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第五章 虚空記録層(アカシックレコード)
第19話 見破られた矛盾とノルンの思惑
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レイスと言乃花が結界内に閉じ込められたころ、冬夜とメイにも異変が襲いかかっていた。
「冬夜くん、レイスさんたちがどこにもいないよ」
「おかしいな……一布さんが吹き飛ばされて助けに行った姿は見たんだが……」
冬夜とメイは戸惑いながら周囲を見渡すが特に変わった様子はなく、まるで三人が神隠しにあったかのように姿が見えないのだ。どこかに隠れているのではないかと二人が機体の下を覗き込んだとき、背後から聞き覚えのある声が響く。
「どうやらワナが仕掛けられていたようね」
慌てて二人が声のしたほうを振り返るとレアが腕を組んで立っていた。
「どういうことでしょうか?」
「妙な妖力と魔力を感じるのよね、三人以外の。ひょっとしたらどこかに閉じ込められているのかもしれないわ」
「大変! 早く三人を助けに行かないと! 冬夜くん、大丈夫かな?」
「ああ、そうだな……」
心配そうな表情で話すメイを横目に冬夜はある矛盾点に気が付いた。
(三人以外の魔力? 言乃花とレイスさんならわかる。だけど一布さんが魔法を使えるとは聞いたことがない……)
「冬夜くん、どうしたの? また難しそうな顔をして考え込んでるよ」
右手を顎にあて、俯き気味に考えを巡らす冬夜を見たメイが不安そうな表情を浮かべて覗き込む。
「ちょっと引っかかることがあってな……メイ、俺のそばを絶対に離れるなよ」
「えっ? う、うん、わかった」
メイの耳元でささやく冬夜。発せられた言葉から強い意志が伝わり、とまどいながらも小さく頷くメイ。冬夜の背後にそっと身を隠すと制服の裾を両手で強く握りしめた。
「二人ともここは危険かもしれないから一度避難しましょう」
「レアさん、その前にいくつか確認したいことがありますが……よろしいでしょうか?」
冬夜が正面に立つレアに対し、睨みつけるように視線を送る。
「ちょっとどうしたの、冬夜くん? まるで敵を見るような視線で……」
「気になる事がいくつか出てきたので……俺の質問に答えてくれますか?」
「いいわよ。私がわかる範囲なら答えるわ」
冬夜の迫力に一瞬たじろいだレアだったが、ため息を小さく吐くと腕を組んで呆れたような表情を浮かべる。
「先ほどレアさんが『三人以外の妙な妖力と魔力を感じた』とおっしゃっていましたが間違いありませんか?」
「ええ、たしかにそう言ったわ。それがどうかしたの?」
「言乃花とレイスさんならわかりますが、一布さんが魔力持ちだとは聞いたことがなかったので」
冬夜の言葉を聞いたレアの表情が一瞬曇った。
「そんなことが気になったの? 一布くんだって言乃花ちゃんほどではないけど魔力を持っていても不思議じゃないでしょう……それにあなたたちも聞こえていたでしょ? ヘリポートに着陸する直前に一布くんの声が」
「聞こえました、ハッキリと。レアさん、本当に一布さんの声が聞こえていたのですか?」
「はっきり聞こえたわよ! あれだけの大きな声が聞こえないほうがおかしいんじゃ……」
「お前はレアさんじゃない!」
レアが言い終えるよりも早く冬夜は右手を振り抜いた。すると黒いナイフのような形をした魔力がレアに襲いかかる。
「ふふふ、もうばれてしまいましたか。大人しく騙されていてくれたらよかったのですが、仕方ありませんね」
冬夜が放った黒いナイフのような魔力はレアに到達する目前で霧散した。するとレアが不敵な笑みを浮かべ問いかける。
「私の演技は完璧だったはず……どこで気が付かれたか教えて頂きたいですね」
「一布さんが魔力持ちと言い切ったこと、そして聞こえるはずのない声が聞こえていたところだ!」
「ずいぶんハッキリと断言されるのですね」
「当たり前だ! レアさんは運転席で通信用のヘッドホンを着けていた……一布さんの声が聞こえるわけがない!」
冬夜の指摘を聞いたレアが驚いた表情を浮かべると、天を仰ぐように顔を空に向けて笑いながら話し出した。
「なんということでしょうか、私としたことが初歩的なミスを人間に指摘されるとは……」
「まずい! メイ、伏せてすぐ耳を塞ぐんだ!」
冬夜はメイを守るように覆いかぶさると両手ですぐ耳を塞ぐ。すると鼓膜を突き破るような甲高い音が周囲に響き渡り、思わず目を閉じる冬夜とメイ。
「お見事ですわ。私の作戦を話術だけで見破るとは……やはり面白い存在ですね、冬夜くん」
「やはりお前の仕業か……ノルン!」
音が鳴りやんだことを確認し、冬夜が目を開けると先ほどまで見えていた周囲の景色は消え去り、真っ白な空間が広がっていた。そして視線の先にいたのはピンク色のシャツと黒を基調とした膝上までのキュロットパンツに同色のコートを着た三大妖精セカンド「ノルン」
「メイさんでしょうか……初めまして、三大妖精セカンド『ノルン』と申します、以後お見知りおきを」
流れるような動作で一礼するノルン。
冬夜たちの前に姿を現したノルンの目的とは?
「冬夜くん、レイスさんたちがどこにもいないよ」
「おかしいな……一布さんが吹き飛ばされて助けに行った姿は見たんだが……」
冬夜とメイは戸惑いながら周囲を見渡すが特に変わった様子はなく、まるで三人が神隠しにあったかのように姿が見えないのだ。どこかに隠れているのではないかと二人が機体の下を覗き込んだとき、背後から聞き覚えのある声が響く。
「どうやらワナが仕掛けられていたようね」
慌てて二人が声のしたほうを振り返るとレアが腕を組んで立っていた。
「どういうことでしょうか?」
「妙な妖力と魔力を感じるのよね、三人以外の。ひょっとしたらどこかに閉じ込められているのかもしれないわ」
「大変! 早く三人を助けに行かないと! 冬夜くん、大丈夫かな?」
「ああ、そうだな……」
心配そうな表情で話すメイを横目に冬夜はある矛盾点に気が付いた。
(三人以外の魔力? 言乃花とレイスさんならわかる。だけど一布さんが魔法を使えるとは聞いたことがない……)
「冬夜くん、どうしたの? また難しそうな顔をして考え込んでるよ」
右手を顎にあて、俯き気味に考えを巡らす冬夜を見たメイが不安そうな表情を浮かべて覗き込む。
「ちょっと引っかかることがあってな……メイ、俺のそばを絶対に離れるなよ」
「えっ? う、うん、わかった」
メイの耳元でささやく冬夜。発せられた言葉から強い意志が伝わり、とまどいながらも小さく頷くメイ。冬夜の背後にそっと身を隠すと制服の裾を両手で強く握りしめた。
「二人ともここは危険かもしれないから一度避難しましょう」
「レアさん、その前にいくつか確認したいことがありますが……よろしいでしょうか?」
冬夜が正面に立つレアに対し、睨みつけるように視線を送る。
「ちょっとどうしたの、冬夜くん? まるで敵を見るような視線で……」
「気になる事がいくつか出てきたので……俺の質問に答えてくれますか?」
「いいわよ。私がわかる範囲なら答えるわ」
冬夜の迫力に一瞬たじろいだレアだったが、ため息を小さく吐くと腕を組んで呆れたような表情を浮かべる。
「先ほどレアさんが『三人以外の妙な妖力と魔力を感じた』とおっしゃっていましたが間違いありませんか?」
「ええ、たしかにそう言ったわ。それがどうかしたの?」
「言乃花とレイスさんならわかりますが、一布さんが魔力持ちだとは聞いたことがなかったので」
冬夜の言葉を聞いたレアの表情が一瞬曇った。
「そんなことが気になったの? 一布くんだって言乃花ちゃんほどではないけど魔力を持っていても不思議じゃないでしょう……それにあなたたちも聞こえていたでしょ? ヘリポートに着陸する直前に一布くんの声が」
「聞こえました、ハッキリと。レアさん、本当に一布さんの声が聞こえていたのですか?」
「はっきり聞こえたわよ! あれだけの大きな声が聞こえないほうがおかしいんじゃ……」
「お前はレアさんじゃない!」
レアが言い終えるよりも早く冬夜は右手を振り抜いた。すると黒いナイフのような形をした魔力がレアに襲いかかる。
「ふふふ、もうばれてしまいましたか。大人しく騙されていてくれたらよかったのですが、仕方ありませんね」
冬夜が放った黒いナイフのような魔力はレアに到達する目前で霧散した。するとレアが不敵な笑みを浮かべ問いかける。
「私の演技は完璧だったはず……どこで気が付かれたか教えて頂きたいですね」
「一布さんが魔力持ちと言い切ったこと、そして聞こえるはずのない声が聞こえていたところだ!」
「ずいぶんハッキリと断言されるのですね」
「当たり前だ! レアさんは運転席で通信用のヘッドホンを着けていた……一布さんの声が聞こえるわけがない!」
冬夜の指摘を聞いたレアが驚いた表情を浮かべると、天を仰ぐように顔を空に向けて笑いながら話し出した。
「なんということでしょうか、私としたことが初歩的なミスを人間に指摘されるとは……」
「まずい! メイ、伏せてすぐ耳を塞ぐんだ!」
冬夜はメイを守るように覆いかぶさると両手ですぐ耳を塞ぐ。すると鼓膜を突き破るような甲高い音が周囲に響き渡り、思わず目を閉じる冬夜とメイ。
「お見事ですわ。私の作戦を話術だけで見破るとは……やはり面白い存在ですね、冬夜くん」
「やはりお前の仕業か……ノルン!」
音が鳴りやんだことを確認し、冬夜が目を開けると先ほどまで見えていた周囲の景色は消え去り、真っ白な空間が広がっていた。そして視線の先にいたのはピンク色のシャツと黒を基調とした膝上までのキュロットパンツに同色のコートを着た三大妖精セカンド「ノルン」
「メイさんでしょうか……初めまして、三大妖精セカンド『ノルン』と申します、以後お見知りおきを」
流れるような動作で一礼するノルン。
冬夜たちの前に姿を現したノルンの目的とは?
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