【完結】片翼のアレス

結城れい

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 湯浴みから戻ったアレスは、いつものようにルーカスの前に背中を向けて座った。肩ほどまで伸びてきた髪を、邪魔にならないように前へと持ってくる。

「じゃあ塗るぞ」
「うん、お願い」

 いつものように背中に薬草を塗ってもらう。ルーカスも塗るのに段々と慣れてきたようで、力加減は前より上手くなっていた。
 安心して背中を見せていたが、なんだかいつもよりルーカスの視線を感じる気がしてアレスは背中を震わせた。次の瞬間、うなじに濡れた感触がして、アレスの口から高い声が飛び出した。

「――んぁ」

 慌てて振り返ると、こちらを見ていたルーカスと目があった。いつもの優しい目とは違い、熱を持った目だ。

「――すまない、つい舐めてしまった」
「い、いや、オレたちは番なんだし、別に」

 ルーカスに見つめられたアレスの心臓が、激しく音を立てる。アレスとルーカスは番なのだ。性行為はすぐにはできないとは言われているが、その他は別に行ってもいい。誰にとがめられることもないし、悪いことでもないはずだ。

「――ちょっとだけして見る?」
「ああ」

 ごくりと唾を呑む音が聞こえたが、どちらのものかは分からなかった。


 アレスはゆっくりとルーカスへ手を伸ばした。いつも寝る時は触っているのに、雰囲気が違うだけでなぜか緊張する。ルーカスの首の毛を優しく毛流れに沿ってなでた。

「――寝室に行こう」
「そ、そうだね」

 アレスが返事を返した瞬間、ルーカスはアレスを抱いて颯爽さっそうと寝室へと向かった。寝室へ入り扉を閉めたルーカスは、敷いてあった布団の上にアレスを抱いたまま座る。
 早速、2人の口が合わさった。ルーカスの舌がアレスの口内へと入ってくる。アレスは必死に口を開くがルーカスの舌は大きく、口いっぱいに入ってくる。そのまま口内を掻き回された。

「んんっ」

 アレスは苦しさに涙目になりながらも耐えていたが、アレスの状態に気がついたルーカスが口を離した。

「苦しいか?」
「ちょっとだけ。でも大丈夫」

 次は顔を舐められる。大きく長い舌で何度も顔全体を舐められた。そして首筋を舐めた後、薬草を塗るために上半身は何も着ていなかったアレスの胸まで舌は降りてきた。体をルーカスの顔の近くまで抱き上げられ、お腹の下から胸までをゆっくりと舌で辿られて、アレスの背筋は快感に震えた。

「あっ、んんっ、ルーカス」

 腕を鋭い牙で少しだけ甘噛みされるが、全く怖くは無かった。アレスの反応を確かめながらルーカスは体中を舐めていく。

「下も脱がせていいか?」
「――うん、ルーカスも」

 息も絶え絶えになりながら、アレスがお願いすると、ルーカスは立ち上がり勢いよく自分の服を脱ぎ捨てた。
 降ろされて座った状態のアレスの目に、ルーカスの下履きを押し上げて主張している大きいものが映る。アレスはそれに手を伸ばした。

「あ、アレス」
 
 触った瞬間に、もっと大きく膨れ上がったそれはあまりにも大きい。アレスの腕ほどの大きさはあるだろう。熱を持ち震えている。

「――おおきい」

 そうアレスが呟いた瞬間、アレスの体は布団へと押し倒された。

「アレス」

 ルーカスが瞳孔の開いた金の目でアレスを真っ直ぐに見てくる。アレスはたまらなくなり、首筋に抱きついた。

「ルーカス、好き」
「ああ、俺も好きだ」

 ルーカスの舌がまた口内へと入ってくる。必死に受け入れている間に、気がつけばアレスの身を覆うものは何もなくなっていた。

「毛がなくて、綺麗だ」

 ルーカスが上からアレスを見て呟いた。ルーカスの視線がアレスの体を上からゆっくりと辿っていく。

「――オレだけ隠すものがなくて、恥ずかしい」

 ルーカスも同じく何も身につけていないが、体のほとんどは毛で覆われているためあまり変わらない。一方アレスには何も隠すものがなく、全てがルーカスの元にさらされている。翼があれば前に回して少し隠すこともできたが、それもないアレスは腕で隠すしか無かった。

 覆いかぶさってきたルーカスの体がアレスの体と接触する。素肌に感じる毛の感触にアレスはくすぐったくなり体をよじった。

「――ふっ」

 ルーカスの立ち上がった下半身も押し当てられ、アレスは動きを止めた。燃えているように熱い大きなものが、同じく立ち上がっていたアレスのものと触れる。押し当てたまま少しずつ動かされ、アレスの腰も同じように小刻みに揺れる。アレスは目の前にあるルーカスの胸元の毛にしがみついた。

「んんっ」
「アレス。痛くないか?」
「――うん、き、気持ちいい」

 アレスが答えた後、ルーカスの動きは更に早くなり、2人は同時に射精した。アレスの腹に白濁で粘り気のある液体が大量に飛び散る。

「アレス」

 呼ばれて上を向いたアレスの口に、体を動かしたルーカスの口が一瞬合わさって、また顔を舐められた。


 アレスの腹を拭いた後、ルーカスはアレスを抱き上げて横になった自分の上に乗せた。いつもの寝る時の体勢だ。
 いつもより早い時間だったが、ルーカスの上で頭を撫でられながら、アレスはあっという間に寝入った。
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