6 / 31
06 恋人
しおりを挟む
樹は、部屋で座椅子に座りながらスマホを取り出し、『ANIMAL』のアプリを開いた。
「ふふふっ」
新しくフレンド欄に追加された人を見る。ホーム画面は綺麗な空の写真だ。夕焼け空のようでオレンジの部分と青の部分が混在しており、雲に影がかかっている。名前の部分にはフルネームが入っており、『宝来 迅』との3文字が並んでいる。
今日、樹に初めての恋人ができた。
料理が美味しくて気に入っている店で、いつものナポリタンを食べているときだった。横に座られて声をかけられたため、そちらに顔を向けると、とてつもない美形の男性がいた。
毛先が肩につきそうなほどの綺麗な金髪で碧眼。整った王子様のような顔で見つめられて樹は驚いたが、その後の会話でもっと驚くことになった。
恋人の有無を聞かれた後に、「付き合ってやってもいい」と言われたのだ。最初はからかわれているのだと思った。だが、迅の握りしめられ震えるこぶしに、倒れた耳、ピンとたった尻尾を見て極度に緊張していることが分かった。それに、奥の方に座っていた友人らしき男性が「おい、バカ。言い方が違うだろうが」と言いながら焦っているのが見えて、本気で言っているのだと気がついたのだ。
きっと気持ちを伝えるのが苦手な人なのだろう。そう理解した樹は迅に頷き返した。一体自分のどこが良かったのだろうか。周りにはのんびりしているとか、おっとりしていると言われることが多く、顔だって特にイケメンなわけでも、かわいいわけでもない。それに、リスやハムスターのようにかわいい小動物系の種族でもない。
樹が色々と考えていると、手に持っていたスマホから通知音が聞こえた。
「あっ」
今まさに考えていた迅からのメッセージだったため、樹は急いで開いて読む。
『明後日は暇か?』
今日は金曜日だ。つまり明後日ということは日曜日になる。樹はスケジュールアプリを開いて予定を確認し、返信した。
『こんばんは、樹です。日曜日は暇です』
送ると、すぐに返事が返ってきた。
『10時に猫山駅で』
送られてきて暫く待ったが、それ以上迅から追加のメッセージは来なかった。きっと、日曜日の10時に猫山駅で待ち合わせをして、遊びに行こうということだろう。いや、これはデートのお誘いなのだろう。
『分かりました。楽しみです!』
そう返した樹はスマホを持ったまま立ち上がった。嬉しくて自然と笑みがこぼれる。初めてのデートだ。
「ふふふっ」
新しくフレンド欄に追加された人を見る。ホーム画面は綺麗な空の写真だ。夕焼け空のようでオレンジの部分と青の部分が混在しており、雲に影がかかっている。名前の部分にはフルネームが入っており、『宝来 迅』との3文字が並んでいる。
今日、樹に初めての恋人ができた。
料理が美味しくて気に入っている店で、いつものナポリタンを食べているときだった。横に座られて声をかけられたため、そちらに顔を向けると、とてつもない美形の男性がいた。
毛先が肩につきそうなほどの綺麗な金髪で碧眼。整った王子様のような顔で見つめられて樹は驚いたが、その後の会話でもっと驚くことになった。
恋人の有無を聞かれた後に、「付き合ってやってもいい」と言われたのだ。最初はからかわれているのだと思った。だが、迅の握りしめられ震えるこぶしに、倒れた耳、ピンとたった尻尾を見て極度に緊張していることが分かった。それに、奥の方に座っていた友人らしき男性が「おい、バカ。言い方が違うだろうが」と言いながら焦っているのが見えて、本気で言っているのだと気がついたのだ。
きっと気持ちを伝えるのが苦手な人なのだろう。そう理解した樹は迅に頷き返した。一体自分のどこが良かったのだろうか。周りにはのんびりしているとか、おっとりしていると言われることが多く、顔だって特にイケメンなわけでも、かわいいわけでもない。それに、リスやハムスターのようにかわいい小動物系の種族でもない。
樹が色々と考えていると、手に持っていたスマホから通知音が聞こえた。
「あっ」
今まさに考えていた迅からのメッセージだったため、樹は急いで開いて読む。
『明後日は暇か?』
今日は金曜日だ。つまり明後日ということは日曜日になる。樹はスケジュールアプリを開いて予定を確認し、返信した。
『こんばんは、樹です。日曜日は暇です』
送ると、すぐに返事が返ってきた。
『10時に猫山駅で』
送られてきて暫く待ったが、それ以上迅から追加のメッセージは来なかった。きっと、日曜日の10時に猫山駅で待ち合わせをして、遊びに行こうということだろう。いや、これはデートのお誘いなのだろう。
『分かりました。楽しみです!』
そう返した樹はスマホを持ったまま立ち上がった。嬉しくて自然と笑みがこぼれる。初めてのデートだ。
16
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
君はさみしがり屋の動物
たまむし
BL
「ウォンバットは甘えるの大好き撫で撫で大好き撫でてもらえないと寿命が縮んじゃう」という情報を目にして、ポメガバースならぬウォンバットバースがあったら可愛いなと思って勢いで書きました。受けちゃんに冷たくされてなんかデカくてノソノソした動物になっちゃう攻めくんです。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
罪人の僕にはあなたの愛を受ける資格なんてありません。
にゃーつ
BL
真っ白な病室。
まるで絵画のように美しい君はこんな色のない世界に身を置いて、何年も孤独に生きてきたんだね。
4月から研修医として国内でも有数の大病院である国本総合病院に配属された柏木諒は担当となった患者のもとへと足を運ぶ。
国の要人や著名人も多く通院するこの病院には特別室と呼ばれる部屋がいくつかあり、特別なキーカードを持っていないとそのフロアには入ることすらできない。そんな特別室の一室に入院しているのが諒の担当することになった国本奏多だった。
看護師にでも誰にでも笑顔で穏やかで優しい。そんな奏多はスタッフからの評判もよく、諒は楽な患者でラッキーだと初めは思う。担当医師から彼には気を遣ってあげてほしいと言われていたが、この青年のどこに気を遣う要素があるのかと疑問しかない。
だが、接していくうちに違和感が生まれだんだんと大きくなる。彼が異常なのだと知るのに長い時間はかからなかった。
研修医×病弱な大病院の息子
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
Ωだったけどイケメンに愛されて幸せです
空兎
BL
男女以外にα、β、Ωの3つの性がある世界で俺はオメガだった。え、マジで?まあなってしまったものは仕方ないし全力でこの性を楽しむぞ!という感じのポジティブビッチのお話。異世界トリップもします。
※オメガバースの設定をお借りしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる