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見つけた小さな命
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犬の散歩をしていると時々、子猫の鳴き声が聞こえてくる時がある。
遠くで聞こえている場合は、『ごめんね』と心で唱えて探すことはしなかった。
だが、今飼っている犬はそんなことを許してくれない。散歩中に子猫の鳴き声が聞こえると『どこ? どこにいるの?』という感じで辺りを見回し、鼻をヒクヒクさせて捜索を開始して、私が持っているリードを強く引きずる様に進んでいく。
それでも、人が入って行けない場所とかにいると分かった場合はしょうがないとさすがにリードを引っ張る犬も諦めるしかなかった。
だけど、見つけた場合には『見つけたよ! えらい? この子達どうするの?』と目で訴えられている様な気になる。そして、そんな子猫を見てしまうと庇護欲のせいなのか見逃すことも出来ずに、犬の散歩バッグに子猫を詰め込むと、携帯電話で家人に子猫を拾ったと話し迎え入れの準備をしてもらう。そして散歩バッグの中で鳴く子猫を連れて家に帰り家人に渡すと、近くのホームセンターまで子猫用のミルクを買いに走る。
ホームセンターで目的の物を購入し家に帰ると家人はすでに子猫を洗いノミを落としタオルで拭いて乾かしてと、一人で四匹の子猫を相手していた。
私もその作業に加わり暴れる子猫をなんとか抑えながら、ドライヤーを当てて乾かす。
『みぃみぃ』と小さく、か細い声で小さい手足を使い、私の体をよじ登ろうと頑張る。
だけど、子猫の爪は鋭くて痛い。だが、家人は子猫のミルク作りを行っているために背中に回った子猫をどかしてもらうことも出来ない。どうか落ちないでくれよと願いながら、ゆっくりと床に腹這いになる。
そうなると、今度は他の子も背中で鳴いている兄弟の元へと頑張ってよじ登ってくる。
子猫同士は、固まって安心を得ようとするとなにかで聞いた覚えがある。だが、それは私の背中である必要があるんだろうか。
よじ登った兄弟が私の背中の上で固まり安心したのか、寝てしまったようだ。
困った、これでは立ち上がることも出来ない。
家人が子猫のミルクを温め子猫用の哺乳瓶へと入れて持ってくる。
そして、私がうつ伏せになり動けないでいる状態を笑いながら、一匹の子猫を背中から取り上げると哺乳瓶の吸い口を子猫の口へとあてがう。
すると子猫もミルクの匂いに気付いたのか、まだ短い前足で哺乳瓶を掴むと『ジュッジュッ』と音を立てながら、すごい勢いで胃袋へと流し込む。少し凹んでいた子猫のお腹も膨らんでくる。やがて、膨らみきったお腹を晒して、哺乳瓶を抱えていた前足もだらりとなる。
どうやら、満腹感から寝てしまったようだ。
家人が寝てしまった子猫をまた、私の背中に乗せると、次の子猫を取り上げ、同じように哺乳瓶から飲ませる。
全員飲ませ終わったみたいだけど、背中の重みは変わらない。
家人はすでに子猫達にミルクを飲ませ終わったので、お役御免とばかりにここにはいない。
じゃあ、誰が背中の子達をどかしてくれるんだろうか。
背中の重みをどうにかしようと考えている内に睡魔が襲ってきたようで、瞼が重くなる。
顔だけを横に向け、睡魔に身を委ねようとした時に背中で動く気配がする。
これで背中から降りてくれればいいんだけどな。そう思っていたが、ヨタヨタと不安定な足取りで上の方へと私の顔の方へと近付いてくる。
私を襲っていた睡魔はどこかに消えて、子猫の冒険がどこで終わるのかが気になってきた。
子猫はヨタヨタとした足取りで、辿り着いたのは私の右頬だった。
小さい爪が出っ放しの小さな両手足の肉球が温かい。
だけど、温かみを感じるのは三つ。
四つじゃなくて、三つの内訳を考えて見る。
まず、猫は足先を綺麗に揃えて座る。だから、前足、後ろ足を揃えて座っているだろうから、両方の前足で一つ、そして両方の後ろ足で一つで肉球の温かみは二つ。二つ? 感じるのは三つ? でも、なんとか確認出来る子猫の姿は綺麗に両手足を揃えて座っている。
なら、あと一つはなに? そう考えていると子猫が立ち上がり伸びをすると、温かみが一つ消えた。
ん? もしかしてだけど、残る一つはあれなのか?
右頬の上にいた子猫が伸びが終わると座り直す。
すると、三つ目の温かみも復活する。
やっぱり、そうみたいだ。これで間違いないだろう。
今まで、長い間猫と一緒にいたが、三つ目の温かみは初めてだったので、正直驚いたが気付けばなんてことのないトリックだ。
しかし、なんで今までは感じなかったのかを不思議に思う。
右頬に座る子猫をもう一度、なんとか観察すると、その子猫には尻尾がなかった。いわゆるボブテイルだ。
そうだった、これまでは尻尾が長いのや、短いのも当然いたが、その尻尾はほとんどが曲がっていたカギ尻尾だったので、どうしてもお尻が両手足の設置面からは少し浮いてしまっていたのだろう。
謎は解けたが、今も押し付けられているお尻の穴の温かさはどうしたものだろうか。
幸いにも子猫のお尻は綺麗だったので、神経質になる必要もないのだが、正直あまりいい気はしないものである。
どうしたものか……そんなことを考えている内にまた、睡魔が襲ってきたようだ。
右頬の上の子猫もいつの間にか丸くなっている。
願わくば、寝返りをうたないようにと念じるだけだ。
遠くで聞こえている場合は、『ごめんね』と心で唱えて探すことはしなかった。
だが、今飼っている犬はそんなことを許してくれない。散歩中に子猫の鳴き声が聞こえると『どこ? どこにいるの?』という感じで辺りを見回し、鼻をヒクヒクさせて捜索を開始して、私が持っているリードを強く引きずる様に進んでいく。
それでも、人が入って行けない場所とかにいると分かった場合はしょうがないとさすがにリードを引っ張る犬も諦めるしかなかった。
だけど、見つけた場合には『見つけたよ! えらい? この子達どうするの?』と目で訴えられている様な気になる。そして、そんな子猫を見てしまうと庇護欲のせいなのか見逃すことも出来ずに、犬の散歩バッグに子猫を詰め込むと、携帯電話で家人に子猫を拾ったと話し迎え入れの準備をしてもらう。そして散歩バッグの中で鳴く子猫を連れて家に帰り家人に渡すと、近くのホームセンターまで子猫用のミルクを買いに走る。
ホームセンターで目的の物を購入し家に帰ると家人はすでに子猫を洗いノミを落としタオルで拭いて乾かしてと、一人で四匹の子猫を相手していた。
私もその作業に加わり暴れる子猫をなんとか抑えながら、ドライヤーを当てて乾かす。
『みぃみぃ』と小さく、か細い声で小さい手足を使い、私の体をよじ登ろうと頑張る。
だけど、子猫の爪は鋭くて痛い。だが、家人は子猫のミルク作りを行っているために背中に回った子猫をどかしてもらうことも出来ない。どうか落ちないでくれよと願いながら、ゆっくりと床に腹這いになる。
そうなると、今度は他の子も背中で鳴いている兄弟の元へと頑張ってよじ登ってくる。
子猫同士は、固まって安心を得ようとするとなにかで聞いた覚えがある。だが、それは私の背中である必要があるんだろうか。
よじ登った兄弟が私の背中の上で固まり安心したのか、寝てしまったようだ。
困った、これでは立ち上がることも出来ない。
家人が子猫のミルクを温め子猫用の哺乳瓶へと入れて持ってくる。
そして、私がうつ伏せになり動けないでいる状態を笑いながら、一匹の子猫を背中から取り上げると哺乳瓶の吸い口を子猫の口へとあてがう。
すると子猫もミルクの匂いに気付いたのか、まだ短い前足で哺乳瓶を掴むと『ジュッジュッ』と音を立てながら、すごい勢いで胃袋へと流し込む。少し凹んでいた子猫のお腹も膨らんでくる。やがて、膨らみきったお腹を晒して、哺乳瓶を抱えていた前足もだらりとなる。
どうやら、満腹感から寝てしまったようだ。
家人が寝てしまった子猫をまた、私の背中に乗せると、次の子猫を取り上げ、同じように哺乳瓶から飲ませる。
全員飲ませ終わったみたいだけど、背中の重みは変わらない。
家人はすでに子猫達にミルクを飲ませ終わったので、お役御免とばかりにここにはいない。
じゃあ、誰が背中の子達をどかしてくれるんだろうか。
背中の重みをどうにかしようと考えている内に睡魔が襲ってきたようで、瞼が重くなる。
顔だけを横に向け、睡魔に身を委ねようとした時に背中で動く気配がする。
これで背中から降りてくれればいいんだけどな。そう思っていたが、ヨタヨタと不安定な足取りで上の方へと私の顔の方へと近付いてくる。
私を襲っていた睡魔はどこかに消えて、子猫の冒険がどこで終わるのかが気になってきた。
子猫はヨタヨタとした足取りで、辿り着いたのは私の右頬だった。
小さい爪が出っ放しの小さな両手足の肉球が温かい。
だけど、温かみを感じるのは三つ。
四つじゃなくて、三つの内訳を考えて見る。
まず、猫は足先を綺麗に揃えて座る。だから、前足、後ろ足を揃えて座っているだろうから、両方の前足で一つ、そして両方の後ろ足で一つで肉球の温かみは二つ。二つ? 感じるのは三つ? でも、なんとか確認出来る子猫の姿は綺麗に両手足を揃えて座っている。
なら、あと一つはなに? そう考えていると子猫が立ち上がり伸びをすると、温かみが一つ消えた。
ん? もしかしてだけど、残る一つはあれなのか?
右頬の上にいた子猫が伸びが終わると座り直す。
すると、三つ目の温かみも復活する。
やっぱり、そうみたいだ。これで間違いないだろう。
今まで、長い間猫と一緒にいたが、三つ目の温かみは初めてだったので、正直驚いたが気付けばなんてことのないトリックだ。
しかし、なんで今までは感じなかったのかを不思議に思う。
右頬に座る子猫をもう一度、なんとか観察すると、その子猫には尻尾がなかった。いわゆるボブテイルだ。
そうだった、これまでは尻尾が長いのや、短いのも当然いたが、その尻尾はほとんどが曲がっていたカギ尻尾だったので、どうしてもお尻が両手足の設置面からは少し浮いてしまっていたのだろう。
謎は解けたが、今も押し付けられているお尻の穴の温かさはどうしたものだろうか。
幸いにも子猫のお尻は綺麗だったので、神経質になる必要もないのだが、正直あまりいい気はしないものである。
どうしたものか……そんなことを考えている内にまた、睡魔が襲ってきたようだ。
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