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しおりを挟む「クニー、これありがとう!」
「うん、全然いいよー」
お酒を飲んだ翌日、アレスはクニーに借りていた履き物を返しに来た。
「昨日は大丈夫だった? 結構酔ってたみたいだけど?」
「うん。具合が悪くなったりはしてないよ、大丈夫! オレ、あんまり記憶がないんだけど、変なことしてなかった?」
「ふふっ、大丈夫だったけど、ルーカスがさ――」
急にクニーが笑い出したので、アレスは首を傾げた。
「ルーカスがどうしたの?」
「僕たちがアレスを見つけたときに裸足だったって話をしたら、足の裏を確認しようとしてアレスの足首をつかんで引っ張ったんだ。ふふっ、そしたらアレスがコロンってひっくり返っちゃってさ、頭をゴンって――」
「え、そうだったの?」
よく覚えていないが、アレスは自分の頭を触ってみた。特にたんこぶもできていないし、痛みもない。
「そうなの。アレスが痛いって言ったら、ルーカスのせいなのにすっごい心配しててさ。面白かったんだから! 頭痛くない?」
「うん、痛くないよ」
「ふふっ」
その場面を思い出したのか、クニーの笑いは暫く収まらなかった。
「――でも、よかったよ。2人が仲直り出来て!」
「うん、本当に良かった。2人には本当にずっと助けてもらってるよ」
「気にしなくていいよ! 村の仲間なんだし、友達なんだから!」
「うん! ありがとう」
笑顔のクニーにつられてアレスも笑顔になる。
本当にルーカスと元の関係に戻れてよかった。ルーカスは鳥人族の肉を食べてしまったということではなく、アレスの翼を自分が襲って食べてしまったということを気にしていた。ルーカス自身がアレスを傷つけることをひどく恐れているようだ。
そのことは通常の生活でもよく分かる。アレスの事をよく見ているし、すぐに心配してくるのだ。先日も、肌を傷めないようにと肌触りの良い布をわざわざ交換してくれていた。
愛されていると感じる。これほど大事にしてもらえているのだ。
だが、このままではルーカスと肌を重ねることはできないかもしれないともアレスは思った。
1番小さいサイズの張形でさえも入れるまでに時間がかかり、ルーカスは次のサイズのものを入れようとは言ってこなかったし、アレスが怪我をしないかずっと心配していた。
ルーカスのモノを受け入れる際、多少は血が出るだろう。種族が違い、体格が違うのだから仕方のない事だ。しかし、本当に血が出てしまえばルーカスは二度としようとは言わないだろう。
心が通じ合ったのだから、アレスとしては早く体もつなげたいと思っているが、慎重に進めていかなければならない。取りあえず、一番大きな張形が入るように頑張ろう。
アレスは決意を固めて、診療所へと向かった。
******
「先生!」
「おお、アレス」
アレスが診療所へ入ると、丁度先生も来たところだったようだ。布袋を体からとり、机の上に置いている。
「最近はアレスがなんでもしてくれるからすごく楽じゃな。ありがとう」
早速、薬草の仕分けを始めたアレスに、椅子に座った先生が後ろから声をかけてきた。
「え、いえ。もっと色々できるようになりたいです」
「そうか、そうか」
お礼を言われて照れくさくなり口元が緩む。そんな口元を隠すかのように、アレスは前を向いたまま薬草の仕分けを進めた。
最近では薬草の仕分けから調合、それに簡単な怪我の場合は、薬草を塗って包帯を巻くこともしている。アレスはひそかに将来は先生の手伝いだけじゃなく、助手として診療所の手助けをしたいと思っていた。
自分が背中に怪我を負った時も、ルーカスが獣鬣犬族に襲われて怪我をした後も、もっと知識があれば違う結果になっていたのではないかと考えることがある。
もちろん、あの時はあれが最善だと思って決断をしていたが――
もしも今後ルーカスが怪我をした場合は、適切な手当をしたい。それに、アレスが怪我をした場合も自分自身で手当ができればルーカスが心配することもなくなっていくだろう。
アレスはもっと知識をつけたかった。ルーカスをそしてアレス自身を助けるためにも――
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