能と言いたいか?」……ええ、そうです」
「だが、一人は確実に殺されたぞ」
「あ……」
後輩刑事は間崎修平が自分達一家を惨殺した犯人グループを呪い殺すだろうと言われ、その場から動けない地縛霊となった間崎にそんなことは無理だろうと反論するが、先輩刑事が言うように既に一人は殺されている。それも動画を見ただけでだ。
後輩刑事も反論したかったが、既に殺されているという事実がある。しかも動画は既に拡散されているのだ。田中社長が呪い殺された様子と一緒に。
「後は田中が殺した理由だな」
「え? 田中はもう殺されてますよ」
「はぁ……だから、最初に間崎を殺したのは田中だろ。一家四人を殺すほどだ。何の理由もなく一家全員を殺すなんてことはないだろう。それが田中自身の問題なのか。それとも田中の仲間のことが原因なのかは、ちゃんと調べないとダメだろうな」
「でも、二十年も前ですよ。分かりますかね」
「どうだろうな。でも、そんなことよりもだ。こんなことを捜査会議で発表してもいいと思うか」
「あ~ふざけるなって言われるでしょうね」
「そうだろうな。ってことで、頼むな」
「え~」
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