18 / 56
第一章 さようなら日本、こんにちは異世界
第18話 やれば出来る
しおりを挟む
「ん~ふぁ~」
ベッドから体を起こした少年は欠伸をしながら、辺りを見回す。すると、入口の方は既に明るくなっていて横穴の中にまで光が差し込んでいる。
「さて……と、今日は何をしようかな。でも、その前に」
少年はベッドから下り用を足すと自分のパンツが汚れていないことを確認し、昨日使ったクリーンがちゃんと機能していたことに安堵するが、顔を洗おうとしたところで「あ!」と声が出る。
「そうだよ、洗面台も流しもないじゃん。まあ、地道に作るしかないか。だけど、その前にご飯にしようかな」
少年はベッドに座ると、鞄からパンとコップの大きさの結界に水を移す。
「モグモグ……味気ないな。調味料もないし、ハムも欲しいな。それに卵も欲しいな。やっぱり人がいるところに行かないと駄目なのかな。でも、人に会うのはちょっとな。何もここの人達に虐められた訳じゃ無いけど、やっぱりまだ人に会うのは苦手だな」
少年は鞄の中にあるパンが残り少ないことを危惧し、人がいる場所に行くべきだろうかと考えてみるが、どうしてもその気になれない。
ならば、自分で食糧を用意する必要があるが、パンを作るには小麦粉が必要だし、塩やイースト菌も必要になるなど、今の少年には何もかもが足りない。
「え~もうどうすれば……ん? いや、待てよ。もしかしたら、どうにかなるかもね。モノは試しというし」
少年は頭の中で考えていたことを実行する為に鞄からパンを一つ取り出して、それを結界で包み『複製』と唱える。
すると結界の中にあったパンが二つになったのを見て、少年は「やった! じゃ、これを」ともう一度、『複製』と口に出すと今度はパンが四つに増えた。
「うん、ここまでは想定内と。問題は……」
少年は増やしたパンを手に取り、齧り付く。
「うん、大丈夫。ちゃんとパンだ」
少年は、これでパンはなんとかなったとほくそ笑むが、まだ全ての問題が片付いた訳ではない。
「でも、これでご飯はいいとして、あとは……おかずだな。魚は川にいたけど肉と野菜が欲しいし、出来ればご飯も食べたい。パンが嫌いな訳じゃないけど、どうも腹持ちが悪いんだよな。でもな~ここは異世界なんだよな~」
少年はそんなことを考えてはみたものの「ま、いっか」と頭を切り替える。
「今は無いものを探すより必要な物を用意するのが先だよ。でも、今のままじゃ狭いから、もう少し広げないとね。それに入口からベッドが丸見えなのもよくないか」
少年は簡単な食事を済ませると、ベッドから下りてその場にしゃがみ込むと小石を右手に持ち、地面に線を引く。
「えっと……まず必要なのは寝室に食堂に……それとお風呂に洗面所と、納戸があればいいかな。うん、こんな感じかな。結構、広くなるけどいけるよね」
少年は立ち上がると奧へと進み、横穴を広げた時と同じ要領で掘り進み必要な広さを確保する。
「よし、これで必要な広さは確保出来た。後は、換気だな」
少年は竈を作る予定の場所に立つと「この辺でいいか」と天井部分から上に向けて縦穴を掘り、それを結界で塞ぎ『気体』だけを通すように設定すると、『排気』と唱える。すると、その結界は換気扇の様に横穴に溜まっている空気を上へと排気するのだった。
「じゃあ、後は……材料が欲しいな」
テーブルとか椅子が欲しくなるが、全てを岩で用意するのも冷たい感じがして嫌だなと少年は思う。そうなると、材料を探しに出るしかない。
「ま、しょうがないか。一度は周囲を確認しておかないと駄目だろうからね」
少年は「ふぅ~」と嘆息してから、「ま、なんとかなるでしょ」と横穴の外に出ることを決めた。
「さてと、外に出たはいいけど、木はどこにあるかな」
少年は横穴の外に出ると材料になりそうな木がどこにあるかと周囲を見渡すが、目に入るのは草むらだけで木が生えている場所がどこにも見えない。
「もう少し高い場所から探さないと駄目かな。じゃあ……」
少年は自分が出て来た横穴の崖を見上げるが、その上まで行けるような道があるわけでもない。
「他に高い場所はないし、頑張って登るしかないのかな。ん~あ! そうだよ」
少年はポンと両手を合わせると「モノは試し」と今、思い付いたことを試してみることにする。
「僕の考える通りなら、なんでも遮断出来るなら、『重力』もいけるハズだよね」
少年はいいことを思い付いたとばかりに足下に板のように薄い結界を用意すると、その上に乗ろうとして「ちょっと待てよ」と、上げた足を下ろす。
「やっぱり先ずは安全確認だよね」と用意した結界の上に手頃な大きさの石を載せてから、『重力を遮断』と設定した瞬間に、石を乗せた結界は上空高く跳ね上がるように飛んで行く。
「え~」
少年は自分の思い付きが成功したことを嬉しく思うと、同時に「試してよかった」と胸を撫で下ろす。
「もし、あのまま乗っていたら、今頃は……」と少年は石が飛んで行った遥か上空を見上げる。
「ほんの少しだけ遮断出来ればいいんだけどな。どうやれば調節出来るんだろ。まあ、モノは試しだね」
少年はもう一度、薄く結界を足下に用意してから、また石を載せると「気持ち、重力を遮断」と呟くと、今度は石を載せた結界がゆっくりと浮き上がってくる。
「おぉ~試してみるもんだね。でも、待てよ。これで垂直方向に移動出来るってことは、もしかしたら水平にも行けるんじゃないの?」
少年はいいことを思い付いたとばかりにほくそ笑むのだった。
ベッドから体を起こした少年は欠伸をしながら、辺りを見回す。すると、入口の方は既に明るくなっていて横穴の中にまで光が差し込んでいる。
「さて……と、今日は何をしようかな。でも、その前に」
少年はベッドから下り用を足すと自分のパンツが汚れていないことを確認し、昨日使ったクリーンがちゃんと機能していたことに安堵するが、顔を洗おうとしたところで「あ!」と声が出る。
「そうだよ、洗面台も流しもないじゃん。まあ、地道に作るしかないか。だけど、その前にご飯にしようかな」
少年はベッドに座ると、鞄からパンとコップの大きさの結界に水を移す。
「モグモグ……味気ないな。調味料もないし、ハムも欲しいな。それに卵も欲しいな。やっぱり人がいるところに行かないと駄目なのかな。でも、人に会うのはちょっとな。何もここの人達に虐められた訳じゃ無いけど、やっぱりまだ人に会うのは苦手だな」
少年は鞄の中にあるパンが残り少ないことを危惧し、人がいる場所に行くべきだろうかと考えてみるが、どうしてもその気になれない。
ならば、自分で食糧を用意する必要があるが、パンを作るには小麦粉が必要だし、塩やイースト菌も必要になるなど、今の少年には何もかもが足りない。
「え~もうどうすれば……ん? いや、待てよ。もしかしたら、どうにかなるかもね。モノは試しというし」
少年は頭の中で考えていたことを実行する為に鞄からパンを一つ取り出して、それを結界で包み『複製』と唱える。
すると結界の中にあったパンが二つになったのを見て、少年は「やった! じゃ、これを」ともう一度、『複製』と口に出すと今度はパンが四つに増えた。
「うん、ここまでは想定内と。問題は……」
少年は増やしたパンを手に取り、齧り付く。
「うん、大丈夫。ちゃんとパンだ」
少年は、これでパンはなんとかなったとほくそ笑むが、まだ全ての問題が片付いた訳ではない。
「でも、これでご飯はいいとして、あとは……おかずだな。魚は川にいたけど肉と野菜が欲しいし、出来ればご飯も食べたい。パンが嫌いな訳じゃないけど、どうも腹持ちが悪いんだよな。でもな~ここは異世界なんだよな~」
少年はそんなことを考えてはみたものの「ま、いっか」と頭を切り替える。
「今は無いものを探すより必要な物を用意するのが先だよ。でも、今のままじゃ狭いから、もう少し広げないとね。それに入口からベッドが丸見えなのもよくないか」
少年は簡単な食事を済ませると、ベッドから下りてその場にしゃがみ込むと小石を右手に持ち、地面に線を引く。
「えっと……まず必要なのは寝室に食堂に……それとお風呂に洗面所と、納戸があればいいかな。うん、こんな感じかな。結構、広くなるけどいけるよね」
少年は立ち上がると奧へと進み、横穴を広げた時と同じ要領で掘り進み必要な広さを確保する。
「よし、これで必要な広さは確保出来た。後は、換気だな」
少年は竈を作る予定の場所に立つと「この辺でいいか」と天井部分から上に向けて縦穴を掘り、それを結界で塞ぎ『気体』だけを通すように設定すると、『排気』と唱える。すると、その結界は換気扇の様に横穴に溜まっている空気を上へと排気するのだった。
「じゃあ、後は……材料が欲しいな」
テーブルとか椅子が欲しくなるが、全てを岩で用意するのも冷たい感じがして嫌だなと少年は思う。そうなると、材料を探しに出るしかない。
「ま、しょうがないか。一度は周囲を確認しておかないと駄目だろうからね」
少年は「ふぅ~」と嘆息してから、「ま、なんとかなるでしょ」と横穴の外に出ることを決めた。
「さてと、外に出たはいいけど、木はどこにあるかな」
少年は横穴の外に出ると材料になりそうな木がどこにあるかと周囲を見渡すが、目に入るのは草むらだけで木が生えている場所がどこにも見えない。
「もう少し高い場所から探さないと駄目かな。じゃあ……」
少年は自分が出て来た横穴の崖を見上げるが、その上まで行けるような道があるわけでもない。
「他に高い場所はないし、頑張って登るしかないのかな。ん~あ! そうだよ」
少年はポンと両手を合わせると「モノは試し」と今、思い付いたことを試してみることにする。
「僕の考える通りなら、なんでも遮断出来るなら、『重力』もいけるハズだよね」
少年はいいことを思い付いたとばかりに足下に板のように薄い結界を用意すると、その上に乗ろうとして「ちょっと待てよ」と、上げた足を下ろす。
「やっぱり先ずは安全確認だよね」と用意した結界の上に手頃な大きさの石を載せてから、『重力を遮断』と設定した瞬間に、石を乗せた結界は上空高く跳ね上がるように飛んで行く。
「え~」
少年は自分の思い付きが成功したことを嬉しく思うと、同時に「試してよかった」と胸を撫で下ろす。
「もし、あのまま乗っていたら、今頃は……」と少年は石が飛んで行った遥か上空を見上げる。
「ほんの少しだけ遮断出来ればいいんだけどな。どうやれば調節出来るんだろ。まあ、モノは試しだね」
少年はもう一度、薄く結界を足下に用意してから、また石を載せると「気持ち、重力を遮断」と呟くと、今度は石を載せた結界がゆっくりと浮き上がってくる。
「おぉ~試してみるもんだね。でも、待てよ。これで垂直方向に移動出来るってことは、もしかしたら水平にも行けるんじゃないの?」
少年はいいことを思い付いたとばかりにほくそ笑むのだった。
0
お気に入りに追加
715
あなたにおすすめの小説
転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!
ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生!
せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい!
魔法アリなら色んなことが出来るよね。
無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。
第一巻 2022年9月発売
第二巻 2023年4月下旬発売
第三巻 2023年9月下旬発売
※※※スピンオフ作品始めました※※※
おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる