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04 異変
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今日もアレスは森へ来ていた。
今回の目標は、商人に言われた薬草と自分が食べる分の果実の採取だ。
いつものようにナイフを片手に森へと入ったアレスは、少しの異変を感じ取った。いつも薄暗い森の中が、少しだけ明るいのだ。上を向いて確認すると、生い茂っていて頭上を覆い尽くしていたはずの木の葉に隙間ができている。
いつもより明るく足元が見やすいため歩きやすく、アレスは嬉しくなりながらも、慎重に森の中を進んでいった。少し歩いたら耳を澄ませて、近くに自分以外の者がいないか確認しながら少しずつ歩いていく。
薬草は比較的直ぐに見つかった。崖の近くに群生地があったのだ。青っぽい薬草が大量に生えている。
「やった!」
アレスは駆け寄り、ナイフで刈り取っていく。いつものように、持ってきていた布袋に入れて腰籠へ戻す。半分ぐらい刈り取り、後は残しておくことにした。再来週の交換まで取っておくのだ。森に入ってくるのは鳥人族ではアレスだけなので、誰かに取られてしまうこともない。獣達が食べてしまうかもしれないが、辺りを見渡す限り荒らされている痕跡はないので、この場所には来ないのだろう。
大体の場所を覚えた後、アレスはさらに奥へと進んでいった。この奥に果実の木があるのだ。
果実の採取は、特に慎重になる必要がある。アレス以外にも獣達が食べにくるかもしれないからだ。アレスを食べにくる者もいるかもしれない。
果実の木の近くに到着した後、しばらく辺りを警戒する。何の音もしない。風が木の葉を揺らす音がかすかにするだけだ。
辺りを警戒したまま、果実の木の側まで辿り着き、下に落ちている実を素早く確認していく。比較的最近落ちた綺麗なものを選別して腰籠へと詰め込んでいく。
十分な量を回収した後、急いでその場を離れた。
今日の目標は達成したので、来た道を引き返す。
森から出るといつもホッとする。森から出た後の帰り道は気を張っていなくていいので気が楽だ。先ほど取った果実を1つ腰籠から取り出し、齧りながら家への道を進んだ。
村の中と村に近い場所は森と違い歩きやすい。商人の荷車が通るし、重いものは村の中を荷車に乗せて運ぶこともあるので定期的に道が整備されている。
翌週、薬草の残りを取りに行ったアレスは愕然とした。
先週見つけた群生地に行ったところ、残っていた全ての薬草が枯れてしまっていたのだ。青っぽかった薬草はすべてが茶色く変わってしまい、地面に力無く倒れていた。
「そんな……先週取っておけばよかった……」
悔やんでしまっても、もうどうしようもない。アレスは諦めて別の薬草を探しに行った。
――おかしい
いつも薬草が生えている場所に行ってみるが、なかなか見つからないのだ。最初の薬草と同じように枯れてしまっているものもあった。こんなこと今まで一度もなかった。何かがおかしい。
ただ、アレスには何が起きているのか分からなかった。結局、いつもの半分の量しか採取できずにその日は家へ帰った。
次の日もそのまた次の日も同じだった。
いつも取れていたはずの場所で薬草が取れなくなったのだ。果実は辛うじて取れたが、明らかに地面に落ちている実の数が減っていた。
森の中に差し込む光も日に日に増えていっているように感じる。
(もしかして、森の草木が枯れていってしまっているのだろうか……)
アレスはそう考えたが、これほど広大な森の草木が枯れていくなど原因もわからなければ対策のしようもなかった。ただ、今までは見つけた薬草は必要な分だけ取り、後は残しておいていたが、今では見つけた分は全て刈り取るようにした。枯れる前に取ってしまうのだ。
今回の目標は、商人に言われた薬草と自分が食べる分の果実の採取だ。
いつものようにナイフを片手に森へと入ったアレスは、少しの異変を感じ取った。いつも薄暗い森の中が、少しだけ明るいのだ。上を向いて確認すると、生い茂っていて頭上を覆い尽くしていたはずの木の葉に隙間ができている。
いつもより明るく足元が見やすいため歩きやすく、アレスは嬉しくなりながらも、慎重に森の中を進んでいった。少し歩いたら耳を澄ませて、近くに自分以外の者がいないか確認しながら少しずつ歩いていく。
薬草は比較的直ぐに見つかった。崖の近くに群生地があったのだ。青っぽい薬草が大量に生えている。
「やった!」
アレスは駆け寄り、ナイフで刈り取っていく。いつものように、持ってきていた布袋に入れて腰籠へ戻す。半分ぐらい刈り取り、後は残しておくことにした。再来週の交換まで取っておくのだ。森に入ってくるのは鳥人族ではアレスだけなので、誰かに取られてしまうこともない。獣達が食べてしまうかもしれないが、辺りを見渡す限り荒らされている痕跡はないので、この場所には来ないのだろう。
大体の場所を覚えた後、アレスはさらに奥へと進んでいった。この奥に果実の木があるのだ。
果実の採取は、特に慎重になる必要がある。アレス以外にも獣達が食べにくるかもしれないからだ。アレスを食べにくる者もいるかもしれない。
果実の木の近くに到着した後、しばらく辺りを警戒する。何の音もしない。風が木の葉を揺らす音がかすかにするだけだ。
辺りを警戒したまま、果実の木の側まで辿り着き、下に落ちている実を素早く確認していく。比較的最近落ちた綺麗なものを選別して腰籠へと詰め込んでいく。
十分な量を回収した後、急いでその場を離れた。
今日の目標は達成したので、来た道を引き返す。
森から出るといつもホッとする。森から出た後の帰り道は気を張っていなくていいので気が楽だ。先ほど取った果実を1つ腰籠から取り出し、齧りながら家への道を進んだ。
村の中と村に近い場所は森と違い歩きやすい。商人の荷車が通るし、重いものは村の中を荷車に乗せて運ぶこともあるので定期的に道が整備されている。
翌週、薬草の残りを取りに行ったアレスは愕然とした。
先週見つけた群生地に行ったところ、残っていた全ての薬草が枯れてしまっていたのだ。青っぽかった薬草はすべてが茶色く変わってしまい、地面に力無く倒れていた。
「そんな……先週取っておけばよかった……」
悔やんでしまっても、もうどうしようもない。アレスは諦めて別の薬草を探しに行った。
――おかしい
いつも薬草が生えている場所に行ってみるが、なかなか見つからないのだ。最初の薬草と同じように枯れてしまっているものもあった。こんなこと今まで一度もなかった。何かがおかしい。
ただ、アレスには何が起きているのか分からなかった。結局、いつもの半分の量しか採取できずにその日は家へ帰った。
次の日もそのまた次の日も同じだった。
いつも取れていたはずの場所で薬草が取れなくなったのだ。果実は辛うじて取れたが、明らかに地面に落ちている実の数が減っていた。
森の中に差し込む光も日に日に増えていっているように感じる。
(もしかして、森の草木が枯れていってしまっているのだろうか……)
アレスはそう考えたが、これほど広大な森の草木が枯れていくなど原因もわからなければ対策のしようもなかった。ただ、今までは見つけた薬草は必要な分だけ取り、後は残しておいていたが、今では見つけた分は全て刈り取るようにした。枯れる前に取ってしまうのだ。
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