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第二章 これからの生き方を求めて

第9話 ちょっとだけ出た

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 空からの贈り物ワイバーンをハッキリと視認出来る距離まで迫るとナキ以外のマリアや子供達は思わず叫びだし色んな物がダダ漏れになる。

「「「ウギャァ~死んじゃうぅ~」」」
「もう、大丈夫だからって言っているのに。……大丈夫なんだよね?」

 ナキも自分の結界が大丈夫だろうとは思っているが、ワイバーンが思っていたより大きいのと、その落下速度に少しだけ不安になる。

 そんなこんなでてんやわんやなカオスな状況も『ドォ~ン!』と鳴り響く音で終わりを告げる。

「……生きてる」
「ホントだ!」
「なんで?」
「これが落ちてきたの?」
「おっきいね」

 子供達はワイバーンが結界にぶつかった時の音に驚き、一瞬声が詰まるがすぐに自分の体がどこも傷が付いていないことを確認すると生きていることに安堵し、自分達の上でぐったりとしている巨体が目に入る。

「ねえ、これってさ……もしかしてだけどね」
「うん。マリアのお手柄だね」
「お手柄って……言われても……ねぇ……」

 マリアはそう言って、自分の頭上を見上げれば、そこには黒く大きなワイバーンだと思われる物が横たわっていた。

 何故、ワイバーンだと断言出来ないのかと言えば、ナキは当然のことながらワイバーンとは何かを知っているハズがない。ならば、マリアならばと思うがマリアもまた、その形状などからしかワイバーンかもとしか言えない。

 そして何故、マリアまでそうなのかと言えば、頭部が存在していないからだ。所謂『首なし』の状態でうえから落ちて来たのだ。

 そして、その無くなっている首を見ると、焼け焦げている様子からマリアが放った火球ファイアボールがワイバーンの頭に当たり絶命したのだろうと予測がつく。

「ちゃんと体が残っているのは有り難いよね」
「そうね。でも、こんなに大きいのどうするの?」
「どうするって、そりゃこうするよ『収納』……ほら、入った!」
「「「……」」」

 ナキはワイバーンに手が届く高さまで結界を慎重に解除すると、ワイバーンに触れて鞄の中へと回収する。

「すげぇ」
「兄ちゃん、スゲぇな」
「俺もソレ欲しい!」
「どこで売ってるの?」
「ちょうだい!」

 ワイバーンを一瞬で収納したナキの肩掛け鞄に子供達の視線が集中し、皆が口々に凄い、欲しいと言ってくるが、これは女神特性の鞄だし、持ち主から離れても直ぐにナキの元へと戻ってくる謎仕様も付与されているのもあり、おいそれとあげることは出来ない。

 だから、ナキも子供達にやんわりと「ごめんね。コレはあげられないから」と言えば、今度は一斉に「ケチ!」だの「ズルい!」と連呼される。

 いくら言われても無理なものは無理だと断るしかない。

「じゃあ、アレの肉が食べたい!」
「俺もそれでいいから」
「しょうがないから、それでいいよ」
「わたしのはよくやいてね」
「おいしい?」

 だが、子供達はそれならと交換条件とでも言うようにナキにワイバーンの肉で勘弁してやるからとでも言うように次々にねだってくる。

 だが、食べたいからと言って、食べられる物でもない。先ずは解体しないことには肉が手に入らない。だが、あれだけ大きい体をどうやって捌いていいかも分からない。ナキはハジを見るが、ハジは首をブンブンと横に振る。

「えっと、これはどうすればいいんだろう」
「ギルドに持ち込むしかないんじゃない」
「ギルド?」
「そう。冒険者ギルドよ。それなら、領都でもキュサイの町にもあるけど……でも、あれだけ大きいとキュサイは無理かも」
「なら……やっぱ、今は止めとく」
「「「え~」」」

 マリアからワイバーンを解体するのなら、領都の冒険者ギルドに持ち込むことを勧められはしたが、マリアが拳をギュッと握り体を強ばらせているのに気付いたナキは、今は行かないと答える。

 その返事に子供達が不満を口にするがナキは「ごめんね」とだけ言う。

 マリアは「いいの?」とナキに確認するが、ナキは「鞄に入れとけば腐らないから」とだけ伝える。

「ホント、あなたは色々と規格外よね」
「そう?」
「そうよ。でも、子供達はどうするの?」
「あ~ま、なんとかなるでしょ」

 ナキは子供達の側に行くと「果物を採りに行こうか」と声を掛ければ、あれだけ不満そうにしていた子供達も「行く!」と楽しそうに返事をする。

 ナキはオジを抱きかかえると「君はお留守番だね」とマリアに渡すと「じゃ、行ってくるね」と声を掛ける。

「「「行ってきま~す!」」」
「うん、行ってらっしゃい」

 子供達は最初は楽しそうに目の前の草を払いながら歩いていたが、目的地が遠いことを知ると立ち止まり、ナキをジッと見る。

「どうしたの?」
「疲れた……」
「もうあるきたくない!」
「おんぶ!」
「アレをだして!」
「え? もう、だってまだ……」

 ナキはそう言って後ろを振り返れば、マリアがこちらを見て手を振っているのが見える。

「でも、まだ遠いんだよね」
「そう……かな」
「じゃ、早く行かないと帰るのが遅くなるんじゃない?」
「そう……なのかな?」
「そうよ! あんなところにおねえちゃんひとりだけにしておけないわよ」
「いや、でもオジだっているし」
「何言ってるの。俺の弟はまだ三歳だぞ」
「あ……確かにそうだ」
「だから、ほら!」
「そうだよ、はやく!」
「出してよ!」
「ほら、なにしてるの!」
「え~」
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