34 / 66
語呂は大事です
しおりを挟む
「ありがとうございました。本当に助かりました」
「いえいえ、また何かありましたらお気軽にお訪ね下さい」
「はい!」
女性が一礼すると、手に持っていたバッグから熨斗袋を取り出し、側にいた女性に差し出す。
「ありがとうございます」
「では……」
女性が立ち上がり、扉を開け退室すると奧に座っていた神主の格好をした男が漏らす。
「なあ、さっきのってネコの話だよな?」
「ええ、そうですけど? それが何か?」
「何かってお前……ここにサテライトを出すって言ったのはお前だろ。確かに人は来るけど、来るのはネコのことの悩みばかりだ。一体、何がどうしてこうなった……」
「ハァ~今更何を言うのかと思えば……いいですか? 山奥の神社に人が来ないからどうにか出来ないかってことで、知り合いの大家さんに頼んで、ここを借りたんでしょ。忘れたの?」
女性が言うようにここは商業施設の中のビルの一室で、知り合いの大家から格安で借り受け、山奥の神社のサテライト施設を用意したと言う訳だ。
「でもよ~なんでネコばっかりなんだ?」
「あ~それ。それはね、これのせいじゃないかな?」
女性がそう言って取り出したのは、ここを開設するに当たり作ったチラシだった。
そのチラシには『悩みごと引き受けます』と書かれていた。
「これが?」
「分からない?」
「全く……」
「この番号は分かる?」
「確か、ここの番号だろ?」
「そうよ。読んでみて」
「読む?」
「番号を登録した時の語呂があるでしょ。それを口に出して読んでみてよ」
「え~と、確か……250783……だったよな」
「そうよね。なら、なんでそれをチラシに書かなかったの?」
「いや、確かそう言うのは書いちゃダメだと聞いていたから……」
「そうね。でも、それはこの場合には適用されないから」
「え、そうなの?」
「そう。それで、この番号がなんて呼ばれているかと言えば……250783……って読まれているの」
「ハァ~なんでだ?」
「なんでって、それはコレのせいでしょうが! コレ!」
女性が怒気を抑えながらチラシの一点を指す。そこにはクロネコの猫耳と尻尾を着けた巫女服姿の女性だった。
「我ながら、良い写真を用意出来たと思っているんだけどな。ダメなのか?」
「ダメに決まっているでしょ! なんでよりによってこの写真を使うのよ! 誰にも見せないって言うから、撮らせてあげたのに……」
「そりゃ、悪かったよ。でも、なんでコレが原因なんだ?」
女性はハァ~と短く嘆息すると、男性を睨み付ける。
「いい! このネコのコスプレにニャンコの語呂合わせ。これだけで、ネコのことを相談する場所だと思うでしょ!」
「え~まさか……」
「そうね。まさかと思いたいけど、次の人が待っているわよ。呼ぶわね」
「ああ……」
女性が扉を開けると高齢の女性が入ってくる。
「お願いします」
「はい。今日はどうしました?」
「はい、ネコが粉薬を飲んでくれなくて……」
男性はまたネコのことかと一瞬天を仰ぐが女性を真っ直ぐに見据えると口を開く。
「いいですか。粉薬は水で溶いてスポイトを使って飲ませるのがよいでしょう」
「はぁ……ですが、それだと全部飲ませるのに時間が掛かるのでは……」
「そうですか……ならば、粉薬をオブラートで包んで飲ませて下さい。それならばどうでしょう?」
「オブラートですか。確かにそれなら、出来そうですね。分かりました。やってみます!」
「はい。頑張って下さい」
「はい。ありがとうございます」
女性は立ち上がり、バッグから熨斗袋を取り出すと女性に差し出し退室する。
「やっぱり、ネコのことだったな~」
「そうですね。でも、ちゃんと解決しているじゃないですか」
「それもそうだな。よし、次だ次!」
「はい。じゃあ次もよろしくね」
「いえいえ、また何かありましたらお気軽にお訪ね下さい」
「はい!」
女性が一礼すると、手に持っていたバッグから熨斗袋を取り出し、側にいた女性に差し出す。
「ありがとうございます」
「では……」
女性が立ち上がり、扉を開け退室すると奧に座っていた神主の格好をした男が漏らす。
「なあ、さっきのってネコの話だよな?」
「ええ、そうですけど? それが何か?」
「何かってお前……ここにサテライトを出すって言ったのはお前だろ。確かに人は来るけど、来るのはネコのことの悩みばかりだ。一体、何がどうしてこうなった……」
「ハァ~今更何を言うのかと思えば……いいですか? 山奥の神社に人が来ないからどうにか出来ないかってことで、知り合いの大家さんに頼んで、ここを借りたんでしょ。忘れたの?」
女性が言うようにここは商業施設の中のビルの一室で、知り合いの大家から格安で借り受け、山奥の神社のサテライト施設を用意したと言う訳だ。
「でもよ~なんでネコばっかりなんだ?」
「あ~それ。それはね、これのせいじゃないかな?」
女性がそう言って取り出したのは、ここを開設するに当たり作ったチラシだった。
そのチラシには『悩みごと引き受けます』と書かれていた。
「これが?」
「分からない?」
「全く……」
「この番号は分かる?」
「確か、ここの番号だろ?」
「そうよ。読んでみて」
「読む?」
「番号を登録した時の語呂があるでしょ。それを口に出して読んでみてよ」
「え~と、確か……250783……だったよな」
「そうよね。なら、なんでそれをチラシに書かなかったの?」
「いや、確かそう言うのは書いちゃダメだと聞いていたから……」
「そうね。でも、それはこの場合には適用されないから」
「え、そうなの?」
「そう。それで、この番号がなんて呼ばれているかと言えば……250783……って読まれているの」
「ハァ~なんでだ?」
「なんでって、それはコレのせいでしょうが! コレ!」
女性が怒気を抑えながらチラシの一点を指す。そこにはクロネコの猫耳と尻尾を着けた巫女服姿の女性だった。
「我ながら、良い写真を用意出来たと思っているんだけどな。ダメなのか?」
「ダメに決まっているでしょ! なんでよりによってこの写真を使うのよ! 誰にも見せないって言うから、撮らせてあげたのに……」
「そりゃ、悪かったよ。でも、なんでコレが原因なんだ?」
女性はハァ~と短く嘆息すると、男性を睨み付ける。
「いい! このネコのコスプレにニャンコの語呂合わせ。これだけで、ネコのことを相談する場所だと思うでしょ!」
「え~まさか……」
「そうね。まさかと思いたいけど、次の人が待っているわよ。呼ぶわね」
「ああ……」
女性が扉を開けると高齢の女性が入ってくる。
「お願いします」
「はい。今日はどうしました?」
「はい、ネコが粉薬を飲んでくれなくて……」
男性はまたネコのことかと一瞬天を仰ぐが女性を真っ直ぐに見据えると口を開く。
「いいですか。粉薬は水で溶いてスポイトを使って飲ませるのがよいでしょう」
「はぁ……ですが、それだと全部飲ませるのに時間が掛かるのでは……」
「そうですか……ならば、粉薬をオブラートで包んで飲ませて下さい。それならばどうでしょう?」
「オブラートですか。確かにそれなら、出来そうですね。分かりました。やってみます!」
「はい。頑張って下さい」
「はい。ありがとうございます」
女性は立ち上がり、バッグから熨斗袋を取り出すと女性に差し出し退室する。
「やっぱり、ネコのことだったな~」
「そうですね。でも、ちゃんと解決しているじゃないですか」
「それもそうだな。よし、次だ次!」
「はい。じゃあ次もよろしくね」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活
坂崎文明
エッセイ・ノンフィクション
カクヨム、noteを中心に小説新人賞やクリエーター関連のエッセイを書いていきます。
小説家になろう、アルファポリス、E☆エブリスタ、ノベラボなどのWeb小説サイト全般の攻略法も書いていきます。
自動バックアップ機能がある『小説家になろう』→カクヨム→noteの順に投稿しています。note版がリンク機能があるので読みやすいかも。
小説家になろう版
http://ncode.syosetu.com/n0557de/
カクヨム版(567関連で公開停止)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880246141
【続編】カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活2 作者 坂崎文明
https://kakuyomu.jp/works/16816700427247367228
note版
https://note.mu/sakazaki_dc/m/mec15c2a2698d
E☆エブリスタ版
http://estar.jp/_howto_view?w=24043593
小説家になるための戦略ノート 作者:坂崎文明《感想 130件 レビュー 2件 ブックマーク登録 1063 件 総合評価 2,709pt文字数 958441文字》も人気です。
http://ncode.syosetu.com/n4163bx/
ニート息子の言霊録~信じるしかないじゃん、だって家族だもん~
かねい彪子
エッセイ・ノンフィクション
大学、専門学校、技能学生を辞めた21歳ニート息子。母子家庭で母と二人暮らしの先の見えないはずの毎日……でもニート息子には明るい未来が見えている!?ニートのポジティブな言葉を背に母は今日もご出勤。息子の言葉がいつか「言霊」になると信じて。
ぷにぷにっき ~実際どうなの?それってさ~ 便利ツール・時事ネタ・読書感想・色々詰め合わせ雑記
ぷにぷに0147
エッセイ・ノンフィクション
日々のニュースとか、あちこちで読んだ話の感想をつらつら書こうかなと思ってます。
雑学が多くなると思いますが、自分が使って便利だな~って思った道具、健康情報も紹介したり、色々雑食詰め合わせです。
本当は読書感想多くしようかと思ってたけど、なんかお役立ち情報系が多くなった。
まあでも、役立ちな方が良いよね。
基本的に、晩酌した後のヨッパ脳で書く感じです。
広い心でお願いしますw
雑学が多く出るでしょうが、しっかり裏どりしない状態で書くつもりですので、これって違うという突っ込みドンドンしてほしいです。
12/19タイトルにちょっと後付けしました
12/23画像は、自分がこないだ撮った白鳥に変更しました。稲の根っこ食べるのよね、こいつら。黒っぽいのは若い鳥。近くでみると、幼稚園児の背丈くらい上背あってデカいよ。気が荒くて結構ケンカすんだこれが。
12/24白鳥の画像もっとアップ画像に変更
2020/04/12 表紙画像、ボケてますが自分が撮影した燕の雌取り合い争いに変更しました
働きながらでもできる!効率的に稼ぐ副業ガイド
ログ
エッセイ・ノンフィクション
現代社会では、安定した収入を得るために副業がますます重要になっています。しかし、本業と両立させながら効率的に稼ぐ方法を見つけるのは容易ではありません。本書『働きながらでもできる!効率的に稼ぐ副業ガイド』は、忙しい日常の中でも無理なく始められる副業のアイデアや実践的な方法を詳しく解説しています。
第1章では、副業を始める前に知っておくべき基本知識と心構えを紹介。第2章では、時間を有効活用するための具体的な時間管理術を学びます。第3章では、初心者に最適な副業アイデアを幅広く紹介し、自分に合った副業を見つける手助けをします。第4章では、選んだ副業で安定した収入を得るためのステップバイステップガイドを提供。第5章では、副業に伴うリスクを管理し、収入を安定化させる方法を解説します。最後の第6章では、副業を成功させるためのポジティブなマインドセットと継続するためのモチベーション維持法を紹介します。
さらに、本書では実際に副業を成功させた事例や、効率的に稼ぐための具体的なテクニックも豊富に盛り込んでいます。家庭やオフィス、車中など、さまざまな環境で活用できる副業の方法を通じて、読者が自身のライフスタイルに合った収入源を確立できるようサポートします。
副業を通じて経済的な自由を手に入れたい方、現状に満足せずさらなる収入アップを目指す方にとって、本書は必携のガイドブックとなるでしょう。ぜひこの機会に、『働きながらでもできる!効率的に稼ぐ副業ガイド』を手に取り、あなたの副業ライフを充実させてください。
【完】三桁越えからの本気ダイエット。おばさんの記録帳。
桜 鴬
エッセイ・ノンフィクション
現在体重三桁越え。約十年ぶりのダイエット開始です。はい。題名通りです。約十年前には体重の約半分までのダイエットに成功!そして十年後の今……見事にリバウンド致しております。これはヤバい……
本気でいかなきゃ!
約十年ぶりの大型ダイエット(予定)を始めました。無理なく報告ダイアリーみたいな感じで進めたいです。最初は前回のウンチクを、一気に語ります。と言うか吐き出します。
短期集中の無理はリバウンドを招く……
なぜリバウンドしたのか?それは一重に私の意思が弱いだけです。反省中……
読んでくれる皆さまの……ぬるい眼差しに力を分けて戴きたいです。
経験者は語ります……
が!
もちろんダイエットの専門家では有りませんので、おばさんの勝手なウンチクだと思ってくださいませ。
日記の様な感じですが、更新当日の話ではありません。数日はずれております。
再ダイエット……2020/11/16開始。
2021/2/1より【二桁突入からの本気ダイエット。おばさんの記録帳。】を、こちらの2/6完結にさきがけ、更新をはじめました。こちらは基本夜更新となります。よろしくお願いいたします。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【短編エッセイ】 紙魚の海
糺ノ杜 胡瓜堂
エッセイ・ノンフィクション
本棚の愛読書の中から、個人的に心に響いたり、面白いと思ったり・・・興味を引かれたものを紹介する超短編エッセイです。
主に江戸時代の書物、その中でも無類に面白い、江戸時代の名奉行、根岸鎮衛の随筆「耳嚢」等、古い話が中心になっていますが、その時々でジャンル問わず書いてゆくつもりです。
こもごも、巣ごもり読書メモ (2020年)
夜乃すてら
エッセイ・ノンフィクション
日々、ちょっとずつ本を読んでるひとの、読書と日常の一部をメモしたような、ゆるいエッセイ。
筆者はキンドルアンリミテッドと角川の読み放題サービスに入っているので、そのあたりが多め。
創作の本や学術までいろいろ。雑食。
BL書きなので、BL本の話題もあります。(※サブタイトルで注意しますから、自衛してね)
ファンタジーをメインに読んでいる偏食ぶり。
現代が苦手だったりするが、SF要素があれば読めるので、ラノベが多い。
感想もあるので、ネタバレ嫌いな人は読まないでほしい。
それから、つまみ食いのように、「つまみ読み」する読書スタイルなので、同じ本の話題を何回も出すかもしれない。
一度サブタイトルに書いたら、もう話題にならないという読書記録系とはちょっとちがうかと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる