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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

第16話 四人目の生徒会役員

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 冬夜たちが先に出ていった芹澤を追いかけるため実験室を飛び出した頃、学園裏にある森の中ではすでに激しい戦闘が行われていた。


「チッ! 邪魔するならば容赦はしません!」
「妖精さんは怖いっすね。自分は邪魔することが仕事なんすよ」

 森中に轟音が鳴り響き、木々がなぎ倒されて土煙と霧が立ち込める中、二人の少年が対峙していた。
 空中で電流をまとった無数の矢の中心にいるフェイ。もう一人は懐刀を右手に握りしめ、学園の制服を身にまとうフェイと同じ背丈くらいの少年。センターで分けられた透き通るような白髪がなびき、青い目が三日月型に細められる。彼こそ生徒会会計のレイス・イノセントである。空中から降り注ぐ攻撃をすべて見切っているかのようにかわしていく。

「チッ……逃げ回ることしかできない人間が調子に乗るな!」
「おや? 先ほどとは違って、口調が穏やかじゃないっすね。じゃあ自分もっすよ」

 ……はずであった。レイスの身体が揺らぎながら霧と同化するようにフェイの視界から消えてしまった。

「なっ……」
「よそ見できるとは余裕っすね? からではよく見えないでしょうから、地面に連れていってあげますよ!」

 フェイが気が付いた時はすでに遅かった。無防備な背後から蹴り飛ばされ、そのまま地面に激突する。

「ガハッ……」

 土煙が舞い、あたり一帯の視界が奪われる。肺の空気を強制的に排出されるほど強く地面にたたきつけられ、全身がひどく痛む。何より屈辱であったのはに完全に弄ばれていることである。

「もうおしまいっすか? 三大妖精と言ってもたいしたことはないっすね。自分、らしいっすよ」
「人間風情が私より強いと? つくづく癇に障る生物です。五番目に強いという言葉が、見せていただきたいですね」

 立ち込める土煙の中、ニヤニヤとフェイに近づくレイス。しかし、残り数メートルほどのところでぴたりと足を止めた。いや、止めなければならなかった。

(しまった、迂闊だった……こんなに早く来るとは予定が狂ったっすね)
「全く……世話が焼けるんですから……」

 霧の中から人影が現れる。三大妖精セカンド『ノルン』がフェイのすぐ後ろに立っていた。

「うるさい。僕の獲物だといったはずだ。なんで出てくるんだよ、もう少しで仕留めれるところだったのに!」
「誰もとは頼んでいませんが?」

 二人が言い争いをはじめ、体勢を整える絶好のチャンスであるのだか、身体がピクリとも動こうとしない。

「あら? 世界で五番目に強いお方が、に引っかかるとは……」

 うっすらと馬鹿にしたような笑いを浮かべながら、こちらを見るノルン。

「まさかノルンさんまで……もてる男はつらいっすね」

 ひょうひょうとした口調とは裏腹に内心はかなり焦っていた。感知していたのはフェイのみ、ノルンの妖力は全く感じ取れなかった。

「ふふふ……口調は相変わらずですね。どこまでその余裕が保てるのか……見せていただきましょうか?」

 言い終えると同時にノルンの姿が消える。

(は、早い。いったいどこに?)

 気が付いた時には背中に鈍い衝撃が走り、激しく吹き飛ばされていた。迫りくる木を目の前に、寸でのところで身をひるがえす。その勢いを反動の力に変え、思い切り木を蹴るとノルンに向かう。

「ちょっと痛かったっすね。今度は自分の番ですよ」

 懐刀の刃に炎を宿し、切り裂こうとしたその時、レイスの前に土の壁が現れた。

「おいおい、自ら敵の罠に踏み込もうとは……相変わらずの無鉄砲だな」

 レイスの背後から芹澤の声が響く。

「副会長じゃないっすか? 無鉄砲とは聞き捨てならないすよ」
「全くお前は相変わらずだな。 あのまま突っ込んで入れば無数の刃の餌食だっただろう。それはそれで、のだがね」
「全く相変わらずのいかれっぷりすね? 大事な後輩を犠牲にしてまでデータの方が大切っすか……ところで、また今日は大所帯っすね? 軽く自己紹介したいとこですが、状況が状況なんでご協力をお願いするっすよ」

 芹澤とレイスのやり取りを少し離れた位置で見ていた冬夜、リーゼ、言乃花。
 因縁を持つ妖精たちとの対峙……

 戦いの火蓋は切って落とされた。
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