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第四章 ドンガ国

第九話 任されたのなら、好きにするだけ

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 王様は俺に全てを任せると言って、その場から立ち去ると俺とガイルさんは顔を見合わせると「どういうことなのかな?」とガイルさんに問い掛ける。

「どういうことも何もそういうことなんだろうよ。ハァ~まったく面倒なことになっちまったな」
「いやいやいや、他人事ひとごとの様に言うけどガイルさんのせいだからね。まさか忘れてないよね?」
「俺が?」
「うん。どう考えてもガイルさんのせいだよね」
「そんなことはないと思うが……そうなのか?」
「だから、そうだって。そもそもガイルさんがちゃんとお兄さんとハッキリさせないまま、この国を出たからなんでしょ」
「いや、まあ簡単に言えばそうだが……」
「簡単に言っても難しく言ってもそういうことでしょ」
「それは……すまん」
「分かってくれたのなら、それはそれでいいとして……どうすんの?」
「ん?」

 ガイルさんは自分の責任じゃないと他人事の様な顔をしたので、俺がガイルさんのせいだからねと直接言えば、自分がしでかしたことを漸く思い出したようで素直に謝ってくれるが、それはそれでまあいいと横に置き、肝心なことを確認する。

「いや、だからさ。俺に任せるとだけ言われたけど、何をどうすればいいのかな……って思ってね」
「そんなのお前の好きな様にすればいいだろう。取り敢えず最高権力者である兄上のお墨付きを戴いたんだから好きな様に出来るだろ」
「ん~いや、だからね。元々はガイルさんとお兄さんの王位継承の儀が発端なんでしょ。そういうのをお祭りにしちゃってもいいものなのかなと思ってさ」
「あ~そういうことなら、元々がお祭りみたいなものなんだから気にすることはないぞ」
「じゃあさ、その儀に国民の誰もが参加することはどうなの?」
「ん? ああ、そういうことか。ちと話が長くなりそうだな。あ~すまんがどこか部屋を用意してもらえるか。それと王位継承の儀について色々確認したいこともあるから、詳しい者を呼んでくれ」
「畏まりました。では、先ずはお部屋にご案内いたします」
「ああ、頼む」

 ガイルさんは側仕えの人に部屋と担当者のお願いすると、俺達は別の部屋に案内される。

「では、こちらのお部屋をお使い下さい。担当の文官を呼んでまいりますので、少々お待ち下さい」
「ああ、すまんな」

 俺達を少し小さめの会議室に案内してくれた側仕えの人にガイルさんが労うと、その人は軽く頭を下げて部屋の扉を閉める。

「でだ、なんだったか?」
「だからね、その王位継承の儀に国民全員が参加出来るのかってこと」
「無理だな」
「まあ、そうだよね。じゃあさ、言い方を代えるね。王位継承の儀を王位継承権がない人がやっても問題はないの?」
「ん? それはどういう意味だ?」
「あのね、王位継承の儀自体がお祭りになるんだよね」
「ああ、そうだな」
「でも、ガイルさんは王位継承には興味がない」
「ああ、そうだ」
「でも、国王であるお兄さんは王位継承の儀をせずに即位したことに対して不満というか、不安がある」
「そうなんだろうな」
「そして、この国の人達は王位継承の儀というお祭りがなかったことに対して不満があるんだよね。ここまではOK?」
「ああ、コータの言う通りだな」
「じゃあさ……」

 俺はガイルさんと国王であるお兄さんとの確執と国民の不満を確認してから、ガイルさんに一つの提案をする。

「……って、ことなんだけどガイルさんはどう思う?」
「面白い!」
「じゃ、ガイルさんは賛成ってことでいいんだよね」
「ああ、俺はな。だが、兄上がそれで納得してくれるかどうかなんだよな」
「そこはガイルさんが納得させるしかないんじゃない」
「だから、それが一番難しいんだって」
「だから、この国の人達を全部巻き込んだ上で有耶無耶にしてしまえばいいんじゃないかなと思ったんだけど」
「ああ、お前のしたいこと言いたいことは分かる。だがなぁ~」
「ああもう、するの? しないの? どっちなの?」
「……やる!」

 俺が国民の不満を解消する手段として、王位継承の儀自体を国民全員を巻き込んでのお祭りににすることを提案し、肝心のお兄さんとの確執解消はガイルさんに丸投げするからとガイルさんに言うが、ガイルさんはなんだか煮え切らない態度だったので、少し強めに「やる、やらない、どっち?」と聞いたら逡巡しつつも「やる!」と言ってくれたので少し安心する。

 カリナの車を作るためにもガイルさんとお兄さんの確執を解消しないことにはお話にならないし、ガイルさんの立場もハッキリさせておかないと、この国の人達も仲間にはなってくれないだろう。だから、ここは文字通りイヤでも全員に参加してもらい納得してもらう。

「ふふふ……」
「コータ、顔が悪いぞ」
「コータ、楽しそうだけど歪んでいるわよ?」
『コータ……』
「お前、何か悪巧みしている顔だぞ」
「……誰のせいだと思ってんのさ!」
「ああ、そうだったな」

 俺が考えついた計画を実現させるべく色々と考えていると思わず口から笑い声が出た様で、それを聞いたアオイ、カリナ、タロが好き勝手言ってくる。でも、ガイルさんは言っちゃダメだろ。

 そんな風にアレコレを考えていると会議室の扉がノックされ、ガイルさんが返事をすると一人のおじさんが「失礼します」と入ってくるが……まあ、予想はしていたけど見た目はどこからどう見てもガイルさんなんだよな。だから俺はマジメにお兄さんに『国民名札着用義務』を推奨しようと心に誓う。
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