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両思い 2

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 魔法師団団長室に戻ると、さっそく魔法通話で団員たちを呼び出したフェリクスだが、悲しいことに、団員は三人しか集まらなかった。

 皆、仕事後のプライベートな時間は、恋人とデートだったり、王都へ遊びに繰り出したりしており、緊急要請に応対できるのは、フェリクスも含め、恋人も予定もないヒマな者だけだった。

 フェリクスはヒマな三人の団員に、リステアードの命令を伝えた。魔法師団として、重要な任務だと。
 しかし団員たちは、

「狸ですか? 魔力を持っているっていったって、狸でしょ? 俺達がわざわざ出て行かなくてもいいじゃないですか」

「そうですよ。王太子も、夕飯前のこんな時間にそんな任務言いつけなくたっていいのになあ。残業代、つくんですよね」

「恋人がいなくても、僕は決してヒマなわけじゃないんですよ? 部屋でゴロゴロしながら漫画を読むっていう、立派な予定があったのに」

 ぶーぶーぶーぶー文句を言う。
 フェリクスは冷静に団員たちを説得した。

「そう言うんじゃない。狸の魔力を感知できるのは、同じ魔力持ちだけだ。それに、魔物の脅威から国民を守るのは、魔法師団の務めだ」

「でも狸でしょ? 団長ってば、そんなにはりきっちゃって、狸ですよ? 腹が減ったら戻ってくるんじゃないですか」

「団長も仕事ばっかしてないでさ、恋人でも作って、魔法師団ライフを謳歌したほうがいいですよ。今度誰か紹介……」

「お、おいまずいぞ、団長がかなり怒ってる! 無表情だけど、魔力高めまくってる!」

 突然焦りまくる団員たちに、フェリクスは厳かに命令した。

「無駄話は終わったか? 時間がない。速やかに任務を開始してくれ。いいね! 何度の言うけど、重要な任務だからね!」

「承知しました! もう、団長ってば冗談ですよ冗談。そんなむくれなくたって」

「ばか、攻撃魔法が飛んでくる、早く行くぞ」

「いってきまーす!」


 誰がむくれてるんだ、誰が!

 フェリクスは急いで目立たない私服に着替えると、夕刻の王都へと急いだ。


 王都は仕事帰りの人や、授業を終えた学生たちで賑わっていた。
 魔力を頼りにしなければ、小さな子狸を見つけるのはやはり、簡単ではないだろう。
 どこか遠くへ行ってしまう前に見つけたい。
 フェリクスは、浮遊魔法を使いながら、魔力が発生している場所を探した。

 魔道具に使われている魔力と、生物が体内に有している魔力は区別がつくが、人間が持つ魔力と魔物が持つ魔力は区別できない。一般の人々の中にもごくわずかとはいえ、魔力を体内に持っている者はいるので、すぐに狸型魔物の魔力を特定することはできなかった。

 数十分ほど王都を浮遊魔法で巡り、小さな公園を通過したとき、かなりの大きさの魔力を感知した。

 狸かもしれない。

 狸型魔物は、今はまだ子供だからうまくできないけれど、人に化ける魔法をつかうと、リステアードは言っていた。そんな高度な魔法を使えるようになるくらいだから、体内に有している魔力はかなり高いはずだ、とフェリクスは踏んでいた。

 その公園は、以前フェリクスが、倒れたマルガレーテを介抱した公園だった。あのときはマルガレーテ以外誰もいなかったが、今日は結構な人が集まっていた。
 見ると、どうやら公園に移動販売車が来ているようだった。
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