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第一章 さようなら日本、こんにちは異世界
第4話 ここは異世界なのかな
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「ん……ここは……それに……」
女神ミルラと話していたはずの少年は気付けば、道端の木の根元に横になっていた。女神ミルラは異世界に送ると言っていたが、目の前に映る景色は異世界と言うよりはどこかの田舎道を思わせる風景だった。
木の根元に背中を預けていた少年は身を起こすと改めて、周囲を見回すが今の少年の目の前には未舗装の土の道路が見えているだけで、人らしき姿を見ることは出来ない。その道路の端に生えている草や少年が背中を預けている木もどこかで見覚えのある様な気はするが名前までは分からない。
そもそも花や草木の名前など気にしたこともないので、知らないのも当然なのだが異世界に来たというのなら、それらしい物を目にしたいのだけどと少年は願うが、目に映る範囲では「これぞ異世界!」と思わせる物は何もなかった。
「ここは本当に異世界なんだろうか?」
そんなことを考えていると、ふと目に着いた自分の手を見てみる。
「なんだか小さい。えっと、どういうこと?」
少年は手だけでなく足も小さいことに気付く。そこで少年は立ち上がると、さっきまで背中を預けていた木に対し頭の天辺からなるべく水平になるように注意しながら、木の表面に分かる様に傷を付けると、その位置を確かめる。
「えっと、だいたい一三〇センチメートルってところかな……って、低くなっているじゃないか! え? どゆこと?」
少年はここで初めて自分の体が飛び降りる前の体とサイズが異なっていることに気が付いた。そして、今の格好を改めてみるともちろん飛び降りた時の学生服などではない。そもそも女神ミルラの前にいた時は魂だけの状態なので服はもちろん、下着すら着用していなかった訳だが、今は生成りの長袖シャツに紺色の長ズボン、それに革で出来たブーツらしき靴を履いていて、肩掛け鞄を掛けていた。
「えっと、これって女神からの贈り物ってことなのかな? あれ、そう言えば異世界特典をくれるって言っていたけど、それってこれのことなの? いや、そんなハズは……」
少年は恐る恐るといった様子で、肩掛け鞄をゆっくりと開けてみる。
「え? なんで? 中が見えない……ってか黒いんだけど? え、鞄だよね」
少年は肩掛け鞄を肩から外すと逆さに振ってみるが、中からは何も出て来る様子はない。
「え、ウソでしょ。本当に何もないの? でも、くれるって言ったし……」
少年は試しにと側にあった足下の小石を一つ拾うと鞄の中の黒い部分にそっと入れてみる。
「あれ、なんの抵抗もなく入っていった……でも、逆さに振っても出てこない。これってもしかして、もしかするのかな?」
少年は小石を鞄に入れた後にさっきと同じ様に逆さに振ってみるが、小石が中から出て来ることはなかった。そこで少年は今まで読んできたラノベの知識から、もしかしたらこれが異世界特典のインベントリなのではと期待する。
だが、もしそうだとしてもこの暗闇にしか見えない鞄の中に手を突っ込むのは度胸がいるようで、何度もそっと鞄の中に指先を入れようとしては引き戻すと言うのを繰り返していた。
「そうだよ。何も最初っから手を突っ込まなくてもいいんだよ」
少年は手をポンと叩くといいことを思い付いたとばかりに今度は木の枝を拾うと、それをゆっくりと鞄の中へと入れ、半分ほど入ったところで、今度はゆっくりと引き抜き木の枝がどうもなっていないことを確認する。
「うん、どうもなってない。なら、今度は……」
少年は『ゴクリ』と生唾を呑み込むと覚悟を決め、右手をゆっくりと鞄の中へと入れていく。
「ん~なんだろ。これは……今まで感じたことのない感覚だけど……ん? あれ、分かる! この鞄の中に何が入っているかが分かる!」
鞄の中に右手を入れた瞬間に少年の頭の中には鞄の中に入っている物の一覧が羅列された。
「えっと、『小石』これはさっきのやつだよね。それと……『硬貨』か。女神がこっちのお金を用意してくれたのかな。後は『下着一週間分』、『洗い替え用のシャツにズボン三着』、『解体用ナイフ』、『女神通信』……『女神通信』?」
少年は『女神通信』が気になり、頭の中でその文字を意識すると、鞄の中に入れた右手に何かが触れた感触に驚き鞄の中から右手を引き抜くとその右手は何かの紙を掴んでいた。
「あ、取れた。そっか、入れる時には特に意識することなくそのまま入れればよくて、取りたい時にはそれを意識すればいいのか。なるほど、これはちゃんとした異世界特典だね。で、問題はこれだよね」
少年は右手に持つ『女神通信』をジッと見詰める。
「これが女神ミルラが言っていた連絡手段なのかな。とりあえず、見てみないことには何も分からないよね」
少年は女神通信をソッと開くとそこに書かれている内容に目を通す。
「えっと……なになに?」
少年が目を落とした紙面には思った通りに女神ミルラからの連絡事項が書かれていた。
『この女神通信を見ているということは、既に肩掛け鞄がインベントリとなっていることに気が付かれたことでしょう。そうです。君が思った様にその鞄は『時間停止』『容量無制限』『生き物不可』の定番とも言えるインベントリ仕様の鞄です。しかも君の手元から離れた場合には自動的に君の手元に戻ってくる不思議仕様も備えています。しかもしかも、『防汚』『防刃』『非破壊』などの耐性も付与済みです。しかも経年劣化も許さない『自動再生』も付与済みです』
少年はここまで読むと一度、紙面から目を離し右手で目頭を揉む。
「なんだかもうゲップが出そうなんだけど……まだ続きがあるんだよなぁ~」
少年は「ふぅ~」と息を吐くともう一度、紙面の方へ目を落とす。
女神ミルラと話していたはずの少年は気付けば、道端の木の根元に横になっていた。女神ミルラは異世界に送ると言っていたが、目の前に映る景色は異世界と言うよりはどこかの田舎道を思わせる風景だった。
木の根元に背中を預けていた少年は身を起こすと改めて、周囲を見回すが今の少年の目の前には未舗装の土の道路が見えているだけで、人らしき姿を見ることは出来ない。その道路の端に生えている草や少年が背中を預けている木もどこかで見覚えのある様な気はするが名前までは分からない。
そもそも花や草木の名前など気にしたこともないので、知らないのも当然なのだが異世界に来たというのなら、それらしい物を目にしたいのだけどと少年は願うが、目に映る範囲では「これぞ異世界!」と思わせる物は何もなかった。
「ここは本当に異世界なんだろうか?」
そんなことを考えていると、ふと目に着いた自分の手を見てみる。
「なんだか小さい。えっと、どういうこと?」
少年は手だけでなく足も小さいことに気付く。そこで少年は立ち上がると、さっきまで背中を預けていた木に対し頭の天辺からなるべく水平になるように注意しながら、木の表面に分かる様に傷を付けると、その位置を確かめる。
「えっと、だいたい一三〇センチメートルってところかな……って、低くなっているじゃないか! え? どゆこと?」
少年はここで初めて自分の体が飛び降りる前の体とサイズが異なっていることに気が付いた。そして、今の格好を改めてみるともちろん飛び降りた時の学生服などではない。そもそも女神ミルラの前にいた時は魂だけの状態なので服はもちろん、下着すら着用していなかった訳だが、今は生成りの長袖シャツに紺色の長ズボン、それに革で出来たブーツらしき靴を履いていて、肩掛け鞄を掛けていた。
「えっと、これって女神からの贈り物ってことなのかな? あれ、そう言えば異世界特典をくれるって言っていたけど、それってこれのことなの? いや、そんなハズは……」
少年は恐る恐るといった様子で、肩掛け鞄をゆっくりと開けてみる。
「え? なんで? 中が見えない……ってか黒いんだけど? え、鞄だよね」
少年は肩掛け鞄を肩から外すと逆さに振ってみるが、中からは何も出て来る様子はない。
「え、ウソでしょ。本当に何もないの? でも、くれるって言ったし……」
少年は試しにと側にあった足下の小石を一つ拾うと鞄の中の黒い部分にそっと入れてみる。
「あれ、なんの抵抗もなく入っていった……でも、逆さに振っても出てこない。これってもしかして、もしかするのかな?」
少年は小石を鞄に入れた後にさっきと同じ様に逆さに振ってみるが、小石が中から出て来ることはなかった。そこで少年は今まで読んできたラノベの知識から、もしかしたらこれが異世界特典のインベントリなのではと期待する。
だが、もしそうだとしてもこの暗闇にしか見えない鞄の中に手を突っ込むのは度胸がいるようで、何度もそっと鞄の中に指先を入れようとしては引き戻すと言うのを繰り返していた。
「そうだよ。何も最初っから手を突っ込まなくてもいいんだよ」
少年は手をポンと叩くといいことを思い付いたとばかりに今度は木の枝を拾うと、それをゆっくりと鞄の中へと入れ、半分ほど入ったところで、今度はゆっくりと引き抜き木の枝がどうもなっていないことを確認する。
「うん、どうもなってない。なら、今度は……」
少年は『ゴクリ』と生唾を呑み込むと覚悟を決め、右手をゆっくりと鞄の中へと入れていく。
「ん~なんだろ。これは……今まで感じたことのない感覚だけど……ん? あれ、分かる! この鞄の中に何が入っているかが分かる!」
鞄の中に右手を入れた瞬間に少年の頭の中には鞄の中に入っている物の一覧が羅列された。
「えっと、『小石』これはさっきのやつだよね。それと……『硬貨』か。女神がこっちのお金を用意してくれたのかな。後は『下着一週間分』、『洗い替え用のシャツにズボン三着』、『解体用ナイフ』、『女神通信』……『女神通信』?」
少年は『女神通信』が気になり、頭の中でその文字を意識すると、鞄の中に入れた右手に何かが触れた感触に驚き鞄の中から右手を引き抜くとその右手は何かの紙を掴んでいた。
「あ、取れた。そっか、入れる時には特に意識することなくそのまま入れればよくて、取りたい時にはそれを意識すればいいのか。なるほど、これはちゃんとした異世界特典だね。で、問題はこれだよね」
少年は右手に持つ『女神通信』をジッと見詰める。
「これが女神ミルラが言っていた連絡手段なのかな。とりあえず、見てみないことには何も分からないよね」
少年は女神通信をソッと開くとそこに書かれている内容に目を通す。
「えっと……なになに?」
少年が目を落とした紙面には思った通りに女神ミルラからの連絡事項が書かれていた。
『この女神通信を見ているということは、既に肩掛け鞄がインベントリとなっていることに気が付かれたことでしょう。そうです。君が思った様にその鞄は『時間停止』『容量無制限』『生き物不可』の定番とも言えるインベントリ仕様の鞄です。しかも君の手元から離れた場合には自動的に君の手元に戻ってくる不思議仕様も備えています。しかもしかも、『防汚』『防刃』『非破壊』などの耐性も付与済みです。しかも経年劣化も許さない『自動再生』も付与済みです』
少年はここまで読むと一度、紙面から目を離し右手で目頭を揉む。
「なんだかもうゲップが出そうなんだけど……まだ続きがあるんだよなぁ~」
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