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魔法師団秘蔵写真集!? 3 (完)
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――ば、ばか、今の私をフェリクスと呼ぶなっ。
焦ったフェリシアはとっさに、
「あ、あら、フェリクス様がいらっしゃるの? どこかしら、私、お会いしたいわ」
フェリクスファンを演じた。団員も自分のミスにはっとしたようで、
「すみません、青い目のレディ。フェリクス団長は今日、食べ過ぎで腹を壊して寝込んでいるんです」
と調子を合わせた。それを聞いていたまわりの女性たちが騒ぎ出す。
「フェリクス様が食べ過ぎなんて……」
「イメージと違うわね。あんなに細いのに」
「でも何だか子供っぽくて可愛いわ。フェリクス様はクールだけど、どこか放っておけないのよね」
「わかるー。私胃腸薬プレゼントしようかしら」
「ふー。なんとか誤魔化せましたね」
女性たちが去って行き、団員は安堵する。対してフェリシアはおかんむりだった。
「食べ過ぎで腹壊してるって、もうちょっと別の言い訳なかったの!?」
――とにもかくにも、魔法師団は女性たちを宥め、この場を納めることに成功した。
写真集を買ってしまった女性には、後日、返金手続きが取られるとのことだった。
「魔法師団を間近で見られるなんて、うれしいー!」
「私、友達に自慢しちゃう」
「フェリクス団長がいないのが残念だわー」
すぐそこにいるのだが、女性たちが気づくことはなかった。
「フェリクス団長、ミラン殿下、ここは俺たちに任せて、デートを再開して下さいよ」
「うん。任せるよ。ありがとう」
団員が敬礼したので、フェリシアはワンピースの裾を持って、軽く膝を曲げた。
♦♦♦
「あ、思い出した」
ミランと二人、公園のベンチに並んでクレープを食べている最中、フェリシアが唐突に呟いた。
「あの売り手の女の人、王宮でのパフォーマンス観戦に来ていた、貴族女性ですよ」
「それは本当かフェリシア。じゃあ、貴族女性の中にも、ああいったことをする人間がいるということか」
ミランがクレープを飲み込みながら答えた。
「そのようですね。貴族だからって、お金に困っていないわけではないですから」
「君が言うと説得力あるね。だけど、違法は違法だ」
「もちろんです」
「今後、外部から王宮に人を入れる際は気をつけないとな……。それにしてもフェリシア、フェリクス・ブライトナーの人気は衰えることがないね。女性たちは皆、君に会えなくて残念そうだったじゃないか」
ミランは食べ終えたクレープの紙を丸めながら言った。「この前の魔法師団人気投票でも一位だったし」。
フェリシアは残り少なくなったクレープをかじりながら、苦笑した。
「自分でも驚いています。だけど、何事にも潮時はありますよ」
フェリシアはクールキャラの自分はいずれ飽きられるだろうと冷静に分析していた。こう言ったキャラは、真面目で、面白みに欠けるからだ。
そしていずれは引退するのだろうと。
実際はそうではなく、フェリクスがただのクールキャラじゃないということに、ファンたちはとっくに気がついていた。ファンの女性の言葉を借りるなら、どこか放っておけない……抜けたところがある、といったところだ。
フェリシアはそういった自分の評価に今のところ気がついていない。
「君の人気は喜ばしいけれど、僕としては複雑だよ」
「え?」
ミランが漏らした言葉を、フェリシアは聞き取ることが出来なかった。ちょうど風が吹いて、フェリシアの大きな帽子を吹き飛ばしてしまったからだ。フェリシアはベンチを立って、帽子を追いかけた。
帽子は風に弄ばれるように、遠くへ飛んでいく。フェリシアがそれを追いかけ、遠ざかっていく。
「フェリクス・ブライトナーもいいけど、君は、いずれ僕と……」
フェリシアが帽子を捕まえて、こちらに戻って来る。ミランは呟いた言葉をそこで飲み込んだ。
――今はまだいいか、フェリクスでも。君が楽しくやっているのなら。格好いい君も、悪くないよ。僕は全力でサポートするよ。
ミランは丸めたクレープの紙くずを、ゴミ箱に投げて、捨てた。
魔法師団秘蔵写真集!? 終わり。
焦ったフェリシアはとっさに、
「あ、あら、フェリクス様がいらっしゃるの? どこかしら、私、お会いしたいわ」
フェリクスファンを演じた。団員も自分のミスにはっとしたようで、
「すみません、青い目のレディ。フェリクス団長は今日、食べ過ぎで腹を壊して寝込んでいるんです」
と調子を合わせた。それを聞いていたまわりの女性たちが騒ぎ出す。
「フェリクス様が食べ過ぎなんて……」
「イメージと違うわね。あんなに細いのに」
「でも何だか子供っぽくて可愛いわ。フェリクス様はクールだけど、どこか放っておけないのよね」
「わかるー。私胃腸薬プレゼントしようかしら」
「ふー。なんとか誤魔化せましたね」
女性たちが去って行き、団員は安堵する。対してフェリシアはおかんむりだった。
「食べ過ぎで腹壊してるって、もうちょっと別の言い訳なかったの!?」
――とにもかくにも、魔法師団は女性たちを宥め、この場を納めることに成功した。
写真集を買ってしまった女性には、後日、返金手続きが取られるとのことだった。
「魔法師団を間近で見られるなんて、うれしいー!」
「私、友達に自慢しちゃう」
「フェリクス団長がいないのが残念だわー」
すぐそこにいるのだが、女性たちが気づくことはなかった。
「フェリクス団長、ミラン殿下、ここは俺たちに任せて、デートを再開して下さいよ」
「うん。任せるよ。ありがとう」
団員が敬礼したので、フェリシアはワンピースの裾を持って、軽く膝を曲げた。
♦♦♦
「あ、思い出した」
ミランと二人、公園のベンチに並んでクレープを食べている最中、フェリシアが唐突に呟いた。
「あの売り手の女の人、王宮でのパフォーマンス観戦に来ていた、貴族女性ですよ」
「それは本当かフェリシア。じゃあ、貴族女性の中にも、ああいったことをする人間がいるということか」
ミランがクレープを飲み込みながら答えた。
「そのようですね。貴族だからって、お金に困っていないわけではないですから」
「君が言うと説得力あるね。だけど、違法は違法だ」
「もちろんです」
「今後、外部から王宮に人を入れる際は気をつけないとな……。それにしてもフェリシア、フェリクス・ブライトナーの人気は衰えることがないね。女性たちは皆、君に会えなくて残念そうだったじゃないか」
ミランは食べ終えたクレープの紙を丸めながら言った。「この前の魔法師団人気投票でも一位だったし」。
フェリシアは残り少なくなったクレープをかじりながら、苦笑した。
「自分でも驚いています。だけど、何事にも潮時はありますよ」
フェリシアはクールキャラの自分はいずれ飽きられるだろうと冷静に分析していた。こう言ったキャラは、真面目で、面白みに欠けるからだ。
そしていずれは引退するのだろうと。
実際はそうではなく、フェリクスがただのクールキャラじゃないということに、ファンたちはとっくに気がついていた。ファンの女性の言葉を借りるなら、どこか放っておけない……抜けたところがある、といったところだ。
フェリシアはそういった自分の評価に今のところ気がついていない。
「君の人気は喜ばしいけれど、僕としては複雑だよ」
「え?」
ミランが漏らした言葉を、フェリシアは聞き取ることが出来なかった。ちょうど風が吹いて、フェリシアの大きな帽子を吹き飛ばしてしまったからだ。フェリシアはベンチを立って、帽子を追いかけた。
帽子は風に弄ばれるように、遠くへ飛んでいく。フェリシアがそれを追いかけ、遠ざかっていく。
「フェリクス・ブライトナーもいいけど、君は、いずれ僕と……」
フェリシアが帽子を捕まえて、こちらに戻って来る。ミランは呟いた言葉をそこで飲み込んだ。
――今はまだいいか、フェリクスでも。君が楽しくやっているのなら。格好いい君も、悪くないよ。僕は全力でサポートするよ。
ミランは丸めたクレープの紙くずを、ゴミ箱に投げて、捨てた。
魔法師団秘蔵写真集!? 終わり。
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