51 / 67
マンネリ化? 6
しおりを挟む
~魔法師団団長室~
「結局のところ、また君はうまく乗せられたわけか」
ミランはソファに足を組んで座った。手には紅茶のカップを持っている。
結局、魔法師団ガチバトルの被害は、ミランの折れた王子ファッションの剣だけだったので、このことは有耶無耶に……いや、特にお咎めなしということになった。
その後解散し、フェリクスはフェリシアに戻って、団長室でミランといつものようにお茶していた。
「申し訳ありません、ミラン殿下。バトルも頃合いを見て終わらせるつもりが、つい、本気になってしまって」
フェリシアはバツが悪そうにそう言いながら、紅茶をすする。
「……君は割と負けずぎらいだよね」
「? そうでしょうか。私、諦めは早い方だと思っているんですけど」
青い目を丸くするフェシリアを、ミランのはしばみ色の目が捉える。
あれ? ミラン殿下なんだかちょっと不機嫌? なぜだろう……ミランの表情を正確に読み取ったフェリシアは心の中で首を傾げる。すると唐突にミランが言った。
「ねえフェリシア、君は何でそんなに嬉しそうなんだ?」
「え? 私、嬉しそうですか?」
フェリシアは驚いて自らの頬に手を当てた。知らず知らずのうちに笑っていた……頬が緩んでいた、ということだろうか。もしそうだとしたら、普段心情が表に出ないフェリシアとしては、めずらしいことだ。
対して、心の中が表に出やすいミランは、あからさまに不愉快そうな顔をした。
「そんなに嬉しいのか、団員たちがこぞって君を庇ったことが!!」
「え」
フェリシアは面食らった。「ど、どういうことですか」
「『魔法師団ガチバトルは俺たちが言いだしたことで、団長は最初、反対してたんです。団長を無理矢理参加させたのは俺たちです。だから団長に責任はありません』って、君以外の団員みんながこぞって君を庇ったじゃないか」
「あ、あれは……はは」
フェリシアは笑って誤魔化した。そう。平和協定を破ったことを、ミランが上に報告すると思った団員たちが、らしからぬ真剣さで、フェリシアを庇ったのだ。
正直フェリシアは嬉しかった。
じーんとして、感動してしまった。
最近私って団長の威厳ないなーと思っていたので、なおさらだ。心の底から嬉しかった。
ミランの言葉が図星なので、思わず笑って誤魔化すフェリシアを、ミランは目ざとく追及した。
「その態度……ほーら当たりだ。たくさんの男に庇ってもらってにこにこしてたんだろ」
「ちょ、ちょっと何なんですかその表現」
ミランはふくれっ面をした。「大人の男になりたい」んじゃなかったのか。
「いいね、魔法師団はいい男ぞろいだもんね。君だって男装すればかなりの男前だけど、やっぱり女性なんだねっ」
「ミラン殿下、誤解ですよ。私は団員たちをそんなふうに見ていません……あ、それより『魔法師団マンネリ化』の件のほうが重要ですっ」
「話を変えたな。ますます怪しい。僕だってその気になれば一人や二人……」
「いらっしゃるんですか」
「いや、いない」
「私もいませんよ」
フェリシアは自然にふっと微笑んだ。続いてすぐにミランも破顔する。
二人とも急になんだか可笑しくなり、少しの間笑いあった。
「さて、魔法師団マンネリ化の件だったね」
取り直したように、ミランがスタイリッシュ手帳を取り出そうとした……が、
「今日は遅いし明日にしよう。それより重要なことがある」
とまた懐にしまい、立ち上がってフェリシアの手を取った。とてもスマートで、国の王子らしい所作だ。
「結局のところ、また君はうまく乗せられたわけか」
ミランはソファに足を組んで座った。手には紅茶のカップを持っている。
結局、魔法師団ガチバトルの被害は、ミランの折れた王子ファッションの剣だけだったので、このことは有耶無耶に……いや、特にお咎めなしということになった。
その後解散し、フェリクスはフェリシアに戻って、団長室でミランといつものようにお茶していた。
「申し訳ありません、ミラン殿下。バトルも頃合いを見て終わらせるつもりが、つい、本気になってしまって」
フェリシアはバツが悪そうにそう言いながら、紅茶をすする。
「……君は割と負けずぎらいだよね」
「? そうでしょうか。私、諦めは早い方だと思っているんですけど」
青い目を丸くするフェシリアを、ミランのはしばみ色の目が捉える。
あれ? ミラン殿下なんだかちょっと不機嫌? なぜだろう……ミランの表情を正確に読み取ったフェリシアは心の中で首を傾げる。すると唐突にミランが言った。
「ねえフェリシア、君は何でそんなに嬉しそうなんだ?」
「え? 私、嬉しそうですか?」
フェリシアは驚いて自らの頬に手を当てた。知らず知らずのうちに笑っていた……頬が緩んでいた、ということだろうか。もしそうだとしたら、普段心情が表に出ないフェリシアとしては、めずらしいことだ。
対して、心の中が表に出やすいミランは、あからさまに不愉快そうな顔をした。
「そんなに嬉しいのか、団員たちがこぞって君を庇ったことが!!」
「え」
フェリシアは面食らった。「ど、どういうことですか」
「『魔法師団ガチバトルは俺たちが言いだしたことで、団長は最初、反対してたんです。団長を無理矢理参加させたのは俺たちです。だから団長に責任はありません』って、君以外の団員みんながこぞって君を庇ったじゃないか」
「あ、あれは……はは」
フェリシアは笑って誤魔化した。そう。平和協定を破ったことを、ミランが上に報告すると思った団員たちが、らしからぬ真剣さで、フェリシアを庇ったのだ。
正直フェリシアは嬉しかった。
じーんとして、感動してしまった。
最近私って団長の威厳ないなーと思っていたので、なおさらだ。心の底から嬉しかった。
ミランの言葉が図星なので、思わず笑って誤魔化すフェリシアを、ミランは目ざとく追及した。
「その態度……ほーら当たりだ。たくさんの男に庇ってもらってにこにこしてたんだろ」
「ちょ、ちょっと何なんですかその表現」
ミランはふくれっ面をした。「大人の男になりたい」んじゃなかったのか。
「いいね、魔法師団はいい男ぞろいだもんね。君だって男装すればかなりの男前だけど、やっぱり女性なんだねっ」
「ミラン殿下、誤解ですよ。私は団員たちをそんなふうに見ていません……あ、それより『魔法師団マンネリ化』の件のほうが重要ですっ」
「話を変えたな。ますます怪しい。僕だってその気になれば一人や二人……」
「いらっしゃるんですか」
「いや、いない」
「私もいませんよ」
フェリシアは自然にふっと微笑んだ。続いてすぐにミランも破顔する。
二人とも急になんだか可笑しくなり、少しの間笑いあった。
「さて、魔法師団マンネリ化の件だったね」
取り直したように、ミランがスタイリッシュ手帳を取り出そうとした……が、
「今日は遅いし明日にしよう。それより重要なことがある」
とまた懐にしまい、立ち上がってフェリシアの手を取った。とてもスマートで、国の王子らしい所作だ。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる
コーヒーブレイク
恋愛
クールで女っぽさ皆無の男装魔法師団団長と、婚約者を振り向かせたい年下王子が惚れ薬をつくるために頑張ります。平和な異世界ファンタジー恋愛コメディー。
本編完結しています。あとは、補足的なサイドストーリーをちょこちょこあげてます。
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる