47 / 65
マンネリ化? 2
しおりを挟む
ミランはああ、とひとつ相槌を打つと、
「女性ファンからは、団員を数人のグループに分けて、料理対決してほしいとか、踊りながら歌を歌って欲しいとかがあったよ。あといつも同じ制服だからファッションショーやって欲しいって」
と言った。それを聞いたフェリクスはげんなりした。
本当にそれじゃあアイドル師団じゃないか。
いやもうアイドル師団でいいか。平和だし。
それが今、私たち魔法師団に求められているなら、やらなくちゃならない……よね。
――それでも、それでも……踊りながら歌を歌うのだけは、なんとか回避したい。歌を歌うのだけは。
どれにするか団員全員で多数決になったら、団長特権で私の一票は三十票分ってことにしよう。
やっぱり歌は苦手なフェリクスだった。
「女装とかどうですか? 女の人って、俺らみたいなイケメンが女装するの好きでしょ?」
どこから仕入れた情報なのか、団員の一人がそんなことを言う。
「あ、でも団長は男装してまた女装したらもうどっちなんだよ、って感じですよね! あはははは」
「あははははじゃないっ。真面目に考えなさい。ミラン殿下、女性以外から何か提案はないのですか?」
団員をたしなめつつ、フェリクスはミランに聞いた。ミランはつられて笑っているのを急いで引っ込め、真面目な顔を作ってこう言った。
「男性ファンは……まあアンケートの回答自体が少ないんだけど」
「月刊・魔法師団通信」は、女性向け雑誌だ。
「魔法師団同士がガチで戦うのを見たいって声がある。勝ち抜きバトルみたいなやつ」
ミランの答えに、団員たちがおお~と言う声を上げる。
「そういえば、俺ら団員同士、ガチで戦ったことないよな」
「仕方ないさ。エルドゥ王国平和協定で、むやみに魔法を使った戦いは禁止されているんだから」
「一度戦ってみたい気もするけど……」
「無理だって。ですよね、ミラン殿下。俺達が全力で魔法出しまくったら、まわりに甚大な被害が及ぶ危険性がありますもんね」
団員の問いに、ミランはもっともらしくうんうんと頷く。
「それはそうだよ。ガチの戦いは危険すぎる。勝ち抜きバトル……これは却下、と」
訓練着の腰ポケットからおなじみスタイリッシュ手帳を取り出し、何やら書き込んだ。
それを見ながら、ミラン殿下、いつもポケットに手帳持ってるんだ、とフェリクスは思った。
ミランは手帳をしまうと、ハッとした顔をして、
「しまった、学校へ行く時間だ。問題提起だけして申し訳ないけれど、マンネリ化の件、考えておいてくれ。フェリクス団長、頼むよ」
そう言うなり、急いで去って行った。フェリクスは団員たちを見回すと、
「こちらもそろそろ終わりにしよう。今日は昼から全員でゲリラパフォーマンスの最終調整があるから、また訓練場に集まるように。それでは、解散」
声を張り上げた。団員たちは返事だけは元気よくして、ぞろぞろと王宮の建物に戻って行った。
「女性ファンからは、団員を数人のグループに分けて、料理対決してほしいとか、踊りながら歌を歌って欲しいとかがあったよ。あといつも同じ制服だからファッションショーやって欲しいって」
と言った。それを聞いたフェリクスはげんなりした。
本当にそれじゃあアイドル師団じゃないか。
いやもうアイドル師団でいいか。平和だし。
それが今、私たち魔法師団に求められているなら、やらなくちゃならない……よね。
――それでも、それでも……踊りながら歌を歌うのだけは、なんとか回避したい。歌を歌うのだけは。
どれにするか団員全員で多数決になったら、団長特権で私の一票は三十票分ってことにしよう。
やっぱり歌は苦手なフェリクスだった。
「女装とかどうですか? 女の人って、俺らみたいなイケメンが女装するの好きでしょ?」
どこから仕入れた情報なのか、団員の一人がそんなことを言う。
「あ、でも団長は男装してまた女装したらもうどっちなんだよ、って感じですよね! あはははは」
「あははははじゃないっ。真面目に考えなさい。ミラン殿下、女性以外から何か提案はないのですか?」
団員をたしなめつつ、フェリクスはミランに聞いた。ミランはつられて笑っているのを急いで引っ込め、真面目な顔を作ってこう言った。
「男性ファンは……まあアンケートの回答自体が少ないんだけど」
「月刊・魔法師団通信」は、女性向け雑誌だ。
「魔法師団同士がガチで戦うのを見たいって声がある。勝ち抜きバトルみたいなやつ」
ミランの答えに、団員たちがおお~と言う声を上げる。
「そういえば、俺ら団員同士、ガチで戦ったことないよな」
「仕方ないさ。エルドゥ王国平和協定で、むやみに魔法を使った戦いは禁止されているんだから」
「一度戦ってみたい気もするけど……」
「無理だって。ですよね、ミラン殿下。俺達が全力で魔法出しまくったら、まわりに甚大な被害が及ぶ危険性がありますもんね」
団員の問いに、ミランはもっともらしくうんうんと頷く。
「それはそうだよ。ガチの戦いは危険すぎる。勝ち抜きバトル……これは却下、と」
訓練着の腰ポケットからおなじみスタイリッシュ手帳を取り出し、何やら書き込んだ。
それを見ながら、ミラン殿下、いつもポケットに手帳持ってるんだ、とフェリクスは思った。
ミランは手帳をしまうと、ハッとした顔をして、
「しまった、学校へ行く時間だ。問題提起だけして申し訳ないけれど、マンネリ化の件、考えておいてくれ。フェリクス団長、頼むよ」
そう言うなり、急いで去って行った。フェリクスは団員たちを見回すと、
「こちらもそろそろ終わりにしよう。今日は昼から全員でゲリラパフォーマンスの最終調整があるから、また訓練場に集まるように。それでは、解散」
声を張り上げた。団員たちは返事だけは元気よくして、ぞろぞろと王宮の建物に戻って行った。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
だから効果はないってば!弟子がめげずに媚薬を飲まそうとしてくるんです!
春瀬湖子
恋愛
魔女狩りなんて遠い昔。今では魔女や魔法使いは職業の1つとして認められている。
魔女・ルールリアは弟子のエドワードと共に魔法薬で生計を立てており、優秀なエドを早く一人前にしたいルールだがエドには1つ困ったところがあって…。
「魔女・魔法使いには魔法薬が効かない」
それはこの世界の常識なのだが、何度説明しても弟子のエドが魔法薬を飲ませてくるという事…!
しかも売り言葉に買い言葉で毎晩媚薬を飲むことになって…?
だから魔女の私に媚薬は効かないんだってば~!!
拗らせ弟子×鈍感師匠の全くエロくならない媚薬ラブコメです。
R15指定は火傷の描写があるので念のため。
※他サイト様でも公開しております
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました
相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。
――男らしい? ゴリラ?
クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。
デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。
そんな女が異世界転生したお話
拓海のり
恋愛
前世、結婚していたが子供なし。共働きで忙しくて、気が付いたら旦那が浮気。ショックで外に飛び出して事故死。
そんな女が何故か異世界に転生してしまった。八千字位の短いお話です。
ほんわりした世界感です。他サイトにも投稿しています。
巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。
蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。
此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。
召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。
だって俺、一応女だもの。
勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので…
ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの?
って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!!
ついでに、恋愛フラグも要りません!!!
性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。
──────────
突発的に書きたくなって書いた産物。
会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。
他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。
4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。
4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。
4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。
21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!
男装魔法師団団長は第三王子に脅され「惚れ薬」を作らされる
コーヒーブレイク
恋愛
クールで女っぽさ皆無の男装魔法師団団長と、婚約者を振り向かせたい年下王子が惚れ薬をつくるために頑張ります。平和な異世界ファンタジー恋愛コメディー。
本編完結しています。あとは、補足的なサイドストーリーをちょこちょこあげてます。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる