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第三章 運動会なんだよ

第五話 邪魔されたのよ

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「それでアビーはどれに出るんだ?」
「ちょっと待って。あ! えっと、この後の組み体操に棒倒し、そして昼からはダンスに出た後は、リレーで終わりね」
「意外と少ないな」
「もう、アビーが全部に出られる訳ないでしょ」
「それもそうか。それでダンスってのはなんなんだ?」
「それね、私も練習に付き合ったのよ。ちょっと大変だったけど楽しかったわよ」
「そうか、そりゃ楽しみだな」

 マークがジュディにアビーが出る演目を確認してから、ダンスと聞き反応する。もしかして、男の子も一緒なのかとふと頭をよぎるが、ジュディにそんな様子を見せる訳にもいかないのでなかったことにする。

 アビーが踊る予定のダンスだが、これはもう運動会で行われるフォークダンスの定番でもある『オクラホマミキサー』だ。

 なぜ、これが演目に組み込まれているかと言えば、アビーが運動会でやってみたい演目を出し終えた後に「そう言えばこんなのもあったっけ」とフフフンフンフンと鼻歌を気分よく奏でていたところにメアリーが興味を示し「それは何?」と聞かれたので、病室のベッドの上でテレビから流れてくるオクラホマミキサーの曲を思い出しながら、メアリーを相手に踊ってみたところ、担任やクラスの皆から拍手喝采を浴びることとなり運動会の演目に追加されてしまったのだ。

 そしてこのフォークダンスは男子女子に分かれて踊ることが大事だとアビーが力説したことで、目当ての相手がいるメアリーは今日イチのお目当てだったりするのだ。

 そんなことになっているとは知らないアビーはまずは目の前の競技を熟していくだけだと今は組み体操のピラミッドの上で「やぁ!」と叫んでいたりする。

 そして、次は棒倒しだが、ここでもアビーは体の小ささを理由に防衛組ではなく攻撃組として参加していた。

「ハイ!」と手が鳴るのを合図にアビーは相手の棒を目指す。すると、アビーの前には見覚えのある少年が両手を広げてアビーの行く手を阻んでいた。

「ここは通さない! 例え他のヤツは通してもお前だけは絶対に通さない!」
「え? それってポンコツじゃないの?」
「ち、違う! 絶対にポンコツなんかじゃない!」
「でも、ほら!」
「え?」

 アビーの行く手を阻んでいた少年……ナダルの横を攻撃組が走り抜けていき、棒に向かって飛び付いている。

「放っておいていいの?」
「……いい。俺はお前には負けない!」
「ん~それも困るんだけど」
「俺は困らない! さあ、負けましたって言え!」
「ん~それはちょっと言いたくないな」
「ふん! お前はここで俺に通せんぼされて終わりだ!」
「え? そんなことはないよ」
「嘘つけ!」
「嘘じゃないもん!」
「だって、お前は動けないじゃないか!」
「動けないじゃなくて、動いていないだけなんだけど?」
「何が違うんだ?」
「だから、動こうと思えばこうやって動けるってこと」
「え? あ!」
「ごめんね」

 アビーはそう言うとナダルの上を飛び越し、まだ立ったままの棒の頂上を目指す。

「やっと来たなアビー。ほら、さっさと上に行け!」
「うん、ありがとうケビン」

 ケビンの補助を受けなくても先端に行くのは難しいことではないのだが、ここは素直にお礼を言ってから先端を目指すアビーだった。

「ねえ、アビーが上に行ったわよ!」
「おいおい、なんでそんなことになったんだ」
「いいじゃない。アビーらしいわ」
「男の子は何をしているんだよ」

 ジュディはアビーが棒の先端まで登ったことに感心していたが、マークは女の子なのにケガしないだろうかと心配なようだ。

 そして肝心のアビーはと言えば、先端にしがみ付き、ゆらゆらと揺らしてなんとか棒を倒そうとしている。そして、そんなアビーの周りでは精霊達が一生懸命応援していた。

『アビー、もう少しよ!』
『手伝う?』
『コレを引っ張ればいいの?』

 アビーは自分の目の前にいきなり現れた精霊達に驚きはしたが、今話すことは出来ないので『何もしないで』とお願いして棒を倒すのに集中した。

 アビーの頑張りもあり、棒倒しは二回連続で倒すことが出来たので、アビー達チームの勝ちとなる。

 ちなみに二本目でも同じ様にナダルに行く手を阻まれたが、今度は気にすることなくナダルの頭上を飛び越し簡単に棒の先端に飛び付き、勢いでそのまま倒された。
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