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第二章 これからの生き方を求めて

第5話 ここはどこ?

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「「「出来た!」」」

 子供達に手伝ってもらいながら、テーブルはなんとなく形になり、椅子も丸太だが、人数分は用意することが出来た。

「後はおいおいってことでいいか」
「そうね。後は……」
「そうなんだよね。何か育てるにしても、元がないからね。やっぱり、いつかは近くの里か町にまで行かないとダメだと思うんだけど……マリアはどこから来たの?」
「私は……」
「あ! 別にツライなら、そこじゃなくてもいいから。もし、知っている町があるなら教えて欲しいかな」
「別に構わないわよ。もう、私のことなんて死んだも同然になっているでしょうし。でもね、う~ん」
「どうしたの?」
「それがね……」

 マリアが唸っていたのは、ナキに町を教えるのは別に構わないのだが、今現在自分がいる場所がどこなのかが分からないために、どっちに向かえばいいのかも分からないと話す。

「あ、それなら大丈夫だよ」
「え?」

 ナキはついでに子供達も一緒にと足下に結界を用意する。

「あ! これに乗るの?」
「じゃあ、おでかけだ!」
「おでかけするの?」
「こんどはどこにいくの?」
「なにするの?」

 子供達は前にナキが作った結界でゴブリンの巣からここまで来たことで、また結界に乗るということは何か楽しいことが待っているとハズだと信じて疑わない。

 マリアも「乗ればいいの?」とどこか不安げだが、その顔は子供達と同じ様に期待感が溢れている。

「皆、乗ったね。じゃあ、先ずは『透過』からの『重力遮断』をゆっくり、ゆっくり……」

 ナキは自分達を結界で包むと、回りから認識されないように『透過』を付与してから、ゆっくりと慎重に自分達が乗る結界を浮上させる。

「「「うわぁ~たかいねぇ~」」」

 子供達は自分達の目線がどんどん高くなり、横穴がある崖を越えてもまだぐんぐんと上がって行く様子に興奮気味だ。

 だけど、まだどの方向にも町らしきものは見えて来ない。

「もう少し上がらないと見えないのかな~あ! アレがそうなのかな」
「どれ?」
「ほら、あれ! 壁で囲われた街が見えるでしょ。真ん中当たりにお城っぽいのが見えるし。あ! あっちにもある。でも、こっちは壁がそれほど高くないし……」
「ナキ、あの立派な壁がある方が、テレジア領の領都で『ゴリアーテ』で、向こうが『キュサイ町』ね。そうか、ここは大体二つの町のほぼ中間になるのね」
「じゃあ、行くのならどっちがいいのかな?」
「そうね。ちょっと考えさせてもらえるかな」
「いいよ。そんなに急がないから」
「ありがと」

 ナキは二つの町の方向をもう一度、確認してから結界をゆっくりと下ろしていく。

「え~もう下りるの」
「もうすこしいいでしょ」
「もっとたかいところいけるの?」
「とびおりるとかできる?」
「ふぁ~」

 ナキは結界を下ろしていたが、子供達の声を聞くと「それもそうか」と下りるのを止めて再び上昇させると、「きゃぁ!」と子供達がはしゃぎ出す。

 子供達が結界から落ちないように全体を覆っているが、ナキは「よく怖がらないものだな」と不思議に思う。ひょっとしたら、この世界には『高所恐怖症』というのはないのだろうかと考えてみるが、たまたまだろうなと考え直す。その証拠にマリアの顔が少しだけ蒼ざめているからだ。

 今のナキ達は結界に守られているので、酸素不足による高山病になることも気圧変化による低温にも悩まされることなく単純に景色だけを楽しめている。

「あ! 海が見える」
「うみってなに?」
「ほら、向こうに青いのが見えるでしょ。ほら、あそこ」
「あ! ホントだ。あおいね~」

 ナキは自分達がどのくらいの高さにいるのかは分からないが、町の向こうには山がそびえ、その先には広い平原があり、そしてその平原の先には青い海原が広がっていた。

「地平線と水平線が見えるのなら、この惑星ほしも丸いんだな。よかった……お皿の上の世界じゃなくて」
「兄ちゃんどうしたの?」
「ん? なんでもないよ。じゃ、下ろすよ」
「「「え~」」」
「え~言わない。また、機会があれば乗せるから」
「約束だよ!」
「え、あ、うん。約束しようか。はい」
「え?」

 結界をゆっくり下ろしながら、またの機会にと子供達に言うと、ハジからと言われたので、ナキが右手の小指を立て、ハジに向けるがハジは不思議そうな顔をするだけでどうしていいものか困っている。

 そして、その様子からナキも「あ、そうだった」とここは日本ではないことを思い出すが、そのまま指を引っ込めるのも変かなと思い、そのままハジの右手を取り、小指を立てさせると、ナキはその小指に自分の小指をからませ「ゆびきりげんまん」を歌い出す。

「兄ちゃん、なにそれ?」
「これ? 約束するときのおまじないみたいなものかな」
「俺も!」
「私もする!」
「いいよ、しよっか」

 ナキは子供達全員と「ゆびきりげんまん」を歌いながら済ませたのを確認し、右手を引っ込めようとしたところで、マリアにガッとその右手を掴まれマリアが小指を絡ませてくる。

「私がまだでしょ」
「あ、うん……じゃあ、ゆびきりげんまん……」
「ふふふ、いいものだね」
「じゃあ、これで「待って」……え?」
「もう一つ、私と約束しましょ」
「僕に守れるものなら……」
「じゃあ、私とのけっ「ダメ!」こ……え? どうして? ナキに出来ることならって言ったじゃない」
「言ったけど、まだ早すぎるでしょ。出会ってから一日しか経ってないのに」
「もう! ここは空気読むところでしょ!」
「……」

 マリアがムリにナキに対し約束させようとしていたところで、結界が地上に着く。ナキは結界を解き子供達に「下りていいよ」と言うとハジがマリアの横に立つ。

「姉ちゃん、兄ちゃんに振られたら、俺がもらってやるから!」
「ハジ……」
「だから、兄ちゃんをあまり追い詰めるなよ。逃げられちまうぞ!」
「「へ?」」
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