僕っ娘、転生幼女は今日も元気に生きています!

ももがぶ

文字の大きさ
上 下
43 / 51
第三章 運動会なんだよ

第二話 怒鳴られたのよ

しおりを挟む
長かった校長先生の話が終わり、アビーがあくびをかみ殺しながらメアリー達とお喋りしていると次のプログラムへと進む。各担任は整列している生徒達に周りとぶつからないように間隔を空けるように指示すると、アビーが担任に呼ばれる。

「早く早く!」
「えっと、何をするの?」
「いいから、その台に上がって! はい!」
「え……ちょ……」

担任に急かされるように朝礼台の上へと上がらせられたアビーは、他の生徒達の視線をまともに受ける。そして、朝礼台の前ではメアリー達アビーのクラスメイトが他の生徒達と向かい合う形で立っていた。それを見たアビーは一瞬で理解してしまった。そういうことかと。

「先生、聞いてないんですけど?」
「あれ? 言ってなかった? でも、そういうことだから、よろしくね」
「え~」

担任は朝礼台から離れるとメガホンを使って、グラウンド中に聞こえるように話し出す。

「今から、体操を始めます。え~これは体を動かす前にやっておくととてもいいことなので是非、覚えて下さいね~では、アビー、よろしくお願いします!」
「……分かりましたよ。ハァ~じゃあ、腕を前から上にあげて、大きく背伸びの運動から……」

アビーや他のクラスメイト達の動作に合わせて、全校生徒達がぎこちない動作で体操を始める。そして、それを見ていた観客である保護者達も同じ様に体を動かす。

「お、こりゃ……」
「うん、良い感じだな」
「確かにな……」

保護者達の評判もなかなかいいようで、それを横で聞いていたコーディ達も体を動かしながら満足そうにしている。孫娘であるアビーが最初は何をしているのか分からなかったが、アビーに教えられるままに体を動かしていると普段使わない部分も使っていることが分かり、それからは日課になったほどだ。

「他の連中も日課になるんだろうな」
「ああ、間違いないな」

ゴードンの呟きにコーディもニヤリと笑いながら返す。

アビーが歩だった頃にたまに体の調子がいいときに看護師さんにお願いしてまでやっていたラジオ体操だったが、アビーとして転生した今では歩けるようになってからほぼ毎朝行っている習慣だ。それを学校でも運動前にと軽くしていたのを担任の目に止まったのだ。
最初は他のクラスメイトも半信半疑だったが、アビーと一緒に体を動かしている内にこの体操には意味があることも分かっていった。

アビー指導のラジオ体操が終わったところで、アビーは軽く一礼してから朝礼台を下りて他のクラスメイトと一緒に整列すると、自分達のクラスのテントへと移動する。

「あ~緊張したぁ~」
「私もよ。あんなにジロジロ見られるのはあまり、いい気がしないわ」
「あ~それ分かる!」
「私はなんだか気持ちよかったかも……」
「「「え?」」」

メアリー達と一緒にテントに戻るとアビーは直ぐに呼び出しを受ける。
「アビー、もう行っちゃうの?」
「うん。もう、三十メートル走が始まるんだって」
「そうなのね。じゃあ、応援するから頑張ってね」
「うん、見ててね」

アビーはメアリーに手を振りながら三十メートル走で走る低学年の生徒達が集まっている場所へと小走りで急ぐ。

「遅いぞ!」
「……ごめんなさい。でも、遅刻した訳じゃないでしょ?」
「俺を待たせたんだ。それだけでも、十分だ」
「えっと……誰?」
「あ? 俺を知らないのか?」
「うん、知らない。で、誰?」
「お……お前! 本当に俺のことを知らないのか?」
「うん。だから、知らないってさっきから言ってるじゃない」
「……」
「アビーどうした?」

アビーはいきなり怒鳴られ萎縮してしまったが、よく考えなくてもまだ時間的には余裕があるはずだし、どうして自分が怒られているんだろうと不思議に思っていた。。しかも相手は名前も知らない相手だ。どうしたらいいんだろうかと考えているとそこにケビンとテッドが並んでやってきた。

「げ! テッドにケビン……」
「ん? お前は……確か……なまる?」
「テッド、違うよ。ナダルだよ。だよね?」
「あ、ああ。そうだ。ナダルだよ」

アビーの横に並ぶケビンとテッドを見てから、ナダルの様子がおかしい。それにしてもナダルのことはテッドは知らなかったようだし、ケビンもナダルの名前を自身なさげに呼んでいた。どういうことなんだろうとアビーは不思議がるが、ケビンとテッドはアビー以上になんでアビーがナダルに絡まれているのかが不思議だった。

「それで、そのナダルがアビーに何をしているんだ?」
「あのね「違うから! 俺は何もしてないぞ。いいな、俺は何もしてないからな!」……」
「なんだアイツは?」
「さあ? で、アビーは何があったのか話してくれるかな?」
「うん。あのね……」

テッドに聞かれてアビーが説明しようとしたところで、ナダルが急に割って入りとだけ強調して、この場から去ってしまった。そんなナダルをアビー達三人は不思議そうに見送るが、ケビンから聞かれたのでさっき起きたことを脚色なく正直に話すアビーだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫
ファンタジー
 孤児院出身の僕は10歳になり、教会でスキル授与の儀式を受けた。  僕が授かったスキルは『眠る』という、意味不明なスキルただ1つだけだった。  そんな僕でも、仲間にいれてくれた、幼馴染みたちとパーティーを組み僕たちは、冒険者になった。  それから、5年近くがたった。  5年の間に、覚醒したスキルを使ってパーティーに、貢献したつもりだったのだが、そんな僕に、仲間たちから言い渡されたのは、パーティーからの追放宣言だった。

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...