10 / 56
第一章 さようなら日本、こんにちは異世界
第10話 ガッカリだよ
しおりを挟む
『では、いよいよ君の為に特別に用意した個別魔法について説明します。君に用意した個別魔法、それは防御魔法です』
「はぁ?」
女神通信を読んでいた少年は「ウソだろ」と思わず呟くが、確かに女神ミルラは異世界特典として用意すると言いはしたが、何をとは特に言ってはいなかったと思い出す。
「ウソだろ。防御魔法ってアレだよね。要は防御だから防ぐだけだよね。え~なんだよ。期待させるだけさせといてコレはないよな~」
少年はそれでも自分に与えられた個別魔法ならば使い方を知っておかないとダメだよなというのと『防御魔法』というくらいだから、なんらかの攻撃からは身を守れるかもしれないと気を取り直して女神通信を再び読み始める。
『ふふふ、あれだけ異世界特典を期待させといて防御魔法なんてバカにしてると憤慨していることでしょう。でも、ガッカリするのはまだ早いですよ。いいですか、たかが防御だとバカにするなかれですよ。このキレイな女神ミルラがそんな程度の低い魔法を授けると思われているのも心外です。なんせキレイな私が授けるのですから』
「また、二回も言ってるよ。でも、確かに単なる防御魔法な訳ないよなって気がしてきた」
少年は少しだけ気を取り直して女神通信を読み続ける。
『ちゃんと読んでくれているみたいですね。感心です。では、防御魔法についてお話しますからね。先ず何から何を防御するのかと言うことですが、「何を」は言うまでもなく君自身です。では、「何から」は「君を害する全て」からとなります。どうです? 凄いですよね。褒めてもいいんですよ?』
「……」
少年はまた紙面から目を離すと「ふぅ~」と深呼吸をする。
「僕を害する全てって……抽象的過ぎてよく分からないけど、『例えば』はないのかな?」
『すみませんでした。君を害する全てと言ってもよく分からないですよね。そうですね、言うならば物理的な物であれば、君を傷付けようとする刀剣の類や矢や石など投擲される物。魔法ならば水球や火球などの攻撃魔法でしょうか。後は暑さ寒さ、毒に湿気などの環境的なものまでと有りと有らゆる君を害する全てから君を防御する魔法です。どうですか? これでも不要と言いますか?』
「え? これ、マジなの? でも、異世界なら有り得るのか……な?」
試しにと少年は防御魔法を使ってみようと思ったが、発動させる方法が分からなかったので、ふぅ~と嘆息してから女神通信の続きを読む。
『では、防御魔法の使い方について説明します。道具は必要ありません。呪文も不要です。心の中で強く「守れ」と念じるだけです。どうぞ試してみてください』
「あれ? 意外に簡単だった。でも、強く念じるって強さで変わったりするのかな。じゃあ、先ずは軽く『守って』……おっ」
少年が防御魔法を試しに使ってみると体の中から魔力が少しだけ抜き取られる感触と共に自分の体の周りをやんわりとした感触の何かに包み込まれた気がした。
じゃあ、試しにと鞄から解体用のナイフを取り出し、右手に持つと左手の人差し指の先をチョンと突いてみると『ぷすっ』と指先にナイフの刃先が入る。
「痛ッ!」
防御魔法で守られている感覚はあったのにナイフの刃先はスルッと入って来たことに対し、少年はどういうことだと思うが、先ずは血が出ている指先を見ながら「あ~血が出てんじゃん」と血を止めることは出来ないのかなと考えていたら、スッと血が止まった。
「え? あれ? 血が止まった……傷もなくなった? え? どゆこと?」
少年は防御魔法がインチキじゃないかと憤慨しつつも血が止まり傷が塞がったのもどういうことだと女神通信に目を通す。
『言い忘れてましたが、自分自身を傷付けようとしても防御魔法は、その行為をスルーしますから、注意して下さいね。では、何故防御魔法がスルーするかと言うと、自分で自分を傷付けようとしても、そこには殺気は生じませんよね? ですから、君自身を害しようという殺気がないのですから、防御魔法も守ることはしないということです。お分かり頂けましたか?』
「あ~そういうことか。なるほどね。じゃあ、傷口が消えたのはどういうことなんだろう」
『あと、防御魔法が有りと有らゆるものから君自身を守るということは、防御魔法で守られている空間は無敵状態ですね。加えて気温操作などの事象を変更することも可能となります。望めば水の中だろうが、溶岩の中でもケガすることも窒息することもなく過ごすことも可能となります。要は何を言いたいかと言えば、防御魔法で守られている空間内では有りと有らゆることが可能となるということです。なので、治療するくらい簡単です』
「そうなんだ。でも、この女神通信って僕の考えていることを先読みしている気がするんだけど気のせいだよね」
『ええ、そうです。気のせいです』
「あ~やっぱり、こっちも覗いているんだ」
『な、なんのことか分かりませんが、これでチュートリアルは以上です。では、異世界での生活に幸あらんことを』
女神通信の最後まで目を通すと『ポシュッ』という音と共に女神通信は煙となって消えてしまった。
「まあ、女神だし。こっちの世界を覗くくらいは難しくはないか。さて……」
女神ミルラに監視されているのは多少気に食わないが、神という存在から逃げられるとも思わないので、先ずは存在を無視することにした少年は、日が暮れる前に今日の寝床を確保したいと考える。
「先ず、このままここにいるのも一つの手だとは思うけど、まだ何も分かっていない状態で現地の人と上手くやれるとは思えないよね。なら、ここは……」
少年は自身の体を包む感触がまだあることを確かめると、街道から外れ森の中へと入って行く。
「はぁ?」
女神通信を読んでいた少年は「ウソだろ」と思わず呟くが、確かに女神ミルラは異世界特典として用意すると言いはしたが、何をとは特に言ってはいなかったと思い出す。
「ウソだろ。防御魔法ってアレだよね。要は防御だから防ぐだけだよね。え~なんだよ。期待させるだけさせといてコレはないよな~」
少年はそれでも自分に与えられた個別魔法ならば使い方を知っておかないとダメだよなというのと『防御魔法』というくらいだから、なんらかの攻撃からは身を守れるかもしれないと気を取り直して女神通信を再び読み始める。
『ふふふ、あれだけ異世界特典を期待させといて防御魔法なんてバカにしてると憤慨していることでしょう。でも、ガッカリするのはまだ早いですよ。いいですか、たかが防御だとバカにするなかれですよ。このキレイな女神ミルラがそんな程度の低い魔法を授けると思われているのも心外です。なんせキレイな私が授けるのですから』
「また、二回も言ってるよ。でも、確かに単なる防御魔法な訳ないよなって気がしてきた」
少年は少しだけ気を取り直して女神通信を読み続ける。
『ちゃんと読んでくれているみたいですね。感心です。では、防御魔法についてお話しますからね。先ず何から何を防御するのかと言うことですが、「何を」は言うまでもなく君自身です。では、「何から」は「君を害する全て」からとなります。どうです? 凄いですよね。褒めてもいいんですよ?』
「……」
少年はまた紙面から目を離すと「ふぅ~」と深呼吸をする。
「僕を害する全てって……抽象的過ぎてよく分からないけど、『例えば』はないのかな?」
『すみませんでした。君を害する全てと言ってもよく分からないですよね。そうですね、言うならば物理的な物であれば、君を傷付けようとする刀剣の類や矢や石など投擲される物。魔法ならば水球や火球などの攻撃魔法でしょうか。後は暑さ寒さ、毒に湿気などの環境的なものまでと有りと有らゆる君を害する全てから君を防御する魔法です。どうですか? これでも不要と言いますか?』
「え? これ、マジなの? でも、異世界なら有り得るのか……な?」
試しにと少年は防御魔法を使ってみようと思ったが、発動させる方法が分からなかったので、ふぅ~と嘆息してから女神通信の続きを読む。
『では、防御魔法の使い方について説明します。道具は必要ありません。呪文も不要です。心の中で強く「守れ」と念じるだけです。どうぞ試してみてください』
「あれ? 意外に簡単だった。でも、強く念じるって強さで変わったりするのかな。じゃあ、先ずは軽く『守って』……おっ」
少年が防御魔法を試しに使ってみると体の中から魔力が少しだけ抜き取られる感触と共に自分の体の周りをやんわりとした感触の何かに包み込まれた気がした。
じゃあ、試しにと鞄から解体用のナイフを取り出し、右手に持つと左手の人差し指の先をチョンと突いてみると『ぷすっ』と指先にナイフの刃先が入る。
「痛ッ!」
防御魔法で守られている感覚はあったのにナイフの刃先はスルッと入って来たことに対し、少年はどういうことだと思うが、先ずは血が出ている指先を見ながら「あ~血が出てんじゃん」と血を止めることは出来ないのかなと考えていたら、スッと血が止まった。
「え? あれ? 血が止まった……傷もなくなった? え? どゆこと?」
少年は防御魔法がインチキじゃないかと憤慨しつつも血が止まり傷が塞がったのもどういうことだと女神通信に目を通す。
『言い忘れてましたが、自分自身を傷付けようとしても防御魔法は、その行為をスルーしますから、注意して下さいね。では、何故防御魔法がスルーするかと言うと、自分で自分を傷付けようとしても、そこには殺気は生じませんよね? ですから、君自身を害しようという殺気がないのですから、防御魔法も守ることはしないということです。お分かり頂けましたか?』
「あ~そういうことか。なるほどね。じゃあ、傷口が消えたのはどういうことなんだろう」
『あと、防御魔法が有りと有らゆるものから君自身を守るということは、防御魔法で守られている空間は無敵状態ですね。加えて気温操作などの事象を変更することも可能となります。望めば水の中だろうが、溶岩の中でもケガすることも窒息することもなく過ごすことも可能となります。要は何を言いたいかと言えば、防御魔法で守られている空間内では有りと有らゆることが可能となるということです。なので、治療するくらい簡単です』
「そうなんだ。でも、この女神通信って僕の考えていることを先読みしている気がするんだけど気のせいだよね」
『ええ、そうです。気のせいです』
「あ~やっぱり、こっちも覗いているんだ」
『な、なんのことか分かりませんが、これでチュートリアルは以上です。では、異世界での生活に幸あらんことを』
女神通信の最後まで目を通すと『ポシュッ』という音と共に女神通信は煙となって消えてしまった。
「まあ、女神だし。こっちの世界を覗くくらいは難しくはないか。さて……」
女神ミルラに監視されているのは多少気に食わないが、神という存在から逃げられるとも思わないので、先ずは存在を無視することにした少年は、日が暮れる前に今日の寝床を確保したいと考える。
「先ず、このままここにいるのも一つの手だとは思うけど、まだ何も分かっていない状態で現地の人と上手くやれるとは思えないよね。なら、ここは……」
少年は自身の体を包む感触がまだあることを確かめると、街道から外れ森の中へと入って行く。
0
お気に入りに追加
716
あなたにおすすめの小説
転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい!
ももがぶ
ファンタジー
猫たちと布団に入ったはずが、気がつけば異世界転生!
せっかくの異世界。好き放題に思いつくままモノ作りを極めたい!
魔法アリなら色んなことが出来るよね。
無自覚に好き勝手にモノを作り続けるお話です。
第一巻 2022年9月発売
第二巻 2023年4月下旬発売
第三巻 2023年9月下旬発売
※※※スピンオフ作品始めました※※※
おもちゃ作りが楽しすぎて!!! ~転生したから思いっきりモノ作りしたいしたい! 外伝~
龍騎士イリス☆ユグドラシルの霊樹の下で
ウッド
ファンタジー
霊樹ユグドラシルの根っこにあるウッドエルフの集落に住む少女イリス。
入ったらダメと言われたら入り、登ったらダメと言われたら登る。
ええい!小娘!ダメだっちゅーとろーが!
だからターザンごっこすんなぁーーー!!
こんな破天荒娘の教育係になった私、緑の大精霊シルフェリア。
寿命を迎える前に何とかせにゃならん!
果たして暴走小娘イリスを教育する事が出来るのか?!
そんな私の奮闘記です。
しかし途中からあんまし出てこなくなっちゃう・・・
おい作者よ裏で話し合おうじゃないか・・・
・・・つーかタイトル何とかならんかったんかい!
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
異世界でスキルを奪います ~技能奪取は最強のチート~
星天
ファンタジー
幼馴染を庇って死んでしまった翔。でも、それは神様のミスだった!
創造神という女の子から交渉を受ける。そして、二つの【特殊技能】を貰って、異世界に飛び立つ。
『創り出す力』と『奪う力』を持って、異世界で技能を奪って、どんどん強くなっていく
はたして、翔は異世界でうまくやっていけるのだろうか!!!
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる