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第2章 ホロン王国辺境ペルト街編

第40話ペルト街反撃戦1

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 宿の天井をやっと見慣れた、ついこの頃。
 用は今、宿の部屋でギルマスとギルド職員さん達と朝食ならぬ夕食を食べていた。
 チーズの匂いが立ちこめる。
 この世界では、チーズは硬いブロックであり、細かく砕いて水で飲み込むという食べ方しかなかったらしい。

 火で炙られて溶けたチーズを溝を掘ったコッペ黒パンに流し込む。
 ギルマスもギルド職員さんも、何も言わずにただ無言で食べていた。
 もちろん用も食べていたが、そろそろ何の用件か聞かなくては?と思う位の時間がすぎる。
 
ギルマス
「実は、今日来たのは領都のことなんだが…」

 どうも、ポンロ村人全員が義勇軍となって領都戦に参戦し、誰かさんが売った死の森の奥地のレア素材を原料にしたスタミナポーションを使った反撃で、包囲軍を撃退したとのことだ。

 うわ~、凄い行動力だな。

 領都は今、スタミナポーションの反動で半数以上の兵士が動けないみたいだが、防衛には支障がなくペルト街の南門から領都から移動する魔法薬師ミレイを迎え入れ、スタミナポーションを量産するつもりであること。

 なので、南門のモンスター軍駆逐戦に行って欲しいことと、死の森の素材がまだあれば提供してほしいなど言われた。

 
AI・用の脳内
「反動があったのですか~。
 用様、今回はあまり出さない方がいいかもしれません。
 マジックバックは村で買ったから存在はバレてますが、マジックリングはレアなのでまずいのとホロン王国の用様への対応がまだわかりません。」

用・脳内
「つまり、召喚者を奴隷扱いするやつかもしれないとか、そんなところ?」

AI・用脳内
「ハイ。
 私の乗っ取られていたリソース領域は、今は天界に分析を丸投げしてまして、地球でいうところのPCの新OSが来るまで相手の深い情報がスキャンできません。
 あんな大きなゴブリンジャイアントが出たのに援軍が遅すぎます。
 この対応からすると要注意です。」

用・脳内
「わかった。確かに変だね。」



「あんまり、素材残って無いですがいいですか? 
 ここに来るまで、戦いながらだったからそんなに採取できなかったもので。」

ギルマス
「助かる。
 それと、領都の偉いさんが会いたがっているみたいだ。」


「すいませんが、それは断っていいですか。
(AIさんからの忠告もあるけど、魔王倒せって?みたいに強要されたら、たまらない。)」

ギルマス
「あのな~」


「俺は田舎育ちなので、そういうのは苦手なんですよ。」

ギルマス
(ここで逃げられると、ペルト街の防衛が出来ないな。)
「わかった。とりあえず、そんな話があることだけは覚えておいてくれ。」


 そして、とりあえず買い物してから予定時間には現場に行く事を約束して、会合はお開きになった。



 「AIさん、どうしたの?」

AI
「用様、買い物しながら話しましょう。
 まずポーション製作に必要な錬金術師工作実験セットとか、買えるだけの食料に魔術屋で魔導書など買い揃えましょう。」

 「わかった。ワイバーンのお金はかなりあるし、ショッピングに行くか。」

AI
「ハイ♪」

AI
「えーと、(゜_゜) 防衛隊隊長さんに、この街に来た時会いましたのね。」

 「覚えてる。」

AI
「あの方はトーラー様だとギルマスが言っていましたけど、違う可能性があります。
 そしてここ数日の間この街を見てましたが、あの防衛隊隊長は自室に隠し部屋を作っていて、そこにいるのがニセ防衛隊隊長の母親と領主とその妻です。
 先ほどギルマスが領都の偉いさんとか言ってましたが、おかしなことばかりです。」

 「闇が深そうだね。巻き込まれるのは嫌だな。」

AI
「はい。今後必要な道具を早めに集めて脱出も検討しましょう。
 食料も貯めないと。」

 ペルト街反撃戦が始まる。
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