70 / 131
第二章 動き出す何か
第三十二話 方針決定
しおりを挟む
ここまで女神イーシュの話を黙って聞いていたが、思うことは一つだ。
「有罪!」
「どうしてなの?」
「説明は不要だろ」
「ぐぬぬ……」
女神イーシュの話を聞いて思い出したのは『個か全か』で二つに分かれて戦うアニメだった。
『個』で争うから世界は破滅の方向に進むのなら『全』で一つになればいいとか、そういうストーリーだったと思う。
「だから、『個』であることを認めないイーシュの世界は俺からすれば悪でしかない」
「待って! 別に『個』を認めないなんて言ってないでしょ」
「確かに言ってはいない」
「でしょ!」
「だけど、そこにいるだけで何もせずにただ死ぬだけの存在を生きていると言えるのか」
「うっ……それは……でも、他のと争わなくてもいいのなら、それはそれで幸せなんじゃないの」
「それは誰が感じている幸せなんだ」
「誰って……それは」
「ただ、そこにいて何も考えることを放棄させられている存在がどうやって幸せを感じるんだ?」
「……」
ここに来て女神イーシュの話を聞き、女神イースがしてしまったことを聞いたが、女神イースを敵として認めることが出来ずにいた。確かに魔族を使っての侵攻はヤリ過ぎだといえなくもないが、女神イースと話し合える余地はあるように思える。
だが、問題は今目の前にいる女神イーシュだなと思う。今のこの姿であれば大した力は使えないというが……。
『肯定します』
でも、始末することも出来ないんだろうな。
『肯定します』
精神体だから殺れないのなら、実体を持たせるしかないのか。
『肯定します』
でも、何に憑依させるか、それが出来るのかが問題だよな。
『肯定します』
そこまで考えて「いや、待てよ」と考え直す。
別に目の前の女神イーシュをどうにかするんじゃなく女神イース、それに元は同一の存在だった邪神イリスの三体を融合させることは出来るんじゃないかと思う。
『肯定します』
出来るんだと女神イーシュを見ながら感心する。
女神イーシュはと言えば俺がニヤけながら見ているものだから、何かイヤな予感がしたのだろう。ブルッと身震いすると自分を抱きしめるような仕草をする。
「よし、俺の方針は決まった」
「勇者してくれるの?」
「ソレはお断りだ。そうだ、思い出した。お前、リザードマンの長になんかしただろ」
「な、なんのことかな~」
「俺に嘘は付くなと言ったろ」
「ちょ、ちょっとだけじゃない」
「いいから、何をしたんだ」
「ちょっとね、あなた達と会った時に『神獣と使い』だからって教えてあげたのよ。ね、ちょっとだけでしょ。イタッ!」
俺はハリセンで『バシッ!』と女神イーシュの頭を叩く。
「いいか、俺は俺の好きなように生きる。もうお前の使徒だと言わせない」
「それは困る」
「俺は困らないし、使徒扱いされる方が困る」
「ぶ~」
女神イーシュは両頬を膨らませて反抗するが、もう単なるぐーたらにしか見えないロリ駄女神には使命感どころかなんの罪悪感も湧いてこない。
「もう、お前がこの世界に干渉しない方が上手く回るような気しかしない」
「そんなことはないでしょ」
「そうか? だが、お前は好きなだけ寝ていられるんだぞ。何もせずに寝ているだけでいいんだぞ。今までの生活と何が違う?」
「あれ? そう言えばそうだね」
「だろ? だからこのままここでジッとしてろ」
「……」
「じゃあ、邪魔したな」
「ねえ」
「なんだ?」
「また、呼んだら来てくれる?」
「来てくれるも何もお前が勝手に呼び出しているんだろうが!」
「そうだけどさ……ねえ、いいでしょ」
「勝手にすればいい。じゃあな」
「じゃあ、勝手にするから」
女神イーシュに別れを告げると、俺は見慣れた宿にいたが頭に何やら柔らかい感触がある。
「気が付いたか」
俺の顔を覗き込んでいたアオイと目が合い、アオイが俺を気遣ってくれた。
「アオイ、どのくらいの時間が経った?」
「お前がその箱に祈ってから五分も経ってないと思うぞ。祈っていたと思ったら、急に気を失ったように倒れたので、タロに枕になってもらった」
「そうか。ありがとうなタロ」
『ワフ!』
俺は体を起こすと両腕を上に上げ、簡単に伸びをする。
「それで殴ることは出来たのか?」
「うん、まあね。でも、問題も増えたかな」
「ほう、それは難しいのか?」
「そうだね。ちょっと当事者にも聞いてみないと分からないけど、簡単にはいかない感じかな」
「なら、俺の助けが必要になりそうだな」
「そうならないようにしたいけどね」
「ふふふ、いつでも言ってくれ」
「うん、分かったよ」
今日は、これ以上話すと色々気が昂ぶってしまい眠れなくなりそうだったので、詳しいことは明日、町を出てから話すことを約束する。
「でも、会ってくれるんだろうか。ちょっと不安だけど、教会に行けば会えるよね」
『肯定します』
「有罪!」
「どうしてなの?」
「説明は不要だろ」
「ぐぬぬ……」
女神イーシュの話を聞いて思い出したのは『個か全か』で二つに分かれて戦うアニメだった。
『個』で争うから世界は破滅の方向に進むのなら『全』で一つになればいいとか、そういうストーリーだったと思う。
「だから、『個』であることを認めないイーシュの世界は俺からすれば悪でしかない」
「待って! 別に『個』を認めないなんて言ってないでしょ」
「確かに言ってはいない」
「でしょ!」
「だけど、そこにいるだけで何もせずにただ死ぬだけの存在を生きていると言えるのか」
「うっ……それは……でも、他のと争わなくてもいいのなら、それはそれで幸せなんじゃないの」
「それは誰が感じている幸せなんだ」
「誰って……それは」
「ただ、そこにいて何も考えることを放棄させられている存在がどうやって幸せを感じるんだ?」
「……」
ここに来て女神イーシュの話を聞き、女神イースがしてしまったことを聞いたが、女神イースを敵として認めることが出来ずにいた。確かに魔族を使っての侵攻はヤリ過ぎだといえなくもないが、女神イースと話し合える余地はあるように思える。
だが、問題は今目の前にいる女神イーシュだなと思う。今のこの姿であれば大した力は使えないというが……。
『肯定します』
でも、始末することも出来ないんだろうな。
『肯定します』
精神体だから殺れないのなら、実体を持たせるしかないのか。
『肯定します』
でも、何に憑依させるか、それが出来るのかが問題だよな。
『肯定します』
そこまで考えて「いや、待てよ」と考え直す。
別に目の前の女神イーシュをどうにかするんじゃなく女神イース、それに元は同一の存在だった邪神イリスの三体を融合させることは出来るんじゃないかと思う。
『肯定します』
出来るんだと女神イーシュを見ながら感心する。
女神イーシュはと言えば俺がニヤけながら見ているものだから、何かイヤな予感がしたのだろう。ブルッと身震いすると自分を抱きしめるような仕草をする。
「よし、俺の方針は決まった」
「勇者してくれるの?」
「ソレはお断りだ。そうだ、思い出した。お前、リザードマンの長になんかしただろ」
「な、なんのことかな~」
「俺に嘘は付くなと言ったろ」
「ちょ、ちょっとだけじゃない」
「いいから、何をしたんだ」
「ちょっとね、あなた達と会った時に『神獣と使い』だからって教えてあげたのよ。ね、ちょっとだけでしょ。イタッ!」
俺はハリセンで『バシッ!』と女神イーシュの頭を叩く。
「いいか、俺は俺の好きなように生きる。もうお前の使徒だと言わせない」
「それは困る」
「俺は困らないし、使徒扱いされる方が困る」
「ぶ~」
女神イーシュは両頬を膨らませて反抗するが、もう単なるぐーたらにしか見えないロリ駄女神には使命感どころかなんの罪悪感も湧いてこない。
「もう、お前がこの世界に干渉しない方が上手く回るような気しかしない」
「そんなことはないでしょ」
「そうか? だが、お前は好きなだけ寝ていられるんだぞ。何もせずに寝ているだけでいいんだぞ。今までの生活と何が違う?」
「あれ? そう言えばそうだね」
「だろ? だからこのままここでジッとしてろ」
「……」
「じゃあ、邪魔したな」
「ねえ」
「なんだ?」
「また、呼んだら来てくれる?」
「来てくれるも何もお前が勝手に呼び出しているんだろうが!」
「そうだけどさ……ねえ、いいでしょ」
「勝手にすればいい。じゃあな」
「じゃあ、勝手にするから」
女神イーシュに別れを告げると、俺は見慣れた宿にいたが頭に何やら柔らかい感触がある。
「気が付いたか」
俺の顔を覗き込んでいたアオイと目が合い、アオイが俺を気遣ってくれた。
「アオイ、どのくらいの時間が経った?」
「お前がその箱に祈ってから五分も経ってないと思うぞ。祈っていたと思ったら、急に気を失ったように倒れたので、タロに枕になってもらった」
「そうか。ありがとうなタロ」
『ワフ!』
俺は体を起こすと両腕を上に上げ、簡単に伸びをする。
「それで殴ることは出来たのか?」
「うん、まあね。でも、問題も増えたかな」
「ほう、それは難しいのか?」
「そうだね。ちょっと当事者にも聞いてみないと分からないけど、簡単にはいかない感じかな」
「なら、俺の助けが必要になりそうだな」
「そうならないようにしたいけどね」
「ふふふ、いつでも言ってくれ」
「うん、分かったよ」
今日は、これ以上話すと色々気が昂ぶってしまい眠れなくなりそうだったので、詳しいことは明日、町を出てから話すことを約束する。
「でも、会ってくれるんだろうか。ちょっと不安だけど、教会に行けば会えるよね」
『肯定します』
68
お気に入りに追加
1,300
あなたにおすすめの小説

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

追放されましたがマイペースなハーフエルフは今日も美味しい物を作る。
翔千
ファンタジー
ハーフエルフのシェナは所属していたAランクの勇者パーティーで魔力が弱いからと言う理由で雑用係をさせられていた。だが、ある日「態度が大きい」「役に立たない」と言われ、パーティー脱退の書類にサインさせられる。所属ギルドに出向くと何故かギルドも脱退している事に。仕方なく、フリーでクエストを受けていると、森で負傷した大男と遭遇し、助けた。実は、シェナの母親、ルリコは、異世界からトリップしてきた異世界人。アニメ、ゲーム、漫画、そして美味しい物が大好きだったルリコは異世界にトリップして、エルフとの間に娘、シェナを産む。料理上手な母に料理を教えられて育ったシェナの異世界料理。
少し捻くれたハーフエルフが料理を作って色々な人達と厄介事に出会うお話です。ちょこちょこ書き進めていくつもりです。よろしくお願します。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜
ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。
沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。
異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。
新たな人生は、人生ではなく神生!?
チートな能力で愛が満ち溢れた生活!
新たな神生は素敵な物語の始まり。
小説家になろう。にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる