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第三章 幻想世界
第23話 三大妖精ファースト「クロノス」
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「貴様……何をした!」
「何もしていませんよ? 邪魔になりそうなので少し大人しくしていただいただけですが?」
弟子に危害が及んだことにより、冷静さを失って怒り狂うシリル。その様子をあざ笑うファーストの首筋に一筋の閃光が走り、青白い炎がフードを被った身体を覆っていく。
「先手必勝っす」
懐刀を手に持ったレイスの一撃は確実にファーストを切り裂いたはずだった。
「ふむ……素晴らしい太刀筋、修業を重ねていることがわかります。しかし、決着を急ぐあまりに冷静さを欠いているのが残念なところですね」
全員の目に飛び込んできたのは異様としか言えない光景だった。青白い炎を全身に纏い、顎に手を当て平然と立つファースト、何事もなかったかのように……
思わず唖然としたレイスだが、すぐさま冬夜たちを庇うように前に立ち、懐刀を構える。
「おや? そんなに慌ててどうしたのですか?」
「一筋縄ではいかないっすか。ご挨拶のお返しのつもりだったっすけどね」
「ずいぶん物騒な挨拶をするのですね、人間は。おっと、私としたことが……お初の方々を前にして自己紹介を忘れるとは大変失礼しました。三大妖精ファースト『クロノス』と申します。以後お見知りおきを」
炎を纏ったまま流れるような動作で一礼をするクロノス。頭を上げた時にフードが外れ、顔が明らかになる。紫色をした凍てつくような瞳、プラチナブロンドの少し長めの髪が肩にかかっている。身長は冬夜と変わらないくらいのように見えるが、全身から放たれる強いオーラに肌がビリビリする。
「レイスさん、アイツは一体?」
「自分が追っていた三大妖精のトップに君臨する通称『ファースト』っすよ。ヤツに関しては不確定な情報が多すぎるので気を付けて下さい」
「レイス、後ろにいる人物については情報はないの?」
言乃花の一言に冬夜がクロノスの奥にいる人物に視線を向ける。フードを目深くかぶっているためどういった人物なのかここからではわからないが、何故か既視感と妙な胸騒ぎを覚えた。
「後ろの人物に関する情報は全くないっすね。一つ分かっているのは少し前からクロノスと行動を共にしているということだけっす」
「わかったわ。今はリリーさんを助ける方法を考えましょう」
言乃花が冷静に判断して言う。部屋の一番奥にシリル、一メートルほど手前の位置に冬夜たち三人がいる。そこから二メートルほど離れた位置にクロノスが立っており、すぐ後ろにもう一人の人物とリリーが並ぶ形になっている。するとシリルからレイスに向かい指示が飛んだ。
「レイス、言乃花殿が言うようにリリーを救出しろ。クロノスの相手は私がする。お前は二人と連携し被害を最小限にくい止めるのだ!」
「御意。二人とも準備はいいっすか?」
「わかったわ。冬夜君いけるわよね?」
「ああ、やるしかないだろ」
三人がまとまったところでシリルから檄がとぶ。
「いくぞ! 全員気を抜くな!」
瞬時にクロノスの前に現れ、三人の壁となるように立ちふさがるシリル。
「あなたがお相手をしてくれるとは……なんと光栄でしょう」
「貴様だけは絶対に許さぬ! 積年の恨みを晴らすときだ」
「これは楽しめそうですね。以前のようなことにならないようにせいぜい頑張って下さい」
明らかに挑発するような言葉を投げかけるクロノス。二人の激戦が始まった。
「自分があの人物を引き付けるっすから、二人はリリーさんを出来るだけ引き離してください」
懐刀を構えたレイスがフードを被った人物へ向かう。冬夜と言乃花はレイスの後ろから左右に分かれ、リリーを目指し駆け抜ける。あと一歩でリリーへたどり着くというときに異変が襲う。
(身体が急に重くなった?)
最初に気が付いたのは冬夜だった。修業で多少の疲れは残っていたとはいえ全身が重く感じることなどありえない。
「黒き拘束の鎖」
フードの人物が発した言葉が聞こえた時、三人の身体を押しつぶすような圧力がかかる。
(な、なんだこれは……この力はまさか!?)
聞き覚えのある声にフードの人物を凝視する冬夜。
三人に起きた異変、クロノスの企みとは?
はたして打つ手はあるのだろうか……
「何もしていませんよ? 邪魔になりそうなので少し大人しくしていただいただけですが?」
弟子に危害が及んだことにより、冷静さを失って怒り狂うシリル。その様子をあざ笑うファーストの首筋に一筋の閃光が走り、青白い炎がフードを被った身体を覆っていく。
「先手必勝っす」
懐刀を手に持ったレイスの一撃は確実にファーストを切り裂いたはずだった。
「ふむ……素晴らしい太刀筋、修業を重ねていることがわかります。しかし、決着を急ぐあまりに冷静さを欠いているのが残念なところですね」
全員の目に飛び込んできたのは異様としか言えない光景だった。青白い炎を全身に纏い、顎に手を当て平然と立つファースト、何事もなかったかのように……
思わず唖然としたレイスだが、すぐさま冬夜たちを庇うように前に立ち、懐刀を構える。
「おや? そんなに慌ててどうしたのですか?」
「一筋縄ではいかないっすか。ご挨拶のお返しのつもりだったっすけどね」
「ずいぶん物騒な挨拶をするのですね、人間は。おっと、私としたことが……お初の方々を前にして自己紹介を忘れるとは大変失礼しました。三大妖精ファースト『クロノス』と申します。以後お見知りおきを」
炎を纏ったまま流れるような動作で一礼をするクロノス。頭を上げた時にフードが外れ、顔が明らかになる。紫色をした凍てつくような瞳、プラチナブロンドの少し長めの髪が肩にかかっている。身長は冬夜と変わらないくらいのように見えるが、全身から放たれる強いオーラに肌がビリビリする。
「レイスさん、アイツは一体?」
「自分が追っていた三大妖精のトップに君臨する通称『ファースト』っすよ。ヤツに関しては不確定な情報が多すぎるので気を付けて下さい」
「レイス、後ろにいる人物については情報はないの?」
言乃花の一言に冬夜がクロノスの奥にいる人物に視線を向ける。フードを目深くかぶっているためどういった人物なのかここからではわからないが、何故か既視感と妙な胸騒ぎを覚えた。
「後ろの人物に関する情報は全くないっすね。一つ分かっているのは少し前からクロノスと行動を共にしているということだけっす」
「わかったわ。今はリリーさんを助ける方法を考えましょう」
言乃花が冷静に判断して言う。部屋の一番奥にシリル、一メートルほど手前の位置に冬夜たち三人がいる。そこから二メートルほど離れた位置にクロノスが立っており、すぐ後ろにもう一人の人物とリリーが並ぶ形になっている。するとシリルからレイスに向かい指示が飛んだ。
「レイス、言乃花殿が言うようにリリーを救出しろ。クロノスの相手は私がする。お前は二人と連携し被害を最小限にくい止めるのだ!」
「御意。二人とも準備はいいっすか?」
「わかったわ。冬夜君いけるわよね?」
「ああ、やるしかないだろ」
三人がまとまったところでシリルから檄がとぶ。
「いくぞ! 全員気を抜くな!」
瞬時にクロノスの前に現れ、三人の壁となるように立ちふさがるシリル。
「あなたがお相手をしてくれるとは……なんと光栄でしょう」
「貴様だけは絶対に許さぬ! 積年の恨みを晴らすときだ」
「これは楽しめそうですね。以前のようなことにならないようにせいぜい頑張って下さい」
明らかに挑発するような言葉を投げかけるクロノス。二人の激戦が始まった。
「自分があの人物を引き付けるっすから、二人はリリーさんを出来るだけ引き離してください」
懐刀を構えたレイスがフードを被った人物へ向かう。冬夜と言乃花はレイスの後ろから左右に分かれ、リリーを目指し駆け抜ける。あと一歩でリリーへたどり着くというときに異変が襲う。
(身体が急に重くなった?)
最初に気が付いたのは冬夜だった。修業で多少の疲れは残っていたとはいえ全身が重く感じることなどありえない。
「黒き拘束の鎖」
フードの人物が発した言葉が聞こえた時、三人の身体を押しつぶすような圧力がかかる。
(な、なんだこれは……この力はまさか!?)
聞き覚えのある声にフードの人物を凝視する冬夜。
三人に起きた異変、クロノスの企みとは?
はたして打つ手はあるのだろうか……
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