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第一章 さようなら日本、こんにちは異世界
第23話 第一異世界人発見!
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少年はゴブリンの林と化した場所を進みゴブリン以外の何者かが固まっている小屋の結界を解くと中にいるであろう者に声を掛ける。
「中の人ぉ! 聞こえますか? 聞こえたのなら、出て来られますか?」
「「「……」」」
少年はそう言って小屋の中に声を掛けるが、反応は返ってこない。だけど、何者かがいる気配はするし、少年の索敵にも相変わらず反応はある。
「もう、ゴブリンはいないから、安心して出て来ても大丈夫ですよ。聞こえてますかぁ~? 無視するのなら、このまま帰りますね。じゃあ「待って!」……なんだ、いるじゃない」
「すみまヒャッ!」
「すみまひゃっ?」
「違う! 少し噛んだだけだし。それより、なんでゴブリンがまだいるのよ! 騙したのね!」
「騙してはいませんよ」
「何言っているの! じゃあ、そいつらはなんなのよ!」
女性が小屋からやっと出て来たと思ったら、少年に対し「嘘つき!」と叫ぶが、少年としては動けないのだから、いないのも当然だろうと思っている。だが、この女性はそうは思ってはくれないみたいだ。
小屋の中から出て来た女性は粗末な貫頭衣を着せられたおかっぱ頭の金髪で歳は十五,六歳くらいだろうか。身長は少年よりも大きく百七十センチメートル近くはあるように思える。それに何故女性だと分かったかと言えば、それは女性特有の体付きのお陰でもある。しかも粗末な貫頭衣で下着類は着けていない様なので、それはもう自由に動くものだから目で追ってしまうのはしょうがないことだろう。そして、その女性は相も変わらず結界の中で動けないゴブリンを指差したままでギャーギャー喚いている。
少年は嘆息してから、女性に対し静かに声を掛ける。
「いや、いるにはいるけど、もう動けないのだからいないのも一緒でしょ。もし、動けるのなら僕達は襲われていますよね?」
「……」
「それで、いるのはお姉さんだけじゃないんでしょ。ここにある小屋は全部壊しちゃうから、出て欲しいんですけど」
「……」
少年がそう女性に話しかけるが、女性は少年の話は聞いておらず結界の中に閉じ込められ身動きが取れないゴブリンを不思議そうに観察してから、そ~っとゴブリンに右手の人差し指を伸ばしチョンチョンと突いてみるが、結界の中のゴブリンは相変わらず身動きも取れず視線だけ女性の方へと向けてくる。
女性はその視線に気付くと「ヒッ!」と短い悲鳴のような声を出し、少年の背後へと隠れるが女性の方が大きいため少年の大きさでは隠すことは無理なようだ。
少年は嘆息すると、まだ自分の背後で様子を窺っている女性に声を掛ける。
「えっと、もういいですか?」
「えっ? あ、うん。本当に動けないみたいね。これなら安心出来るわね」
「それで、ここにある小屋は全部壊すから、出て欲しいんですけど」
「あ……」
女性は自分で結界の中のゴブリンが動けないことを確認すると、安心出来た様で少年の話を聞いてくれるようにはなったが、少年が小屋を壊すから小屋から出て欲しいと言えば、少し困惑した様子を見せる。
「どうしました?」
「あ、いえ。なんでもないの。でも、なんで壊すの?」
「まあ、単純に板や木切れが欲しいのと、ここをそのままにしておくとまた何かが棲み着くかもしれないので」
「ああ、そうね。そうよね」
「じゃあ、小屋の中の人にも出る様に言ってもらえますか?」
「……分かった。ちょっと待ってて」
女性はそう言って、小屋の中に戻ると「ほら、もう大丈夫だから」と言いながら、小屋の中にいた者を外へと連れ出す。
「「「ヒッ!」」」
だが、さっきの女性と同じ様に乱立するゴブリンを認めると短い悲鳴を出して小屋の中に慌てて戻ろうとするのを女性がやんわりと「大丈夫だから。ほら、よく見て」とまだ小さい子供達に言い聞かせる。
子供達は既に涙目になっているが、女性が「大丈夫だから」と優しく声を掛け続けると、やっと落ち着いた様で、今度はいつまでも襲ってこないゴブリン達を不思議そうに眺める。
「分かった? もう、アイツらは動けないの。だから、大丈夫だから、ね?」
「「「……」」」
女性に抱きしめられていた子供達はやっと女性から離れると、今度は立ち尽くすゴブリンの側に立ち、これもまたさっきの女性と同じ様に眺めたり突いたりと色々してみて、どうにか動けないことを確認すると、今度は足下の棒を拾ってから近くのゴブリンを思いっ切り殴りつける。
「ちょっと、止めなさい!」
「なんでだよ!」
「コイツらのせいじゃないか!」
「そうよ。お姉さんも見たでしょ!」
「……」
立ったままのゴブリンを棒を振り上げ力任せに殴り続ける子供達を止めようとする女性に対し、子供達は口々に不満を漏らす。
そして子供達が言うように子供達の親はここにいるゴブリンに嬲り殺され……食われたのだろう。よく見ると、人骨らしき物があちこちに散らばっている。
ここにいる子供達が無事だった理由は少年にも分からない。大人達を喰らって満足したのか、それとも苗床にするつもりだったのかは、ここに残された子供達にも分からないだろう。
理由は分からないままだが少年も早く片付けて帰りたかったので、女性に声を掛ける。
「壊しますけど、いいですか? 何か忘れた物とかないですか?」
「……いいえ。ないわ」
「じゃ、壊しちゃいますね」
「ええ」
少年は肩に掛けている鞄に小屋に使われている棒や板などを片っ端から回収していく。
「え? 何をしているの?」
「何って、回収ですよ」
「だから、どうやっているのって聞いているの!」
「見て分からないですか?」
「分からないわよ!」
「え~」
少年はここで「ハッ、そう言えば!」と思い出す。ラノベの世界では『収納鞄』や『インベントリ』が当たり前の世界もあれば、持っているだけで狙われる世界もあったということを。
「ま、いっか。なるようになるでしょ」
それだけ言うと、少年は女性が騒いでいるのを無視して他の小屋も回収していく。
「中の人ぉ! 聞こえますか? 聞こえたのなら、出て来られますか?」
「「「……」」」
少年はそう言って小屋の中に声を掛けるが、反応は返ってこない。だけど、何者かがいる気配はするし、少年の索敵にも相変わらず反応はある。
「もう、ゴブリンはいないから、安心して出て来ても大丈夫ですよ。聞こえてますかぁ~? 無視するのなら、このまま帰りますね。じゃあ「待って!」……なんだ、いるじゃない」
「すみまヒャッ!」
「すみまひゃっ?」
「違う! 少し噛んだだけだし。それより、なんでゴブリンがまだいるのよ! 騙したのね!」
「騙してはいませんよ」
「何言っているの! じゃあ、そいつらはなんなのよ!」
女性が小屋からやっと出て来たと思ったら、少年に対し「嘘つき!」と叫ぶが、少年としては動けないのだから、いないのも当然だろうと思っている。だが、この女性はそうは思ってはくれないみたいだ。
小屋の中から出て来た女性は粗末な貫頭衣を着せられたおかっぱ頭の金髪で歳は十五,六歳くらいだろうか。身長は少年よりも大きく百七十センチメートル近くはあるように思える。それに何故女性だと分かったかと言えば、それは女性特有の体付きのお陰でもある。しかも粗末な貫頭衣で下着類は着けていない様なので、それはもう自由に動くものだから目で追ってしまうのはしょうがないことだろう。そして、その女性は相も変わらず結界の中で動けないゴブリンを指差したままでギャーギャー喚いている。
少年は嘆息してから、女性に対し静かに声を掛ける。
「いや、いるにはいるけど、もう動けないのだからいないのも一緒でしょ。もし、動けるのなら僕達は襲われていますよね?」
「……」
「それで、いるのはお姉さんだけじゃないんでしょ。ここにある小屋は全部壊しちゃうから、出て欲しいんですけど」
「……」
少年がそう女性に話しかけるが、女性は少年の話は聞いておらず結界の中に閉じ込められ身動きが取れないゴブリンを不思議そうに観察してから、そ~っとゴブリンに右手の人差し指を伸ばしチョンチョンと突いてみるが、結界の中のゴブリンは相変わらず身動きも取れず視線だけ女性の方へと向けてくる。
女性はその視線に気付くと「ヒッ!」と短い悲鳴のような声を出し、少年の背後へと隠れるが女性の方が大きいため少年の大きさでは隠すことは無理なようだ。
少年は嘆息すると、まだ自分の背後で様子を窺っている女性に声を掛ける。
「えっと、もういいですか?」
「えっ? あ、うん。本当に動けないみたいね。これなら安心出来るわね」
「それで、ここにある小屋は全部壊すから、出て欲しいんですけど」
「あ……」
女性は自分で結界の中のゴブリンが動けないことを確認すると、安心出来た様で少年の話を聞いてくれるようにはなったが、少年が小屋を壊すから小屋から出て欲しいと言えば、少し困惑した様子を見せる。
「どうしました?」
「あ、いえ。なんでもないの。でも、なんで壊すの?」
「まあ、単純に板や木切れが欲しいのと、ここをそのままにしておくとまた何かが棲み着くかもしれないので」
「ああ、そうね。そうよね」
「じゃあ、小屋の中の人にも出る様に言ってもらえますか?」
「……分かった。ちょっと待ってて」
女性はそう言って、小屋の中に戻ると「ほら、もう大丈夫だから」と言いながら、小屋の中にいた者を外へと連れ出す。
「「「ヒッ!」」」
だが、さっきの女性と同じ様に乱立するゴブリンを認めると短い悲鳴を出して小屋の中に慌てて戻ろうとするのを女性がやんわりと「大丈夫だから。ほら、よく見て」とまだ小さい子供達に言い聞かせる。
子供達は既に涙目になっているが、女性が「大丈夫だから」と優しく声を掛け続けると、やっと落ち着いた様で、今度はいつまでも襲ってこないゴブリン達を不思議そうに眺める。
「分かった? もう、アイツらは動けないの。だから、大丈夫だから、ね?」
「「「……」」」
女性に抱きしめられていた子供達はやっと女性から離れると、今度は立ち尽くすゴブリンの側に立ち、これもまたさっきの女性と同じ様に眺めたり突いたりと色々してみて、どうにか動けないことを確認すると、今度は足下の棒を拾ってから近くのゴブリンを思いっ切り殴りつける。
「ちょっと、止めなさい!」
「なんでだよ!」
「コイツらのせいじゃないか!」
「そうよ。お姉さんも見たでしょ!」
「……」
立ったままのゴブリンを棒を振り上げ力任せに殴り続ける子供達を止めようとする女性に対し、子供達は口々に不満を漏らす。
そして子供達が言うように子供達の親はここにいるゴブリンに嬲り殺され……食われたのだろう。よく見ると、人骨らしき物があちこちに散らばっている。
ここにいる子供達が無事だった理由は少年にも分からない。大人達を喰らって満足したのか、それとも苗床にするつもりだったのかは、ここに残された子供達にも分からないだろう。
理由は分からないままだが少年も早く片付けて帰りたかったので、女性に声を掛ける。
「壊しますけど、いいですか? 何か忘れた物とかないですか?」
「……いいえ。ないわ」
「じゃ、壊しちゃいますね」
「ええ」
少年は肩に掛けている鞄に小屋に使われている棒や板などを片っ端から回収していく。
「え? 何をしているの?」
「何って、回収ですよ」
「だから、どうやっているのって聞いているの!」
「見て分からないですか?」
「分からないわよ!」
「え~」
少年はここで「ハッ、そう言えば!」と思い出す。ラノベの世界では『収納鞄』や『インベントリ』が当たり前の世界もあれば、持っているだけで狙われる世界もあったということを。
「ま、いっか。なるようになるでしょ」
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