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「――惚れ薬の作り方――」

 ※完成した惚れ薬を入れる小瓶をあらかじめ、用意しておく。

 1、これらの作業は、雨や風のない、静かな、真夜中に行うこと。

 2、惚れ薬を作るものと、その場に同席するものは、あらかじめ身を清めておくこと。

 3、1、2は惚れ薬の効果を高めるために必要な行為である。また、注ぐ魔力が大きければ大きいほど惚れ薬の威力は増し、一口で相手を虜にすることができるだろう。

 4、まず棘を処理した「王家に伝わる真っ赤な薔薇」を一輪用意する。枯れかけはよくない。美しいものを用意する。

 5、次に「王家に連なる者の愛の証」を用意する。王家の血筋を引き、誰かを愛する証が必要である。本当に愛し合っていないと無効。

 6、次に「王家に認められた若い女の金の髪」を用意する。長さ三十センチほどで、片手に収まる一束が必要である。よく手入れされた綺麗な髪の方が良い。

 7、これらを並べて台の上などに置き、魔力を注ぎながら、以下の呪文を唱える。

 8、以下の呪文……ここから先、数十ページに渡り、呪文が書かれている。

 9、最後に「王家秘蔵の酒」をこれら全体に、コップ一杯ほど振りかける。

 10、すると、振りかけた酒が自動的に蒸発していき、再び液体となる。これが惚れ薬である。

 11、惚れ薬は惚れさせたい対象に、口移しで与えること。そうすれば、対象は、口移しした人物を好きになる。


 ――これを読む限り、若い女の金の髪はやっぱりある程度の量が必要なようだ。ミランにも事前にフェリクスから書かれていることをそっくりそのまま、伝えてある。
 フェリクスは目の前に座るミランを見た。彼は城下まんじゅうをのどに詰まらせ、紅茶で流し込んでいる最中だった。

 私の髪が使えればいいけれど……。

 フェリクスは貴族の一人娘である。だが爵位を持っているのは父親だ。「王家に認められた若い女」には入らないだろう、とフェリクスは思った。

「うーん、長期休暇が終わって、貴族学校が始まったら、またあてを探してみるか……」

 フェリクスの思案をよそに、ミランは三個目の城下まんじゅうにかぶりつきながら難しい顔をしている。そんなあちこちに「髪をくれ」なんて聞きまわったら、噂になるし、同じ貴族学校のマルガレーテ嬢に不審に思われないだろうか。フェリクスは不安になった。
 そして、ふと思ったことを口にした。

「ミラン殿下、ミラン殿下は、どこでこの書物を見つけたのですか?」
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