4 / 13
第一章 ようこそ異世界へ
第四話 そういう理由で授けました
しおりを挟む
ラフィは頭の中で女神達が話していた『強くなって守って欲しい』という言葉がずっと気になっていた。そして、この言葉には女神達の希望が込められていた。
では、何故そういうことになったのかを説明するために時間を少し遡る。
それは、リルルを下級神へと降格し、リルルがいた空間を排除し中にいたリルルを強制退去させた時のことだった。
ソニアはフィリアに命じられたリルルのいた空間を排除する前に中にいたリルルを強制退去させると、リルルはソニアの前で跪き、何かをずっと呟いていた。ソニアはなんとなく気になり、何を言っているのかと聞き取るためにリルルの口元に耳を近付け来る。
「これでいい……どうせ破滅するのなら、ほんの少し私がそれを早めても何も問題はないはずなのだから……ふふふ、私が悪い訳じゃない。アイツが! 素直に転生しなかったアイツが悪いんだ! そうだ、だからアイツごと破滅すればいい。どうせ、破滅する運命ならば、その時間を少しだけ進めてやればいいだけだ。後は勝手にアイツらが動き出す。フハハ……」
「リルル、あなた一体何をしたの!」
「……」
ソニアはリルルが発した言葉の内容にゾクリと背中に冷たい物を感じ、直ぐにリルルの前にしゃがむと両肩を掴んでリルルと目線を合わせるが、リルルの視線は宙を泳いで定まっていない。そんなリルルの両肩を揺さぶりながら、ソニアは「何をしたの!」と質問を繰り返すが、聞かれているリルルは一向に気にする様子もなくだらしなく開いた口元から涎を垂らし「心配しなくてももうすぐ分かるから」と自身の肩を掴むソニアの手を払うとノソリと立ち上がり歩き出す。
リルルに手を払われたソニアは一瞬何が起きたのか分からなかったが、直ぐに気を取り戻し近くにいた衛士にリルルの捕縛を命じると、命じられた衛士達は直ぐに先を歩くリルルを取り押さえる。
ソニアはリルルの側まで行くとリルルの顔を見詰める。
「リルル、残念ですがあなたがあの『ザグレム』に対し何をしたのかを話してもらいます。なのであなたを一時的にですが、拘束させてもらいます。いいですね?」
「……」
衛士に両側から腕を捕まれ、ぐったりとしている様子のリルルはソニアの問い掛けに何も答えることはなくただ、ニヤリと笑うだけだった。それを見たソニアは嘆息し「連れて行って下さい」と衛士に命じると二人の衛士は頷き、リルルを引き摺るように連れて行く。
「こうしてはいられない! 早くフィリア様に報告しなければ!」
ソニアはフィリアに急いで報告すべく早足でフィリアの元へと急ぐ。
「フィリア様、至急ご報告したいことがあります!」
「どうしたのですか、ソニア。あなたにはリルルのことで頼んでいたはずですが」
「そのリルルのことでご報告したいことがあります。お聞き頂けますか」
「リルルのことで……」
息を荒げてフィリアの元へと現れたソニアを見て、フィリアは一瞬イヤな予感が過るが平静を装いソニアと応対する。だが、ソニアの口から『リルルのことで』と言われ、イヤな予感が的中しないことを願うのだった。だが、ソニアの口から齎された内容はとてもではないが、女神として、あの世界を作った創世神としての存在意義を疑うには十分過ぎる内容だった。
「……はぁ、それでリルルはどうしたのですか?」
「はい。先ずは捕縛して拘束するのが先だと判断し、衛士に命じ直ぐに捕縛しました。今は懲罰房へと連行されているはずです」
「そうですか、ふぅ~では、会って真意を問わなければなりませんね」
「はい、お願いします」
フィリアはソニアを共にリルルが捉えられている懲罰房の前に立つ。その扉越しに確認出来るのは部屋の片隅で扉の方を向かい膝を抱え、何やら呟いているリルルだった。
「あれは?」
「はい、空間から強制退去させた時から、あの調子でして……」
「何を言っているのか分かりますか?」
「はい。当初はあの転生者のせいだと言っていましたが、その後に『転生者ごと破滅すればいい』と繰り返していました」
「そうですか……」
フィリアはソニアから話を聞き、リルルが『ザグレム』に対し何らかの悪意を込めたことには違いないということだけは分かった。
「ソニア、直ぐに『ザグレム』に対し何をされたのか調査して下さい。助けが必要であれば遠慮なく使って下さい」
「はい。でもお言葉ですが、リルルに直接聞いた方が早いのではないでしょうか?」
「……あの様なリルルに聞いてもまともな応対は期待出来ないでしょう。それに私や『ザグレム』、それにあの転生者に対し悪意を持っている限りは虚偽の報告をするかもしれません。そうやって報告された内容を信じて動く訳にはいかないでしょうから、一つずつ真偽を確認することになります。であれば、最初から期待することなく私達の手で調査した方が早いというものでしょう」
「はぁ……分かりました」
ソニアは実際に動くのはあなたではなく自分達なんだがという言葉を呑み込むとフィリアに対し返答する。
「それと、もう一つ頼みがあります」
「はい、なんでしょうか」
「あの転生者に対し、あの方達が言うところの『チートスキル』を授けて欲しいのです」
「チートスキルですか?」
「ええ、そうですね。ソニアには『スキル創造』をサリアには『魔法創造』をお願いします」
「え? ホントにいいんですか? そういったスキルはヒャッハーする可能性がある曰く付きのスキルですよね」
「構いません。最高神様には私から許可を採りますので」
「そう言うことでしたら、了承しました。サリアと二人で対処いたします」
「お願いしますね」
フィリアはそう言うとリルルがいる懲罰房から去って行く。ソニアはそれを見ながら、自分も一歩間違ったら、こうなったのだろうかと懲罰房の中のリルルを一瞥すると歩き出す。そして、懲罰房の中のリルルは二人の気配が遠ざかっていくのを感じながら「もう遅い……」と言ってニヤリと笑うのだった。
では、何故そういうことになったのかを説明するために時間を少し遡る。
それは、リルルを下級神へと降格し、リルルがいた空間を排除し中にいたリルルを強制退去させた時のことだった。
ソニアはフィリアに命じられたリルルのいた空間を排除する前に中にいたリルルを強制退去させると、リルルはソニアの前で跪き、何かをずっと呟いていた。ソニアはなんとなく気になり、何を言っているのかと聞き取るためにリルルの口元に耳を近付け来る。
「これでいい……どうせ破滅するのなら、ほんの少し私がそれを早めても何も問題はないはずなのだから……ふふふ、私が悪い訳じゃない。アイツが! 素直に転生しなかったアイツが悪いんだ! そうだ、だからアイツごと破滅すればいい。どうせ、破滅する運命ならば、その時間を少しだけ進めてやればいいだけだ。後は勝手にアイツらが動き出す。フハハ……」
「リルル、あなた一体何をしたの!」
「……」
ソニアはリルルが発した言葉の内容にゾクリと背中に冷たい物を感じ、直ぐにリルルの前にしゃがむと両肩を掴んでリルルと目線を合わせるが、リルルの視線は宙を泳いで定まっていない。そんなリルルの両肩を揺さぶりながら、ソニアは「何をしたの!」と質問を繰り返すが、聞かれているリルルは一向に気にする様子もなくだらしなく開いた口元から涎を垂らし「心配しなくてももうすぐ分かるから」と自身の肩を掴むソニアの手を払うとノソリと立ち上がり歩き出す。
リルルに手を払われたソニアは一瞬何が起きたのか分からなかったが、直ぐに気を取り戻し近くにいた衛士にリルルの捕縛を命じると、命じられた衛士達は直ぐに先を歩くリルルを取り押さえる。
ソニアはリルルの側まで行くとリルルの顔を見詰める。
「リルル、残念ですがあなたがあの『ザグレム』に対し何をしたのかを話してもらいます。なのであなたを一時的にですが、拘束させてもらいます。いいですね?」
「……」
衛士に両側から腕を捕まれ、ぐったりとしている様子のリルルはソニアの問い掛けに何も答えることはなくただ、ニヤリと笑うだけだった。それを見たソニアは嘆息し「連れて行って下さい」と衛士に命じると二人の衛士は頷き、リルルを引き摺るように連れて行く。
「こうしてはいられない! 早くフィリア様に報告しなければ!」
ソニアはフィリアに急いで報告すべく早足でフィリアの元へと急ぐ。
「フィリア様、至急ご報告したいことがあります!」
「どうしたのですか、ソニア。あなたにはリルルのことで頼んでいたはずですが」
「そのリルルのことでご報告したいことがあります。お聞き頂けますか」
「リルルのことで……」
息を荒げてフィリアの元へと現れたソニアを見て、フィリアは一瞬イヤな予感が過るが平静を装いソニアと応対する。だが、ソニアの口から『リルルのことで』と言われ、イヤな予感が的中しないことを願うのだった。だが、ソニアの口から齎された内容はとてもではないが、女神として、あの世界を作った創世神としての存在意義を疑うには十分過ぎる内容だった。
「……はぁ、それでリルルはどうしたのですか?」
「はい。先ずは捕縛して拘束するのが先だと判断し、衛士に命じ直ぐに捕縛しました。今は懲罰房へと連行されているはずです」
「そうですか、ふぅ~では、会って真意を問わなければなりませんね」
「はい、お願いします」
フィリアはソニアを共にリルルが捉えられている懲罰房の前に立つ。その扉越しに確認出来るのは部屋の片隅で扉の方を向かい膝を抱え、何やら呟いているリルルだった。
「あれは?」
「はい、空間から強制退去させた時から、あの調子でして……」
「何を言っているのか分かりますか?」
「はい。当初はあの転生者のせいだと言っていましたが、その後に『転生者ごと破滅すればいい』と繰り返していました」
「そうですか……」
フィリアはソニアから話を聞き、リルルが『ザグレム』に対し何らかの悪意を込めたことには違いないということだけは分かった。
「ソニア、直ぐに『ザグレム』に対し何をされたのか調査して下さい。助けが必要であれば遠慮なく使って下さい」
「はい。でもお言葉ですが、リルルに直接聞いた方が早いのではないでしょうか?」
「……あの様なリルルに聞いてもまともな応対は期待出来ないでしょう。それに私や『ザグレム』、それにあの転生者に対し悪意を持っている限りは虚偽の報告をするかもしれません。そうやって報告された内容を信じて動く訳にはいかないでしょうから、一つずつ真偽を確認することになります。であれば、最初から期待することなく私達の手で調査した方が早いというものでしょう」
「はぁ……分かりました」
ソニアは実際に動くのはあなたではなく自分達なんだがという言葉を呑み込むとフィリアに対し返答する。
「それと、もう一つ頼みがあります」
「はい、なんでしょうか」
「あの転生者に対し、あの方達が言うところの『チートスキル』を授けて欲しいのです」
「チートスキルですか?」
「ええ、そうですね。ソニアには『スキル創造』をサリアには『魔法創造』をお願いします」
「え? ホントにいいんですか? そういったスキルはヒャッハーする可能性がある曰く付きのスキルですよね」
「構いません。最高神様には私から許可を採りますので」
「そう言うことでしたら、了承しました。サリアと二人で対処いたします」
「お願いしますね」
フィリアはそう言うとリルルがいる懲罰房から去って行く。ソニアはそれを見ながら、自分も一歩間違ったら、こうなったのだろうかと懲罰房の中のリルルを一瞥すると歩き出す。そして、懲罰房の中のリルルは二人の気配が遠ざかっていくのを感じながら「もう遅い……」と言ってニヤリと笑うのだった。
3
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる